反俗日記

多方面のジャンルについて探求する。

第一回。「高齢者向け宅配弁当」の必要に迫らたので事情を調べてみた。大別し<冷凍>配達と<冷蔵>配達の2種類の業態。前者は産直冷凍パック、運輸業者まとめ個人宅配。後者は新聞全国末端配達店網のような超労働集約物流業態。故に収益を確保しようとすれば調理工場を全国一か所にまとめ<冷蔵>長距離輸送の店舗分配の必要があり、当然味と鮮度は落ちる。

 今は関係していないがある団体の会員になっていた頃、中心人物の一人が高齢者向けの宅配弁当を配っていると知って事情を聴いてみると、最低賃金を少し下回る時給しか出ていないという。配達時間は1時間をオーバーすると思われるので、冗談で労基法違反ちがうの?といっておいた。

 しばらくして、その弁当を見守りケアの相手にとってみることにした。手間を取らせてはいけないので配達順路で待ち構えていて、受け取り早速夕食に出してみた、ところ、即座に「コレは食べられない」と拒絶された。その日のメニューはとんかつがメインだった。見た目も貧弱なとんかつと脇にはキャベツのみじん切り、その他はあったのかなかったのか忘れるほど、申し訳程度の品だった。内心、これでは日ごろの食習慣から食えないだろうと思っていたが、今日は偶々、こういうメニューだったが以降はいいメニューが揃っているよと一々読み上げて説明したが聴いてもらえなかった。

 

 高齢者向け宅配弁当に拘るのも多少、訳があった。

2000年初頭、ある車いすのヒトはデイサービスで昼食を済ませるが、夕食は宅配弁当を取っていた。木製の勉強机のような机に車いすを寄せて机上に四角の大きな宅配弁当、足元には地方の銘酒の一升瓶。マグカップになみなみとうまい酒を注いで宅配弁当を酒の肴にやるのが一日の楽しみにしていた。その宅配弁当はなかなか豪勢だった。「すごいものくっているねぇ~」。「少し高いものを注文しているんだよ」と本人は云った。バラエティーに富んだ品は酒の肴にはもってこいだ。メインもがっつりしている。残りのおかずでご飯も食べられる。家庭料理でこういうモノを用意しようとすれば相当な手間とカネがかかる。

 以来、高齢者宅配弁当といえば、少し奮発すればいいものが食えると想いが刷り込まれた。

所があれは一時代も二時代も昔のこと。新規参入しヒトモノカネを全国規模で集中投下する収益追求型の企業が短期間に市場占有率を高め、ビジネスモデルを確立すると従来の地域企業の経営は成り立たなくなった(ワタミの宅配は熊本県の宅配業者を買収し立ち上げられた)。

先に紹介したある団体関連の配食弁当システムも顧客がすくなく広範囲で分散しているので新規参入した企業のサービス内容や労働条件に見劣る結果になった。

酒の肴の豪勢な宅配弁当も今は前の価格帯では手に入らない、とおもう。

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     余談、書き記しておくこと。

 ちなみに、車いす一升瓶の彼は脳出血で倒れたとき、偶々救急搬送された病院がその道では全国有数の手術数を誇る有名病院だったせいか、一命をとりとめたが本人曰く、後遺症で頭痛するといっては、飲酒と鎮痛剤を両用してよくらりっては、周囲をやきもきさせていたが不思議な魅力のある人だった。

術後視力が極端に落ちてTVをつけていたも画面が見えないといっていた。

座頭市のような雰囲気のある人だった。頭が良くて感がさえていた。顔を背けてジッと空間を見つめながら、相手のことを推し量っているような気配を漂わせていた。身体障碍者になって特別な感性が立ち上がる人もいるのだ。

車いす生活をおくっていても向こう意気の強さは堅持していた。それでも憎めないところがあった。妙にしおらしいときもある。「ありがとう」とはっきり口にできた。

 このヒトは目がよく見えないので机上の灰皿で煙草を消せないのが度重なってある時ぼやを起こし、アパートを追いだされ、今度は施設に入った。

一度だけ訪ねていった入所先は中規模の新築分譲マンション一角に設けられたグループホームだった。広いテーブルとキッチン、周囲に7~8部屋の個室が設置され、半分ほどしか埋まっていなかった。料理を作るという世話役の女性は元小料理屋の経営者で癖のない性格のヒトでまさにピッタリはまり役だと思った。介護責任者がどういうコネを使って入所させたのか知らないが、15年ほど前にはそういう最終の処遇ができた。

 

