反俗日記

多方面のジャンルについて探求する。

大前研一「ロシアショック」を引用して、ロシアの経済改革の実情の再検討。資源輸出とバーター化してサウジアラビア化したロシア経済。ロシア市場の魅力。広域圏とタックスヘイブンの論理。

   大前研一「ロシアショック」引用 
W。海外カネ儲けの水先案内人。その分、提出する資料や事実関係にむき出しの客観性が認められる。だから、どのようにも解釈できる抽象論を並べ立てる学者さんの面倒な論文よりも事実を知る資料として利用価値がある。
大前の顧客は中小製造業。発展途上国の企業。したがって、途上国へのアウトソーシング(囚人人口200万人までアウトソーシングの対象)などで徹底したコストダウン経営を実現している米国企業事情では、もう大前のカネ儲けの指南は通用しなくなった。
 そこで、米国バブル崩壊を機に「さらばアメリカ」となった。次々に指摘する事実は資料として価値があるが、バブル崩壊以降の米国大企業の空前の利益獲得までは全く予想できず、日本のバブル崩壊以降の低迷のようなイメージで判断しがちであった。大前の予測は全く信用できないが、提出する事実関係にはリアリズムを見出せる。
政治感覚もカネ儲けの最適環境という基準で判断するので、EUのような広域政治経済圏の礼賛となり、明確な国家論はない。小回りのきく小国論者だから、当然、大国に対しては地域主権重視の企業活動に対する最適環境の創出がメインテーマとなる。
UE広域圏を前提としたタックスヘイブン、人口50万人のルクセンブルク礼賛は嗤える。アジアではシンガポール
大前の論法を日本に当てはめると徹底した道州制によって大企業のカネ儲けの最適環境を生み出すということになる。圧倒的多数の庶民の存在はカネ儲けの対象としてしか映っていない。

      第2章 拡大する市場 
W。中ソ比較経済改革史で取り上げたゴルバチョフの当初の重工業重視の加速経済発展戦略に対して中国側からは、農業や軽工業部門から商品経済を浸透させる戦略を採用すべきであった、という批判があった。
  引用。 
2015/4/7(火)
「序3.2 政策要因 
1985 年ソ連共産党書記長に就任したゴルバチョフは,西側諸国との経済格差や経済停滞に危機感を抱き,経済的立ち後れを取り戻すために機械工業部門に投資を優先的に振り向け,経済を加速的に発展させる「加速化戦略」を1986 年2 月の第27 回ソ連共産党大会で採択し,実行した(表序2 参照)。
*陸南泉(2007a)の見解によれば,経済体制改革の初期段階で行ったこの加速化発展戦略が,誤りの第一歩であったという。
加速化発展戦略は,ソ連経済停滞の原因を深く分析することなく,国情から遊離した結果,ソ連は危機から脱却しないばかりか却って国民経済の崩壊を加速した。
*また,この頃さらに先鋭化してきた消費財不足の問題を
*解決するためには,重工業優先ではなく軽工業の優先的発展へと経済構造を調整すべきであったが,実態にそぐわない加速化発展戦略を実行して改革の基礎の不安定化を招いたとして,先行研究は経済面での政策の誤りを厳しく批判している。
*第一の改革の順序の違いは,更に2 つの論点に分けることができる。
つまり第一の論点は,農業部門の改革が,工業部門の改革に先立つべきなのか否か
*中国は農業部門の改革から,ソ連は工業部門の改革からスタートした。
農業の場合,所有や努力,報酬のつながりが明確で,生産の増大に結びつきやすい。正に中国はそのような改革成果を享受した。
 一方,ソ連では工業から改革が着手されたが,工業改革は即座に生産増大には結びつかず,成果が出にくいという相違があったという。」
 
>W。大前の「ロシアショック」第2章 拡大する市場 
~にぎわう大規模スーパー、メガストア~に上記の中国側の指摘する根拠が隠されている。
  引用
「ツァーメンバーを連れていったのは食品小売市場第4位の『オーシャン』というフランスのハイパーマーケットだったが、週末ともなれば100列もあるレジに行列ができて30分待ちという状態で、参加者は皆驚いていた。
W。現在の日本ではあり得ない需給状況だが、高度経済成長時代の当初、大型スーパーが展開しだした頃は似たような状況だった。
 
