反俗日記

多方面のジャンルについて探求する。

<前書き1>TPPの原協定 =P4協定の源流はニュージーランドが主導してシンガポールと締結したFTA。TPPの構想者ニュージーランドの事情を検討すれば理念なきエゴイズムTPPの裏事情が判る。

          ニュージーランドのTPP拡大戦略:積み石アプローチの理論と実証
                 作山 巧(青山学院大学WTO 研究センター)
 <なかなかユニークな視点の上記の全文をほぼ無修正で掲載し、次にカナダ、メキシコ、チリのTPP事情を引用する>
  <前書き>
 この間、太平洋戦争の戦記を辿っていくうちに、スノーデン事件から米国国家安全保障局エシュロン電子通信傍聴システムの工作と情報利用協定=ウーラック加盟国(米英、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド) の問題に行きついた。
 
 さらに、スノーデンの告発している内容から通称プリズムと呼ばれる、ネット情報提供会社から、直接、当局が情報を採集するシステムがある、とわかった。
日本のネット通信情報も監視されているのである。
現時点の想像では日本関係当局も準加盟国扱いになっているとみる。
そうとでもしないと、ある一定の枠にピッタリ収まって絵に描いたような日本内外を取り巻く政治情勢の合理的説明ができない。 
 太平洋戦争の戦記、特に日米艦船航空機の戦力の拮抗したミッドウェー海戦において、情報戦が勝敗の帰趨を制したと直感した。やはり、大戦争は社会の凝縮されたものが一気に表面に噴出する。
 
 そこで、フト、関心のなかったスノーデン事件が浮かんだ。
 
 虫の知らせで、太平洋戦争の米国の情報戦が進展したらどうなるか、直感した。
得てして戦争に負けたものは反省するが、勝ったものは自分を正当化して、同じやり方のさらに上を目指す。
強烈な集団的成功体験とでも云おうか、米国などは戦争で本質的に日本のように弱兵が背伸びして、痛い目にあったことがない。
カナダ、ニュージーランド、オーストラリアも同類であろう。
 
 TPP交渉において、米国が一種の情報戦争を仕掛けているのは間違いない事実だと考えている。
この分野では法治主義が何処まで適応できるのか。ほとんど無理筋ではないか。
 
 まして、過去の歴史からも世界体制の激動する時代の外交関係は複雑(独ソ不可侵条約締結に腰を抜かした日本軍部当局)。
持てるあらゆるものを動員して、交渉を自国有利の方向に、持って行っていると想定しなければ理解できないことが多すぎる。
 
 日本にそんな体制があるとは、今まで生きてきて聞いたことがない。漏れてこないところをみると、アメリカに教えてもらっているのだろう。
 
 例えば、エシュロンシステムの情報を共有できるウーラック協定国のうち、イギリスを除く、米国、ニュージーランドオーストリア、カナダはTPP交渉参加国である。
しかもTPPに際して、日米間のような大きな経済的利害対立があるとは思えない。
シンガポールブルネイ(両国は国家と呼べるものかどうか)今でも英連邦国であり、上記の米国以外の国にも当てはまる。
ということは地球規模で見るとTPPはEUに距離をおくイギリスと、アメリカの同盟?の枠内にある。
 
 ところが、シンガポール、マレーシアでは華人が経済力を誇っており、中国台湾との金融ネットワークも想定される。
経産省のH24年度通商白書の中国現状分析では、香港ー台湾ー東南アジアの華人経済ネットワークを通じたカネの動きが大きな重みを増している事実が数値で記されている。
中国の民間機関や個人は勝手にカネを海外にに投資できず、政府、公共機関は華人ネットワークを利用してカネを動かしている。
地方自治体の絡んだ中国版金融派生商品にも海外華人ネットワークの資金がつぎ込まれてい可能性もある。
 
