反俗日記

多方面のジャンルについて探求する。

金融、経済のグローバル化が進み、国家が経済政策、社会政策の領域で影響力を減少させているなか、<国内の治安維持>は<国防>と並び、国家が存在意義を誇示できる数少ない領域。米国獄産複合体と医療制度。

 
 「脱「ア」入欧」広井良典 NTT出版 引用
プロローグ、「テロ」後のアメリカにて
アメリカは、云うまでもなく先進諸国の中で際立って貧富の差が大きく、同時に凶悪犯罪率が突出して高い国である。著者の研究者時代に過ごしたボストンでも~所得水準や人種によって居住地域が画然とわかれており、低所得者地域では異様なほど街が荒廃し犯罪率が高い状態になっている。~全体的に治安がが悪いために、ダウンタウンが荒れており、ヨーロッパの街にあるようなにぎやかさや華やいだ感じが全くない。~
 つまり貧富の差の拡大により犯罪率が増加する場合は刑務所に収容して抑え込めばよい、という発想、抽象化すれば『市場原理プラス『力による解決』という発想をアメリカ国内のみならず国際的な場面でもそのまま適用しつつあるように見える。
地球レベルでの格差拡大といった事は放置したままで、犯罪を見つけて収容するという行動を世界中で行っていくことになるだろう。
 そしてそうした行動自体の結果として、世界は、アメリカ社会の日常がまさにそうであるようにますます「不安」と『緊張』に満ちたものになっていく。~このような意味での『世界のアメリカ化』が生じようとしているのだ
刑務所人口を増やすことで、一見社会に自由は残されたと思うものがいるかもしれないが、そこで生まれるのはセキュリティーにがんじがらめにされた自由だけ残された社会である」。

W。(1)資料。 繰り返し引用している「フランス最新事情」。
上記のアメリカのグローバル金融寡頭支配体制の国内矛盾から発する対外政策に、先進各国の支配的政治が同調していく社会経済的な基盤が存在する。以下の文脈において、実情のすべてが丁寧に云い現わされている。グローバル金融寡頭支配の世界共通の政治を読み解くテーゼのごときものだ。
 
「従来、フランスでは『治安対策』は保守派のテーマだった。保守は犯罪の厳しい取り締まりを訴えたのに対して、革新は治安悪化の背景には社会経済問題があるととらえ、貧困の改善による犯罪の予防政策を主張してきた。だが、1997年の社会党大会では治安を失業と並ぶ最重要課題と位置づけ、治安回復のためには従来の予防ではなく厳しい取り締まりを行う方針を打ち出した。これを機に保革の対立構造が崩壊し、治安対策は保革を問わずフランスの中心的な政治課題とされるようになった。
 
 だが、治安がなぜこれのど重要視される様になったのだろうか?
政治家はそろって、非行、犯罪が急増し、市民の間に<不安>が広がっていることを強調する。だが社会学者ローランは統計の基づいて、凶悪な犯罪や非行が実際には急増していないことを示している。
 
W。市民の間に<不安>が広がりは、マスコミ媒体の発達によって、個々人の想念が報道のバーチャルリアリティーにからめとられているという「現実」も加味されている。
実際にその事態と直接関係がないのに、実感したような気分になり、漠然とした不安感をいだき、たび重なるその種の報道は脳内に漠然とした不安感を蓄積させる。一方向からの過剰情報の渦中から、逃れ出す現実的なな術を持たない人々が増えている。
 
 その事からも、<不安>の広がりは必ずしも現実の治安の悪化だけ原因するものでなく、失業の増大や雇用の不安定化といった経済的不安や、9,11以降の世界上映の不安など、様々な不安と深く結びついて強化されていると考えるのが妥当であろう。
金融、経済のグローバル化が進み、国家が経済政策、社会政策の領域で影響力を減少させているなか、<国内の治安維持><国防>と並び、国家が存在意義を誇示できる数少ない領域である。
W。難しい話はともかくも、国外での低強度戦争状態を維持すれば、人々の関心は国内の政治経済矛盾に向かわず、外に排外される。分断して統治せよ、と同じく、古くて新しい支配層の統治手法である。
 
