反俗日記

多方面のジャンルについて探求する。

選挙を考える参考資料を順次、掲載。1アベノミクスで国債価格は暴落するのか?(国際投資データバンク)2上野泰也氏(みずほ)にきく 「上がらない長期金利が意味するもの」 3、前日銀仏中銀投稿、白川論文。

  来月の衆議院選挙を考える場合参考資料を順次、掲載して行きます。
*なお、最初掲載した記事は、読み返してみると、余りにも意味不明、酷過ぎたので削除した。
今回のアベ解散の性格をキチンと抑えておく必要がある、との思いを短い文章の中に盛り込もうとしたことに無理があった。
 できたら次回にチャレンジしたい。
 
 本来であれば、税制論議の前提である日本経済の、バブル崩壊以降の状況分析及び日本税制の特徴、米国バブルの実相、ソレとの日本経済の小泉以降の特定輸出型企業の経済寄与度アップ特殊性、日本の産業構造と欧米との比較など、諸要素を論議する場を設定するのが、筋道なのですが、
 その方面の議論を「増税は誰のためか」で改めて、自分の誤認、忘却、無教養を追認した次第ですが、例によって記事作成の時間の都合上、後回しにすることになり、コピペできるものを優先しました。
 なお、前回までの関連記事で事実誤認がありました。米国バブル崩壊を受けた日本のGDP落ち込みは、輸出依存度40数%の韓国以上で、先進工業国、最高でしたが、昔の記事で、ソレをグラフを使って問題視しながら、その問題を追及する視点が甘く、「日本は米国バブル崩壊の影響を、直接受けていないにも拘らず。アベノミクス~云々」の記事を作成してしまいました。
ただし、日本金融資本は、当事国、米国バブル崩壊、連動するEU金融危機のようなダメージを受けおらず、一過性のものだった、従ってアベノミクスの拙速、過大性という指摘、という認識は誤りでないと考えます。日本の政策当局は打つ手を出しつくしている状態で、最後の一手がクロダ異次元金融緩和。後は日銀の国債直接引き受け拡大だけか。
この辺の事情は「増税が誰のためか」の野口悠紀雄インタビューにおけるかれの一貫した産業改革構造派の立場から照射できる。アレもダメ、コレもダメ、あちらが立てば此方がが立たず的状況認識では、事実をなぞっているだけで、判断と決断は政治次元に丸投げになる。
コレが白川日銀総裁、フランス銀行投稿論文の欠陥である、しかしこの論文は、日本の財政と金融政策の特性をよく描いている。いわばそのための解りやすい基礎認識である。
外国投資データバンクの「アベノミクス国債価格は暴落するのか?」日銀アベノミクス国債市場の関係を数値的に解説したものである。疑問の多い記事だが、国債投資、保有の三大メガバンクと日銀の関係が明らかになっている。白川記事に丁寧な解説がある
上野泰也氏にきく 「上がらない長期金利が意味するもの」はメガバンク、ウォチャーからのアベノミクスへの激辛採点である。認識は冷静、シビアーで、ほぼ正確な状況認識だと考える。


         アベノミクス国債価格は暴落するのか?
 >
掲載記事は納得できないので抹消
イメージ 1単体では郵貯簡保の割合が大きいのですが、彼らはその制約上、国債を売ることは不可能です(※注1)。よって、郵貯簡保以外の最大の保有主体となると、民間の銀行になります。つまり、長期金利が高騰する最大の原因は、銀行が国債を投げ売った場合に限られるのです。

>実証 
日本の3大メガバンクUFJ・みずほ・三井住友)は、預金に対して30%程度の割合を、国債で運用しています。そして、デュレーション(W≪平均回収期間。参照→http://www.findai.com/kouza/311bond.htmlは概ね6年程度とされています。現在、日本のインフレ率はゼロ近辺ですから、アベノミクスの目論見通りに2%の物価上昇が起きれば、長期金利も概ね2%上昇すると予想されます。すると、メガバンク保有する国債は『2%×6年=12%』程度の損失が発生します。メガバンクの資産の30%が国債で、それが12%目減りすると言うことは、総資産が3.6%喪失することになります。
この3.6%のマイナスというのは、銀行経営にとっては何とか絶えられるレベルの損失です。ちなみに、スペインやイタリアのように長期金利が7%程度まで上昇すれば、国債価格は42%暴落⇒銀行の総資産が12.6%喪失することになります。これだけ資産が減ってしまうと、銀行の経営危機であり、公的資金注入など金融不安が起きるでしょう


