反俗日記

多方面のジャンルについて探求する。

「増税はだれのためか」扶桑社刊。宮台、神保インタビューより。インフレを無理矢理引き起こしての経済成長の矛盾。TPP事態を着地点にした支配体制維持のための増税と支配層の米国流冷酷非道支配への大変身。

 最近一貫して、インフレ経済成長派を批判してきた基本理由は「増税はだれのためか」の各専門分野の有識者トークの冒頭に登場する高橋洋一なる人物の見解を読んで、直感的にオカシイと感じてからだ。
高橋洋一なる人物について、それまで全く知らなかった。
 
 その主張に対する直感的不審点は、天からカネを降らせたら経済成長率の上昇が自動的達成されると云う安易さである。
 
 実際にトークの中で米連銀議長、バーナギン直伝のヘリコプター、マネー論を3ページに渡って展開している。
「例えば目黒駅近辺でおカネがばらまかれると云われれば、みんな目黒駅まで行きますよね。ばら撒かれたおカネが誰に行くか解らないけど、ヒトが動く事で経済が動く訳です。
 それでみんなが<右往佐往してインフレになる>、と云う考えが経済学にはあるんです。
「増えたおカネはどこに行くか解らない。天から降らせている訳だから、努力した人と運が良いヒトの処に行くと云うしかない。先ほどの例えで云えば、目黒駅周辺に偶々いたヒトと、(目黒駅で天からカネが降ってくると云う情報を仕入れて)そこに云ったヒトにおカネが入ってくる」
 
 と、ここまでは、典型的なウォール街アングロサクソンユダヤ金融思想丸出しの見解であり、こんな政策を日本で本当に実行されたらたまらんと忌避感が想わず湧いてくる。
 
 が、実際に小泉竹中時代にはこの思想で金融緩和が行われた。
 
 >日本政府がハッキリと<デフレ宣言>をしたのは2002年、の小泉竹中時代であり、その下で金融の量的緩和は実行された。
 
 だから、そもそも<デフレ>が強調され出すと、財務省主導の緊縮財政や増税による景気後退に対処するために無理な財政出動や金融緩和が行われる合図と警戒する。
 
 今回もどうやら、何処から財源を工面してくるのかはっきりしないが、すでに水面下で官僚を交えた自民は国土強靭化構想(200兆円)、公明は(100兆円)が企画が具体的に進行中。
リアルな政治過程は民主政権を矢面に立たせたまま、民主政権以後を見据えて進行中。
野田などは完全に哀れで嗤いを誘うドンキホーテ
勝手に舞い上がってその気になって高揚感に包まれている。濃縮した政治世界の魔力のなせる技だ。
 
 公明の宣伝カーは町中で、日本再建!などスローガンを喚き散らして庶民の増税忌避感、や大震災原発事故の圧倒的な傷跡を打ち消そうとしている。次の政治過程に向けてすでに発進済み。
 
 >いずれにしてもそうして日本と日本国民はTPP事態を迎えるのだ。
危機の時代を奇貨とした冷酷非道の自分たちの勢力拡張。
アメリカ流儀の政治を完全に身につけた。
 
 金融の無理な量的緩和をしたところで支配層の腹は痛まない。庶民の家計も増税の様に直ちに打撃を受ける訳でない。しばらくして、じっくりと悪い影響が表れてくる。
 だから、以前引用した様に。
 
中央銀行は貨幣を発行する権限をもつため、常に政府との距離が重要になってきた。
政府は支出を増やしたい欲求と増税への抵抗を忌避する性質があるため、貨幣発行を財源としたい動機がある」
通貨を大量発行するとインフレによって政府の借金は目減りする。究極は敗戦日本やソ連崩壊後のロシアの様に全部、御破算で庶民の貯蓄は二束三文も想定できる。
 
 インフレ経済成長派の中には日銀法の改正まで叫ぶ者もいる。
金融政策の政府からの独立性をなくし、政治支配者がやりたい放題できる基盤を作ろうとしているとみて良い。
 
 コレら全部、純経済案件でなく、高度な政治案件だから、当局による世論誘導は不可避。
庶民は情報を選別し、全体像を把握する必要がある。
 
 高橋の場合、流石にアジッたりしない。
 
 天からおカネを降らせるほら話が一転、インフレターゲット政策の細かい談議にすり替わる。
上品にはできている。
 
>>それでも、専門家同士の意見を刷り合わせてみると彼の危うさが浮き彫りになる。
 
 以下復興予算についての両専門家同士の意見の食い違い。
 
「2011年度予算の約30兆円の日銀国債引受枠があって今のところ12兆円分を日銀が引き受けているが、普通に考えたら、日銀が国債を引き受けて18兆円のカネを刷って、復興予算に回すはずですよ。
でもなぜかそれをやらない。また、そうすれば、一番簡単にGDPが伸びるはずですよ」
 