福祉国家は1970年代以降、国内の企業が人件費と法人税の安い国に生産拠点の移転を測ったために、国内に失業が増加し、税収が減少し、それまでの福祉国家体制を維持することが難しくなった。
>失業が増大しているうえに福祉が削減されれば、必然的に貧困層は増大する。
>だが貧困層の増大は、貧困層以外のヒトにも不安を与え、社会全体に不安を与えることにもなる。
>そこで人々に不安を与える貧者を監獄に収容するという厳罰化政策が、軒並み先進国でとられるようになった
実際に、1985年と2005年を比較するとフランスの受刑者数は倍増し、受刑者の多くが貧困層であることが実証されている。
>9,11以降、テロに対する恐怖が世界中に浸透し、身を守る安全の要求がいつになく高まっていることも治安対策が強化される要因の一つである。
アメリカの対テロ戦争には国民の安全を守るためには国際法もいとわないという姿勢がみられ、ここにはフーコーが1970年代に指摘した法を凌駕する安全性装置に統治された社会が極めて今日的な課題として表れている。
こうした情勢の中で、本来は多様性に富んでいたはずの安全概念(犯罪、テロなどに対する)取り締まり、という一側面に落ち込んでしまい<非安全に備えての安全>という保険の論理が世界中に浸透しているように思われる。
 
(2)資料   引用 山口二郎「イギリスの政治、日本の政治」ちくま新書~全文読み通してイギリス政治かぶれの学者とわかった!日本とイギリスの過去現在の条件はあまりにも違いすぎる。今のイギリスが今の日本になれない様に、過去の日本は過去のイギリスではなかった!
イギリス労働党のブレアのニューレイバー政策における軒並み先進国でとられるようになった厳罰化政策。
 
「ブレアは若手の指導的政治家として急速に台頭した。~
伝統的に労働党は犯罪を社会の病理と現れと考え、重罰よりも社会政策によって犯罪を防ぐという立場をとってきた。しかし80年代以降、都市の若者を中心とする犯罪の増加、集団的蛮行は、都市生活者にとって脅威となってきた。サッチャー労働党を犯罪者に対して甘いと非難してきた。ブレアはこうした批判を跳ね返すために、犯罪に厳しく犯罪の原因にも厳しくと云うスローガンを唱え、犯罪者に対する刑罰の厳格な適応と、失業や学校の荒廃など若者の犯罪の背景要因となっている社会問題への取り組みを同時に主張した。
>法と秩序は保守側のスローガンであったが、ブレアはコレを換骨奪胎することに成功した。」

          
 
      コレはいったい何なんだ!ニューヨーク、スリーストライク法   獄産体制の実態 
W。以前、獄産体制を特集した記事でアメリカの刑務所収容<人口>は230万人、名古屋市の人口よりも多い、と記した。
本当にこんな法律があるのか。堤未果「貧困大国アメリカⅡ」2010年岩波新書 引用。
「1994年州法として成立したスリーストライク法は、犯罪者が3度目の有罪判決を受けた場合、最後に犯した罪の重さに関係なく自動的に終身刑にするという法律だ」。
 
W。よく凶悪犯罪の件数は減っているが刑罰の重罰化によって、刑務所収容人口が増加したなどといわれるが、このスリーストライク法は、日本でいえば、常習累犯に相当する犯罪に対してほぼ終身刑の適応を科す、というものである。刑務所人口が増えるはずである。また、刑罰の重さに関係なく、2回有罪判決を受けたものは、おちおち社会生活も営めない状態になる。行動的な社会活動家の政治活動の幅も実質的に制限され、事実上治安維持法の機能を果たす異常な法律である。

W。これはいったい何なんだ!日本ではこういうアメリカの刑務所の実態は報じれていない
 
*借金漬けの囚人たち 同上引用
ニューヨーク州内の刑務所で18ヵ月半の刑期を務めた24歳のアランジャクソンにとって出所はマイナスからのスタートだった。訴訟費用の未払い金89万円と、それに伴う利子と罰金が130万円、総額219万円の借金を抱えていたからだ。
『僕の悪夢は、逮捕された瞬間から始まっていました。罪状はほんのちょっとした窃盗でしたが、まず逮捕された日付で、法定手数料3万円囚人基金の積立金2500円の請求が来たのです。』
ニューヨーク州は州法により、薬物関連犯罪、窃盗罪及び強盗で逮捕された全被告に、その経済状態にかかわらずこの法定の支払いを義務付けている。
 