上野泰也氏(みずほ証券チーフマーケットエコノミスト)にきく 「上がらない長期金利が意味するもの」
 
Q デフレからインフレへの転換を目指すアベノミクスですが、むしろ長期金利は低下傾向をたどっています。なぜでしょうか。
上野氏
1)債券市場の需給バランス。今年の4月から、いわゆる異次元緩和(量的・質的金融緩和)の一環として、国債新規発行分の7割を市場から買うという日銀の長期国債買い入れが実施されています。
2)また、国内の機関投資家は余剰資金を大量に抱えており、債券の購入需要がきわめて大きい状です。このため、債券市場で何か売り材料が出てきて国債が売られ、利回りが上昇しても、日銀が頻繁に買い入れを実施するので、荷もたれ感(需給悪化懸念の広がり)が生じにくくなっており、そうした中で民間の投資家が債券を買ってくるものだから、結局、長期金利は上がりにくく、下がりやすいという地合いが形成されているのです。
3)海外に目を向けると、米国やイギリス、ドイツは長期金利がやや長い目で見ると上昇局面に入ったのですが、同じ先進国でも、日本の長期金利にはこうした独自の要因があるため、上昇余地が今後も限られると見られています。むしろ、足元では低下傾向にあり、このままだと0.6%割れの水準まで低下する可能性もあります。
 
Q 長期金利の低下は、債券市場の参加者がアベノミクスは成功しないと見ているからでしょうか。
上野
>安倍政権はインフレ率2%を達成するために、量的・質的金融緩和や積極的な財政出動、そして成長戦略を打ち出してきているのですが、現実の経済を見れば、それらによる日本経済の力強い復活がかなり難しいということは明白です。
イ)貸出はなかなか伸びませんし、
ロ)消費も6月からへたってきました。
ハ)輸出は伸びていますが新興国の景気減速などもあって力強さまではありません。
ニ)株価も5月につけた日経平均1万5,942円がピークで、このところ1万3000~4000円台で頭打ちです。
ホ)米国経済は確かに回復してきていますが、日本経済は物価が2%も上昇するほどの回復軌道に乗ったとは言えない状況です。
少なくとも債券市場の参加者は、アベノミクス効果に対して、かなり冷やかに見ていると思います。
 
*他にも、日本の長期金利が上昇しにくくなっている理由があります。
イ)まず消費税率の引き上げが確定したこと。2014年4月から、消費税率が8%に引き上げられますが、もしこれが見送りということになっていたら、日本の財政悪化懸念が材料になって、日本国債はある程度は売られていたでしょう。
米国の政策金利引き上げがかなり先になる可能性が高まったことも、日本の長期金利の頭を押さえる要因になっています。
政府機関閉鎖など足元の財政問題が決着したあと、今年の年末から来年の初めにかけては、米国経済の回復色があらためて鮮明になるとみており、米国の長期金利が上昇し、それにつられて日本の長期金利も上昇する可能性があります。
ロ)ですが、それでも10年債利回りが1%に乗せるのは難しいでしょう。日本のファンダメンタルズからみると妥当な水準は1.0~1.2%程度だと考えられるものの、この先しばらくは、それよりも低い水準で推移する可能性が高くなっています。

