反俗日記

多方面のジャンルについて探求する。

ドイツ統一の脅威から、91年EU通貨統合合意へ。英ポンド不参加の独仏主導の2012年財政規律強化の新条約合意へ。国内域内、経済停滞から脱出不可能な先進国支配層は金融寡頭支配強化によって国民収奪。

 以前、世界的ベストセラー「帝国」の著者、アントニオ、ネグリの故郷で、長靴の様な恰好をしたイタリアの踵の部分の経済的繁栄を知った時、自分の知っている(勿論知識だけ)イタリアとはずいぶん様変わりしているなと想った。
 
あの辺りは南イタリアの典型的な貧困地帯だったはずで、そこで若いころのネグリ共産党の地道な活動家だった。
 処がそこにリゾートホテルなどが林立して、リゾート地として繁盛しているという。
 
オカシイな。そんなはずはないんだが、当時、不思議な気がした。
 
ベルルスコーニと云う粗野な支配層丸出しのメディア王が首相になっている。
逆に、かつてはユーロコミュニズムの最大の党で、国政選挙では20%程の投票率を誇っていたイタリア共産党は冷戦体制の崩壊を受けて、分裂し、急激に支持率を低下させている。今は国政に影響力失っている。
 
 ヨーロッパでは急激に変化が起こっていると。
 
 スペインも経済成長の軌道に乗っているばかりか、あの牧歌的アイルランドは、投資最適国になっているという。
 
 要するに、EU共通通貨実施によって、ヨーロッパ金融中枢に溜まっていた過剰資金と、アラブなどの世界の過剰資金が、国境と云う垣根をとっぱわれて、高利潤を求めてなだれ込んでいると。
 
 こうした地域への投資は中国、ブラジル、インド、ロシアなどの資源人口土地などの開発余地の大きい市場への投資と異なり、当該地の市場の潜在的成長力には限界があり、やがて利潤率は急激に低下する、勿論投資する側も資本撤収を見込んで投資していく。
 
 一昔前のアジア金融危機に近い様相がいつかは出現する。
 
 そのいつかが、2007年の米国バブル崩壊まで引き延ばされてきた処が金融危機に見舞われた韓国などのアジア諸国の市場の脆弱性と大きく違うところだろう。
一応、先進地域EUの一部を形成し、ユーロの経済力が背景にある。
 
 しかし、同時に、ヨーロッパ金融資本は米国バブルにおいて、金融派生商品に大量投資していた訳で、これは、米国債を国際収支黒字によって、政府が大量に買い込んでいる日本中国韓国など東アジア諸国とも違って、生産力発展に裏打ちされていない、私的資本の投機行為であり、そのダメージは個別金融資本が受ける。
 
 今回のイギリス、ポンドを除く、EU26か国の2012年3月までと期限を区切った財政規律強化の条約締結合意の基本は、結局、1991年の通貨統合以来の長い年月をかけて、生産力に裏打ちされたドイツの経済的ヘゲモニーの台頭と、その主導権をそぎ落とそうとする各国との葛藤である。
 
 >が、この経済危機に際するEU内の加盟国家間の綱引きの向こう側に真実を見る。
 
通貨統合から、EU参加各国の財政規律と懲罰まで踏み込んだ、来年早々の条約締結はドイツ、フランスなどのEU北諸国多数派国民と、
経済危機にあるイタリア、ギリシャなど南諸国多数派国民、両者への権利はく奪、市場原理主義強制を通じた、ヨーロッパ金融寡頭支配強化をもたらす。
 
 EU北諸国国民は財政統合に近づく政策に踏み込むほどに、南のために負担をしなければならない。
南諸国は北の援助を受けるために、不況下の緊縮財政を強要される。
 
 が、元々歴史的に形成された諸国民が経済格差を乗り越え、犠牲を払う経済過程において、ヨーロッパ支配層は多数派国民と同じように犠牲を払うのだろうか?
北の国民への負担増、南の国民への不況下の緊縮財政の中で経済下部構造において進行する事態は余りにも明白。
 
 国境を終えてアジア、アメリカ大陸、アフリカまで触手を伸ばしたEU金融資本の国内不況を利用した資本体力の増強である。
 グローバル資本は国境を終えて世界中に展開できるが、国民はEUの檻の中に閉じ込められる。
 
