反俗日記

多方面のジャンルについて探求する。

第三回、福島原発事故事情。その1、世界と日本の原発事情。

>被ばく線量事情を探索していたが、日本当局が準拠する国際放射能防御委員会(ICRP)の<低線量被爆年間100シーベルト以下、リスク極小、ほとんど影響がない>という認識(国際基準?)は現在揺らいでいる。
 ◆「追跡!真相ファイル File.76 低線量被ばく 揺らぐ国際基準」(動画)からの書き起こし
 (NHK総合・2011.12.28)を参照する。
中野隆市ブログ「風の便り」9月14日記載。詳しくは
 
 >次のところに注目する。
A)米国の河川沿い<原発から排出されるトリチウム汚染水>被害の実情報道は福一汚染水処理の行方と関連して最重要問題だが、後で取り上げるので省略。
 <福一原発汚染水多核種除去装置(ALPS)で除去できない三重水素トリチウム)の行方>
 
B)さらに国際基準を作ったICRPの当事者たちにも取材。低線量のリスクはどう決められたのか。驚くべき事実
 >>ICRP名誉委員
 「低線量のリスクはどうせわからないのだから、半分に減らしたところで大した問題はない
 >>「科学的な根拠はなかった。我々の判断で決めたのだ」
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2011年10月、アメリカでICRPの会議が開かれました。会議の一部だけが音声での取材を許可されました。
福島第一原発での事故を受けて低線量被曝のリスクの見直しを求める意見が相次ぎました。
 >「8歳や10歳の子どもがなぜ原発労働者と同じ基準なのか。福島の母親や子どもたちは心配している」
 「ICRPの低線量リスクがこのままでいいのか大きな疑問が持ち上がっている」
 (会議での発言)
 
 ICRPは低線量のリスクをどう見直そうとしているのか、カナダのオタワにある本部に直接聞くことにしました。事務局長のクリストファー・クレメント氏です。
>既に作業部会を作り、議論を始めているといいます。
 「問題は低線量のリスクをどうするかです」
 
>>クレメント氏は私たちに驚くべき事実を語りました。
>>これまでICRPでは低線量の被曝のリスクは低いと見なし<半分にとどめてきた>というのです
低線量のリスクを半分にしていることが本当に妥当なのか議論している」

 低線量のリスクをめぐる議論は、実は1980年代後半から始まっていました。
W。チェルノ事故1986年。ベルりンの壁崩壊1989年。
>>基準の根拠となっていた広島・長崎の被爆者データがこの頃修正されることになったのです。
W。ヒロシマナガサキ被爆者検証は大切な被爆検証する時期にGHQの統制が働いていた
この辺の事情に踏み込んだ記事は以下。
この歴史的事情を踏まえると、IAEAやICRPの現状が立体的にわかる。前者は軍事的見地。後者は業界、官庁的見地。
 
 青いポスト。「五井野正博士 特別寄稿」 放射線被害の歴史と現状ー原爆被爆者の特徴。
>広島・長崎の原爆投下以降の 放射能による人体の影響や 研究、データは公開禁止された。
被爆者の情報コントロールは、 かつては米国軍部や日本政府、
今は原子力村や政府官僚たち
 
本文に帰る。
それまで原爆で1000ミリシーベルトの被曝をした人は5%ガンのリスクが高まるとされてきました。
 >>それが日米の合同調査で、実際はその半分の500ミリシーベルトしか浴びていなかったことが分かったのです。W。情報が公開された?違うだろう。政治判断だ。
半分の被曝量で同じ5%ということは、リスクは逆に2倍になります。しかしICRPは低線量では半分のまま据え置き、引き上げないことにしたのです。
       
        <なぜ低線量のリスクを引き上げなかったのか>
ICRPの基準作りに携わってきた17人の委員のうち13人業界、関係官庁出身者。(70年代~90年半ば)
2)原発や核施設は、労働者の基準を甘くしてほしいと訴えていた。
ー証拠物件提示。米エネルギー省の内部文書、1990年、ICRPへの要望をまとめた報告書ー
証言者はアメリカの他の委員と協力し、リスクの引き上げに強く抵抗。
 
 その後ICRPは、原発などで働く労働者のために特別な基準を作ります。
半分のまま据え置かれていた低線量のリスクを
さらに20%引き下げ、労働者がより多くの被曝を許容できるようにした
W。ここでの労働者とは検修作業などに現場作業に従事する一番被爆が憂慮される下請け労働者のこと。
 
