反俗日記

多方面のジャンルについて探求する。

第二回。「H24年版通商白書」、第2章 貿易・投資の構造と変容。論旨の大きな流れはドイツを引き合いに出して結果、韓国に見習え、TPP絶対参加。米国にカネを貢ぎモノを買って貰う。

     <産業連関> 
 <構造はパイプ網>であり、最終財消費の<「内需」は循環し、再投入される水>。
<「外需」は循環の外側から足される水>。
<「波及効果」は水が行き渡った箇所で生じる>ものということになる。
 また、我が国の貿易に見られる<最終財の輸入や加工度の高い中間財輸入の増加>という変化は、<パイプの水漏れの増加>ということになる。
 このように、水漏れ(輸入による「波及効果の流出」)が多くなった状態で、
 >>以前と同じ程度に水を行き渡らせる(国内にそれなりの「波及効果」をもたらす)には、以前よりも多くの補給(「外需」)が必要になる。
これにより、<国外との貿易依存度は高まる>ことになる。
 
 第一に、国として輸入に必要な資金を調達する手段である。
我が国には資源を自国内で採掘できない、国民に供給する食料を十分に生産できない、つまり第一次産業の多くを自給できないという所与条件がある。
 第二に、「内需」によって誘発される「波及効果の内、輸入によって流出する分を補うことである。
輸出は「波及効果」を国内で創出するものであり、また輸入は海外に移転するものである。
 
  (6)生産工程と中間財貿易
一国の経済を「マクロの視点」で見る場合、このような生産の連鎖が国内と国外のどちらで行われるかが問題になる。
そこで
A)「フルセット型」の産業構造と、
 「フルセット型」の産業構造の具体例。最終財である「車」を購入するには、「素材」から「加工品」に加工し、それから「部品」を制作し、「車」の生産に用いるという生産工程。
国内の「車」産業により生産が行われ、これにより「部品」、「加工品」、「素材」も生産を誘発される。

B)国際分業化が進み中間財貿易が行われている状況を比較してみる。
 「車」を生産するために「部品」を輸入する、「車の組立のみ国内」の例。
「部品」を輸入することにより、「部品」だけでなく「加工品」と「素材」の生産も国外で行われることになる。
 「波及効果の流出」=B)国際分業化が進み中間財貿易の特性。
   <フルセット型>
 1990 年以前の我が国の「フルセット型」の産業構造。
 
  <国際分業に伴う、中間財貿易>ー 近年のように、中間財の輸出入が進んだ場合。
        中間財の定義=「素材」よりも一段階加工の進んだ「加工品」。
 
 <外国企業か我が国企業が>国外の工場で「車」を生産するために、中間財である「部品」を輸出する。
>このように、「中間財貿易」が行われれば、国内では「部品」の生産しか行われなくなる。
 
 「中間財貿易」を「ミクロの視点」、輸出をする立場、貿易の統計を作成する立場でとらえると、
単純に最終財輸出から中間財輸出に品目が変化しているが、輸出額が維持されているのでよいという評価になる。
また、企業(経営)の視点でとらえると、売れるものを輸出して稼げたということで、適切な行動と評価できる
 
 しかし、これを「マクロの視点」で評価すれば、
A)三産業の内の一産業又は二産業への生産誘発が失われ、雇用や税収の減少といった事柄がとらえられる。
B)また、長期的に見れば、生産の機会が失われた二産業に雇用されていた人たちによる消費、これら産業による設備投資や支払われていた税収を財源とする政府支出が減少するといった、目立たず、評価されにくい間接的な影響も生じる。
  
    (7)貿易における加工度の変化。
 まず我が国と米国、EU27 を比較する。
我が国の中間財貿易が輸出も輸入も増加しているのに対し、米国、EU27 では中間財輸出はそれほど増加せず、中間財輸入が増加している。
 
 >我が国の貿易は、1990 年以前は「フルセット型」の生産構造の上で、加工貿易(資源を輸入し、国内の幾つもの生産工程を経て生産された最終財を輸出)を行っていたのに対し、
近年は中間財の輸出と、加工度の高い中間財の輸入が増加したことが確認できる
 
