対話者 孫崎 享 「ATプラス」16号 2013年5月
新自由主義の不思議
白井:アベノミクスは~長期的にはうまくいかないと思います。
短期的に資産バブルに帰結する可能性が高いでしょう。そうなると資産を持っている人は得をします。持っていない人はその逆です。
>みんな自分の利害が解らなくなっている。コレは新自由主義全般に言えることだと思います。
の定義によれば、新自由主義というのは資本家階級からの労働者階級に対する階級闘争です。ですから大部分のヒトは資本家ではないので、新自由主義が支配的になれば損をするに決まっている。
階級の視点から見ると、新自由主義というのはブルジョアジーの、それも上層部のイデオロギーです。そうした人々が新自由主義の本来の階級的基盤なんですが、実際の社会的基盤はもっと下へ広くなっているわけです。
しかし、ヨーロッパやアメリカでは、いい加減このカラクリにみんなが気付き始めています。ですから「新自由主義いい加減にしろ」という大衆的な覚醒が起きているわけですが日本ではまだこうした声はあまりに小さいように思います。
孫崎
「菊と刀」では日本人というのはまじめだけれど地図は描けない国民だといわれていましたね。
戦後のなってマッカーサーは、日本は所詮奴隷国だというわけです。だからアメリカは奴隷の扱い方を心得ているんですよ。主人の都合の良い形を奴隷に与え、かつ奴隷が満足する形で使っていく。
白井
結局、大日本帝国憲法の体制で作り上げることができた国民レベルはその程度だったということなのでしょう。
>戦前の天皇制の権力の二重性、つまりエリートにとってはお飾りの立憲君主制で、
>一般庶民にとっては神同然の絶対君主として現れるということに支えられた統治の構造が戦後でが敗戦の受け止め方を核として受け継がれてきました。
@一般庶民にとっては敗戦じゃなくて終戦だったと言おう歴史認識が刷り込まれてる一方、
@統治エリート層は敗戦をどこまでも深く内面化する。
なぜなら彼らは敗戦の責任を取ることをアメリカの助けによって免れることができたのだから、その恩を永久に忘れるわけにはいかないからです。
この構造こそが戦後の国体であり、壊さなければいけないと『永続敗戦論』で書きました。
それは何のためかというと主体性を作り替えるということです。国民全体のレベルアップをしなくてはいけない。
~~
例えば僕の師匠である加藤哲郎専制は象徴天皇制が戦中からアメリカの情報機関の中でどのように立案されていったのかということを検証しています。
>ポイントは米国公文書の機密解除です
それを見れば日本の戦後が一体どのようにできてきたのかということがわかる。むしろそこを見ないとわからない。
僕ぐらい、もしくは下の世代の研究者がこれからどんどんそうした方向に向かっていくということになれば戦後史のみとり地図が大きく変わっていくかのせいがあると思います。
日本のナショナリズム
白井
親米保守という戦後ナショナリズムの本流がそもそも実に転倒した成り立ちをしています。
保守のくせに米国が大好きで、その顔色ばかりうかがっている連中が「我こそが愛国者なり」と名乗ることがまかり通て来たわけです。
>この奇怪な構造は「戦前なるもの」がアメリカの力の介在によって存続することが許されたという歴史的経緯を考えれば、誠に必然ではあるのですが、その結果、「そんな姿勢はもうやめようよ」というナショナリズムの観点からすれば、まったく仏のの主張が売国奴だなど~。
戦後日本のナショナリズムにおいては、愛国者が売国奴と呼ばれ売国奴が愛国者と呼ばれる。
~
今の日本社会には、ナショナリズムの不足とその過剰の両方によって苦しんでいる。
ナショナリズムは非常に暴力的なものになる危険性がある一方で、一部の金持ちや外国の手先に動かされる政府じゃなくて国民の総意を反映する政府を作るんだ~
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対話者 水野和夫 - Wikipedia『KOTOBA』集英社社クォータリー 2014年春号
資本主義の終わりの始まり W?自動崩壊説
水野
国債利回り2%以下が16年続く日本を筆頭に、①先進国で超低金利状態が続いています。金利はほぼ利潤率と一致しますから、超低金利というのは、資本を投下しても利潤を得ることができないという状況です。
②資本を増殖させることが資本主義の本質ですから、つまりこの超低金利状態から抜け出せないということは、資本主義の終焉を意味するのです。
~資本主義とともに発展してきた国家や民主主義といったものも、大転換期を迎えているのではないか。
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W参考資料①。
3度目の「超景気」到来なるか⁉ 景気循環で読み解く日本経済 | 富裕層向け資産防衛メディア | 幻冬舎ゴールドオンライン
2020.5.28
引用
金利の動きは「公定歩合の推移」から把握できる W。当たり前なんだけど。
