反俗日記

多方面のジャンルについて探求する。

日銀、白川総裁の「グローバルインバランスと経常収支不均衡」仏、中銀誌、寄稿文邦訳の検討。圧巻は日本のバブル政策はブレントンウッズ体制(米英)による敗戦後、復活の日、西独への圧迫。日本の全面受け入れ。

 金融政策のテクニック面に属する事柄に関して<ど>、が三つぐらい重なる素人の自分がどうこう言う事はできない。
今から、金融政策の残された最後の手段である、通貨供給率をどの程度にしたらいいかなんてのは、その方面のテクノクラートの得ている情報や提出する選択肢を重要視するのは当然のことである。
キチンとできるだけリアルな情報を開示させ、複数の選択肢を提示させることが大切。
 
 テクノクラートに過ぎないもモノが情報を隠し、複数の政策選択肢の提示なき政策誘導をするのがいけない。政治家は彼らに政策決定まで事実上マル投げにして、それに沿って国民を懐柔したり、適当な利害調整をして事足れりとしてきた。
特に小泉政権以降、まともな国民各層間の利害調整さえやらなくなって、グローバル資本制に乗じた日本支配層の利益ばかりを擁護している傾向にある。
 
 この様な傾向に対して、広く国民の間から、生活に根差した反対の意見や対案が出現するのもまた当然の事態である。
ただそれら全部に一体どの程度、政策的な合理性が在るのだろうかと云う疑問が自分には絶えず、沸き起こってくる。
それで限界ある視点でも、それらを振いにかけねばならないと想っている。
(こちらの作業は対象に単純性が濃厚なので比較的やり易い)
 
 自分の基本立場は明快である。
動乱、混沌。多いに望むところであり、何が起こっても驚く事はない。それに相応しい手段と目的を持って、やるべき事をやるだけだ。
 
 が、そうした自分の基本的立場で他者を判断することはできるだけ避けたい。
だから、できるだけそうしたむき出しの見解を避けて、政策的合理性の立場から事態を分析していきたい。
以上が原理原則と区別された段階、現状を踏まえた対象分析の方法。
 
 
>>前述したすべての大枠を踏まえたうえで、現日銀白川総裁のフランス中央銀行誌への2011年の寄稿文翻訳を検討してみる。
 
まず、白川論文の表題に在る<経常収支不均衡>を指標とした<グローバル、不均衡>への財政金融政策面での当該国の長期のトレンドから大きくかい離した是正策は副作用が大きく、有効性を欠いた、
と云う指摘は文字通り、
<今だからこそ云える事>、
後だしジャンケンも甚だしい!
 
 また、日米構造協議からー小泉米国意見書マル飲みー、米バブル崩壊新興国急台頭ー大震災原発事故ー税と社会保障の一体改革と称した消費税増税法案ーTPP参加のここに至っては、
日独の経常収支黒字が問題とされた1985年プラザ合意や、その一層踏み込んだ実行を迫った1987年ルーブル合意の時代とは、
あまりにも時代状況が違い過ぎる。
 
 バブル崩壊後の日本経済の全般的低迷の現時点、さらには問題重層の現時点の我々に今更、
<日本の経験と称して>そんな事を云われても、なのだ。
フランスでの発表にしても、フランス人は、一応、2度にわたる世界戦争の戦勝国の一員、
2度に渡る新興経済国ドイツの世界市場へのチャレンジや、
日本の地域覇権追求からの大いなる挫折の過去は踏まえ、
どちらかと云えば、米英ブレントンウッズ体制の側に立っている。
 
 >さらには、EUと云う戦略的な枠組みからの立場や判断もある。
特に後者の立場からすれば、
1985年、1987年ブレントンウッズ体制側から、強烈な内政干渉に等しい内需拡大の具体的政策を突き付けられた時の、
日独双方の対応の仕方に、大きな差異があった、事を十分踏まえている。
 
 >日独の対応に差異について白川さんも、論文の中で指摘している。
「同じ経常収支黒字国であっても、ドイツの低金利政策は1年弱。日本は1986年から1989年まで丸々2年も継続している」
 
>白川さんが論文の中で今明らかにしたのは、米国主導の経常収支黒字是正のための対日政策要求は我々が通常、マスコミなどを通じて知らされている枠を大きくはみ出ていると云う所である。
 
>>内需拡大のための日本当局の採るべき政策の具体的中身、数値までリアルに指摘している。
 
日本当局としては、それをそっくりそのまま、実行しただけと今になって断言できる。
 
>>アカラサマナ部分を抜粋。
内需拡大は<消費者金融>及び<住宅市場の拡大>による措置を通じた民間消費、投資の増加に<焦点を合わせる>」
「円レートに適切な注意を払いつつ金融政策を弾力的に運用する」
 
プラザ合意ルーブル合意に追い打ちをかける様に
1989年から開始された日米構造協議では
「10念間で総額、430兆円の公共投資のプログラムの公約」をしている。
単純計算で1年40兆円。この時点での日本の税収は最高値を記録していても60数兆円。
今の税収40兆円弱、政府予算100兆円。
まさにバブル経済後半に油が注がれた感がある。
 
 >ただし、こういう、うかれ体質は高度成長発進以来の日本人の奥底に根付いたステレオタイプな経済幻想。
 
 その間に多くの日本人の現に目の前で経済成長をみているし、恩恵を受けた人も多い。
先の記事にコメントした成長論者の年齢は定かでないが、所得倍増ー高度成長とその爛熟までは理解できるが、その末期の田中角栄の「列島改造」の意味をキチンと押さえておられないのが残念である。
 