Q そうなると、日本経済の回復は、まだ先になるということですか
上野
イ)人口減・少子高齢化の流れに抗して日本経済が大きく変わるという姿が見えてきていません。
ロ)企業経営の方針を見ても、積極的にベースアップしていこうという姿勢が見えない。将来的に賃金が上昇していくという可能性が見えれば、サービス分野の価格上昇を通じて2%のインフレ率を達成できる可能性は一応高まります。
ハ)が、 日本企業が置かれているグローバルな競争の厳しさを見れば、まとまった幅でベアがつく可能性が低いのは明白です。
ホ)W?エネルギー価格や食糧価格の上昇がインフレを引き起こすという、「悪い物価上昇」は現に起きているものの、それは一過性のショック(W?)であって、継続的な物価上昇にはつながらないでしょう。
 
Q つまりデフレからの脱却は無理だと。
上野
非常に難しいと思います。
**W。日本の実体経済を見る基本視点。非常に重要な視点だがデフレは複合要因。→デフレの原因である過少需要と過剰供給の組み合わせには、この先も基本的には変わりがなさそうです。
それは、需要面では、人口動態で見れば明らかです。長期的に見ると、日本の総人口は2060年にかけて9,000万人を割り込んできますし、生産年齢人口に至っては5,000万人を割り込みます。人口がどんどん減っていくということは、それだけで経済の活力を奪います。
>>日本が、このデフレから脱却するためには、金融政策に偏重した今の政策で対応しても無理でしょう
 
Q仮に、日本経済がデフレから脱却しようとするならば、何をどうすれば良いのでしょうか。
上野
需要面では、やはり日本の国土に滞在している人口をいかに増やすかという点だと思います。
(W、笑)子化対策や観光客誘致の強化のほかに。移民の受け入れにも~
W?考え方が違う。確かに、アベノミクスが注目されるようになってから、表面的には電気料金やガソリン、食品の値上がりを中心に、物価がやや上昇し、景気も緩やかに回復していますが、物価がここからさらに持続的に上昇していくかというと、大いに疑問です。
>三本の矢について個別にコメントすると
第一の矢
金融緩和
。 による具体的な効果が出てきたのかと言われれば、それはほとんどないとしか言いようがないでしょう。また、量的金融緩和で金利水準は低下していますが、債券から株式に運用資金がシフトする動きは出てきていないのが現状です。
第二の矢
機動的な財政出動
。 景気回復には公共事業の上積みなどが当然寄与しているものの、それ以上に重要な問題は、そのことによる借金増大というコストです。
第三の矢
成長戦略。 W笑、さまざまなメニューが今後どのような成果を挙げるかについては、さらにはアベノミクスが失敗なのかどうかについて、結論を下すには時間が必要だとは思います。
>>現在までのところでは、合格点にはほど遠いのではないかと考えています。
 
Q オリンピックによる経済効果はどうですか。
上野
東京オリンピックの開催は2020年ですが、最大の問題は2015年から2020年にかけて、東京の人口がピークをつけて減少に転じるということです。
開催されたオリンピックのなかでは、数少ない成功事例とされるロンドンオリンピックも、閉幕後は問題が生じました。
オリンピックの開催というのは、ある意味では箱モノ行政の典型例です。一時的には需要を盛り上げることになりますが、問題は終わった後です。たくさん造られた建物や交通施設などのインフラを、その後も十分に活用していくだけの需要があれば良いのですが、通常は「宴の後」状態に陥ります。利用者が減った施設でも、それを維持していくにはコストがかかります。だから、箱モノを作る時は、極めて保守的な需給見通しを建てる必要があるのですが、今の浮かれムードで、果たしてどこまでそのような見通しが建てられるのか、疑問です
 オリンピック需要に乗じて国土強靭化政策を推し進め、日本の古くなったインフラを一気に整備するなどと言われていますが、前述したように、日本の人口はこれから減少していきます。それなのに、高度経済成長期に造ったインフラを、そのまま建て変える必要はどこにもないでしょう。もし、それをやったとしたら、日本のインフラは人口面で見て、明らかに供給過多になります。
とにかく気がかりなのは、東京オリンピックの誘致が成功したことによる浮かれムードで、野放図なインフラ整備が行われることです。 
 