>「労働者に子どもや高齢者はいないので、リスクは下げても良いと判断した。科学的根拠はなかったが、ICRPの判断で決めたのだ」(マインホールド氏談。)
 
W。福一事故を受けて現地に乗り込んだ山下俊一も。
20ミリ~100ミリシーベルト年間は政治的判断で決定される、としている。
ところが、ICRP国際基準では年間100ミリシーベルト原発作業者の通常の被爆限度である。
しかも被爆は少ないと切り捨て、半分に政治判断した値から、さらに20%引き下げた被爆基準値である。
 
 山下俊一発言。ドイツ誌「シュピーゲル」のインタビュー。
「シュ*住民がリラックスしやすいようにと、年間100ミリシーベルト被曝しても大丈夫だともおっしゃっている。
>>通常それは原発労働者の被曝上限だと思うが。
 
山下*100mSvでも大丈夫だから心配いらない、などとは言っていません。ただ、100mSv未満ではがん発症率の上昇が証明できていない、と話しただけです。
これは広島、長崎、チェルノブイリの調査から得られた事実です。
 W。がん発症だけではないはずだけではない、との研究成果もある。心筋症、免疫不全症候群など。
シュ*だが、そうやって安心させようとすることが、住民の方々の怒りと恐怖をかえって高めることになるとは思わなかった?
 
山下*日本政府が年間被曝上限を20mSvに設定したことが、混乱に拍車をかけたと思います。
 国際放射線防護委員会(ICRP)は、原子力非常事態が起きた際には年間被曝上限を20~100mSvのあいだに設定するよう提言しています。
  W*ICRPは年間、100ミリシーベルト以下を低線量被爆としている。
>その範囲のどこで線引きをするかは<政治的な判断で決まる>ことです
  W。コレはICRP委員も認めている。
>リスクと利益をはかりにかけて考えなくてはいけません。避難するにしてもリスクを伴うからです。
W。子供じゃあるまいし、その程度は誰でも考える。
逆に留まるのもリスク。それで安心させようというのだろうが、それを専門家のセンセイが云っているのだからと安全と受け取るひともいれば、逆に不信感も抱く人がいる。そこが解らず、安心で突っ走って説得しようとした。
説得ではなく説明が必要だった。何処に説明の基準を置くかは重要だが。
 
放射線防護の観点から見れば、日本政府は最も慎重な方針を選んだのですが、それが皆さんの混乱と不安を高めてしまいました。」
 
 今アメリカでは原発や核関連施設で働いていた人たちが、相次いで健康被害を訴えています。
ー (室内でテーブルを囲む複数の女性たち)ー
女性たちは<核燃料の再処理施設>で、長年清掃の仕事をしていました。身体に異変が起きたのは、仕事を辞めて暫く経ってからのことでした。
乳がん喉頭がん、そして顔に皮膚がんを患っています」(元労働者)
 健康への被害はないと信じて働いてきた女性たち。今国に対して補償を求める訴えを起こしています。
「私たちはモルモットでした。どんなに危険かも知らされていませんでした」

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      <NHKのスタジオ>
 
室井*ICRPの人が出てきましたけど、「根拠がない」って。「半分に減らしても構わない」くらいなことを言ってましたけど、「根拠がない」って初めて聞いたんで驚いちゃったんですけど。
 
西脇*ちょっとこちらをご覧いただきたいんですけど、
 これは2010年のICRPの予算がどこから来ているのかを示したものなんですけども、
アメリカの原子力規制委員会を筆頭に、原子力政策を担う各国の官庁から、各国政府からの寄付によって成り立っているんですね。
 
(画像(「ICRPの予算」)には「日本原子力研究開発機構 45,000ドル」とある。その他アメリカ、EU、ドイツ、カナダの順の出資額で総額は
 617,168ドル。日本は第4位。)
 
西脇*日本も原子力を推進する日本原子力研究開発機構が毎年それなりの額を寄付していると」
 
室井*ICRP自体が原発を推進したい人たちの側が作ったものだから、安全基準値を決める訳だから・・・それじゃいけないんですよね。
 
西脇*ICRPというと日本では科学的な情報を提供してくれるイメージがあるんですけれども、彼ら自身も繰り返し言っていたんですけども…彼らは<政策的な判断をする集団>だと。
どこまでが<許容できて許容できないのか>を、<政治的に判断する組織だ>と」
 