1925年(大正14年)は、戦前期の日本における大きな転換点となった年である。日本は当時、日英同盟を結んでいたことから、第一次大戦においては英国側についたが、実質的にほとんど参戦する必要がなく、戦争の被害を受けなかった。
そればかりではなく、大戦で欧州全土が戦場になったことから、日本企業には多数の受注が舞い込み、空前の戦争特需となった。
1925年は、後に軍国主義の代名詞ともなった治安維持法が成立した年でもある。この年は、豊かで平和な大正時代から、暗黒の昭和へと進む、まさに中間地点であった。←W。通俗的で間違った歴史観。庶民生活現場の視点が全くない。普通選挙法成立と治安維持法。以降政党政治が台頭。1929世界恐慌後の高橋是清金融財政膨張政策と満州国成立軍事膨張(国際連盟脱退)=国内好景気持続、大陸戦線拡大とともに民間物資欠乏感がでてくる。
1980年もまさに時代の転換点といってよい。
日本はプラザ合意をきっかけにバブル経済へと突入し、日経平均株価は4万円を窺う状況となった。まさに戦前の大正期と同じような好景気を享受したが、その後、バブルは崩壊。25年にわたる長期不況がスタートすることになる。←W。長期不況ではない。この状態は突出した異常な経済成長の内外要因が取り払われたことによってノーマルスタンダードに回帰したのである。歴史的視点から戦前戦後の日本経済の継続性に注目すると、日本経済の低成長の必然性がよくわかる。
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引用に戻る
「あくまで結果論かもしれないが、金利の推移は、日本経済の長期的な転換点を見事に反映していたことになる。」
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>図表2は日本株の推移とコンドラチェフ・サイクルを比較したチャートである。コンドラチェフ波動 | 金融・証券用語解説集 | 大和証券
引用
「景気はこれまで、画期的なイノベーション(技術革新)をけん引役として拡大し、やがて縮小局面へと大きく循環してきたという考え方」
「蒸気機関、紡績」、次が「鉄鋼、鉄道」、第3波が「化学、電気、自動車」、第4波が「エレクトロニクス、原子力、航空宇宙」で、第5波を「コンピューターを基盤としたデジタル技術、バイオテクノロジー」ライフサイエンス、人工知能、ロボット」がけん引する第5波
イノベーションは、「環境」「食料」「エネルギー」「高齢化」
日本の株式市場は、歴史的に見て、極めて大きな2つのバブルで構成されている。ひとつは第一次大戦特需による戦前のバブル経済、もうひとつは1980年代のいわゆるバブル経済である。
日本経済は現在「景気循環」の底に位置している
金利から導き出したコンドラチェフ・サイクルは多少のズレはあるものの、株価の動きとも一致している。日本は太平洋戦争の敗北によって、経済や財政が破たんするという経験をしている。終戦の前後において、コンドラチェフ・サイクルが大きな底になっているという事実も非常に興味深い。←W。このヒト。どこか間が抜けているな。当たり前のことに関心出来る才能がある。
もし、このコンドラチェフ・サイクルが継続しているのだとすると、現在の日本経済はちょうどサイクルの底に位置していることになる。
W⇒?順当に解釈すれば、日本の金利はこれから、徐々に上昇を開始し、それに伴って株価も上がっていくというシナリオが予想される。←W。文系頭脳が欠如している。
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wacwac
先進国本国のファンダメンタルズにおいて、国内民間投資によって、低利潤率しか見込めないから、利回りの低い国債需要が維持できている。言い換えると、国債利回りの上昇は危機的状況といえる。
②について。
日本の大企業500社のうち半分ほどはほぼ無借金経営。内部留保額膨大。
剰余価値が追加資本投資に向かっていない、という特殊現象が続いている。企業そのものが後ろ向きの経営姿勢であり、偶に積極経営する旧知の大企業の巨大M&Aは大失敗~東芝、武田薬品工業の6兆円イギリス製薬会社買収も体験な事態を招いている。
①②の環境の置いてアベノミクスが発動されたが、国内投資は動かなかった。
>それならばと財政膨張政策という順序に単純化されるが、総付加価値を大きくする経済政策を回避した本末転倒、一時的な水膨れを呼ぶだけに終わり、日本の経済力衰退の大きな一里塚となるだろう。
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W参考資料」①
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W参考資料②
https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=64888?site=nli
国債大増発、長期金利への影響は?