「刑務所が囚人たちに押し付ける負担範囲は拡大する一方です。囚人たちが用を足すとき使うトイレットペイパーや図書館の利用料、部屋代食費最低レベルに医療サービスなど本来無料であるべき部分まで請求されています。」
 
『刑務所内の労働単価はどれくらいでしたか?』
『時給40セントでした(W、約48円)。でもそこから部屋代と医療費で毎日2ドル(¥200)づつひかれましたから残高はあっという間にマイナスになり、気がついた時には他の未払い金と一緒に支払い不能な額まで膨れ上がったのです』
『刑務所内では模範的な囚人だったと思います。~出所したらまじめに働いて家計を支えるつもりでした。でも面接に行くとこう言って断られました。
<前科があるだけで差別するつもりはないが、借金額がちょっとね。>』
 
『民営刑務所と連邦刑務所ではその内容に違いがありますか?』
『おそらく民営刑務所の方がひどいでしょう。~ですが最近ではコストカットを最優先する連邦や州も民営と同じようなことをして、請求範囲を積極的に広げています。
ペンシルベニアの郡営刑務所では囚人1日当たり1000円も請求していますし、同じ内容の法案はカリフォルニアを始めいくつも州で出されています』
刑務所内の備品は市場価格の1,5倍の値段が付けられているという。
歯磨き粉は1本約600円で。コレを手に入れるために49,5時間労働をしなけれななりません』」

   第3世界並みの低価格で国内アウトソーシングを! 
W。獄産体制とは、さびれた地方に刑務所を誘致して地域の雇用を増やすことだけと思っていたが、ここまで来ると刑務所は産業である。
 
「カースウェル刑務所で囚人労働者?を雇えば、給与は月3600円から最大でも18000円となり福利厚生は一切ないため、経費を大きく節約できる。」
「マリーによると国内大手通信会社の一つ、エクセルコミュニケーションズ社の番号案内に電話をかけると、ほぼ間違いなくフォートワース刑務所の女性囚人オペレーターにつながるという。」
アメリカの番号案内サービスの利用件数は、年間26億回、70億ドル規模の巨大市場は各企業にとって激戦場だ。
だが、サービスを利用する側の国民は、電話の向こうのオペレーターが囚人だとは夢にも思わないだろう」
 
「~非正規社員がやるような一般データ入力や、航空会社の電話予約係、学資ローンのお客さま苦情センタージーンズや各種プリントサービス、セクシーな下着まで刑務所内で作られる製品やサービスの数は年々拡大しています。1000以上の関連企業名が載っている刑産複合体専門のイエローページ(電話帳の)まであるんですよ。
連邦刑務所だけで140種の製品とサービスを外部企業に提供しているのですから。
『連邦刑務所にとって最大の顧客はどこでしょうか』
国防総省です。
特にイラク戦争以降は拡大して、サービスの半分以上を発注しています。
兵士たちの食事(兵隊用の缶詰類と思われる)から生活備品、防弾チョッキなどの防具。他の戦争請負会社と同じく刑務所もまたあの戦争で恩恵を受けている企業の一つなのです』
    
    
  
      連邦刑務所の製品の全米市場シェア 1999年 WSJ
組立器具              98%
防具                 46%
組立家具              36%
スピーカー、ヘッドホーンマイク 30%
電気製品              18%
オフィス家具            17%
W。信じがたいが、こうした汎用品の輸入率は異常に高く、生産工場は、ほとんど国内に残存していないためと思われる。刑務所労働ならば、労働単価として途上国に十二分に対抗できる。
  
  

    ローリスクハイリターン~刑務所は夢の投資先
1999年12月、テキサス州のリゾートホテル内で開催された民営刑務所会議の会場は陽気な空気に満ちていた。
参加者に配られたパンフレットに、踊るような文字で書かれていたのはこんな内容だ。
「まさに民営化された旧国営事業のうち、今最もトレンディーな投資先~順調に増加する有罪判決と逮捕率が確実な利益をもたらしてくれます。急成長するこのマーケットに今すぐ投資を!」
アメリカ国内の投資家たちは、軍需産業やIT産業と並んで今最も利益率が高く人気急上昇の投資先として、刑務所ビジネスに注目している。
 たとえば、この業界の上位3企業をみると、現在全米民営刑務所の囚人のうち約半数を引き受ける最大大手の全米矯正施設会社は、1992年8ドルだった株価が、2000年には30ドルまで上昇している。ワッケンハック矯正会社は2000年のフォーブス誌による全米トップ200の中小企業リストに格付けされている。
 