 高度成長で生み出された国内の資本生産過剰が過剰流動性に転化し、投機経済を暴走させた政策的主因以外の何ものでもなく、後の狂乱物価、総需要抑制の政策的急転を余儀なくさせた。
OPEC原油価格高騰は外的要因であり、主体的歴史総括としては「列島改造論」にはばってんを付ける。
 
>そういえば、1989年当時の構造協議の日本側の主導者は「列島改造」の後継者を自任している方でなかったか?一応現時点で、政治的配慮から、批判は慎んでいるが。
 
>以上を日本の自民党政府が翻訳すると、金融緩和、世界都市に発展する東京の都市部のテナント需要不足は何十万平方メートル、などのイケイケドンドンの無節操な楽観的展望のお墨付きとなる。
そういう過去を今頃、内閣府の分析官は政府の政策失敗と反省している。
 
巷流儀で翻訳すれば、みてきた通りなのだが、結果的に家計部門への所得の移転は確かにあった。立場によりけりだが。
 
>その事態を白川流に上品に反省すると、日本経済の長期トレンドからかい離した、金融財政政策はナンセンスとの教訓となる。
 
>白川によるバブル政策受託の客観的政治環境は
経常収支大幅黒字是正を求める外圧=米国。
円高の経済への悪影響を懸念する内圧=経団連等の経済界。
としている。
<易きに流せれて>の米国いいなりのバブル実行!
 
 >>なお、前者の外圧について、戦後のドル固定相場制、IMF世界銀行、世界経済体制という米英主導のブレントンウッズ体制と関連付けて論じるのは常識である。
白川も、論文冒頭でブレントンウッズ体制を巡る米国、ホワイト主導、英国ケインズ妥協の歴史的視点は確認している。
>ただし、彼はそれをアメリカンバブル崩壊後の世界のモノカネの循環体制?崩壊後のただ今の世界経済混迷(彼に言わせると<海図なき航海>を続けている状態>。このヒトは現状を前にしてありのままを受け止めようとして冷静。リアリストである。)
におけるドル基軸に変わる世界通貨体制の問題としてしか認識していない。
 
 >>日本が極東の敗戦国から出発し、その政治的軍事的限界性に戦略的に拘束されていると云う認識はどの程度あるのか?
 
 この強弱によって、プラザ合意ルーブル合意が米英戦後世界体制の経済復興から頂点に近づい対日独への戦略的要請、抑圧だったと理解されよう。
そうすると、あそこまでアカラサマナ内政介入を忠実にいや先兵の如く、実行することはなかった。
 
 当時のドイツは1989年の東西統一の西ドイツで在る。
それでも、最低限、守るべきところは守った。
日本はバブル末期に10年、400兆円の公共事業の公約までしている。
それで自らの傷口を広げた。
 
>>なお、白川さんは経常収支の基本トレンドに対するマクロ経済の経済政策はほとんど影響を及ぼさなず、副作用が大き過ぎるとしたうえで、(1990年代の平均経常黒字対」GDP比平均2,4%。2000年代対GDP比平均3,3%)日本の経常収支構成比の変化を挙げている。
>>貿易収支のウェイト低下=やく4ぶんの1。
>>>所得収支のウェイトの上昇=4分の3。
対外証券投資、対外直接投資などを通じて長年にわたって蓄積してきた対外資産によるモノである。
経常収支を問題にするときに必ず、問題にすべき点である。
 
 産業界に一次産品、一般的資源価格の上昇傾向によって、交易条件の悪化の様相(韓国ほどには至っていない)が色濃く出ており、それが低賃金、国民所得減少に連動しているが、所得収支の上昇は緩和要因となっている。
 
>白川論文の全体を通じて云える事は、生きた経済情勢に分け入って、政策選択としていこうと云う姿勢である。
 
>>日銀の資金供給率の増加への基本見解。
「1990年代にはインフレターゲット政策が新しい枠組みとして登場したが、今回の金融危機に至る過程でバブルが生成された様に同政策を有効に実施していくうえでの難しさが浮き彫りにされてきた。
特に不均衡が財やサービスの物価価格の上昇率と異なった姿を見せる時、それを見極めることは難しい」
 
>抽象的表現だが、云わんとする処は日本独自のデフレ環境下でのインフレターゲット政策の有効性の疑問である。
なお、この論文は本論の主要関心事は新興国台頭を踏まえて世界金融情勢の分析で在り、国内情勢には深入りしていない。
 
 民間銀行の信用創造力が弱っている現状に日銀の資金供給率増加はどの程度、有効性を持つのか?また在る程度のスパンを限った場合の悪い副作用も考慮する必要がある。
赤字国債の財政硬直化への現状。現時点での増税政策、TPPの絡みも考える必要がある。
 
 <財政緊縮、金融量的緩和円高是正>は代表的な政策パッケージである。
 
>>自公は其々将来的に200兆円100兆円の国土防災計画を民主政権に増税批判の矢面に立たせて、官僚側と裏で具体的にすり合わせていると云う。
尤も分裂までさせたのだから、一挙両得。
<環を掴む。とは政治の肝。
 
 また、国土防災計画は事実上、来る国政選挙における増税への一般国民へのムード的目暗まし、支持母体へのカンフル剤になる。
>その場合、財源捻出先は日銀国債直接引受額拡大しかないと理会するが。
ま、国と自分たちさえ、安泰なら、後は野となれ山となれ!
 
>税制における所得分配機能充実(年金や法人税は基本的に先進国並み、その他の部分で著しい違いがある)
を制度としてこの際、キチンとしておくことが重要だと想うが。金融量的緩和は政策だが、制度の問題なのである。
 
 デフレ構造は世界の中における日本固有の要因濃厚で政策でどうこうできるものでない。
いつも具体的数値を挙げて説明しようと想うのだが、悲観論に陥らない様に、論を立てていくことの難しさを痛感して止めることにしている。