>(最大手のスーパーチェーンの)資料によると、ロシアの食品小売市場は、2006年で2330億ドル。
>しかし公式統計では1460億ドルにすぎない。
*実は自宅の庭で作った野菜や果物を打ったり、物々交換するなど、統計に表れない私的マーケットが、37%にも上るからだ。
*市場全体は今後も年間12%の比率で伸び続け、2011年には4050億ドルに達する。
*その中でグレーW?なマーケットは30%に縮小ししていくことから市場規模は公式統計でも、2810億ドルに達すると予測されている。
>>~先進国型の主要業態がロシア市場に占める割合は33%で、コレは、チェコポーランドなど東欧先行組に比べてもはるかに低い水準である。今後急速に業態の転換が進むと考えられ、それに伴いロシア人のライフスタイルも大きく変化していくだろう。」
 
W。ロシアの平均的都市家庭は郊外に小規模別荘を所有しているといわれ、そこで自家製の作物を手作りしていると思われるが、その分を勘定に入れても、上記の報告からは、経済改革は農業、軽工業から、商品経済を浸透させるべきだったとの中国側の根拠の一端が明らかにされている。
報告からわかることは、当時のソ連軽工業、農業分野の生産と流通経路はチェコポーランドよりも合理化されていない状態。
ということは、全体の社会経済に混乱を引き起こさない、素朴な市場形成の余地が大きいということ。
まず経済改革で手をつけるべきは、下から、末端から、庶民経済に身近な生産流通関係を市場化することで儲かる仕組みを、導入すべきであった。
おそらく、街中に生活必需品の露店があふれる状態になっていただろう。この状態の素朴な商品経済の創出を優先すべきであった。その中から必ず、大規模化、流通経路の合理化が起こって資本形成もあり得る。
中央官僚の指令経済の重工業製品の増産流通体制を早急に築くことを経済改革の最大目標に掲げることは、消費物資の滞っているソ連経済の実体からかけ離れていた。多分軍産複合体の現状に幻惑されていたのだろう。

   第2章  拡大する市場 ~サウジアラビア化したメンタリティ~
W。オランダ病以前の酷いサウジ化~資源モノカルチャー?ただし、全ての天然資源の埋蔵量が豊富。それで世界経済は成り立っているのだが~?。
「ロシアと他の国との圧倒的違いは、輸入に対する抵抗感がないことだ。中国や東南アジアの国は、とりあえず輸入は許すけれども、国内で生産してほしいという欲求が強い。
中国の会社は国内に進出してきた日本のノウハウを勉強して、将来自分たちでも輸出できるぐらいになりたいと思っているし国もそう仕向けている。
韓国や台湾もみな同じ道を歩んできたし、日本自身も同じように欧米に追い付け追い越せでやってきたのだ。
>ところがロシアではこうした発言を全く聞いたことがない。~
>わたしは『ロシアがサウジアラビア化した』と言っているのだが『自国産を作りたい』という意識がロシアには全くない。サウジの人間が『ココで車を作ってくれ』と絶対に云わないのと同じだ。
>コレは産油国の特徴である。W。それだけではない!
良いものはカネで買えばいい。その代り自分の国も強いものがあるーというメンタリティだ。
 ではなぜトヨタサンクトペテルブルグで生産するのかという疑問が浮かぶが、コレはポーチンに頼まれたという側面もあるだろう。
だが一般のロシア人はロシアで作った車なんか買わないと言っている。『プーチンの心、子知らず』という感じなのだ。」
W。実利的にいえば、現地生産させないと、法人税が入ってこない、現地から対外輸出の道筋もつかない、技術移転の道筋も開けない結果、資源輸出と耐久消費財、資本財の輸入との交換の単純交換パターンが確立する。工業国にとっては、最高のお得意さんである。資源価格が低下すれば、この循環条件は厳しくなる。
 また、改革のどさくさの流動性の罠に紛れて投機によってソ連企業を私物化したオリガルヒ(金融寡頭支配者)が経済のど真ん中に居座っていることから、高度な製品工程によって、利潤を積み上げていくことをスルーする。
 
   中国にはないロシア市場の魅力。
「中国では~日本製品と他の国のと天秤にかけられ苦労する。
対照的にロシア市場のポテンシャルを考えると日本にとってロシアは『大お得意様』候補だ。~
ロシアでは、日本製品が他の国と同じように並んでいればン少しぐらい値段が高くても日本製品を買ってくれる。
>このように特別待遇してくれる点が、他の国と決定的に違うのだ。
>だが、コレも今のところはという話で、仮に日露関係が不必要に悪化したり、領土問題などをめぐってロシア人のプライドを気づつけるようなことがあれば、反転してしまう。
*一部の古い人たちを除けば、ロシア人には日本との戦争の記憶も知識もない。北方領土を奪ったというようなことは全く教わっていない。
*一部の日本人が持っている怨念を彼らは共有していない。
*日本人だけがソ連に裏切られたとか、領土を奪われたという怨念を持っているのはむなしい限りだ。
 