 エマニュエルトッドの最新の政治思想であるヨーロッパの緩やかな保護貿易主義の提起が生まれてくる背景が今に至って良くわかる。
 
 目先のEU経済秩序ばかりに気を取られて、EU通貨主権放棄から、財政主権放棄問題まで踏み込む、意見は完ぺきな市場原理主義そのもの。
 
 そこまでやったら、EU域内で格差はますます、進展し、域内の需要はこう着する。
それでも良い、域外で金儲け、とするのが、EU金融寡頭支配者どもである。
 
やはり、市場原理主義は世界中同じ穴のムジナであった。
 
 >それに対して、不利益を受けるEU諸国国民はEU諸機関より、身近な国民国家政府への影響力を行使して、立ちあがっていくだろう。
 それが、EU参加国同士の対立になる。
 
 >通貨統合、金融政策の一致から、財政統合まで至ったら、近代史の幕開けから続いた国民国家の歴史は新たな画期的一ページを開くが、国民の抵抗が弱ければ、グローバル化した金融寡頭支配者はその道を歩むだろう。人間には人種、民族、国境はあるが、カネとモノに国境はない。
 
 >結局、そういう地平に至った、経過は次の通り。 
 
 >>冷戦体制崩壊後の超過大消費経済体質放任の米国一極を中心としたカネ、モノの流れの循環によって、先進国経済は慢性的過剰生産、過剰資本を解消してきた。
 
 通貨統合後のEU経済成長もその大枠に規定されたモノであり、EU南諸国への過剰資金流入も、その一部に過ぎない。
 
 >この米国の過剰消費を前提とした世界的な資金と商品の循環が、
何を持って破たん傾向に陥っているかと云う、見方の相違が肝心な事。
 
 >根本の法則的原因は冷戦体制崩壊後の世界資本主義の不均等発展の急速な進展だ。
ソ連東欧、中国と云う世界体制的規制要因が取っ払われると、総じて経済過程への政治介入が回避されていき、世界金融資本主義体制の法則的矛盾は満開する。
 
小沢一郎が良く云う「パンドラの箱が開かれた」
 
箱の中から出てきたモノは、人類が19世紀の資本主義勃興時に経験した資本制の怪物のもっと、深化した奴だ
 
 一応そうした法則的確認をして、
 
 便宜的に、二つの視点に分けたほうが解り易い。
 
 >その現代的怪物の尤も深化した奴、ウォール街金融資本の強欲、貧欲の天文学的信用拡大とその破たんの、見た目のグロテスクに目をくぎ付けにするか、
 
 ここに重点を置くと、バブル崩壊を契機にしたウォール街金融資本への様々な規制が可能であったのに、オバマはやらなかった、と云うできもしない政策に幻想を抱く。
 
あり得ない。
アメリGDPの半分近くは金融ビジネスによる、実体乏しい付加価値である。
ここに強力な規制を加えると、アメリカ経済はもっと停滞する。
政府保証、資金を突っ込んで、リーマンなどを見せしめ的に潰して、そのまま野放しである。
 
 アメリカは世界に大迷惑をかけ続ける金融怪物国家である。
しかもその金融の怪物は歴史的に弱っていく宿命にある。
 
>ブラジル、ロシア、インド、中国の様な潜在的経済力のある中進国の台頭による、カネ、モノの米国一極中心の循環の変化を真の原因とするか?
 
 アメリカが金融怪物国家になった直近の原因は冷戦体制崩壊後の<一時的一極支配を起点>とするモノカネのアメリカ中心の環流体制だった。
 
 前者は金融の技術的問題であり、破たんは不可避。絶え間ない海外からの追加資金流入を前提としなければ、庶民レベルを巻き込んだ信用拡大による住宅不動産投機はあり得ない。
 
 後者は世界史の大きな視野を含む視点である。
当然そこからは国、地域の戦略問題が導き出される。
 
>EU経済危機における独仏枢軸の財政規律、その懲罰まで踏み込んだ来年3月の条約締結は、弱体化するアメリカ金融怪物の世界まき散らす影響に対抗する究極の選択の大きな一歩である。
 
 ただ、その先の財政共通政策の枠組みに踏み込には各国民の国民国家政府への影響力を行使した強烈な抵抗が予想される。
 
 アメリカとの同盟関係をEU通貨統合時に優先しポンドを維持したイギリスが今回、27か国宣言に参加していないのは、間接的にアメリカの意向に踏まえた戦略的立場の表明である。
 
 しかし、アレコレやっても先進国内、域内の経済停滞は続く。
 
<<今目の前で行われているのは、国際色豊かな、ザワメキだが、真相は
国内、域内でもうこれ以上大きくならない、パイを支配層がどうやって制度的に確保しようかと云うサモシイ画策である。>>
これに尽きる。
 日本国内で今発生している政治的騒動もここに集約される。