新型コロナの「第二波」はどう乗り越えるか 抗体検査と超過死亡が示す現実
2020/05/12 07:00
上 昌広 ~現場からの医療改革~
引用
「世界の多くの国で、新型コロナウイルスの流行がピークを越えた。日本でも、新規感染者数は4月12日の714人をピークに、5月5日には174人まで減少している。」
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新規感染者数の世界比較(New York Times誌のデータ)
国内における新型コロナウイルス感染者数の推移
国内における新型コロナウイルス感染者数の推移
統計的視点で読み解く新型コロナデータの危うさ 松本 健太郎、転載
2020年5月13日
統計的視点で読み解く新型コロナデータの危うさ 松本 健太郎
本文 引用
「4月11日の714人(厚生労働省発表)をピークに、以降は徐々に下降傾向にあります。もちろん、7日に発令された緊急事態宣言(W。7都府県)が数日で効いたから……ではありません。
感染してから兆候・症状が表れるまで(平均潜伏期間5~6日、1~14日の範囲)
さらに、いざ兆候・症例が表れてから、PCR検査を行い、陽性の結果が報告されるまで、平均8日程度要しているといわれています。
>つまり、その日発表された新たな国内感染者は、およそ2週間前の新規感染状況を反映しています。
したがって緊急事態宣言直後の4月11日以降に感染者の報告数が減ったのは、単なる「偶然」です。←W。実際に感染が急増した時期は3月10以降、と推定できる。
W.上
「2月16~22日の週から3月22~28日の週に相当する。
実は、この時期に、韓国も台湾も感染のピークを迎えていた。」
一番重要な死者数が、なかなか「見えない」
新型コロナウイルスによる死亡者の突合に時間がかかっているのは、筆者は「人手不足」「システム化の遅れ」が原因だと考えています。PCR実施機関と自治体とのやりとり、自治体から国への報告はFAXで行われていると聞いて、さすがに慄然としました。
5月11日には東京都が「111人分の報告漏れ」「35人分の重複計上」があったと発表して大きな話題となりました。「端末に入力したものを改めて手で書き写して報告するオペレーションが負荷を高める一因」だったそうです。
↓
>さすがに厚生労働省もこの状態はまずいと気づいたようで、5月9日から、都道府県からの報告をまとめるのではなく、都道府県がホームページで公表する情報を集計する方法に改めました。
*もう1つ気になるのは、国立感染症研究所の「21大都市インフルエンザ・肺炎死亡報告」のデータです。
東京だけ20年の第8週以降ごろから、インフルエンザの流行による予想される死亡者数の上限(しきい値)を大きく超えていると分かりました。この中にも、新型コロナウイルスによる死亡者が紛れ込んでいる可能性を筆者は感じています。これ以外にも、英国や武漢の例のように、病院で亡くなっている方の中に実は新型コロナ感染者がいた……という例が出てくる可能性もあり、まだまだ数字は覆る……という前提で考えた方が良さそうです。W。上氏によれば、2月16~22日の週から3月22~28日の週に第一波(台湾、韓国、とも一致)
W。ザックリ云えば、コロナ感染急増期は3月。この時期はPCR検査による陽性判明までのタイムラグや検査を戦略的に抑えていたこともあり、クラスター以外の実際の市中感染者数急増は解らなかった。
*************************************** 上さんの本文に戻る
「現在、世界が関心を寄せるのは、「第二波」への対応だ。その際に重要なことは、第一波の対応をしっかりと総括することだ。今回は、そのポイントを述べてみたい。
まず、なすべきは、PCR検査に対しての評価だ。
第一波では、PCR検査の陽性者数に基づき、流行状態が推定された。ところが、感染者の多くは軽症あるいは無症状で、PCR検査を受けることなく自然に治癒した者も少なくない。この結果、多くの感染者が見落とされた。
正確な感染者数を推計するために用いられるのは抗体検査だ。←W.PCR検査拡充から抗体検査に乗り換えているが、抗体検査は今のところ厚労省は日赤献血のサンプルを用いてやるとしているが、音沙汰がない。Wは日赤サンプルは反対である。理由は献血をするような健康体の人は抗体保有率が低くなる。
もっとも国は抗体検査をすれば、PCR検査のこれまでの圧倒的に少ない数字が有名無実化し、今後誤魔化しの数字として使えないのでやらない。
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引用に戻る
「抗体とは、病原体が体内に入った際に形成される蛋白質で、これを有することは感染歴があることを意味する。世界中の研究機関が、新型コロナウイルスに特異的な抗体を検出するための検査系を確立し、臨床応用した。
例えば米国では、4月3~4日にカリフォルニア州サンタクララ郡の住民3330人に抗体検査を実施したところ、50人(1.5%)が陽性と判明した。