Q 景気低迷で長期金利は上がらないということですが、日本の財政赤字は年々積み上がっています。悪い長期金利の上昇につながる恐れはありませんか。
上野氏
早ければ5年後あたり、遅くとも13年後あたりから、長期金利への上昇圧力がじわじわと強まってくるのではないでしょうか
 その最大の理由は、国債の消化構造が変わってくることです
現状、日本国債保有者は、9割以上が国内の投資家ですが、
>>このままのペースで国債が発行され続けると、どこかの段階で家計の余剰マネーが枯渇し、結局は外国人投資家の資金を引っ張ってこないと国債の消化が円滑に進まなくなります。

1)国債が暴落(長期金利が暴騰)するようなことにはならないと思いますが、その代わりに、リスクプレミアムの拡大だけ長期金利がじわじわと上昇していくことになるでしょう。


  財政の持続可能性
―― 金融システムと物価の安定の前提条件 ―― フランス銀行「Financial Stability Review」(2012年4月号)掲載論文の邦訳
  日本銀行総裁 白川 方明
 
     
         
一般的状況認識
2008 年の金融危機以降、多くの先進国で財政状況が悪化しており、中央銀行政策金利水準はほぼゼロまで低下している。財政金融政策の展開余地が限られるもとで、失業率が高止まり、低成長が続く一方、人口の高齢化という中長期的な財政圧迫要因にも直面している。
こうした先進国経済の現状は、<追加的な負のショックに対して脆弱であり、金融システムおよび物価の安定をしっかりと取り戻すことが、先進国共通の課題>となっている
 ユーロエリアではソブリン債務危機に直面し~。また、政府債務の累増しそれがソブリン債務危機に至らない場合でも、中長期的な物価の安定を使命とする金融政策の遂行に重大な影響を及ぼす可能性がある。
 他方、日本では財政赤字の継続から政府債務残高の対GDP 比が上昇を続けているが、インフレは生じておらず長期金利も低位で安定しているなど、現実は複雑である
本稿では、こうした先進諸国の現状を踏まえつつ、
>政府債務の累増が金融システムの安定や物価の安定にもたらしうる影響と、そのもとでの中央銀行の役割について考察する。

 
    2.政府のソルベンシーに関する基本的な概念整理
、財政余剰の割引現在価値が国債発行残高を下回る場合――政府に十分な支払い能力がないと予想される場合――、論理的には3つの可能性が存在する。
第1の可能性はデフォルトである。
>第2の可能性はインフレである
政府の支払い能力の低下を、中央銀行の大幅な貨幣供給に伴う通貨発行益によって穴埋めする政策――すなわち、中央銀行の財政ファイナンス――によって実現しようというものである。
>このシナリオでは、通貨発行益の増加によって国債の償還原資を補填しつつ、インフレにより政府の実質債務負担を減らすことによって、政府のデフォルトを回避する。
*ただし、物価の安定を放棄することは、経済の持続的な成長基盤を損ない、結局広く国民に損害を及ぼすことにつながる。
第3の可能性は、財政の健全化や、さらにそのために必要な経済成長力の強化に取り組んで、財政余剰の現在価値を高めることである。
この選択肢が最も望ましいことは言うまでもない。
>>ただし、民主主義のもとで、歳出の削減税率や社会保険料の引き上げさらに成長力を高めるための制度改革を進めるには、社会としての合意形成が必要である。(W、アベ解散→独裁的権限獲得後の想定される政治方向)
以上の政府のソルベンシーを巡る問題についての基本的な考え方をまとめると、政府のソルベンシーに問題が生じた場合、
その回復に必要な財政や経済の構造改革という選択肢を採らなければ、金融システム不安かインフレかという厳しいトレードオフに追い込まれる。

  
     3.先進国における政府債務累増の背景
A)国債<供給>の増加要因→バブル崩壊や高齢化などによる成長トレンドの低下は、歳出入両面から財政赤字の慢性的な増大。
B)国債<需要>に対する増加要因→低成長による民間部門の資金余剰拡大や国債の安全資産としての利便性など。