室井*ということは、自分で判断していくしかないと思うんです。しかも安全な方に。どれだけ取らないようにするか、自分で決めていった方がいいのかなと思いますね」
 
鎌田*低線量でも実は被害が出ているじゃないかという海外のケースをこれまで見てきたんですけれども・・・
今の我々と決定的に違うのは、彼らはこういうことだと全く知らなかった訳ですね
その基準自体も曖昧だ、あるいは基準に沿っていればいいわけではないということを彼らは知らなかった。
我々は少なくとも知ってるわけですから…国に対してこういうことを求めたいということがもしあるとすれば、どうですか?」
 
室井「正しく怖がるには、やっぱりある程度情報公開してくれない
知らないのが怖いと思うんです。知ったら、それを基に考える事が出来るから。
一番・・・情報を上げて来ないというのがよくない気がします
 
鎌田「それを政府に求めたいということですね?」
 室井「求めたいですね」
 
>回りくどくなってしまったが、一応、上記を押さえて、世界と日本の原発事情を別の角度から取り上げる。
 
 武田邦彦ブログ ー放射線の人体への影響と専門家の倫理ー 
1. 福島原発事故の概要と背景

世界の地震地帯は限定されていて、大西洋のような若い海(1億5000万年前に誕生した)は地震津波も大きいものは観測されていない
.
これに対して地殻のひずみは太平洋西岸(千島列島から日本列島、フィリピン、ニューギニアニュージーランドに至る地域)に集中している.
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一方、原発は世界に430基ほどあり、アメリカ、ヨーロッパ、そして日本が下の図に示したように三極を為している。
 
 従って、「先進国の原発」と言っても安全面から見ると、日本の原発だけが震度6地震津波に見舞われる状態にある原発であり、欧米の原発と大きく異なる.
 
 もともとヨーロッパやアメリカでは地震津波がないのに加えて、原発が内陸に作られることが多く、川の淡水で冷却しているのでそれだけでもずいぶん安全に関しては異なる状態にある. 
何しろ原発は高圧の電気を製造するところであり、それがさびやすく漏電しやすい海水の近くにあること自体が問題である。
 
 フランスの原発は下の地図にあるように海岸線ではなく川の畔にある。
たとえばパリを流れるセーヌ川のパリより上流側に2ヶの原発があるので、パリを流れるセーヌ川には原発の廃液が流れている. 
 また少し南にはフランスを分断するように東から西に流れるロワーヌ川があるが、その上流に13基、中流に7基の原発があり、この流域はワインの生産地として知られている. 
 
 日本では考えられないことだが、フランスで最も有名な農産物の一つであるワインの生産地の上流に原発を20基も運転している。
「フランスのワインが美味しいのは原発の廃液が入っているからだ」というジョークの一つも言いたくなる.
http://takedanet.com/images/2012/10/28/bandicam_20111121_214323935.jpg
 しかし、こんな事を言われてもフランス人は気にしない。もともと廃液が綺麗だから原発を運転しているのであって、日本のように危険と分かっているからへき地に作るなどと言う「まあまあなあなあの文化」はフランスにはない. 原発をその国の主力農業の産地の上流に作れば、「そっと原発から汚い廃液を流しているのではないか?」という疑問も発生しない。
 原子力発電所というのは膨大な装置で放射線量としては広島原爆の約1000倍から1万倍ぐらいであり、今回の福島原発事故で漏れた放射線量は80京ベクレルと日本政府が発表しているが、これは広島原爆の放射性物質量の約200発分に相当する.
 従って、原発というものは危険だからへき地に作ればその影響がないと言うようなものではなく、危険なら作ることができず安全でないと国内におけないような装置なのである。

 日本では原発は危険とされているが、それは地震津波があり海岸線に建設しているからで、まだ地震津波のない土地に建設した原発そのものが危険であるかは不明である。
 
 たとえば、日本で原発を作る最も適した土地は琵琶湖沿岸だろう。
この地帯は地震が少なく、琵琶湖には津波はなく、淡水だから塩水の冷却より遙かに安全である。
しかし、日本人は原発を琵琶湖に作りたくないと思っている。
それは「原発は危険だから」と考えているからだ。
もともと広島原発1万倍クラスの原発を「危険だから」と思っているのに運転しているということ自体が異常に感じられる。