この地域の人口は194万3411人で、PCR検査で確認された感染者数は956人、住民人口に占める割合は0.049%だ。ところが1.5%の住民が抗体を有していた。これは、感染者の30分の1しか診断されていなかったことを意味する。
多くの感染者は無症状あるいは軽症で治癒したのだろう。
>となれば、新型コロナウイルスの重症化率や致死率は、これまでに報告されていたよりずっと低いことになる。
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W.参考資料 人口10万人あたりの感染者数
>人口10万人あたりで見ると、女性で最も多い20代女性は13.4人となっています。男性で最も多い50代は13.2人となっています。
W。無症状、軽微感染者は免疫力の強い活動的な世代に多く、スプレンダーになり、急激な感染増加につながっている。
>厚労省 引用
「死亡者数は~80代以上が87人と最も多く、70代、60代が続く。死亡率は80代以上が11.1%、70代が5.2%、60代が1.7%。50代以下の年代は1%未満で高齢者ほど重症化して死亡する危険度が高いことを示している。」
***************************************本文に戻る
「抗体検査の精度を問題視する意見もある。たしかに、本当は抗体を保有しているのに、検出できないこともあり得る。感度は7割程度という専門家もいるが、感度が不十分なら、感染者はさらに多いことになる。PCR検査の検出能力に限界があることに変わりはないだろう。」
日本での感染はいつ始まったか
このような所見は、このカリフォルニア州に限った話ではない。表1は5月6日現在、公開されている世界各地の抗体陽性率の一覧だ。1.0%~62.0%の抗体保有率が報告されている。
日本でも4つのグループの調査結果が報告されている。東京の2つのグループの陽性率が5.9%と8.0%で高く、大阪(1.0%)と神戸(3.0%)は低い。これは東京を中心に流行が拡大し、関西にも及んだという実際の経緯とも一致する。
5月5日現在、東京都のPCR検査での陽性者数は4712人(チャーター機帰国者、クルーズ船乗客を含まず)だ。都民の人口あたりの感染率は0.034%である。しかし、抗体陽性率は5.9%~8.0%だ。とすれば、PCR検査で判明した感染者は、全体の174~235分の1に過ぎないことになる。
これはカリフォルニア州の6~8分の1より遙かに低い。このことは、日本がPCR検査を絞ったこととも一致する。
表1で興味深いのは、
抗体陽性率について、国ごとに大きな差があることだ。
日本や中国などアジアは低く、欧州が高い。注目すべきは米国だ。ニューヨーク州が12.3%、21.0%と高いのに対し、カリフォルニア州は1.5%、4.1%と低い。欧州や米国東海岸などの大西洋周辺地域が高く、アジアや米国西海岸などの太平洋周辺地域が低いという見方も可能だ。
なぜ、このような差が生じるのだろうか。これについては、十分な研究が進んでいない。ウイルスの突然変異によるものか、あるいは民族的な差なのか、環境的要因によるのか、今後の検証が必要である。
ただ、これまでの研究で、欧州とアジアでは、流行している新型コロナウイルスのタイプが異なることがわかっている。もし、欧州で流行しているウイルスが強毒な場合、それが第二波でアジアに流入すれば、第一波以上の被害が出る可能性がある。
話を戻そう。
抗体検査が有意義なのは、感染率の推定だけではない。
流行時期の再評価にも役立つ。
今回の報告は、昨年末の時点で、フランスではすでに感染が始まっていたことを示唆する。
日本でも同様のことが起こっていた可能性がある。
日本では、東京オリンピックの延期が決まった3月24日以降、PCR検査数が急増した。そして、感染者数が増加し、緊急事態宣言へとつながる(図1)。
検査数を増やせば、感染者数が急増するのは自明のことだ。すると、検査数を増やした時期に急速な感染拡大が起こったようにも見える。果たして、実態はどうなのだろうか。←W.潜伏期間と症状が出て検査に至り、陽性確定までタイムラグを10日と計算すると、発表された時点のグラフや数字は10日前の感染症例。
「超過死亡」という流行の指標
抗体検査と並ぶもう1つの指標が「超過死亡」だ。
超過死亡とは、世界保健機関(WHO)が提唱した、インフルエンザ流行による死亡数を推計するための指標だ。非流行時の場合に発生すると考えられる死亡数(悪性腫瘍や心疾患などによる)をベースラインとし、流行時の実際の死者数と比較する。
超過死亡が存在するということは、何らかの感染症の流行がなければ、死亡者の増加が説明できないことを意味する。つまり感染症の流行の度合いが測れることになる。これを新型コロナウイルスにも応用しているのだ。
米国エール大学公衆衛生大学院の研究者たちが、米疾病対策センター(CDC)の統計データをもとに超過死亡を推計したところ、