>財政学の第一人者、神野直彦は云う。
 
全てを国債で賄おうとするとギリシャの様に<財政が破たんするかしないかの>国債投機マネーの賭けの対象となる。ですから、今回は増税と公債と適切に組み合わせるのが良いと考えます。」
 
>>以上の復興予算の組み方は、ただの意見の違いではなく、高橋は現状の神野直彦=政府、財務省の復興予算の組み方と別次元の構想を提起している。
 
高橋は増税と復興債(市中からの資金調達)のセットを止めて、日銀が30兆円枠を使って直接、復興債を購入せよ、と云っている。
こんなお気楽に事が運んだら、誰の腹も痛むことなく、楽だ。まさにマジック。天からカネが降ってきた。
 
 市中にあるカネに新たに18兆が追加される。すでに12兆直接国債を日銀が購入している。
銀行にはカネがないのではなく国内に適当な投資先が見当たらないから、堅実利回り償還約束の国債購入に充てている。それで、曲がりなりにも日本財政と経済は回っている。
 
>経済成長が上がらないからと云って、そこまで踏み込んで余分なカネをばらまいたら、物価上昇は間違いない。
>それでいて、その程度の資金供給で、名目経済成長にどの程度寄与するか大いに疑問。ましてや実質成長には結びつかない。なぜなら、市中にカネは余っている上にさらに追加するだけに終わる可能性大。
仮に、こういう政策を続けても投機筋を刺激するだけ。一般国民は関係ない。
理論的にはクルーグマンの政府貨幣の破滅的政策の方が整合性がある。
高橋の場合は中途半端。最初云う事はデカイが、小心者。
 
>当然、膨大な累積赤字と利払い償還で財政硬直が顕著な中で、こういう事をやれば、日本国債の信認度が低下する要因になる。
この累積する赤字国債の信認度は究極の処、日本人が自転車操業的に懸命に働き続けているから、現状維持できている。
政策当局が全く次元の違う資金調達に敢えて踏み出すと、混乱を招くだけ。
 
結論。日本独自の財政経済状態には政策当局、政府が均衡と取りながらやっていくしかない。
 
高橋に云いたい。はったりをかますな。
だったら、最初から、そういえよ!
こういう政治姿勢は一貫しており、誰かと似ている。
 
そう!橋下大阪市長
大阪都構想なんて何を馬鹿な無駄をやっているのかな、と想う。
小泉純一郎秘書官で有名?な飯島勲さんも橋下の云う程度の改革なら、何も大阪都にしなくてもできると断言している。同じ穴のムジナ的ヒトもあきれるほど政策的整合性がないと云う事。ムードで政治をやられたらたまらん。
高橋が橋下の特別顧問に就任した訳が解る。
類は友を呼ぶ。
信用できない。コレに尽きる。
 
>小泉竹中時代に国内需要の伸び悩みで苦しんでいた産業大資本の輸出による日本経済への寄与度が急激に上昇し、バブル崩壊後の円安傾向に加えて、強力な為替介入による円安誘導も相まって外需依存型に構造転換された。
 
 なお、インフレ経済成長を推奨する人たちは日銀当局が金融の量的緩和を途中でやめたからけしからんと、己の理屈に一貫性を持たせるため、今頃になって批判している。後からでは整合性を持たせるために何とでも云える。
 
 ところが、消費者物価指数の短い期間の上昇グラフを見ると急上昇に転じ、急下落した時期がみられる。
この時期に日銀は金融の量的緩和を中止したのだと想う。
長期スパンのCPIのトレンドグラフではハッキリと確認できない。
 
 内閣府の調査報告書によれば、日本のCPI構成品目において、未だに食料品が大きなウェイトを占めている、とされている。
と云う事は生活必需品価格の上昇は家計に大きな打撃を与え、消費を一気に冷え込ませると云う事だ。
 