  >ドイツ
国際分業により、EU27 域内の他国で加工された中間財を輸入している。
財貿易の黒字はEU27 の加盟国との域内貿易によるもので、EU27 以外の国との財貿易の収支はゼロに近いことが分かる。
ドイツがEU27 域内の他国との経済的なつながりを強め、EU27 域内での貿易で純輸出を増やしていることが確認できる。
   
       3.産業連関分析を使った経済構造の分析
  (2)貿易による「波及効果」の流入、流出。
 我が国とドイツの「国内残存率」が減少していること、ドイツの方が減少度が大きいことが確認できる。
この違いは、周辺国との経済的つながりの違いにあると考えられる。
 次に、国外へ流出する「波及効果」を輸入額と比較する。
各年の輸入額を100%とおいて、輸入額に対する「波及効果の流出」額の比。
>我が国だけが輸入額以上に輸入による「波及効果の流出」額が増加していることを示す
>米国では流出度合いが我が国よりも高いことが分かる。特に、生産過程の中間財輸入による「波及効果の流出」が非常に高いことがわかる
 
ドイツでは、我が国の「波及効果の流出」量の対輸入額比は増加したのに対し、我が国より少なかったのが更に減少していることが分かる。
つまり、輸入が国内の経済に与える影響を、輸入額で比較した場合に生じるギャップは縮小していることが分かる。
ただし、ドイツでは輸入額が10 年で1.5 倍に増加していることから、輸入による「波及効果の流出」量そのものは増加している。

     (3)「経済圏」の「波及効果」の自給と収支
 次に、「外需」(輸出)による「波及効果の誘発」と輸入による「波及効果の流出」、またその差分である「波及効果の自給度」と「波及効果の収支」を比較する。
  <「波及効果の自給度」の定義。>
内需」によって生じる「波及効果」の一部は、輸入によって国外に流出する。これを補えるだけの「波及効果」を輸出によって誘発できれば、自給ができているとしていた。
これを数値化したものが「波及効果の自給度」である。
  <「波及効果の収支」の定義>
輸出により誘発された「波及効果」と、輸入により国外へ流出した「波及効果」の差分である。
 
 >我が国は「輸出による誘発」、「輸入による流出」共に増加した結果、「波及効果の自給度」は1%ほど増加しているのに対し、「波及効果の収支」は赤字に転落している。
これは、「輸出の生産機会の損失」、つまり輸出で生じるはずの「波及効果」の内、輸入による流出分が増加したことによるものである。
 
 >米国は「外需による誘発」が1995 年よりも減少している。
その一方で、「輸入による流出」は3%ほど増加している。
その結果として、「波及効果の自給度」は- 4%と低くなっている。貿易による誘発を増やせていない状態で、流出だけが増加していることになる。
 
>ドイツは輸出と輸入が元々多く、また10 年間で更に増加し、また「波及効果の収支」の赤字が増加している状態で、
国内の「波及効果の自給度」を維持するどころか増加させる経済構造を構築できていることになる。
つまり、EU27 という「経済圏」における国際分業構造と国内の経済を結びつけることができていることになる

   この項の<<結論>>
 したがって、
>米国は輸入のみが増加し、貿易額と、貿易による「波及効果」の二つの自給が共に達成できておらず、
>ドイツは貿易が増加する中、貿易と「波及効果の自給度」を大きく増加できていることになる。
これに対し、
>我が国は、貿易は増加しても、「波及効果の収支」が増加しない中、「波及効果の自給度」もそれほど増加していないことになる。
 
 
   <貿易以外の「波及効果」>
  A)投資立国論。
 2000 年以降の貿易収支が減少傾向であったことや2011 年の貿易赤字を踏まえ、我が国は将来輸出ではなく、海外の資産による収益でもうける国になるという議論がある。
 
