反俗日記

多方面のジャンルについて探求する。

天木直人氏の尖閣中国船長問題への意見は軽薄で思想の裏付け乏しい。

 天木直人さんの尖閣中国船長問題に対する意見を拝見すると、相変わらずの、中途半端な、思想の裏付けの乏しい見解だな、と思った。
 この人の政治思想に疑問を抱いたのは、政権交代後の普天間問題への対応にすぐさま火がついたように攻撃しだしたときだ。
 私はこの人はケツが軽い人だなと、思った。
 
 私は普天基地間問題の様な日米双方に渡る日本の戦後支配体制、支配層のあり方が、根底にある問題に関して、鳩山政権では解決不可能と理解していたので、却って、コロリと立場を変えて簡単に批判する気になれなかった。それよりも、本土の自分たちが何をやれるか気がかりだった。運動レベルでは、人を動員できないぐらいは重々承知していたが。
 
 この問題は最大限としては、革命の問題=国家権力の問題まで視野に入れておく必要がある。最小限としてはフィリピンのピープルズ革命。アメリカの買弁マルコスを倒した民衆の決起があったから、米軍基地の撤去に繋がった。
 
 つまり普天基地間問題は民主党政権にお任せして済まされるはずはなく、本土の国民の戦前、戦後のあり方の問題であり、マスコミ世論、国民の世論、市民の大衆行動が絡み合って、政府の対米交渉を後押しできるかどうかの問題である。
 政府の対応には問題があるが、其れに対してキャンキャン喚き散らして済ますのではなく、普天間基地海外移設に国民の側に何ができるかという問題でもある。
 
 天木氏は運動レベル、マスコミ以外の世論レベルを自分の思考の中心においていない。彼は小泉政権イラク戦争に対する対応を批判して職を辞し、市井の民間人として発言されている現状。
 ならば、その立場をもっと掘り下げた発言を期待してしまう。
 
私から見たら、長年の外交官発想が昇華されていない。もっと民間レベルの世論、運動体の次元の発想を持たなくてはならないと思うが、彼はこのレベルと向き合う事ができないようだ。
 
 以前の国政選挙で彼は9条ネットとかいう所から、選挙に打って出たが、極小の投票に終わった。共産党でない人たちの集まったムーブメントだったと理解するが、そこで彼は嫌なモノを見たと総括している様だ。
 
 じゃ~、社民党かといえば、これにも日米安保を容認しているからダメらしい。
 
 結局、孤立して、イラク戦争に参戦した小泉政権に抗議した元外交官の立ち位置のままのようだ。
あちこちにすぐ文句をつけるマスコミ体質と大して変わらない。自己反省は少ない。
 
 >>>今回の尖閣船長問題への発言も民間世論、運動体レベルを視野に入れている様な前振りはあるが、結局、良心的な外交官レベルから出ていない。
ただし、これは小泉イラク戦争参戦に反対して辞職した時点のモノであって、今現在の尖閣中国船長問題を前にしても発言に大きな問題がある。
 
           <批判点を以下列記する>
1)問題の発生の根拠を中国船の領海侵犯においている。
 
 仮にその認識が正しいとしても、海上保安庁が破損した中国船を曳航して船長の身柄拘束(逮捕)、取り調べ、起訴、裁判の日本の司法ルートに載せる事が、この東アジア情勢の中でどういう意味を持つかということである。「正しい」とかどうかの問題ではない、ハッキリ言えば、日本にとって得なのか損なのかだ。
 相手側にも真反対の「正しい」判断がある。
 
2)私は中国船は曳航してくるべきでなかったと考えている。
 
 もっと詳しく言えば、国交省の管轄下にある海上保安庁は国境紛争地域の最前線部隊として一触即発の外交問題に発展することの懸念を常に抱えているわけだから、前線で適切な状況判断をできる様な訓練を日ごろから行っているべきだと考える。 
 
 たぶん、日本の海上保安庁の巡視船の規模、装備は世界レベルからいって大きい方だと思う。
このような軍艦に近い様な船が常日頃、尖閣島周辺の海域の制海活動を展開していると、中国、台湾の民間船舶が接近してくることは絶えず想定できる。
 その際どういう行動をリアルにとるかということである。
 