 知っているアルコール依存で死んだヒトは違った。

向こう意気の強さだけのまま死を迎えた。ある程度根回しの結果入った病院を飛び出して自宅に帰り、しばらくした日に部屋を出て階下の喫茶店の前に座り込んでいた。顔は末期肝臓疾患で黒ずみ、眼は黄ばんでいた。一種の狂気、むき出しのまま搬送先の病院で死んだ。一つの死にざまとして記憶に残っている。価値判断の入り込む余地のない、人間的事実だった。「酒に人生をかける」といっていたが何がそう言わしめるのか今でも想像できないが、どう生きようと何をしようと人性に意味はない。だから自由なのだ。

 今から思うとあの頃は周りが動けば、制度側にも動きがあった。今はやり過ごされるか、押し出される。

 

 横道、それ序に書き記しておくと、「座頭市」の介護責任者の死を最近知った。

事業所は規模を縮小し奥に引っ込んだ。

助けてもらいたくて電話したところ、去年死にました、と簡単に言われた。

「ガンか何かですか?」「複雑な病気で死にました」それ以上問う立場になかったのでやめたが今でもその死の事情を知りたい。

介護の世界で(知っている限り)最後まで責任を負うしごとをしていた。そういう仕事ぶりのヒトは希少だ。負荷がかかっていたのだと思う。もっとも介護の世界で仕事をするヒトではなかったが。   付録終了

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それもあって、知り合いの宅配弁当の蓋を開けたときは、愕然とした。いったいこれはなんだ、と。たぶん、見守りケアの相手よりも自分の方がびっくりしたのではないか

 それからしばらくして、高齢者宅配弁当へのこだわりが捨て切れなくて、自分でほかの業者のものを取ってみることにした。

その名を「まごころ弁当」という。近所でネームいりの特性荷物箱を取り付けたバイクにたまにお目にかかる。

 試食だけだったのか、1週間ぐらい取ったのか忘れた。

あきれ果てた。猫のエサ程度のしろものだ。それしか感想は浮かばなかった。味がどうこう言う以前にとにかく量が少なすぎる。病院食の方がワンランク上だ。

こんなものをくっていたら気分が落ち込んでくる

もっとも自分の食習慣とかけ離れていることが最大の忌避感の原因だ。

食いたいものを充分に食う。バラエティーにも気を配る。ご飯はあまり食べない。

それがなんだ、このめしは。自由の束縛である。

空っぽの弁当箱の上に張り紙で、中止してください、と張り付けた。

 

 それからかなりして、見守りケアのヒトから古い近所の友達がワタミの宅配弁当」を採っているという話がでた瞬間、ピンときた。これを糸口に偏食気味のこのヒトのために「ワタミ弁当」を取ってもらおう。そのころ、ワタミの過労死などの労働問題が噴出した後だったので、その方面からも「ワタミべんとう」に引き寄せられた。いったいどういったものが来るのだろうか。「一緒に取ろう!」

という訳で、まごころ弁当に懲りずに、怖いもの見たさも手伝ってワタミ弁当を取ることにした。

 配達の初日、配達人は「イロイロと問題を起こしていますが」などと当方が何も聞かないのに唐突にその方面の話を切り出したが、その話をこれ以上深入りさせないつもりで「そうみたいですねぇ~」と興味なさそうに返答した。

というのも、配達人の風情は、その方面の問題点に関して、何となく自分と意見が一致しているように思えたから、それ以上何を話せばいいのだという感じたった。

見守りケアのヒトとは何度か、配達人について話題が出た。いわゆるジェントルマンなのである。いろんなことをよく知っている人という感じがどことなくにじみ出ていた。ヘルパーの講習会に通っているといっていた。請求書と領収書を区別できないボケている人の対応も控えめでキチンとしている。

 ただ一つ配達に難点がある。朝が早すぎる。7時過ぎに弁当を持ってくる。戸外に置くことができるが、集金もこの時間帯になる。

今、高齢者宅配弁当について調べ切ったので、その事情は解る。

早朝配達後、自分の本業に就いている。

あるいは、あまりにも請負配達箇所が多すぎて、早朝から配らなければならない事情がある。

 肝心のワタミ弁当の中身。

まごころ弁当がネコのエサならば、ワタミ弁当は完全に人間の食い物の領域

上手いまずい、など諸々の評価基準の対象になり得る

しかし慣れてしまえば、同じ調理、素材パターンの繰り返しだとわかる。

味が食材にしゅみていない。濃い味のごまかしがきかないので決定的な欠陥である。

大きな調理容器で大量の食材を短い時間で処理すればこういうことになる。どのような手練手管を駆使しようとも所詮、調理の法則には逆らえない。食材の量と調理容器の大きさのマッチングは味を食材に行渡らせる決め手になる。