 犯罪評論家リロイコーゼン。
「刑務所産業複合体こそ、将来を約束された投資先といえるでしょう。赤字を抱えた自治体や政府が教育や福祉公共インフラ予算を削るなか、唯一刑務所の建設だけはどんどん増やされているのですから
 
「犯罪率は上昇しているのでしょうか?」
「実際は暴力犯罪は全体の14%以下で傷害犯罪は3%以下なのです」
「凶悪犯罪は何位に行っているのですか?」
「上位10番目に入っていません。そうした恐怖をあおるのはメディアなのです。」
2008年のFBIによる全米犯罪率統計データを見ると、前年に比べて2,5%減っている。
一方、囚人数は1990年代から毎年数%づつ上昇し、~。全米ではほぼ、135人に1人が投獄されている。
アメリカの総人口は世界の5%だが、囚人数は世界の25%を占める<囚人大国>なのだ。
カリフォルニア州だけで1000か所を超える刑務所があるのです」

『脱「ア」入欧』  広井良典 引用  エマニュエルトッド「帝国以後」より
『悪の帝国』とか『悪の枢軸』とか、その他もろもろのこの地上の悪の化身についてのアメリカのレトリックは、あまりのばかばかしさで、^徳とその人の気質によって~嗤わせもするだろうし怒鳴らせもする。しかしこれは冗談ではすますべきものでなく、真剣にその意味を解読しなければならない。それはアメリカの悪への強迫観念を客観的に表現しているのだ。
その悪は国外に対して告発されるが、現実にはアメリカ合衆国の内部から生まれてくるのである。実際、アメリカ合衆国では至る所に悪の脅威が潜んでいる。
平等の放棄、責任ととらない寡頭支配集団の勢力伸長、消費者たちと国そのものの借金生活、ますます頻繁に適応される死刑、人種の強迫観念の復帰、~中略~
アメリカは至るところで悪を告発するが、それはアメリカが思わしからぬ行動をしているからなのだ。」
 
『脱「ア」入欧』  広井良典 引用
アメリカは云うまでもなく圧倒的に自由に価値を置く国であり平等や秩序といった政府や社会の作為的な努力によって成就できるものについては二次的な価値しか置かれないといえるだろう。
 それはプラス面は非常に強い形で表れるが、逆にマイナス面もまた極端な形で表れる、という特徴である。
概してその国の社会の悪い面というのはそこで住んでみない限りそれほど強くわからないという点である。確かに私たちは日本にいても日々の情報から『アメリカというのはずいぶん治安の悪い国らしい』とか「人種差別も根強く相当な貧困層がいる。』といったことは知っているが、その具体的な実感はそれほど強いものではないでだろう
W.観光やちょっと、住んだだけで、知ったかぶりはできない、ということ。立場による評価の大きな相違をある。
 
なぜならばそこに住んでみて初めて現実的に身近な問題として感じられる面を多く持っているからだ。他方そのプラス面、たとえば、音楽や映画極めて活発に、大変なエネルギーをもって作られているということは、まさに日本にそのまま伝えられる。
W。それはそれとしてエンターテイメントとして割り切って、楽しめばよい。また、現在のアメリカの音楽映画スポーツの影響力も昔ほど受けての心を揺さぶる程でなくなっているのも確か、だ。
 
とりわけアメリカは強烈な個性と表現を持った国だから、自然と私たちはポジティブな面をより大きく感じることになる。

社会のありようについての基本哲学の違いが最も端的に表れている領域は医療制度である。
  引用   格差国家アメリカ 大塚秀之
     アメリカにおける公的医療制度
メディケア   65歳以上の高齢者と障害者の一部を対象。
メディケイド  低所得者対象。
軍人向け医療保険
それ以外の医療保険の基本的に民間に委ねられている。
 