>3月1日から4月4日の間に約1万5000人が新型コロナウイルス感染とは診断されずに亡くなっていた。この期間に新型コロナウイルスによる死者は約8000人だから、約2倍だ。これは感染が深刻だったニューヨーク州とニュージャージー州で顕著だった。
日本も例外ではない。
国立感染症研究所によると、第8〜13週にかけて、東京ではベースラインと比較して、1週間あたり50〜60人程度の超過死亡が確認されている。これは2月16~22日の週から3月22~28日の週に相当する。
実は、この時期に、韓国も台湾も感染のピークを迎えていた。
>ところが、厚労省は、この時期は感染を完全に抑え込むことに成功していたと説明している。現在も、この主張を変えていない。←W.クラスター対策と医療崩壊阻止(37,5度発熱4日間自宅様子見)に2大目標に沿ってコロナ対策は推し進められた。
W.超過死亡の図は前掲済
W.ミステリアスな展開になってきた。
↓
「前述したように、日本では3月24日に東京オリンピックの延期が決まり、それ以降、PCR検査数が増加する。それに伴い患者数が増える。4月7日に緊急事態宣言が発出されるが、3月29日~4月4日の週には超過死亡は消滅している。国立感染症研究所は、それ以降の超過死亡についてのデータを公表していないが、ここまではPCR検査数が示す感染者数の動向とまったく異なる。」←W.PCR陽性判明まで10日推移を見積もると、公式陽性者数と市中のリアル感染状況の間には、10日ほどのタイムラグが生じている。
>W。その点、死亡はその日の揺るがない判定。基準数値よりもオーバーしていればインフルエンザ以外の何らかの流行性疾患による異常死と判断できる。
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>実際の死者数と、氷山の一角しか診断しないPCR検査数、いずれが推計として相応しいかは議論の余地はない。←W.PCR検査による陽性確定までのタイムラグも大きすぎる(10日以上のズレ)。この点から言っても、第一波は3月下旬から4月頭までで終了。
4,77都府県緊急事態宣言のときは感染急増は治まる傾向にあった!
まして、4,13全国緊急事態宣言以降はリアル感染状況の低下傾向ははっきりしていた。
結局、母数の数があまりにも少なすぎて、感染実態がグレイゾーンになっているからか<解っていてやらないから>感染のリアルな傾向を見過ごすことができるのだろう。
Wの体調異変は3月12日(記録済み)。
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英医学誌「ランセット」は、5月2日に「COVID-19:毎週の超過死のリアルタイム監視の必要性」という論文を掲載している。「リアルタイム」で迅速かつ定期的に評価することを求めている。残念なことだが、日本のメディアで超過死亡の問題を大きく扱ったところはない。
一方、大阪や神戸の超過死亡の有無については、現時点では評価不能だ。大阪は第9週までのデータしか公開されていないし、神戸に至ってはデータが開示されていない。
先ほど、エール大学公衆衛生大学院の研究者がCDCのデータを用いて超過死亡を推定したことを紹介した。日本でCDCの役割を担うのは国立感染症研究所だが、データ開示については消極的だ。
第二波にはスウェーデン方式で(W。ロックダウンとスウェーデン方式(高負担、高福祉モデル)は欧米流。台湾や韓国のような分裂国家方式は、日本にどの程度適応できるのか。ただし、IT技術の社会化はそれらの国より遅れている)
新型コロナウイルスの流行は長期化するだろう。米ミネソタ大学の研究者たちは、流行は1年半から2年間は続くだろうと予想している。
第一波では多くの国が都市を封鎖した(ロックダウン)。
現在検証が進んでいるが、その効果には否定的な意見もある。米「ウォール・ストリート・ジャーナル」は4月27日に「都市封鎖の効果、データは否定的」というサイプレス・セミコンダクター社CEOのT.J.ロジャース氏のオピニオンを掲載した。
この記事では、人口当たりの死者数と都市封鎖までの関係が調べられているが、明らかな相関はなかった。
>著者たちは、死亡率ともっとも相関したのは人口密度で、
>ニューヨーク州は都市封鎖によって恩恵を受けたかもしれないが、
>人口密度の低いウィスコンシン州では影響はなかったと議論している。
*W。同じニューヨーク州でも郊外と街中では違いがある。市内でも所得格差によって死亡率に大きな違いが発生している。上氏にはこの観点からの指摘はない。
*また、自宅待機をする人の生活を維持するために感染の危険を覚悟して働く人々も多くいる。ライフライン、準ライフライン。日常生活のハードな再生産にはどのような職業が大事なのかはっきりした。テレワークのできる職業、休業する業態はソフトラインに属する職業である。
*安全地帯。非安全地帯。危険地帯。に感染危険度を区分けすると、非安全地帯、危険地帯を承知で生活労働する人たちが膨大に存在する。
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引用に戻る
