反俗日記

多方面のジャンルについて探求する。

第4回連載。こうした形の民主主義が執着するのは、あらゆるマイノリティの保護である。コレによって失われてしまうのはプロレタリアートの立場、すなわち、<排除された者たち>において具現される、普遍性の立場である。

              真昼の盗人のように~ポストヒューマニティ時代の権力~ 
                    スラボォイ、ジジェク 

第3回に続き 引用

「経済的生産力の劇的な発展によって、われわれはこのルール(W。20%/80%)の究極の事例に直面する。必要な仕事のすべては労働人口の20%だけで賄えるため、残る80%の人々は基本的に無意味で役に立たない、つまり潜在的失業者である。

~グローバル経済は将来このような状態に達するのである。

この論理が極限に達した時、一つの自己否定の状態に陥るとしても、それは理の当然ではないか。

>つまり80%の労働力人口を無意味で役立たないものにするシステムは

それ自体無意味で役立たないのではないか。

従って、新しいグローバルなプロレタリアートが出現しつつあるということが主たる問題なのではない。問題はそれよりももっと根源的なこと、すなわち数十億人の人々が単純に必要とされなくなり、搾取工場は彼らを吸収できないということなのだ

左翼の政治学はこの状況を無視している。それは早晩消滅する福祉国家の異物を懸命に維持することとなり下がっている。だが破壊的経済政策が進行する現在の状況にあってこれは負け戦である。負けというのは金融エリートがこの敗北から利益を得という理由からだけではない。

こうした利益にこれまで預かることさえできなかった、そしてその代わりにこの「利益」を特権と非難する大勢の人々若い不安定就労者この金融エリートは頼ることができる。この理由からも負け戦なのである。

 したがって、旧来の福祉国家的恩恵を維持する戦いは、結局のところ、過剰に搾取される新しい周縁的存在(不安定就業者、新たな奴隷、等々)~彼らは福祉国家的恩恵など享受したことさえない~にたいして既存の労働者階級が仕掛ける戦いである。

~W。以下、理解力及ばず省略。

新たな資本主義の力学によって労働者の大部分がますます余分になる以上、グローバル資本主義の「生ける屍」、つまり新資本主義の「進歩」から取り残された人たち、時代の遺物となった余分な人たち、新しい条件に適合できない人たちを、改めて一つにまとめるというプロジェクトについてはどうだろうか。

ここで想定されているのはもちろん、歴史の遺物と歴史の最先端とを短絡させるのは可能だ、ということである。

 社会的政治的プロセスから排除された人々を問題と認めるリベラル派は、声を上げて誰にも聞いてもらえないこうした人々をこのプロセスに包含することを目標とする~あらゆる考え方に耳を傾けなければならない。あらゆる関心を考慮に入れなければならない、あらゆる人の人権が保障されねばならない、あらゆる生活様式、文化、習慣が尊重されねばならない、というふうに。~

 こうした形の民主主義が執着するのは、あらゆるマイノリティー~文化的、宗教的、性的、等々~の保護である。

ここでの民主主義の原則は、辛抱強い交渉と妥協である。

コレによって失われてしまうのはプロレタリアートの立場、すなわち<排除された者たち>において具現される、普遍性の立場である。

だからこそ子細に検討すれば明らかなように、

リベラルな包含策はチャベスが成し遂げようとしたことではないのである。

それとは逆にチャベスは彼ら貧民街(ファベラ)に住む<排除された>住民を自分の基盤とみなしていたのであり、彼らに適した政治を再編成していたのである。

この差異~「ブルジョア民主主義」と「プロレタリア独裁」との差異~は衒学的でつ抽象的に見えるかもしれないが、極めて重要である。

~~

利益は単に追及されるべきではない。

利益は、利益には還元できない理念を取り込めるように再規定しなければならない

 権力を取った右翼ポピュリストが時折労働者の利益に資する政策を課すという逆説を、われわれは何度も目にしているが、それは以上のような理由による。

 PIS<法と正義>~ポーランド右翼ポピュリスト与党~がイデオロギー的に無力な政党から空前の速度と効率性をもって強烈な改革を成し遂げている政党へと変貌した。

~PISによる社会変革はポーランドの現代史において比類のない大きなものであった。

W。ここで細かく指摘されている政策は子供手当、75歳以上の医薬品の無料化、最低賃金アップ、定年短縮67歳→女60男65、低所得者所得税控除の計画。

議会総選挙で与党「法と正義(PiS)」が上下院とも勝利(ポーランド) | ビジネス短信 - ジェトロ

法と正義 - Wikipedia

ポーランド経済の現状と今後の展望 ~EU域内屈指の成長センターとして注目されるポーランド~ | 三菱UFJリサーチ&コンサルティング

W.経済概況→チェコハンガリー。マレーシア。タイ。インド。ともに順調に推移。世界資本主義は中央部は金融空洞化、周縁は中央からの直接投資などによる資金流入で活況を呈している。