イメージ 1アメリカの健康保険制度の骨格を分かり易く言えばこういうことである。
アメリカのように民間保険が中心の国では患者と医師の間には政府でなく医療保険業界というビジネスが存在する。~」
W。日本のように政府機関が税と保険料を徴収して、患者を診る病院側が診療報酬を点数化して、患者が直接負担する治療費以外の7割の申請するというシステムはとは全く違って、アメリカでは、この役割を民間営利金融企業である保険会社が果たしている。ここに企業経営の病院、利益率第一の営利企業の製薬、医療機器会社が医療と産業の市場を形成する、という仕組み。
だからこの市場の論理を規制する仕組みは互いの競争原理しか、もともと組み込まれていない。病院、保険業界、製薬医療機器会社の繋がりは医産複合体を形成している。
 
*従って、65歳以下の年齢で、低所得でもない人々は企業が提供する民間保険会社の団体保険に加入するか、個人で保険会社と契約を結ぶことになる。
破産申請前のGM社のような全米自動車労組の組織労働者を優遇した年金保険制度(費用の一部は一台の車の価格に上乗せ)もあったが、今はコストカットの対象になり易い。全米の企業のうち60%が民間保険加入の企業。ただそれも日本のような強制加入ではなく、あくまでも民間保険会社を通じてのサービス。
 
企業で働いていれば、必ず保険に加入できるのかといばそうでもなく、企業に医療保険制度がなく、低所得でもない人々は、個人で保険料を払うか、加入せずじまいの道かを選択せざる得ない。
 
 
そのうえ、医療が基本的に市場に委ねられて入る結果、政府が価格を規制している他の先進国に比べ、高価な最先端の治療法や新薬の開発競争が進行する半面、医療費の上昇に歯止めがかからりにくい。医療費の高騰は医療保険の好とをもたらし個人による加入を著しく困難にすることになる。
 
保険未加入者の総数は2004年で、4580万人である。
オバマが解消しようとした無保険者の大半は65歳未満、なおかつメディケイドの受給資格を満たす程度の貧困状態ではない層、つまり職を持ちある程度の収入のある中間層がメインになる」(堤未果貧困大国アメリカ)
「年収2~4万ドルの層で無保険者は41%。4~6万ドルの層でも18%と年々拡大している」
 
W。無保険者の出る事情。
    堤未果
「医療破産する前のホセのケース。彼と妻子供二人をカバーするための保険掛け金、年間9086ドル(約90万円)。2004年の医療保険の掛け金は全米平均11,2%アップで4年連続二桁ケタアップ。このため医療保険に加入できなくなった従業員25人以下の会社が急増。
2006年の時点では、4人家族の掛け金は平均で年額11500ドルに上昇。そのため国内で保険を提供している会社は全企業のわずか63%になった。
原因は医療保険業界の『自由競争』と、巨大資本による独占。その地域で競争相手のいない保険会社は保険料をいくらでも値上げできる。また保険会社はあれこれ理由をつけて支払いを拒否してくる。
W。アフラックの保険の勧誘員が無保険者という笑えぬ事実もある。
 
   堤未果
「~彼らは被保険者を提供した先の病院や医師たちに経営方針どころか治療方針にも指示を出す。そして保険を提供する患者には、年齢や健康状態で保険料に格差をつけたり過去の病歴などを理由に保険料の支払いを渋り利益を上げる。」
W.患者と病院の仲立ちをする日本の政府の代わりに、営利第一の民間保険会社がたっているのだから、当然の成り行きである。アメリカでは市場原理の第一の受益者は株主経営者、従業員はコスト。会社経営は株主配当と利益を上げるために存在する。
心筋梗塞の手術に対して入院は4日まで、乳がん手術なら2日まで、というように細かく決められている。診療費を請求してもこの病気にこの入院日数は長すぎる。この抗生物質はもっと安くて同程度の薬に変えられるなど、患者は様々な理由をつけられて全額の支払いを拒否されるケースが多い。」

     天井知らずの医療支出  引用 「格差国家アメリカ」 大塚秀之
アメリカは他の先進国よりも多くの医療費を支出している。
W。医産複合体の主導者に山分けされて私物化、あるいは資本として回転している。
 
アメリカの年間一人当たりの医療費は日本やスウェーデンに2倍以上、国内総生産に占める医療費の比率も他国に抜きんでて高い事実がはっきりと示されている。
 
     年間1人当たりの医療費(USドル)
 米国    日本    スウェーデン   フランス    ドイツ   英国 
5287   2139    2594       2762     2916  2231

