「マネタリーベースを増加させれば円安になる?」ソロスチャートって正しいの?
人物理解のための参考資料。
「なぜヒトは市場に踊らされるのか」朝日新聞書評より。
「マスメディアにあふれている<わかりやすい物語>に捕らわれないようにないように注意を喚起。通説をバッサリ。
>世界一流のバイオリン奏者が地下鉄通路で演奏した時の通行人の反応。
W。誰もそれと気づかず通り過ぎていくが、例え立ち止まって聞いても素人には世界一流とは解り辛い。
>沈み行くタイタニック号で乗客を静めるのに有効な国別のセリフ。
日本人。「皆さんそうされていますよ」という<同調性を求める呪縛に弱い>。
市場に踊らされないよう、その呪縛を説くことを著者は力説している。
本論。<素人でもわかりやすいアベ=黒田日銀のインフレ金融政策の解説になっている>
竹中の解説に続いて、時間の許す限り、5月30日時点のその効果に関する(日本共産党小池副委員長政策委員長「■見えてきた「アベノバブル」の落とし穴 、及び「日銀が長期金利をコントロールできない理由」小笠原誠治<コレは非常に原則的な解りやすい解説で、アベ=クロの痛いところをついている好読み物)を取り上げる。
引用:「日米で出回るおカネの量の比率を計算し、日本の円が(ドルよりも)余計に増えれば円安、反対に米国のドルの方が増えればドル安となる――。為替相場を2つの国の通貨の流通量から読む手法は、投資家のジョージ・ソロス氏が愛用したことから「ソロス・チャート」と呼ばれる。」
「回答はマネタリーベースと呼ばれるおカネの量を、毎年60兆~70兆円増やす緩和策。ソロス・チャートからはじいた円の適正相場は1年先に1ドル=95円、2014年末には105~110円となる。牧野潤一SMBC日興証券チフエコノミストはそんな試算を示す。」
<解りやすいマネタリーベース増加の解説とソロスチャートの注釈>
日銀が民間銀行から国債を買い上げて、対価としてマネーを払うとそのマネーは、民間銀行の日銀当座預金に入金されるので、マネタリーベースはその分増える。供給される円マネーがドルマネーに対して増えれば、円は相対的にインフレで価値が目減りするので、その分だけ円安になるというのがソロスチャートの原理だ。
>>がしかし。
以上のことから「マネタリーベースを米国以上に日銀が増やせば円安になる」と理解すると、それは大間違いになる。
ここで注意しなくてはならない点は、図にしめされたソロスチャートの理論値は、注釈がついている通り「超過準備を除いている」ことだ。
物価に影響を与えるのは、マネー供給量(=民間の預金マネーと日銀券)であって、マネタリーベースではない。日銀は国債の購入でマネタリーベースを増やすことはできるが、民間の経済主体が借入を増やして投資や消費を増やさない限り、マネー供給量は増えない。借入(=銀行の貸出)が増えてマネー供給量が増えないと、民間銀行の日銀準備金必要残高は増えないから、無駄なマネーが「超過準備」として日銀当座預金に累積するだけである。
つまりこの場合は、日銀におかれた民間銀行の当座預金残高が増えても、銀行の貸出しが増えないことには、マネー供給量は増えないので、デフレ解消効果=インフレになる効果?=円安効果もない?。
W。あくまでも4月3日時点の純理論的考察でその後の事態は円安、株式市場の乱高下、大量購入にもかかわらず国債金利下がらず、上昇。世界的な機関投資筋の思惑との一進一退。物価は円安効果が発揮される夏以降に上昇するであろう。合わせて、補正予算12兆円。明らかに参院選対策。絶対多数確保後はやりたい放題ミエニエ。
橋下懲罰はこうした政治日程における変数制御。
すなわちマネー供給量はゼロ金利下では中銀が金融政策で操作できる外生変数ではなく、経済自体(馬)によって決まる内生変数であると指摘して、単純な貨幣数量説を批判してきた。
W。以前の記事で引用した野口悠紀雄さんの見解。
「実質金利は経済の実物要因によって規定されているからです」
<資産バブル期待の意見にすぎない>が、投資家に大きな警戒感がある。
「インフレになりそう、資産価格も上がりそう」と馬(経済主体)が期待を変化させれば、水を飲むようになる(=借金をして投資や消費を増やすようになる
W。少なくとも国内の生産的資本に借金をしてまで国内投資や消費を増やそうとする環境はない。究極的には現在将来の日本のファンダメンタルズの問題。
そもそも、大手は国内投資のできない大量の内部留保を抱えている。
W。<結局、マスコミ宣伝煽動頼みの劇場型経済>ー日本経済は世界に先駆けバブル発生ー崩壊させた悪い意味でのトップランナー。そしてまた異次元金融政策に追い込まれている。
W。要は政策的にアレをやってもコレをやってもリスク過多の完全に手詰まりになっているということ。
戦後日本経済の歩みから来る付けは、政策選択の巾を極端に狭め、肝心な時代の転換点に、回ってきた。
2013年3月27日記事参照。
タイトル。
「1920~30年代日本の軍需最優先、民需圧迫の異常な経済構造から戦争への転落。今は会社最優先社会の行き詰まりから、脆弱な公共セクターさら圧迫へ。両極端な国家戦略は身の丈に合わず、最後のしわ寄せ国民に。」
竹中正治に戻る。
「そういう意味では今日の金融政策は、中銀のリーダーシップ(あるいはカリスマ性と言うべきか)による経済主体に対する心理(期待)操作に近づいているということができるだろうか。確かに金融政策は従来とは違う「異次元」に足を踏み入れたのだ。」
W。最期はマスコミ捏造のリーダーシップや神様頼みか。