    第2部 ロシアンビジネスチャンス
  愛される日本、出遅れる日本
日本への関心の高さ
<ロシアの対日感情>
 日本非常に好き   まあ好き   無回答  やや嫌い  非常に嫌い
  23%          51%     9%    13%    4%
<日本の対ロ感情>
やや親しみを感じる    あまり感じない   親しみを感じない
 13%             46%         36%
 
日本企業はロシアでは売ればもうかるのだ。
ロシア貿易会モスクワ事務所所長池
『石油価格高騰でこの国の経済が潤うのは当たり前ですが、石油以外の天然資源もこの国は超大国。我々が思っている以上の超大国です。
そして教育レベルの高い国民もこの国の資源です。21政治においても、他の国よりもはるかに多くの資源を持っていることは、この国の大きな強みです。
ロシアに進出している日本企業の大半はものすごく儲かっています。皆さんあからさまに云いませんがむしろ売れて困るという声が大きい。』
 
   ロシアメーカー別家電市場シエア。 
W。日本の家電メーカーはテレビの6%シェアが最高位ベスト10にも入っていない。
 ロシアメーカーの家電シェア(2005年)
テレビ  韓国 サムソン   16%
     
      韓国 LG      10%
    
 
 
      仏            8%
      オランダ フィリップ 7%
冷蔵庫  伊          30%
       露          20%
       露          13%
       韓国         7%
       韓国          7%
洗濯機  伊          24%
      不明外国メーカー 21%
       韓国        16%
       韓国        12%
       独          11%

 W。次の視点は、現状のウクライナ情勢、ロシア経済制裁、サウジの原油増産=通貨戦争の背景を解くヒント
しかし、米国バブル崩壊、EU金融危機の脱出口が金融帝国主義の凶暴な侵略性にしかなかった事情から、ココで云う大前にの見地は消滅したわけでないが、条件が変わってしまった。
鳩山元首相のクリミア訪問報告の動画に出演した孫崎享さんの見解は、下記の状況を前提とした米国のウクライナ介入によるEU⇔ロシア接近への分断戦略に比重を置いているようだ。
ネオコン、ヌーランド(ユダヤ人女官僚)欧州担当の暴露された在EU大使館との電話会話などによって、その要素の大きい事は証明されているが、米国バブル崩壊、EU金融危機の脱出口が金融帝国主義の凶暴な侵略性にしかなかった事情を全く認識していない。
EU米国従属覇権の日本金融帝国主義は今一度、ロシア中国の体制崩壊によるボーナスを狙っている。孫崎享さんの指摘した情勢は過去である可能性が強い。
 
「東ヨーロッパの国々がEUに次々と取り込まれていくのを、ロシアも最初は苦々しくい想いで見ていたはずだ。
ところが考え点煮れば、ブリュッセル(EU本部)はかららの面倒を見てくれるならロシアは負担が少なくて済むし、石油や天然ガスは買ってくれる。
EUが『お客くさん』だと気付いたため、ココ数年でロシアは完全に大人の態度に変わってしまったのである。
グルジアづンそうでも米国の手前、EUは反ロシアを唱和した。だがグルジアが先に手を出したことが判明し、米国の軍事顧問団が鑑賞していたことが明らかになるにつれ、EUはトーンダウンしてしまった。
さすがロシアが一方的に行った南オセチアの独立承認は拒否しているが、それはある意味、ロシアにとっても都合がいい。~
EUも一方的にコソボの独立を認めている。~
>>W?EUとロシアはこのようなきゃっちぼーるをしながら、しだいに米国をEU、NATOからゆうりさせ、ロシア人がいりこむすきを見計らっている、と私は見ている。(W。この見解の位相はエマニュエルトッド「帝国以後」のEU、ロシア関係接近の戦略論とよく似ているが、トッド世界状況論は時代認識にそぐわないと破棄した)
ゴルバチョフの時代に、ロシアの人たちが盛んに『ヨーロッパに家』という云い方をした時期があった。
彼らの云う『家』という意味は日本人に理解しにくいが、ある意味では共同体のようなものだろう。
>もう冷戦の時代ではない、ロシアは今度はヨーロッパの家に云ってやっていくのだという意識だ。
 