       ひとまず結論めいた視点を引用する。説得力がある。
同じようなアメリカに対する視点をエマニュエルトッドも「帝国以後」で指摘していた。結局、アメリカの社会経済構造は市場原理主義を徹底させて一見効率的な反面でロスも多い。こういう国内構造を改変できずに、維持している以上、世界市場を再分割して、冷戦体制崩壊時代の特別ボーナスを期待して世界に紛争の種を振りまき、蠢かざる得ない。そして世界はアメリカに迷惑する。
オバマの年頭教書の3分の2は国内問題に割かれているというが、次の大統領には、オバマケアのような目玉の国内政策がみあたらない。また戦争に船出していくのではないか。今度は同盟国を巻き込みながら。
バブル崩壊からの企業の立ち上がりも、国内の分配を縮小してものであり、企業は市場空前の利益を上げている現状がある。今回の記事の関連でいえば、異常に割高な医療保険の条件をカットするだけでも、相当な企業収益増になる
 
 
   引用。脱「ア」入欧。  肩書社会アメリ
「私がアメリカにおいて強く感じたのはこの学位、というものが社会で生きていく以上においてもつ圧倒的な意味である。云うまでもなく企業で働く場合に単なる大学卒業かMBAを持っているかはその仕事の種類、給与、昇給などに決定的な違いをもたらす~。
又何か意見や見解を人前で云うときに、その専門領域と直接関係のない話であっても学位の有無如何が極めて大きな意味を持ってくる。W。2度にわたるMIT研究留学者が云うのだから信ぴょう性はある。
そのため、何かの学位を持っている場合は名前の横に必ずその称号を示すのが通例である。アメリカ滞在中、勤務先の関係のあるビジネスシンポジウムに参加したことがあったが、その出席名簿を見るとそれはまるで学位の展覧会場の様相を呈していた。W。大昔のソ連時代の胸に輝く勲章か
 
~ではなぜそこまで学位に注意を向けるのか。
様々な理由はあると思うが、その一つはアメリカがいわば、「なにもなかった土地にいろいろなところから見ず知らずの人間がやってきた社会という面を強く持っていることからきているように思われる。そういう社会では学位というものはその中では最も客観的な信頼のおける判断基準となるはずである。Wフィフィさんも同じようなことを語っている。何処まで進学したかという手っ取り早く「公平」なID。
 
>しかし、現代のアメリカはそういた傾向が一段と進んで一種の専門家支配の社会になりつつあるように見える。
>日本においては「専門的な見方からすればそうかもしれないが、常識で考えるとどうも」とか云った云い方が良くなされるように、云わば専門的科学的知識に対する常識や自然な考え方からの抵抗というものがいつも働いていて、それが一つの専門家支配に対する抑制力として働いているように思える。
>日本の官庁では文系と理系出身者が一緒に企画立案し法律を準備しており~スペシャリストではなくジェネラリストの立場から大局的見地を定めている。
アメリカではスペシャリスト専門家こそ絶対的な発言権を有している。
 
>こうした専門家支配の傾向の最も極端な形で表れているのが、法律医療の分野である。
アメリカ社会では共有された常識というものが極めて薄いので、ちょっとした紛争でも常識による解決でなく専門の弁護士による解決にゆだねなければならない。
そして法律家たちがロースクールを出ているというだけで卒業当初から格段の所得を保障されつというのは、ある意味不合理なことだろう。
医療の分野でも日本のような国も定める診療報酬といった基準がないから、医師や病院がかかった費用はコレだけだ、といえば、それをただ請求されてた通り払うしかないわけで、コレは先進国の中で最も高価な医療費(国民所得の11%~12%)を招く大きな元凶となっている。
あるアメリカ人がこれについて「アメリカにおいて、患者は額の欄を空白にした小切手を無条件で病院側に手渡しているようなものだ」と書いているが、まさにその通りであろう。
 