    <成長トレンドの低下がもたらす政府債務の供給増>
第2に、人口の高齢化は、より長期にわたって徐々に成長トレンドの低下をもたらす。すなわち、人口の高齢化は労働供給の制約を強めるほか、
それにより資本の限界生産力が低下するため、企業の設備投資も抑制される2。また、人口動態の変化は需要構造にも大きな変化をもたらすため、
変化に対応する柔軟性が供給サイドに十分備わっていない場合は、この点も成長力の低下要因となる。 
人口高齢化は様々な側面から経済成長率ひいては税収の抑制要因として作用する一方、社会保障給付を中心に政府支出の拡大要因となるため、慢性的な国債増発圧力となる。
>ちなみに日本では、生産年齢人口が1990 年代中頃に減少に転じ、その後総人口に占める労働力人口の比率も低下に転じた(図表1)。
**他国に例を見ない急速な高齢化が進み始める時期が、バブルの崩壊とほぼ重なっていたため、日本では1990 年代以降、政府債務の増加が続いた。
今後、米欧でも、日本ほど~ど急速ではないにせよ高齢化が一段と進むことを考える。
    
   <資金余剰やリスク回避が生み出す民間の国債需要>
>、バブル崩壊や高齢化などが国債の供給圧力を強める点について
述べたが、国債に対する需要面も変化するため、それが直ちに国債金利の上昇圧力につながるわけではない。
   
  民間部門で国債に対する需要が増加する背景として、4点挙げる
(1)バランスシート問題を抱えた民間非金融部門の借り入れ需要が低下する中、金融機関もリスクテイクに慎重になるためである。
日本の民間非金融部門のバランスシートをみると、バブル崩壊後は土地投資が減少に向かい、土地以外の実物資産も緩やかな増加にとどまる中で、
*慢性的な資金余剰を背景に金融資産の増加トレンドが続いた(図表2)
<これを金融機関の側からみると>
貸出残高はバブル崩壊後に増加が止まり、さらにその後は減少トレンドをたどった一方、預金はほぼ一本調子に増加を続けた(図表)。
*こうした預貸率の低下によって生じた金融機関の余剰資金は、財政赤字の拡大を受けて増発された国債に振り向けられていった。
*低成長下において、とりわけバブルの崩壊によってバランスシート調整圧力が作用している局面では、金融機関のリスク回避度が高まり、国債の安全資産としての魅力が相対的に増すと考えられる
リーマン・ショック以降は、米独などでも預金に比べて貸出が伸びない中、金融機関はその余剰資金を国債保有増加に回している(図表4)。
 
(2)規制・監督環境のもとでは、マクロ的な経済環境が悪化して信用リスクや流動性リスクが意識される局面になると、金融機関は一段と安全と流動性を求めて国債保有する選好を強めると考えられる4。
(3)2、に関連。
*安全資産への選好の強まりなどから国債利回りが低位安定的に推移すると、その事実自体が国債の安全性評価をさらに高めてその保有動機を強めるように作用する。
 
(4)金融緩和政策の影響。
中央銀行国債買入れオペレーションを行ったり、金融機関に資金供給をする際の主たる担保として国債を受け入れている。
バブル崩壊後の経済の長期低迷に直面し金融緩和の強化が続くもとでは、中央銀行資金へのアクセスを確保する観点からも、金融機関は国債保有する動機を強めると考えられる。
    
        W、結論
国債の供給増加にもかかわらず、主要先進国において国債利回りが上昇していない背景としては、民間部門の資金余剰もさることながら、国債は信用リスクがゼロで流動性も高い安全資産である、との認識が大きな支えになっている。
   
    白川の危惧
*しかし、政府といえども、自らの支払い能力を超えて借金を重ねることはできない以上、<投資家が信用リスクを意識し始める臨界点がどこかに存在するはず>である。
その意味で、政府債務の累増も、定性的には、民間経済主体の債務と同様に持続可能ではない金融現象、すなわち「金融的不均衡」という側面を伴うと考えられる。