 という訳でTPP構想の重層構造も想定されるわけで、それも含めて、拡大交渉参加の11カ国の顔ぶれを並べてみても、大きな経済力の割りに日本は足場不安定と思われる。
 
 日本の対照となるような国が何処にも見当たらない。文化歴史伝統からして、促成栽培のような国が多すぎて顔ぶれのラインが日本にとって悪すぎる。
 
 日本にとって相当な無理が生じる、ことは間違いない。
 
 顔を違う方向に向けてきた付けが肝心の今頃になってたたっている。
 
 歴史的条件を無視して仮定を立てると、台湾を含めて東アジアでまとまっていく方が日本の文化伝統歴史を一番発揮できた道だったのじゃないのか。
 おそらく経済力も有効に使えた。
しかし、それができないのが日本が日本たる所以なのか。
 
 研究文のまとめにも、日本の曖昧なアジア政策の指摘があるが、現TPP交渉を横目に見ながら、普通に考えると、そういう思いが湧いてくるのは自然の成り行きである。
吉田茂のアジア重視の指摘は間違っていなかった。(加藤紘一<テロルの真実>)
自由貿易を続けていれば、近隣諸国との経済関係が何よりも緊密になる。
コレは法則であり、事実米国もカナダメキシコとの経済交流が他の方面を圧倒している。通商白書、米国分析より。
 
 現時点の感触として、例え、TPP事態をやっても、米国のアジア経済関与が上昇するとは思われない。
他を押しのけて、市場競争に勝つ勢いは米国経済にない。
 
 いづれにしても、マスコミ報道の流す事実は表面上のものでしかないのではないか。
大勢に流されていくってことだろう。
 
 ブルネイで開催中の拡大TPP交渉においてアベ政権=自民党は「聖域なき関税撤廃を前提とする限り、TPP交渉に反対する。」などと交渉の眼目を聖域?と称して農業5品目に限定して国民の耳目を一点に集中させようとしている。
 
 確かにニュージーランドのような乳製品など農業分野に特化した貿易依存率40%の国にとって、日本の農業分野における関税撤廃は実入りの多いことになるのは間違いない。
人口400万人程度で、貿易依存率40%、しかも特定品目特化であれば、巨大経済力を持つ国の消費にアクセスする道が国民生活の浮沈を左右する。
ニュージーランドのTPP戦術的あざとさの動機はここにあるが、伝統、文化的レベルには本質的に疑問を差し挟みたい。
 
 補助金付きのアメリカ大規模農業の上を行くカナダ、オーストラリアのような補助金なしのケアンズグループもこの類。
 
 とにかく、この両国は世界でもっとも自然条件に恵まれた、住民にとって住みやすい、難しいことは何も考えなくて一生を終えられる、国であることは間違いない。
自分のテリトリーで取れたものを売り飛ばして生活できる身分の国だ。国の経済的根幹が日本と真逆である。
 
 確かに5品目関連の農産品は日本農業のあり方、地方、国土のあり方、食料自給率などに関わる重大案件である。
が、ニュージーランドの半分程度の貿易依存率で、しかも大きな経済システムを有する日本には、農業分野以外に自国の事情から育まれ成長した分野がたくさんあり、巨大なヒトモノカネが日々動いており、農業も含めて、それら総体が日本と日本国民を形成している。
 
 従って、欧米から遠く離れ、未だに冷戦体制の残存する東アジアで、歴史と伝統ある大きな経済規模を形成してきた国では農業以外にも大切にしなければならない分野がたくさんある。
 
 植草一秀氏のブログ記事が久々にいいところを突いている。
2013年8月25日 (日)付け、「悪徳NHKがTPP6項目公約を農産品5品目にすり替え」
 マスコミはブルネイTPP拡大交渉において農産品5品目に衆目が集まるような報道姿勢で一貫しているが、実はその他の分野への強引な参入(ねじ込み)が金融資本優位、米国のTPP日本交渉の目的なのは明白。
 
 だから、TPPで、交渉参加諸国の中で日本からは金融サービス等々への参入、農業国からは農産品市場開放という全般にわたって、市場開放が迫られるTPP交渉参加国では特異な立場にあり、参加すれば、日本と共闘できそうな国は持久戦のプログラムで、そもそもTPP交渉には参加していない。
 