ただし、長距離<冷蔵>配食弁当配送の手順を踏まなければならない、宅配弁当業態長距離郵送途中の味の浸透具合は調節できない調理した時点で味が食材にしみ込んでしまうと、食する時点でぐちゃぐちゃになるから、中途半端な状態でやめているのではないか。

<冷凍>配食弁当の業態では上記の欠陥がいくらか回避できる

味が良いといわれているのは冷凍配食弁当の手法を取っている会社である。6食分ぐらい一編に宅配業者が送ってきて、解凍して食べていく。クレカ決済も効く。<冷蔵>業者は口座引き落としなので手続きの手間と日数がかかる。安否確認兼用などとしているが、商品手渡し、まとめて代金現金支払い、や口座引き落としがフランチャイズ各加盟店舗?(法人ではない)の独立採算制、対人密着方式に基本的に都合が良いのでその派生事項として謳っているだけじゃないのか。

 だったら、冷蔵弁当の業者は近場で食材調理をしたほうがよさそうなものだが、そうはいかない。

この業種は基本的に労働集約産業であり、労働力商品の経費節減には限界がある。調理品種は多種に及び、大量生産できる生産設備にも限界がある。

以上の条件下では、一か所に大きな調理工場を集中し各食材調理に対応力のある生産設備を開発し生産性を高め、収益をアップするしかない

例えば、まごころ弁当。群馬県の工場以外に工場を持っているという情報はない

多分ここから、冷蔵された商品が全国配送拠点に輸送され、そこから各地域の配送所に転送されているフランチャイズ制の地域末端配送所(コンビニ各店舗よりも超単純作業)は段ボール箱に入った商品を容器(使い捨てではない)に分配するだけだ

どちらかといえば、新聞配達店舗とよく似ている業態である

そもそも、普通にやっていれば、大きな利益の出ない業態である何事かの荒業が必要になるが、堅実に儲かる業態であるのは、複数の会社の報告で確認できる

 ワタミ弁当を止めたのは、自分の取っては元々その必要は全くなかったということ。正直に言えば、割に合わない。2か月取ってやめた。見守りケアのヒトにはその必要性を説き続けたが、かわいそうになってきて止めようといった。わざわざ窮屈な思いをすることはない。食いたいものが食える人はその幸せを満喫すべきである。

それに1食だけだと、物足りないので結局、今までとあまり大きく変わらないほど外に買いに行くので、不経済。食料の供給源がスーパーと配食の二つに分かれているのは輸送費が掛かっている分だけ結局不経済ということだ。

 

 ところがいま、再び高齢者宅配弁当の必要に迫れれてきた。

理屈はさて置き、もう一度、宅配弁当を取ってもらった方が、見守りケアをやり易くなると考えた。

そして徹底的に調べた。

ベテランのヘルパーさんに「どこがいいですか」と聞いたのは、簡単に言えば、クチコミみたいな調子で教えてほしかっただけだった。

「ケアマネさんに聴いたら」という。

クチコミレベルの情報でよいのだ。

とりあえず、話をする前に調べてみると、もうほとんどこの業界の全貌が解ってしまった感がする。

>調べていた当初、まごころ弁当配食ふれ愛を立ち入って調べていると、こんがらかってきた。会社の概略を筆記メモするとすぐわかった

>両者は同じシルバーライフという運営会社が二手に分かれて運営するフランチャイズシステムだった

>その理由は代表者自ら語っている。要するに市場占有率を高めるために二手に分かれて、市場新参者の参入障壁を高め、同じ業態で先行しビジネスモデルを確立した同格他社を蹴落として、経営の管制高地を獲得し、収益率を高めたいのだ。

>ネットのコメントを見ると、この事実さえ知らないものが多数ある。つまり二つのフランチャイズの運営元の思う壺にはまっているのだ。

事実を重んじるWは近在の一方に何度電話しても繋がらなかった。前まで出向いて外景を確認した。配車バイク1台の荷台ネーム無し。とりあえず場所だけ確保しているといった状況丸出しだった。もう一方の方も航空写真ではうらぶれた駐車場に多くの配車が並んでいる。

要するに両者とも日々の仕事に追われ、安否確認などと云うきめ細かいレベルに配達員が対応できる状況にないと見て取れる。新聞配達店の方がもっと小奇麗だ。もっとも大きくは伝統的な制度の規制に守られた新聞業界と新しい制度の業界の差はあるが。

                時間不足で今回を第一回とする

>次回は調べ上げた事項を具体的に並べていく。