反俗日記

多方面のジャンルについて探求する。

拡大TPP交渉ーTPPの源流P4(<先行二国=NZ、シンガポール>、NO3チリ。NO4ブルネイ)に三番目に加盟したチリの事情。

 既にメモッタ二つの記事の所在がつかめず、出典先を明記できないコトをお断りしておきたい。
前者の記事のチリ社会構造の描写は妥当と思われる。
 
 チリは1970年代のアジェンデ政権に対する軍部のクーデター以降、(アメリカ映画傑作「ミッシング」に描かれている。主演のジャックレモンの渋い演技力が光る。助演はシシー、スペイセク。
ピノチェット大統領の下で、フリードマン等のシカゴ学派が経済顧問として乗り込み、当時としては新しい市場原理主義政策(新自由主義政策というよりももっと極端な市場原理優先の経済政策)を長期間採用した結果、南米独特の階層分化がさらに進展し今日に至っているとみる。
 
 上記の1970年代以降のチリの自己流経済史を踏まえると、反俗日記8月29日付けの研究文、連載第一回の次の段落の内容が理解できる。
 
 <「第Ⅲ期(第1 次拡大期、(2002年~2006年)P4終結=コレが拡大TPP交渉の源流。
 ニュージーランドシンガポールにチリを加えた3 カ国がP3(Pacific 3)協定の交渉開始に合意した2002 年10 月。
当初のP5 構想の一員であったチリの参加を受けて、2003 年9 月からP3 協定の交渉が開始され、チリ側の乳製品の譲許内容を巡って交渉が難航したものの、乳製品の関税を11 年間の段階的な撤廃とすることで決着し、交渉開始から2 年後の2005 年7 月に署名された。
(W。チリ加盟は結節点。NZと農産品の品目かち合う)」>
 
NZと農産品の品目で競争関係にあったチリがTPP原国に踏み切った、真の動機は、長期にわたる市場原理主義政策~新自由主義政策にあった。元々TPP向きの国柄であった。
日本の社会経済構造との隔たりは大きい。
 
 所得の低い中間層?(労働階層という意味だろう)の経済システムの完成している南米型伝統格差社会のチリにおいて、このグローバル資本制の時代に中間層の所得の底上げをすることは不可能である。
富の分配は、社会運動や政治力という物理的力によるほかないだろう。
 
 中間層はP4を経た拡大TTPによって、階層分解をさらに進呈させていくしかない。
一端強固に成立した格差社会構造は経済構造に根を持っているので、景気浮揚を維持していこうとすれば、分配乏しい経済構造を発展させていくしかないというジレンマが生じる。
それはTPP事態の日本の問題でもある
 
 チリの辞任したTPP交渉前担当官の危惧には、上記に近い社会認識が根底にあるものと思われる
 
         
        
             ケースその2。 
      >貿易国がたどった成功と失敗をTPPでゆれる日本の教訓に – チリ “中南米の優等生”たらしめた         自由貿易とその影にある格差
 
 国民所得の実態調査によると、所得上位10%が国内全所得の44.7%を占め、反面、下位10%は所得全体の1%に過ぎないという。
>これは中国などBRICSで広がる格差とは少し意味合いが違う。
>>つまり中間層の所得は依然として低く、国民全体の生活水準が高くなったとは一概に言えず、
(W。要するに南米伝統の格差社会に米国型格差社会がプラスされた二重の格差社会経済構造という意味に受け取る。)
 
 一見、自由貿易により発展を続けていくかのように見えたチリだが、その影で刻々と格差が進行している。
チリの貿易額を見ると、日本への輸出シェアは3位、輸入シェアは6位でビジネスシーンにおいては良好な関係を築いていると言えるだろう。
 この政策は短期的に見れば国の経済成長を促したものの、長期的見地に立てば失業やインフレを生みやすく、批判も少なくない。
つまるところ、経済の自由化を推し進めるあまりに国内政策がおざなりとなり、先の格差や貧困を生むことにつながったのである。
(W.過剰流動資金が拡大し資産バブルが発生しやすい体質。分配が乏しい構造なので、失業率が上昇しやすくなる。)
      
    >TPPに思わぬ一撃:チリの交渉担当者が厳しく非難ー ロドリーゴ・コントレーラスー
 ラテン・アメリカ諸国の現実と目標は、アングロ・サクソン諸国および参加しているアジア諸国とは異なっている。
 (W。読みづらい。拡大TPPにおいて日本とチリの問題意識の比重の違い、という点に注目。日本のような包括的全社会的問題を抱えていないことは確かだ。すてに社会経済構造はTPP仕様になっている。)
 
 この地域に対する特別な利益の主題 
—— 生物学的および文化的な多様性の保護、開発政策を計画し補足する柔軟性、過剰な規制なしでの薬品(W.ジェネリック薬品規制)と教育材料へのアクセス、および知的所有権 —— は、国民と地域の利益を保護するべく慎重かつしっかりと交渉するべきである。
 