 経験上、1970年代の高度成長終焉からオイルショック、不況、物価高騰が一気にきてその後、物価凍結、総需要抑制のスタグフレーションの時期が一番きつかった。
庶民はトイレットペーパーなど生活必需品の買いだめに走り、日本全体は殺伐とした空気に包まれた。
当時若い単身者だったから、生活苦の実感は乏しかったが、ああ云う事は二度と起こしてはならないと今では考えている。
 
 >従って、日銀の政策判断の大きな基準がCPIに置かれているのは間違いではないと想う。
ここは日本。アメリカではない。日本の独自性に適応したモノは守る。
 
 小泉竹中時代の<財政緊縮、規制緩和、金融緩和、円安誘導>の政策が曲がりなりに機能していたのは、米国の過剰消費、バブル経済が日本中国欧州の過剰資金によってファイナンスされる、冷戦体制崩壊後の一時的米国一極体制の現出の絶頂期と云う世界経済の環境が大前提にあった。
米国を中心とする日本ー中国ー欧州のモノとカネの循環が順調に作動していた。
 
 インフレ経済成長派は、小泉竹中時代の米国中心のモノカネの好循環が今やないと云う点に口を閉ざし、今度は通貨供給率増加の国内経済の成長という一国主義に装いを改めている。
アメリカのポチの国際主義はもうTPP事態で必要なしと云う訳だ。
 
>結局、インフレ経済成長派はいくら消費税反対を掲げても、自民党等の別働隊。
しかるべき政治本能に従っているだけ。
その行く先の道は自民、公明、民主にすぐに合流する。
 
>私は先日のコメント氏の云われる様な資源もストックも元々乏しき日本経済の必死の前向きの自転車漕ぎ的成長への努力を否定するモノではない。
というか、それは日本の生きた経済の実態だ。
そういう趣旨のトーンで、ある批判記事を書こうと企画したこともあった。
が、良~く考えて中止した。
 
 興味のない方には関係ないが、株式市況では各分野ごとに主力企業群がひしめいている。ほとんどが昔からの企業群である。それらが現状の総付加価値の多くを生み出している事は間違いない。
 
それだけではない。
圧倒的な方々が現場で持ち場で懸命に働いている。
以上が日々、年々、日本の再生産構造を形成している。
原理的に云えば、資本制下の再生産構造は拡大再生産していく。
 
問題はその中身、程度、あり方だ。
当該記事に挙げた1~4の歴史趨勢的な要素を含んだ複合した内容から判断してもう高成長率は望めない。
政策の間違いも確かにあるが、それも旧来の成長路線が容易に軌道修正できなかったが故だ。
だから巨船操縦の困難性を指摘した。
 
 我々庶民も低成長を前提とした見方、考え方を獲得しないと今回の消費税増税法案の様な基幹税拡張による支配体制維持維持から、TPP事態へと云うスケジュールに簡単に巻き込まれてしまう。
敢えてこの時期に強行するのは、低成長前提、TPP事態までのタイム、スケジュールからだ。
口先では経済成長を云々し振りをするが本音はここにある。
増税とリセッションは織り込み済みで強行突破する構えだ。
ダメなら、橋下等を上手く使えば良い。
官僚の報告書の指向は、企業の海外経済成長に先を見据えて、国内は基本的に統治の対象と見なしている。
割り切っているのだ。
 
成長!成長!ってズット繰り返して、今に至ったのではなかったか?
現実を見れば、「成長できていない現実は厳としてある」
そこを変える方途、動力は日本国内に乏しいと考える。
が、コメント氏の云われる如く努力はシューシュポス的努力は絶対に必要。
 
 しかし、考えてみると、どの主要先進国も、そうした経済の成熟過程を経てきた。
日本の場合、内外、過去現在の与えられた歴史的条件で、戦後の経済成長も急坂だった故に、成熟過程は急速に進行しているだけである。
この大きな趨勢を掴んでいれば、ツマ先立って余計な大騒ぎして、結果、戦前の様に行く末を誤ることはない。
 
>経済社会の趨勢の認識としてはパイの大きさが匍匐前進しかしないと割り切ったら、国民多数派はキチンとしたパイの分け前を要求すべきである。この事と一生懸命働き、創造することは矛盾しない。
現に高度成長時代の日本人は、そういう暗黙の協調体制の中にいた。