>たとえば、医療過誤の訴訟のための法律の専門家たる弁護士の所に行き、逆に医師の側はそれに高価な損害保険に加入し、それがまた更に医療費を高額なものにしているという現在の状況などは、いわば専門家の間のキャッチボールされその過程でもともとないはずの問題が派生し、その結果として本来不要な費用を次々に生んでいるという事態とは言えないだろうか。
W。金融寡頭支配直轄の使用人は高給は、支配者が直接手当を与えればよいものを、民からの収奪構造的で保障、というみみっちさ。コレを続けていくと貧困が下層から上に蓄積していくのは必然。後はその欠損を外部収奪でどうにか穴埋めしたいという欲求が社会に募っていく。金融寡頭支配者は高みの見物をしているだけで自動的に大金が懐に入ってくる。
 
>このような状況において専門家支配の行き過ぎた唯一のブレーキをかけられる存在としての公的部門、すなわち政府が考えられるのだが、アメリカは伝統的に政府の役割に強い懐疑心を持っているのでそういった方向に向かえない。
>現在のところ専門家支配を抑制するコントロール機構がほとんど存在しないのがアメリカの状況であり、コレがさらに進めば大きなロスと硬直状況を生み、アメリカ社会と経済に場合によっては、致命的なものになっていくのではないか
W。アメリカ合衆国合州国!ど外れた州の独立性も大きな行政的ロスを生んでいる。
 
       ステイタス思考と個人主義の間
>これまでのアメリカの基本であった自由というものに最大の価値を置く社会の基本理念が、云いかえれば、以前のアメリカは粗野な個人主義プラス流動的社会ということで、ある一つの社会のありようを形作ってきたのだが、社会が成熟化し、かつそれが固定化に向かうようになると~人々は固定的地位の確保を~その典型が学位の取得ということである~を求めるようになり、その結果個人主義プラス固定化された社会というおかしな組み合わせになってきているのである。
 しかもまさにその個人主義的伝統から、アメリカでは専門家という名の特定の個人が強大な力を持つことに対する防衛性が極めて弱い。
そしてもともと共同体的な紐帯が弱いため常識による解決や判断ということが効かず、ちょっとした争いであっても弁護士の下へいかねばならず、~
医療費については医師が専門的に価格を決め、財政設計についてはその方面のアナリストに相談に行くという具合である。
 
>コレは個人主義というもののある一つの極限的な形~形式的個人主義とでもいうべきか~そこには明らかに硬直と本来ないはずのロスが見れとれる。
>しかしこのようなところに多くのエネルギーを使っている半面で、それは形式的なものであるから、実質的に個人の平等を実現するような方向には向かわず、その中で教育の機会均等から取り残された層が蓄積していき、それが国全体の経済競争力の低下にもつながっているのいである。
 
W。この辺の悪い意味でのダイナミズムが米国の特徴。従って、国家社会の構造自体が対外的な凶器になってしまう。派兵される米兵は貧困層
 
こうした状況を向け出す道は本質的に二つしかない。
一つの選択は公的部門すなわち政府の役割を積極化による社会的公正の実現
もう一つは、ヒト部との意識における倫理的なもの、ないしは共同体的な意識に裏移されたsy会的公正に実現~。
*しかし、交際的な競争力の低下にしても貧富の差の拡大とそれに伴う教育水準の劣悪化といった国内要因を無視して、日本など外国に石を投げているだけでは、アメリカは長期的にみてさらに悪い方向にだけだろう。
 
W。以上はアメリカだけの問題でない。要は金融寡頭支配の問題に集約できる。日本など先進国も同じ構造を持っている。程度と条件の違いだけである。国内で矛盾が激化すれば、外にそれを転嫁する構造が、国内自身の中に拡大し、それがまた国内に跳ね返ってくるという国内外を貫く循環構造なのだから、その渦中からの脱出口はない。
こうして先進国は金融寡頭制支配の強化の一途をたどり、その主導する世界市場はロシア中国インド、ブラジルの巨大新興工業国を市場再分割戦に巻き込み、餌食にしつつ、反発力によって複合不均等発展を激化させる時代に突入した。ウクライナ情勢の本質は当事者が何を思いどう行動しようと、アメリカ、EU、ロシアの市場の再分割戦、そのものである。シリア、イラク情勢もそれに準じた事態が発生していると、まとめ上げることができる。