><ポーランド、法と正義>。閲覧した限りでは日本の自民党よりもまともな政党に映る。

 PISが実行していることはマリーヌルペンがフランスにおいて約束していることでもある。

それは要するに

ナショナルアイデンティティを肯定し移民の脅威への対応を約束する、秩序とセキュリティに関する公約と、反ー緊縮策ー左翼政党の発想にない、社会の在り方の転換ーとを結合したものである。

庶民の抱える二つの大きな不安に直接訴えかけるこの結合に対して対抗できる人がいるだろうか。

 われわれが今日目の当たりにしているのは、公認された「左翼」が(多文化主義に基づく権利を擁護しつつ)緊縮政策を推し進める一方で、ポピュリズム右翼が(排外主義的でナショナリズム的な政治方針を取りつつ)貧困層を助けるために反ー緊縮政策を実行するという、異様な世界である。

これはヘーゲルが述べた<さかさまの世界>の最新版といってよい。

     仮想資本主義と、自然の終わり

ヴォルフガング、シュトレークは~

われわれは今日明かに危機の中に入りこんでいる。だがこの危機はまさに最終的である。

それは衰退と崩壊の長期プロセスであり、そこには安易なヘーゲル的仕様の展望などない。

つまりそこにはその衰退をポジティブなものに転換し、それを高次の社会編成のための手段に変える動因など存在しない、と。

 シュトレークはこの衰退の様々な兆候を列挙している。

たとえば

①利潤率の低下(W。反俗日記で再三指摘)

不変資本をC(端的に言えば生産手段~原材料、機械償却~) 、可変資本(商品としての労働力)をV 、剰余価値をM 、利潤率をr

>資本の有機的構成C /V が高度化すると、剰余価値率M /V が一定である限り、利潤率r は低下

W。スラボォイ、ジジェクの20%/80%議論にも関与する原理論なので詳しい解説を引用する。資本主義の経済現象の原理はパレートの最適や法則を用いようがマルクス資本論を用いようが同じ現象を別な角度から観察しているだけで事象そのものは変わらない。ただし原理論だけで通用するはずがない。

「資本主義的生産の特徴は,生産性上昇を目指して労働者1人あたりの機械および原材料の量 (C) を増大させるという労働過程の不断の機械化にある。この過程でC/Vの値が増大していく傾向有機的構成の高度化という。この高度化を通じ,資本の蓄積過程追加資本 (C+V) のうち労働力に投下される資本部分は相対的に減少し,労働力を過剰化する傾向をもつ (相対的過剰人口の発生) 。また,マルクスの利潤率r=m/ (c+v) の定式 (mは剰余価値) に従って分母分子をvで割ると (m/v) / (c/v+1) という結果が得られるが,これは有機的構成が高度化すると利潤率が低下する傾向を算術的に示している。」

生産性向上は資本の本能。しかし、利潤率は低下していくのでこの円環から抜け出す道は工場の海外移転しかない。結果、世界資本主義の連鎖の中にあって中心部は金融空間酸欠化、金融寡頭制強化の方向。縁辺部は経済発展し民主化傾向。ロシア、中国は専制資本主義から民主化傾向へ

②違法行為と暴力の増加(W。国内外の金融帝国主義につきもの。等価交換ではない

③金融化(価値生産に寄生する金融取引による利潤)

合衆国およびEUの金融政策には逆説がある。

<<A、投入された巨額の資金は、擬制資本(社債や株など、現実の資本ではないが、利子や配当などの収益を生むことから資本とみなされるもの)の取引の中で消滅してしまうため、生産につながらないのである。

B<だからこそ、借金の爆発的増加(福祉国家に必要なコスト)に関するリベラル派にありがちなハイエク的解釈は退けねばならない。

>データが明確に示しているように、借金の大部分は金融資本及びその利潤を得るために使われているのだから。>>

W。<<A→B>>は重要な指摘。以前から気になっていた。アベノミクスのように国債大量買取を通じて株式市場などのインカム市場に結果的に中銀資金をつぎ込むのであれば、社会保障福祉に散布しても結果は同じ、いづれにしても人間に投資するだけよりましという理屈がなりたつ。

                  次回に続く