引用
「日銀が許容できる長期金利の上昇余地は殆どないとみられる。
その理由は実質金利(名目金利-予想物価上昇率)の上昇だ。
日銀は従来、実質金利の押し下げを通じて需給ギャップを改善させることを物価目標達成の主要経路と位置付けてきた。←W。グローバル市場における後発国からの供給力過多に対して国内需要が過少になる現象を一国の中銀の政策で何とかしようなどというのは無理筋。あきらめた方が良い。政府による保護貿易しかない。
しかしながら、今年に入ってからは新型コロナの拡大を受けて需給ギャップが縮小し、4-6月期にはマイナス転落が必至の情勢になっている。一方で実質金利(10年)は上昇が顕著になっており、足元ではプラス圏に浮上している。名目金利(長期金利)は小動きに留まっているものの、新型コロナの拡大に伴う景気の失速と原油価格下落を受けて市場の予想物価上昇率(ブレークイーブン・インフレ率)が大きく低下したためだ。」
引用
「予想物価上昇率の動きは原油価格の動向などにも左右されるため不確実性が高いものの、今後も感染抑制策や自粛ムードが制約となって景気のV字回復が見込み難いため、当面、大幅に持ち直す可能性は低い。
予想物価上昇率が低迷を続ける中で名目金利の上昇を認めてしまえば、実質金利が一段と上昇して景気回復の逆風となるうえ、需給ギャップの悪化を通じて物価下落に拍車がかかりかねない。日銀としては、こうした事態は避けたいはずだ。」
「 また、日銀が長期金利の上昇を許容することは市場に悪影響を与えるリスクもある。金利上昇の許容が「金融緩和姿勢の後退」と受け止められて円高が進むリスクがあるほか、金利が上昇することで抑え込んできた財政や国債需給への懸念が喚起され、市場の不安定化に繋がる恐れもある。」
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白井 W。以下は日本資本主義に当てはまる。米国にはGAFAがあるが日本には何もない!
資本主義にはどうしてもフロンティアが必要である。中心がフロンティアを広げながら利潤率を高め、資本の自己増殖を推進していくものだと。しかしグローバル化が進んで地理的な意味でのフロンティアは消滅し、バーチャルな「電子金融空間」でも利潤を上げることができなくなった。
>もう外部に利潤を上げるフロンティアはなく、内部でフロンティアを創るしかない。
@つまり国内の国民から巻き上げていくしかない。
水野
日本でもアメリカでも、景気が回復しても労働者の賃金は増えず、中間層の没落ということが明らかになってきました。
そして中間層が没落すると、国民の同志手製が失われるので、民主主義が成り立たなくなるのではないかと思うのです。
白井
水野さんの民主主義の定義はカール・シュミット - Wikipedia
を参考にしていると思います。
水野さんはそれを経済的な同質性と読んでいる。
昨今熟議民主主義の議論が盛んですが、最低限の同質性がなければ成り立ちようがないことを示唆する議論です。
水野
原題のグローバル資本主義は中間層を没落させるという意味で、どんどん粗暴になってきています。資本主義の退化ともいえる現象です。
国王の結託した形の資本主義、16世紀当たりの資本主義の姿に先祖がえりを起こしているのです。
白井
国家がなぜ多額の借金をすることができるかといえば、徴税権があるからです。
いうまでもなく、税金は国民の労働を源泉としています。
つまり国家は国民の労働を担保に借金をしている。
しかし一方で、もうお荷物だから、国民の面倒は見たくない。働くだけ働かせて面倒は見ない。
つまるところ、国家の借金は国民の借金であり、国民の未来の労働が借金のかたに取られたということです。
今や国民は債務奴隷なのです。
W。巨大に底上げされた世界的な架空資本の処理の仕方は結局、国民国家の徴税権や金融財政政策に頼るしかない、というグローバル資本制と金融寡頭制の新自由主義に乗っ取られた国民国家の政治矛盾。
白井
資本主義というのは奴隷制や身分性を否定して、自由な主体として人々が労働や生産をするとことから始まったのに、何と資本主義の感性は、奴隷制の権勢に帰着しつつある。現代はそういう状況にあるのじゃないかと認識しています。
中間層が微つらくするとファシズムが台頭する
白井
中間層が没落し、同質性が壊されていく。
同質性が壊れたところで無理やり民主主義をやろうとするとファシズムになるんだと思うんです。
水野
同質性のない人々を束ねるためには、ファシズムが台頭してこざる得ないと。
白井
ハイ、だれかを排除する身振りによって同質性を捏造するのです。
定常状態が豊かさを取り戻す道
続く