 賢明である。あわてることはない。あわてさせるのもTPPの原点の戦術。
 
 結果、日本が一番、全社会的改変を迫られる。
 
 それを開国と称するのは勝手だが結果は違って出るだろう。
明治維新は封建日本に欧米流の近代化を埋め込む余地が十分にあった。まさに未知との遭遇である。
敗戦は近代化の大戦略だった富国強兵経済社会システムの崩壊によって、国民経済は初歩から復興の途についた。
 
 現TPPがそれに匹敵するとはとても思えない。
何よりも金融資本(金融機関という狭い意味ではない)の支配体制がキッチリと確立している。
コレに相応して支配階層も全社会にビルトインしており、カネと地位が芋づる式に転がり込んでくるようになっている。
TPPはこうした国内支配体制を流動化させるのか、更なる強化に突き進むのか、ちょっと考えただけで、この「開国」がもたらすものが理解できる。
売国とかそういう次元の問題ではない。戦前では国体が最期に残ったように支配層には支配層なり国がある。
日米支配層が共同して日本国民多数をシステムの中で、食いものにするのである。
 
 米国にとって、カネのなる木という意味では農産品5品目意外に思惑が向いている。
 
>TPP交渉参加日米事前協議(自動車関税据え置き、がん保険ゆちょ窓口販売約束)など、どうして、そういう米国の勝手な振る舞いができるか、といえば、TPPの源流であるニュージーランド構想そのものの中に、米国のような覇権国家が主導権を奪取できる、<いい加減な参加条件と反面としての後発国には交渉条文丸呑み、参加条件全会一致などの縛り>の構図がある。
 
 これ等は主導する覇権国家はたくみに使い分けられるモノに変質する。 どちらも覇権国家に実に都合のいいように解釈できるものである。
 
広域経済圏構想は参加基準をハッキリして、交渉で解決すべきなのに、その点をあいまいにして、関税障壁のほとんどない小国ニュージーランドタックスヘイブン都市国家シンガポールの協定を原点とするTPPは肝心な点が急進的な関税率の引き下げ、や金融投資投資の自由という一点に絞られている。
 
>>これらの国?は世界経済に接続する太いチャンネルが欲しかったのであり、バブル崩壊に直面した米国の参加は願ったり適ったり、で元々米国に対して大して譲るものを持たない両国は、米国の都合を十分に受け入れられる。
 
 そして元々原案に含まれていた構図は、この時点で、TPPは米国主導の利害を押し付けるTPPに変質した。
それでも腹の大して痛まない国々の顔ぶれが現TPPのメンバーなのである。
この辺は本文を読めば実にリアルに判る。
 
 
 自民党側もそれが判っているから、TPP拡大参加交渉の眼目として6項目を挙げた。
これ以外にまだまだ他に問題点があるが。
 
 ところが、植草の指摘する6項目公約は2012年暮れの衆議院総選挙の際にTPP反対などと詐称して、政権復帰を目指していた自民党の公表した政策ファイルの中の公約であり、
今年の参院選挙では、6項目公約は隠されて、「聖域なき関税撤廃に反対する」と称して、5農産品産品交渉に衆目が集まるように画策した。
政権維持の遊泳術は実に達者であるが、将来、こういった類が一番、国民にとって災いをもたらす。
 
 勿論、ネット情報からもマスコミ報道は全て、この分野の交渉に釘付けの報道である。
 
 では、農産品以外のカネのなる木の交渉はどうなっているのか?
参加11カ国を見渡して、労働力の移動を除けば、この分野の交渉で日本から権益を引き出せるのはアメリカだけである。
 
 しかし、TPPの原案の論理から言えば、既に米国が都合のいい条件を日本が交渉に参加する前に他の10カ国に飲ませてしまった可能性が強い。
アメリカの強引な交渉内容を露にした後に挙げるチリの辞任した担当者の発言、地元ニュージーランドの反対派の声などからみて、かなり詰めた条文が作成されていると見る。
 
 所詮、それら諸国はこの分野に大きな利害関係は生じない経済構造。
後から交渉参加のカナダ、メキシコは米国との協定で経験済みでこの分野は米国資本に淘汰されている。