  B)グローバル資本の呼び込みのための投資環境整備論。
 国外からの対内直接投資を呼び込むことで、国内の需要を喚起するという方法も検討されてきた。
我が国の特徴として、「所得収支」の支払の規模が小さいこと受取が「証券投資」中心であること。
また、我が国以外の共通点として、受取では「直接投資」が多く、支払では「証券投資」が多いことがあげられる
>この違いは我が国の今後の対内直接投資の振興を議論する上で、注意すべき特徴であろう。
この「所得収支」の受取に含まれる各種の収益は、国内に還元された後、分配され各種「内需」となる??。

   <<我が国では「外需」(輸出)に比べて、「内需」の「波及効果」は少ない。>>
 これに加え、「直接投資収益」には「再投資収益」(海外投資留保金のこと)、つまり実際は国内に還元していないのに、勘定上はつまり実際は国内に還元していないのに、勘定上はいったん国内に戻ったものとする値を含んでおり、「直接投資収益」額が「内需」の消費や投資の額を意味するものではないことに注意する必要がある。
 また当然のことながら、対内投資がされれば、収益を分配する際に、その投資分に見合う配当や利子が国外に支払われることになる。
 これらのことを考慮すれば、貿易以外の通商によってもたらされる「波及効果」は、「内需」以下ということになる。
 
 米国GDPの約半分近くは金融、保険、など架空資本の取引によって、もたらされおり、この経済構造が通商白書で様々な角度から分析されている米国内の産業資本の弱体化の根底的な原因である。
それは煎じ詰めると、19世紀の世界覇権国家イギリスの道を20世紀の世界覇権国家、米国がゆっくりと辿っているということに他ならない。
 
 世界資本制下の世界覇権国家の衰退の経済構造的パターンは産業の衰退ー商業金融的覇権追及となっている。
 
 歴史的に見れば、ドイツ産業資本の急台頭に対するイギリスの対抗性がヨーロッパの騒乱の基調であった。
 
 第一次大戦前にイギリスの産業力はドイツに拮抗し、やがて追い抜かれた。
大戦の敗北にもかかわらず、世界恐慌時点の工業生産値は米国44。ドイツ12。イギリス9である。
 
 しかし、この時点でもイギリスの世界金融センターとしてのシティーの影響力は強く、当時の日本政府の金本位制への拘りは世界金融センターとしてのシティーへの過大評価にあった。
 
 この時期の金融政策の右往左往は為替投機による財閥資本に濡れ手に粟の巨大な富をもたらした。
それに気づいた国民の怒りを買い、金本位制離脱後の高橋是清の膨張財政金融政策による軍需拡大=満蒙侵攻を梃子とする重化学工業化=飢餓的輸出攻勢=世界市場の競争激化ブロック経済化ーそして緊縮出口に戦略展開し、遂には2、26事態へと連動した。
 
 現在から将来の基本情勢を予測する場合、歴史の螺旋状の発展の視点も加味する必要がある。
 
 大きな歴史的条件の違いをキッチリと踏まえて、
世界戦争が発生しないという歴史的制約下で世界覇権国の相対化ー世界の多極化ー世界市場の再分割が進行しているという歴史的条件を見ていく必要がある。
 
 繰り返しているように、アベクロ、インフレ政策はコレまであらゆる手を打ってきた果ての手詰まり状態の中から邪道の選択をせざる得なくなったやっているだけである。
 それで巨大な利益が転がり込むやからが、真っ黒を白と言いくるめている。
これがもっとも解りやすく実情に即した認識である。
 
 不適切なたとえだが、高橋是清の景気拡大政策は満蒙戦争ー軍需拡大ー産業構造の転換=重工業化ー農村から排出する毎年20~30万人の過剰労働人口を吸収したが、
アベクロインフレ政策がもたらすものは、失業、ブラック企業への資金供給などによる雇用条件の悪化、格差拡大=金融化党支配の強化=民主政の失陥、海外への資産流出。
 
 そしてその受け皿、大枠は米国においては、金融寡頭支配の経済構造を根本原因とする国内産業資本の衰退は歴史的傾向で後戻りはないのだから、
結果的にTPPの受け皿、大枠の中でアメリカへの資金供給のルートを強化に止めをさす。
世界戦略が要求されていく時代にその自律的確保の道が開けない政府に戦略的選択肢はない。