政治的な配慮を持った、軍事行動に徹するべきで、海上保安庁はこのような位置付で自らの任務を遂行していない懸念がある。
 
 国境紛争地帯での制海活動は現状の海上保安庁の現場では分不相応、任務が重すぎる。
相手もここは自分の領海だと主張している。
 
 で、あれば、政治的配慮を持った軍事行動が必要。さらには指揮系統は国境省でいいのかの問題もある。
 日頃の軍事訓練のあり方、政治教育も必要だろう。
 
 こう考えて行くと、天木氏の思考は出発点からして、軽薄すぎる。
安易な制海意識から民間中国船を彼我の能力の差を持って追いかけまわしたら、トラブルは発生する。
 
 過去にも台湾船に実害を与えて、台湾世論をエスカレートさせ、当局の軍事行動の可能性、も引き起こしてしまい、この事態を収めるために結局、謝罪と賠償金を台湾側に支払って問題を鎮静化した。
 同じ事が繰り返されてが、今度は破損船の曳航。船長裁判まで及ぼうとしている。
 
 この事態だけを純粋に見ても日本側の行動のエスカレートは明らかである。
中国船曳航は現場判断ではできないし、海上保安庁トップレベルでも判断不能である。
 
 誰がOKを出したのか、これが問われなければならない。
 
日本側のとった行動に全く国民世論が疑念を抱かないようになっているのは、東アジア情勢に対する、特定の角度からの刷り込みが大きい。またこの間の普天間基地問題の紆余曲折が悪く作用して、国民世論の中に、偏狭な民族主義が蓄積した事もあろう。日本の社会、経済の停滞、閉塞感、将来不安も出口を求めている。
 
 3)尖閣台湾船事件の時は海上保安庁の方が発砲して実害を与えて、謝罪、賠償金を支払った。
 
今度の中国船事件は船長を裁判にかけようとした。これがもし、日本人が中国の立場にいたとしたら座して様子を眺めているか?
 まして、中国共産党にとって尖閣問題は対外対内の政治軍事路線に触れる問題になっている。戦術レベル出たり、引いたりの問題でなくなってきている。全体重をかけた路線問題に中国共産党の譲歩はないことはこの党の過去の行動を見ればよく理解できる。
 
 新安保懇談会の答申で先島に自衛隊本体の基地を構築することと尖閣問題をリンクして中国は理解している。これはもう、中国の覇権、アメリカの覇権と隷属する日本の覇権行動のぶつかり合いの次元まで発展している問題である。
 
 日本側の強硬姿勢の原因もアメリカ従属で覇権を世界に向けて確保しなければ、日本資本主義はやっていけない現状が根底にある。世界市場の地殻変動の中で先発したモノと後発急成長する新興巨大国が争闘している。日本の新経済成長路線は新興国市場のインフラ、一般工業製品などの需要をあてにしている。国内需要をつけることは念頭にない。
 で、あれば、日本も覇権に世界に覇権を求めなければ、やっていけないと決め込んでいるので、今回の事態で大騒ぎしている。
 
 4)中国関連株が下落している。
 
 日本経済は中国なしにやっていけない。中国も日本とが必要である。
日本はアジア市場のパイが大きくなり、その中で日本の取り分を増やすことが日本経済にとって重要な位置を占めて行く。これは経済のすう勢で止めることのできない方向性。
 政治にできることは日本を孤立させないことである。
ワァ~ワァ~前後左右、上下も十分に見ず、大騒ぎしている、これが率直な感想。中国、アメリカの手玉に取られている。
 気が付いたら梯子が外されていた。でもその現実を直視したくないから、居心地の良い旧体制の腰に必死でしがみつく。
 天木さんはそのような立場を嫌っている様だが、結局、政治的には同じような結論しか生まない、位相の意見を開陳しているだけだ。
 
 自分の意見がナショナリズムを煽ることを懸念されている様だが、問題はそんなとこにない。民族が問題なのではない。一般的に民族主義は大いに結構なことである。人にはいろいろな考えがある。
 
 現、日本国家は誰が主人公なのか、我々国民なのか、はたまた別の層のモノか?
これが問題だ。
 自分たちのコントロールの効かない国家の行動を我々が責任を持つ必要はない。彼らは彼らで日本国家を利用し易い立場にいて自分の利益に都合のいいように使う。
これが今目の前に起こっている事態の本質で、中国共産党当局も同じような行動をとっている。どちらが正しくてどちらが間違っているの問題ではない。