反俗日記

多方面のジャンルについて探求する。

経産省の内外戦略と外務省のアメリカの手のひらに乗ったTPP路線に温度差力量差。

 返す返すも外務省のTPPに関する見解表明をアカラサマに記述したネット上の記事を取り込んでおかなかったのが悔やまれる。この記事はAPEC前に完全抹消された。生資料としての価値は非常に高いと見た。
 
 APPに関する各ブログ記事を参照すると当ブログで展開した様なアジア市場を巡る、日本、中国、アメリカの戦略上の角遂としてとらえているモノはなかった。外務省記事を検討した結果できたことである。
 外務省はアジアをめぐる外交交渉で実際に、日本の戦略を当該各国に説明、根回ししてきた経過を踏まえ、事ここに至って、自国の戦略をなげ捨ててアメリカ主導のTPP路線に乗り移ったのだ。
 
 日本の対アジア向けの独自戦略は自民党政権時代の2000年中期に策定されたモノである。
これの参加想定国はアセアン+中国韓国インド、アーストラリア、ニュージーランド
中国の提起する戦略対象国はアセアン+中国韓国である。
 
 もちろん、日本の世界戦略性の希薄さから、どこまで本気で同戦略を提起していたのか疑問であるが、ハッキリしている事は東アジア共同体戦略は鳩山内閣が突然言い出した事ではなく、政権交代以前に自民党議員の選挙公約に東アジア共同体構想を掲げるモノもあった。
 つまり、財界、官僚、政界には漠然としていたが、対アジア独自戦略を指向する傾向もあり、これを受けて外務省は当該各国に根回し説明してきた経緯が厳然と存在する。
 
 これは同時に成長するアジア新興国市場を巡る、覇権各国の角遂だったが、日本はこの争いの中で、アメリカ集合のTPPに乗っかることで、いわば「アメリカに従属する覇権国」としての本質を露呈していまった、というべきだろう。
 
 外務省のAPPへの傾斜の理由として、遅々として進まない日本を中心とする自由貿易協定締結、中国経済の急発展、韓国先端輸出産業の追い上げへの危機感などがあるが、この役所の根深いイデオロギー的なアメリカ呪縛があって、客観的事態進行過程に対して、余りにも急進的、偏向的なアメリカ隷属の傾向に陥っている。
 
 例えば、対中関係では巨大独自市場を有する中国の独自的な経済産業政策が障害となるから、交渉を断念する、とあるが、こんな日本企業の都合のいい事ばかり指向していると、長期的には誰からも相手にされない様になる。よその国に行って好き勝手に労働力を搾取しようなんてエコノミックアニマル的露骨な姿勢では相手にされなくなる。日本外交担当する省庁の戦略として非常に底が浅いし、狭い、偏向している。
 
 ところが経済産業省の関連するネット発表記事はかなり様子が違う。
外務省の様な事態の推移に慌てふためいて前のめりになっている度合いが小さく、結構、読ませるし私の様な薄学非才には勉強になる。使用する用語を調べてもためになった。
 
大まかな感想として、明らかに外務省と経産省の間には段差がある。
 
内外情勢の急速な進展、変化、発展の不均衡に戦後の支配層であり、実質的な政策遂行者である官僚組織の中でも温度差、力量差が出てきている。
 
 外務省の戦後の仕事は冷戦構造に抱きかかえられて、その温室の中での仕事に限定されていた。
ところが経産省の前身通産省は大蔵省とともに戦後日本を政策的にけん引してきた。経験値の蓄積、人材の問題は大きいとみる。
 
 ところが、経験値が頼りなく、人材面でも疑問符のつく、外務省がこの国際化の激しい激動の中で主導権を発揮しなければならない機会がますます増大してくるところに日本の一方の大問題がある。
 
 抹消サイト記事から見る外務省の姿勢を類推すると政権交代直後の鳩山政権の外交姿勢の手助けになるどころかイデオロギーとして「信念」を持って、妨害、サボタージュをしていただろう事は十分に想像できる。
 
こういう役所、官僚が存在していては日本の独自性は発揮できず、絶えずアメリカの権益を毀損される。
国民は今のままだとまずいと漠然とではあれ指向して何とかしてほしい欲しいと思って政権交代させても、実際の大きな政策転換は官僚の抵抗によって阻まれる。マスコミ報道によって政権の失態ばかりがクローズアップされる。
 
 本当のところ、どうなんだという事は、国民自身が分け入って事態を観察し判断していくしかない状況にあるのだ。
 
 経産省の「日本の産業をめぐる現状と課題」2010年2月発表は日本経済を巡る内外環境の厳しさ、数値的パフォーマンスの悪さへの危機感に貫かれているが、私に言わせるともう国内的には万策尽きた、という感じだ。
 
 「今後日本は何で稼ぎ、雇用を確保していくのか」というシンプルな問いかけで始まる大論文の最終結論に日本の独自性はない。せいぜい少子高齢化対策分野での投資ぐらいか。
そういうモノは同じように競争各国何処でも目指している。
だから、世界市場で競争が激化する。
 
 >先発工業国が後発の新鋭設備や投資環境に恵まれた国々の追い上げにあって市場で苦戦するのは、水が高い所から低いところに流れていくように極めて原始的な経済法則である。
 日本のように元々、国内市場の規模に限界のある国は発展の恩恵が国内に充満するのも早いが、内外環境が大きく変われば、経済後退のスピードも速い。(韓国経済の発展などその典型)
 
 経産省はこういう不可避な法則に政策的に抵抗していこうとしている。
 
 この道は必ず、多くの国民に社会的格差、緊張、閉塞、非民主主義、不平不満を強いていくだろう。
日本人の情緒性、忘れっぽさなど本質的に政治向きでない国民性は国民規模で情勢判断を誤る危険性が大きいとみている。これに抗するためには一人ひとりが敢然と立つこと以外にない。あとはt歴史が決める。