      4.政府債務の累増が金融システムの安定を脅かすメカニズム
ソルベントであるかどうかについて客観的な判断を下すことは難しい。一つの拠り所となりうるのは、現在の税率や支出構造などからみて、将来の税収拡大や支出削減の余地がどの程度あるかという視点である。
*。「財政限界(fiscal limit)→例えば、税率が既に高い経済では、それ以上税率を引き上げると所得を生み出す経済行動へのインセンティブが阻害されて、かえって税収が減少する可能性もある(W、日本の税構造の特異性)。
あるいは、政府支出を現在以上に切り詰めることが、政治的にきわめて困難という状況もありうる。
こうした状況は「財政限界(fiscal limit)」と呼ばれ、政府債務を安定化させるうえで税率や政府支出をもはやこれ以上調整できない限界が存在すると考えられる。
*経済が財政限界に達した時点で政府のソルベンシーが失われると整理できる。ただし、「財政限界」について正確に認識できるわけではなく不確実が存在する。
        
    国債の市場取付けとソブリン危機> W、省略しても良い
 仮に政府のソルベンシーに多少の疑問があっても、他の投資家は政府のソルベンシー回復を信じて国債を満期まで保有するだろうと予想できるならば、自分自身も国債保有し続けることに合理性がある。
しかし、何らかのきっかけで、他の投資家が国債の売却圧力を強めるのではないかという懸念が強まると、個々の投資家は売り遅れまいと実際に国債を売却するようになる。
その結果、国債利回りが上昇し、政府の資金調達コストが上昇した状況が続くと、政府のデフォルト確率も徐々に高まる。
 「市場取付け」のプロセスを加速させる要因として、次の4点。W、リアルな技術論で省略しても良い。
第3に、ある国の国債の価格が下落し始めると、多少なりともソルベンシーを巡る疑念があるなど類似した状況にある他の国の国債も売却されやすくなる、という心理的伝染である。
第4に、各国の国債市場へ分散投資を行っているグローバル投資家は、ある国債の価格下落による損失をカバーする目的で、利益が出る他の国債を売却することもありうる。

        <金融システムの安定化に中央銀行が果たし得る役割>W、技術論濃厚すぎて省略


     5.政府債務の累増が物価の安定を脅かすメカニズム 
W。現状、日銀当局は、国債市場から国債を購入が主体であって、国債の直接引き受けは副次的である高橋洋一に寄れば、2011年度予算には30兆円の引き受け枠があり、12兆円分の国債を日銀は引き受けた。高橋の議論は国債の日銀引き受けの枠を大きく利用するものである。
 
 それでは、政府による財政健全化が進まない場合に何が起こるであろうか
財政のプライマリー・バランスの赤字が続き、中央銀行が追加的に増発される国債を購入する場合、中央銀行のバランスシートは膨張を続けることになる。
*低金利下においては貨幣の流通速度が低下する傾向があるため、中央銀行のバランスシート拡大が直ちにインフレにつながるとは限らないが。
政府に対する市場の信認が回復されない中で中央銀行国債購入を継続することは、物価の先行きに大きな不確実性をもたらすことになる。
    
   <金融システムの安定と物価の安定のトレードオフ
政府のソルベンシーが失われると、
金融システムが不安定化する蓋然性が高いため、中央銀行は独立性を付与され物価安定に強くコミットしていたとしても、金融システムの安定と物価の安定のいずれかの選択に追い込まれる可能性がある。
すなわち、政府債務の累増は最終的に、金融システムの安定と物価の安定の両立を難しくする可能性が高い。
例。1920 年代前半のオーストリアハンガリーポーランド、ドイツのハイパーインフレ、第二次大戦後1950 年頃までの日本のインフレは、いずれも、中央銀行の財政ファイナンスが原因となってい
そうした経験に学んできたからこそ、現在は中央銀行の独立性が重要という考え方が確立されており、多くの国で中央銀行による財政ファイナンスは認められていない
 