W。現状のEUの立場からするとプーチン流の主権民主主義はグローバル資本活動の邪魔になるから除去し、周辺経済の半従属状態にして餌食にしたいという長期戦略を持っている。従ってウクライナ介入には米国ともども積極的だ。東欧のEU 加盟直後のEU、NATO軍のセルビア爆撃は転機なった。戦前当地に根付いていたナチス政治団体の歴史にシンパシーを抱くドイツのEU内の暗躍があった。
ウクライナはもともとロシア革命前にユダヤ人大量虐殺(ポグロム)の多発した地域で、ドイツ人入植者の多かった。ウクライナナチス張りの政党はその歴史を引きずっており、多分、ドイツのネオナチも参戦していると見る。
 
逆にEUからみれば、ロシアを加盟させることで、米国を凌駕し、超語句にも対抗できる力を見てる。巨大なサウジアアラビアを内部に抱え込むようなものだから、OPECに対する抑止力にもなる。
ルーマニアブルガリアなどの貧しい国を加盟させたとなれば、ロシアが『EUに入りたい』と言ってきたとき断る理由はない。
貧しい国が次々に加盟してきているため、いづれEUの財政は苦しくなっていくだろう。その時ロシアの潤沢な財政力を取り込めるのであれば、EUはロシアを歓迎するはずだ。」
 
W。大前はEU結成からの内外の政治史を検証した方がいい。
EU各国の国内事情としては大まかにいえば、リベラルヨーロッパ(資本の利益重視)とソシアルヨーロッパ(社会民主主義政策による分配重視)の相克があった。冷戦体制崩壊後、欧州の社会民主党は一気にソシアルヨーロッパの視点を捨てて、リベラルヨーロッパ路線を選択するようになり、資本の利益最優先ということで主要政党は一致を見た。これに対して反抗するのは、旧共産党左翼、と日本では極右と呼ばれている政治勢力だけとなった
 かくして、国内の高失業高インフレ低成長を放置した、周辺経済地域への金融資本的超過利潤を求める拡張路線が定着した。コレは米国の利害とも戦略的に的に一致し、大前の描きだすような大掛かりな地球規模の戦略性をEUは必要としていないし、その能力も持っていない。
大前の見解は絵空事である。
 
       地域国家論を体現したEU
「19世紀の国民個kkは、大きければ大きいほどいいという考え方が基本にあり、帝国主義もこうした国民国家観に基づいて植民地を拡大していこうというものだった。
>しかし、21世紀のボーダレスワールドにおいては、国民国家ではなく地域国家が発展するというのは私の地域国家論であった。
>EUの良い点はフィンランドなど、諸国が優秀で、非常に高い一人当たりのGDPを誇っているところだ。その成功は小さな地域国家である故なのである。
とくにEUの始祖であるルクセンブルグは人口たった50万人しかないが、知恵と金融だけで勝負し、成功を収めている。
>世界のファンドは資金をロンドンに持ってくるが、そこからルクセンブルグを経由して世界各地に分散される。
W。どうしてロンドンから直接、投機しないのか?できないのか?
ルクセンブルグでは内外に出入りする資金の動き把握はしない、無税。つまりタックスヘイブン。この各国から税逃れをした闇に包まれた膨大な資金の動きが、世界の各国の政府の財政の不安定化をもたらし、株相場、為替相場への投機、資源や果ては大切な食料品のへの投機に暗躍している。基本的に世界中の過剰流動資金はタックスヘイブンに収納され出たり入ったりしているもの、と考えてよい。
W。このような環境を生み出すことは、国民国家では、有権者住民が黙っていないので、できない。
 
>アジアでこのポジションに当たるのが、シンガポールで、やはり小さな国である。
 
W。グローバル資本制の反人間的側面を体現したような存在である。大海に浮かぶ見かけは極小だが、海賊たちが世界中から奪ってきた黄金でできた島。現代の海賊どもの巣窟。
攻め込んでいって財宝を奪い返すことも不可能ではないが、それができない。世界中の支配層のカネが集まっているからだ。
 
     小国ほど有利になる仕組み
W。広域圏の安保にただ乗り、ということ。
 
W。大前の議論の行き着く先には、人間とは何か、生きるとは?という議論が出てきて不思議でなく、その先には宗教の出番があるだけの貧相な議論である。
「さらばアメリカ」どころか骨の髄まで米国発のイデオロギー犯されている。こんな人間がいっぱいの国は生き難くなる。