 
資料(1)テロよりひどい!最悪の医療制度の実態。
 
資料(2)アメリカの医療制度って本当にヒドイ? 立場によって違いがあることがコメントでわかる。
 
資料(3)【鼎談】映画『シッコ』を見て―アメリカの医療制度と貧困  フィフィ氏・池川明氏・小林綏枝氏
W。日本在住者で日本人の夫を持つエジプト人のフィフィさんは、アメリカ留学経験もあり、異色の立場から、第3者的な視点で良く観察している。面白い。
 
資料(4)
日本の「普通の医者」による、映画『シッコ』の感想
 
資料(4)C.イーストウッド新作『アメリカン・スナイパー』が『アバター』を超える大ヒット記録。マイケル・ムーアもの申す。http://ro69.jp/blog/nakamura/117187
2015.01.20 11:59
 
資料(5)このヒトに聞きたい。マイケルムーアhttp://www.cinematoday.jp/page/A0001477
Q:あなたは、なぜアンチ・マイケル・ムーア掲げるWeb Siteの創始者を援助(彼の妻が抱えていた医療費を払ったこと)をしたのでしょうか?(一部のメディアでは、これが宣伝文句として面白いから映画内で使われたとしている見解があるため)。
その内容はオーディオ・ファイルとして彼のサイトに載り、その記載された文には、私が援助したことへの感謝と映画の成功を祈っていると書かれていた素晴らしいものでした。
彼の返答は、たとえ政治的見解の違いこそあれ、この行為が自分の胸中から出てきたものであると理解していました。彼自身も医療費の心配をせずに、医者に治療してもらえるべきであることを望んでいると信じていたんです。
 
W。マイケルムーア監督のドキュメンタリの一覧を見ると、生まれ故郷のミシガン州のGM発祥の地で
GMの労働者として働いてきた祖父と父の息子として生まれたムーアがGM工場の閉鎖、海外移転に見舞われて、急速にさびれていく街の様子とGM経営に取材した映像に興味がわく。
 マイケルムーア原一男監督の「行き行きて、神軍」に最大の賛辞をささげているが、奥崎謙三の「いつでも過激、どこでも過激な」破天荒、ハタ迷惑極まりない徹底した行動主義のキャラクターに密着して取り続けた映像は日本のドキュメンタリーの最高傑作であると思う。
初めて映画館で見たときはエッ、こんな人間がこの日本にもいるんだと、度肝を抜かれた思いがした。
奥崎健三は時間の経過の中で過去の私的歴史空間を水に流すということの対極の、身体を張っての単独超過激行動は日本の庶民には稀有なものではないか。
監督の映像技術と当時の奥崎健三のあり方が、一点に凝縮された二度と造れない芸術作品であった。
 
映画史上、あのようなドキュメンタリー映像はそれまでなかった、のではないか?
 
1987年公開の日本映画奥崎謙三の姿を描いたドキュメンタリーである。日本国内外で多くの賞を受賞
した。今村昌平企画、原一男監督。 キャッチコピーは「知らぬ存ぜぬは許しません」 ...。ベルリン映画祭カリガリ映画賞。
  
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  1954年生まれ~
<社会派ジャーナリスト時代>
ミシガン大学フリント校を1年で中退し、22歳で隔週刊誌『The Flint Voice』(後に『The Michigan Voice』と改名)を刊行。廃刊になったが代わりに1986年マザー・ジョーンズ誌の編集者となりカリフォルニア州に転居する。
<フィルムメーカー時代>
1989年、生まれ故郷の自動車工場が閉鎖され失業者が増大したことを題材にしたドキュメンタリー映画ロジャー&ミー』で監督としてデビューする。アポイントメントなしでゼネラルモーターズの企業経営者、ロジャー・B・スミス会長に突撃取材する手法が話題を呼んだ。
1997年に監督したドキュメンタリー映画ザ・ビッグ・ワン』では『ロジャー&ミー』と同様の取材方法で、アメリカ国内の工場を閉鎖して失業者を増やしながら生産工場を国外に移して利益をあげるグローバル企業の経営者たちに直撃取材を敢行している。
アメリカのマイケル・ムーア監督が「生涯観た映画の中でも最高のドキュメンタリーだ」と語っている。
W。ドキュメンタリーは取材対象によって、成否が左右される、とわかる。
マイケルムーア監督のドキュメンタリ映像の原点は『ロジャー&ミー』である。