   *W、現状分析に参考になる見解。白川の危惧。
さらに、人々が将来の政府や中央銀行の行動について、「財政規律は回復されない一方、中央銀行は金融システムの安定に万全を期すはず」という強い予想を持った場合、
実際に中央銀行による財政ファイナンスが行われていなくても、それに対する予想からインフレ圧力が顕在化する可能性もある。
*、デフォルトと財政健全化が起こらなければ残るインフレが起こるはず、という予想が形成されて<企業の価格設定行動が変化>するためである。
*実際には、人々が
そこまで明確な予想を早い段階で持つ可能性は低いと考えられるが、
*政府債務の累増とともに、<物価安定に向けた中央銀行のコミットメントが次第に信頼性を失う可能性>があることは、十分意識しておく必要がある。

    <デフレ圧力が根強い日本のケースをどうみるか>白川の立場(少子高齢化に主因の基本見解だが)からの日本のデフレ認識~こうしたメカニズムは、近年の日本において働いている可能性がある
**政府債務が累増していても、将来の歳出削減・歳入引き上げの余地が十分にある、すなわち「財政限界」までの距離が十分にあると人々が認識しているならば、
予想インフレ率は上昇せず、したがってインフレ圧力も高まらない。
**W.日本のケースはほぼコレに該当、ただし<デフレの原因は複合的>であり、ごれか一つに決め付けることはできない
だからこそ、インフレ目標2%にして、日銀が年間80兆円も国際市場から国債を買い付け、資金を流しても、目標値は達成できない
1、需給不均衡  2、新興工業国台頭によって、製品の市場競争圧力強化(コスト削減) 3、サプライチェーンの海外化 4、少子高齢化 5白川の指摘 財政健全化圧力(歳出削減、増税懸念)
**その際、財政の健全化が、経済成長力の強化というより、もっぱら限られたパイの中での歳出削減や増税によって行われるという予想が強い場合には、人々は現在の支出を抑制する姿勢を強め、むしろデフレ圧力が生じる可能性もある。
**。日本ではバブル崩壊後約20 年間にわたって財政赤字が継続し、グロスの政府債務残高の対GDP比は200%を上回り、先進国中最大となっている(図表5)
W、白川デフレ認識は、バブル崩壊後の経済停滞が始まった時期と少子高齢化の始まりを二重写しにするところに特徴がある。
   
   <それにもかかわらず、長期国債の利回りは低位で安定し、インフレは生じていない>
これを、成長期待と財政健全化の予想という先に述べた2つの側面から整理してみよう。
1)、日本では、財政限界までの距離感と国債保有構造という2つの点で、「最終的に財政健全化が実行されるはず」という予想が形成されやすい状況にある。
まず、日本の経済成長率については、急速な高齢化や生産性の伸び悩みなどを背景に、総人口一人当たりの実質GDP の成長率が1980 年代の約4%から近年は約1%まで大きく低下している(図表6)
こうした趨勢的な成長率の低下は、今後さらに高齢化が進むと予想される人口動態のもとで、人々の中長期的な成長期待を低下させている可能性が高い。
潜在成長率の低下自体は供給力の伸び悩みであるが、一方で、将来にわたる成長期待の低下は恒常所得を下押しし家計の消費支出を抑制するため、慢性的な需要不足を通じてデフレ圧力を発生させる
>実際日本では、一人当たり潜在GDP の成長率の低下に伴って、<中長期の予想インフレ率が低下する傾向が見られる>
 
2)2番目の財政健全化の予想という点では、日本は多くの先進国に比べて国民負担率がなお低いため、将来の財政構造改革の余地があると人々に認識されているかもしれない。
*また、日本の財政赤字は一貫して国内貯蓄の範囲内にあって経常収支が黒字を続けているほか(図表8)、
*ストックベースでも国債残高の9割以上は国内投資家が保有しており、こうしたケースでは、海外投資家による国債保有比率が高い場合に比べ、
国債市場において「協調の失敗」が起きにくいと一般に考えられる
これらの要因が、日本の国債金利の上昇を抑制するよう作用している側面があるとみられる
>しかしそうであるがゆえに、成長力の強化を伴わない限り、政府債務の累増は、民間経済主体が将来の増税や年金削減等に備えて支出を抑制することにつながりやすいとも言える。