 TPPにおける最も豊かな国とその仲間の要求と圧力に直面して強い交渉力を必要とする
>地域の諸国は、知識へのアクセス、質の教育、医療のカバー、およびそれらの経済(特にそれらの金融制度と為替相場制度)の強化を進めるために長い道を歩まなければならない。
 
 国際通貨基金IMF)は、ラテン・アメリカに対する主要な挑戦の一つは金融セーフガードを適用する余地を回復することであると、繰り返し主張してきた。
 このような環境のもとでは、もっと資本移動を自由化することには意味がなく、それは金融安定性を安全に保つための正統な道具をわれわれから奪うことになる。中国の金融為替政策も同次元
 
 高所得国の現実に応じて計画されたモデル(アメリカを指している、との解説)の押しつけを拒否することが決定的に重要である。
高所得国は他の参加国とはきわめて異なっている。
さもなければ、この協定はわれわれの国にとって脅威となるだろう。
 それは、健康と教育、生物と文化の多様性、および公共政策の計画とわれわれの経済の転換におけるわれわれの開発オプション?を制限するであろう
それはまた、われわれの国の繁栄と福祉を増大させる可能性を制限するTPPの結果を認めるような政府に許可を与えることを嫌う、
ますます活動的になる社会運動からの圧力を生み出すことになる。

 >適者生存」の論理ー産経ネットニュースよりー
TPPによる関税の撤廃は、強い者が生き残り、弱い者が淘汰(とうた)される「適者生存」をより鮮明にする。
それにより多国間で労働力や土地、資本などさまざまな資源の効率配分がなされ、全体の生産性が高まるというのが、経済連携の眼目のひとつだ
国内の砂糖が壊滅し、基幹産業を失った人が島や地域を離れれば、地方は疲弊し、国土も荒廃する。日本が“聖域”をどう守っていくのかは、交渉の先にしかみえない。
<注>
 監督、ギリシア人監督コスタカブラス<Z、告白、戒厳令ーイマイチピンと来なかった。ー軍事政権下の実態描写に主眼が置かれている最初から最期まで光の見えない陰鬱。
 
 その点、同じ状況の描写でも、チリ軍事クーデターで虐殺されたアメリカ人息子の父親が勇気を振り絞って(この辺のアメリカ人の一部に受け継がれている素朴、勇気、行動を伴う人権感覚がいい)、息子の消息を追跡していくという、アメリカ的自由の世界とチリのアメリカ大使館の対応も含めた二つの次元の違う世界交差が、この映画の奥行きをもたらしている。
 
 ジャックレモンの計算しつくされた渋い演技は最高。「JFK」演技も登場人物の中ではピカ一、役になりきっている。
 
 原作はトーマス・ハウザー。彼の実体験に基づいている。
南米チリで突如軍事クーデターが起こり、作家志望のアメリカ人青年チャーリーが失踪した。知らせを受けた父親が本国から駆けつけ、息子の妻ベス(演技派、女性格俳優シシー、セペイセク、)と捜索するうちに、この失踪とクーデターにアメリカ政府が関わっていることを知る。
    <人類猫化計画>さんのブログ記事から抜粋引用。
「3万人が殺害された軍事クーデターへの米国政府の関与が機密文書解除で明らかにされた。
クーデターを起こしたピノチェト軍事政権の施策はまず左翼勢力を根こそぎするため「1980年憲法」を制定した。
この憲法前文には、チリの国体にはマルクス主義は相容れない。そのためアジェンデ政権とは異なる“防衛された民主主義”を採用する、と書かれている。
そしてこの憲法の下では基本的人権や自由が制限され、軍の政治介入が不可欠となった。

そしてまたピノチェト政権は、ほとんどの国有企業を民間に移管したり、社会保険まで民営化するといった完璧なまでの経済自由化政策を推進したのだ。
その結果は国内企業の倒産を生み、失業率は20%以上、国民の2分の1から3分の1が飢餓線上でさまよったのだ。」
 「シカゴ大学のゼミでミルトン・フリードマン教授に学んだが、後にこのフリードマン率いる「シカゴ・ボーイズ」と呼ばれるエリート政策集団ピノチェトの経済政策を支えることになった。
 
 【ピノチェトは「チリの奇跡」の立役者として広く認められている。これはチリをひとつの実験場として、自由市場、自由貿易、産業の民営化、規制緩和、組合不在での経済発展を試みたもので、大きな成功を収めた。実験の計画はシカゴ・ボーイズが行ない、彼らがまいた自由競争主義の種はサンチャゴからイギリスのサリー州へ、そしてバルパライソからバージニア州へと広がって行った。】
しかし、この「チリの奇跡」は単なるおとぎ話に過ぎなかったのだ。」