「感染が終息するには人口の6〜7割が免疫を獲得するしかない。←W.今の日本でこれを言えば、集団免疫獲得容認の社会基盤、社会保障にかけているのだから20世紀以前の適者生存のダーウィニズムに陥る。日本はコロナ対策を区切りとして中進国、途上国タイプに移行しつつある、といえるだろう。
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W。以下は予言と受け止める。実際に日本政府もその方向に動いているし、市中の動向もそれに合わせている。
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もっとも安全なのはワクチンを接種することだ。しかしながら、ワクチン開発には時間がかかる。第二波の対策では、ワクチン開発を急ぎながら、集団免疫戦略を推し進めることになるだろう。そして、都市封鎖は必要最小限に留めることになるだろう。
これは、第一波でのスウェーデンのやり方に近い。
スウェーデンでは、高齢者にのみ自宅待機を要請し、それ以外の制限は課さなかった。一時期、高校や大学を休校としたが、小中学校は休校しなかった。50名以上の集会禁止、不要不急の旅行の禁止、小売店やショッピングモールへの入店者数の制限を課したものの、多くの店舗やレストランは閉鎖しなかった。ボルボの自動車工場は一時期閉鎖されたが、その後、再開された。
5月6日現在、スウェーデンで新型コロナウイルスと診断された感染者の死亡率は12.2%。厳しい都市封鎖を実施したフランス(19.3%)、英国(15.1%)、イタリア(13.7%)より低い。今後、超過死亡のデータを用いた再検証が必要だが、第一波で抗体保有率が25%に到達したことは特筆に値する。新型コロナウイルスと上手く付き合ったことになるのではないか。
日本では、いまだに「接触の8割減」を主張する専門家が多いが、果たして、このやり方でいいのだろうか。第一波の経験を踏まえ、もっとメリハリの効いた対応が必要ではないのか。
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W.国民の自覚を頼みにするスウェーデン方式を日本で唱えると、今までの政府のコロナ対策に対して免罪符を与えることになる。日本とスウェーデンでは歴史文化、地政学的な立ち位置、公共福祉政策など政治的土壌が違いすぎる。政治的音痴は駄目だ。上氏は同じフォーブスの別の記事で、北欧の高負担,高福祉政策を日本と比べて、国民の政府への信頼感の如何、歴史性の違い、としているが、要は政府が所得の再分配を意図的にやるかどうかの問題に尽きる。日本政府と当局は経済成長、企業拡大とのバーターの賃金上昇によって、結果的に国民の生活、社会保障を行ってきただけであり、徴税ー所得の再分配のシステムを確立したことは今までなかった。
緊急事態であるコロナ対策一つとってみても、何もやらなさ加減はアメリカとおなじだ。コレは今後の自民党らの政治方向を指し示している。こんな方式で政権を握ったまま乗り切ったら、平時は国民に目に見えない形でもっと自主規制を求めても良いということになる。
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引用文に戻る。
「抗体検査や超過死亡の結果も踏まえて、日本での流行状況を再評価し、いかに経済活動を継続させながら、死者を減らすための戦略を見直すべき時期にきている。」
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W。反俗日記のコロナ対策政府、当局批判の根幹には、大量検査をすることが、大事を前にして、その実態を多くの人に知らしめ、人々は(情報)を得て判断を下し、行動する。コレが民主政の必須事項であるという理念があり、政府当局のやり方はその真逆を行くものであるという、想いがある。
上氏が今後の方向として進めるスウェーデンは感染実態に近づく適切な検査をして国民に情報を与えて国民過半が納得づくの独自の感染防止政策が実施されているのだと思う。
上氏の本文の主張は、とどのつまり、今までのPCR検査の圧倒的な不足をそのままにして、超過死亡率、PCR検査進捗具合の遅れ改善無し(検査拡充の予算が少なすぎる)、パンデミック状況のコロナ毒性などの要因から、漠然と日本では何はともあれ圧倒的な第1波感染急増状況はやり過ごした、重篤者や死亡者と抗体検査から得られる圧倒的な市中感染者の比率から、今後の基本方針としては重篤者を守り、集団免疫を獲得することしか方途はない、というものである。
それは専門家会議などが言う持久戦、その実態は膨大な身体的物的犠牲は放置し、我が身を守る基本姿勢に上書きしていることになる。
さらに上氏の本文中の主張の視点に立てば、そもそも4,67都府県緊急事態宣言まして、4,13全国宣言以前に市中のリアル感染激増の第1波は自然にやり過ごされていたのだから、宣言は必要でなかった、と結論できる。
スウェーデン方式の勧めは高負担高福祉なき、自粛補償なき、今後も続く政府当局の日本方式にズルズルと飲み込まれていく道である。