反俗日記

多方面のジャンルについて探求する。

「憲法劣化の不経済学」~日本とドイツの戦後から考える~を批判する。中国脅威論と中国蔑視で、どこが憲法9条遵守(一言の言及のなく飾りですらない)と日本経済なのか、アジア広域経済圏構築なのか。

憲法劣化の不経済学」相沢幸悦(こうえつ)は2015年発行の本らしく、第二次アベ政権以降の国政の推移を踏まえ、安保法制国会審議を想定したリアルタイムな問題が、サブタイトルに示されている~日本とドイツの戦後から考える~と云う視点から列記されている。まさに列記と云うにふさわしく、各論点が連綿と読者自身の側に投げ出されている。著者自身の~日本とドイツの戦後から考えた~結果の明確な政治思想が、展開されているわけではない。
従って読者自身が列記された事実を参考資料に考えなければいけない。そういう意味でリアルタイムな問題に限定されない資料を豊富に含む本である。
また、著者自身の元々の専門分野はドイツ経済なので、戦後ドイツの経済政治史と現状を分かりやすくまとめてくれており、非常に参考になった。
著者の戦後のドイツ観の奥底をあからさまにすると、ドイツは広域経済圏を利用してしたたかに立ちまわった、日本もそのしたたかさを真似しなければならない、と云うことに尽きる。その程度のものであるが、この東アジアでドイツのまねをしたらどうなるか。それがアベ路線である。ストレートに考えるとそういうことになるが、著者は日本国憲法9条の遵守と日本経済、と云うところに行き着く。
しかし、著者には憲法の立場(言葉)によって実際の経済政策の批判に結びつけるが、なぜ、東アジアの日本ではドイツ路線が適応してはいけないか、踏み込んで、問題にしていない。

Wはこの点について前回の記事で少しは明らかにしたつもりである。
(注)

であれば、日本国憲法の旗を立てて、中身を変えるアベ路線の追従者にならないか?現状の世界経済の問題の根幹に国家ーグローバル資本複合体の問題を置かず、国と国の問題、国民経済の問題、広域経済圏の問題に限定するので、日本国憲法遵守は空文句となり、アベ路線のコインの裏側になってしまう。
どういうことか?
国家ーグローバル資本複合体の現段階は、もはや国民益全体をインクルードできない、構成員の利益と一部の国民の利益しかインクルードしない。それは第二次世界大戦後急激に経済成長し、その富が主として賃金上昇と云う形で分配され、資産化した日本においてこれからハッキリしていく。
コレが内田樹のいうまだ日本では<負けしろ>があると云うことと理解する。ということは、一体いつまで<負けしろ>が持つのかと云うことが兆目される。<負けしろ>とは国民を犠牲にして、国家ーグロ資本複合体が生き延びる道である。

以下の記述は自分のために再現したものである。
>特に、今のドイツ金融資本にとって、EU圏の枠組みは超過利潤を獲得する最適環境であると云うところ。資本収支+貿易収支の国際収支はGDPの6%をこえている。中国を抜いてトップであるという。凄まじい!日本経済規模に換算すると約30兆円。日本政府の税収は60兆円ていどか?EU制度はドイツ資本の利得獲得システムに転化している。
 
>コレはフランスにも程度の差こそあれ、該当する。2008年を100とした2011年以降の実質経済成長率が+を示しているのは独仏だけと云う事実によって証明されている。
 
>ユーロ圏の平均の数値は2008年以降、98ポイントを超えることはない。
 
>最悪はイタリアで、スペインポルトガルのかなり下。ココまで悪いとは知らなかった
2011年以降の実質GDPはまさに、右肩下がりそのもので、91ポイントの谷に落ち込んでいる
 
>スペイン、ポルトガルの現状は94ポイント。グラフの線は上向いている。
 
*2008年以降のイタリア、スペイン、ポルトガルのグラフの線は乱高下が激しすぎる。資本は投機的利潤を求めて国民経済に直接関係のない市場を自由に行き来しているのだ。
 
>EUの枠組みはEU各国の国民多数の利益に反するものであり、まさに国家グローバル資本複合体のためにある。庶民の懐が乏しくなっても、マネー市場を蠢いていて、こうした実質経済成長率の低迷をも糧に、大金持ち、国家ーグローバル資本複合体の下に自動的にカネは吸い寄せられて行くシステムにますます転化していく
 
以上のようなドイツの一人勝ちのようなシステムに転化したEUの枠組みを基礎にドイツ基本法の解釈替えによるNATO域外へのドイツ国防軍の軍事展開が行われている。アフガニスタンに派兵されている兵士の中からすでに40人の戦死者が出ている。
 
>このドイツの現状と今の日本の現状を単純に横並びにして、深く掘り下げて考えなければ、TPP、安保法制などはどうってことがないとも、受け止められる。
 
著者の日本国憲法擁護が日本と日本国民の利益につながると主張は、ぼやけている。
うがった見方をすれば、著者の核心なき問題意識は(論点を連綿と列記しただけ)、現状のアベ政権のように日本国憲法の旗を立てたままで、秘密保護法制定、日米軍事同盟の世界化、そのための安保法制整備を容認すると云うことになりかねない。前回の記事の繰り返しになるが、古今東西の激動の時代における現代政治の世界では、本来の流れ」とは真逆の方向で国の形を変える」事が支配層の常道の統治手段なのである。
 
強い疑念は、<はしがき>の東アジア情勢の基本認識から沸き起こってくる。情勢の基本認識から、政治路線は導き出されるものである。
 
W。この程度のアジア情勢の現状認識から一体、現実的にどのような政治路線が導き出されるのか大いに疑問である。著者は国内市場の狭い日本はアジアにおける広域経済圏が必要であるとしているが、このような対中観で一体どうしようと云うのか。
 
問題個所の引用。
「W。ドイツの戦争責任の克服の仕方と高賃金高福祉長期休暇こみのEUの枠組みを利用した経済成長を述べて
~戦後、米国との連携の下で経済が成長してきた日本はと云えば、1990年代に平成大不況に見舞われ、200年代には、日本経済を支えてきた輸出が減退し、貿易収支は遂に赤字の転換した。
日本経済が生き残っていくには、ヨーロッパのドイツのようにW?単純比較!、アジアにマーケットを求めていくしかない。そのことを明らかにすることは長きにわたりドイツ経済を勉強してきたドイチェ、シューレの歴史的使命だと思う。
>経済成長を持続させるために、アジアの経済『支配」を目論んでいるとみられる中国はアジアのマーケットから日本を排除する『高等戦術』を実行しつつあるように思えて仕方がない。
W。性質の悪い中国脅威論であり、そんな基本認識では、まともな競合共栄共存関係は成立するはずがない。中国の政治経済と歴史に踏み込んで分析すれば、政治経済わたる巨大な矛盾を内部に抱え込んでいる現中国にそんな余裕と力はないし、アジア市場から日本を排除する戦術を追及して中国の利益につながるはずがない。
「思えて仕方がない?
重大な問題である。学者であれば根拠をはっきり示すべきである。
一方でアベ政権が日米安保軍事力を世界拡大した上で対中包囲網などと称している。他方、憲法を守ることが国益につながるとする御人が、根拠を示さず、ムード的な中国脅威論を吹聴している。コインの表と裏である。
日本国内限定議論である。
ただし、アベ政治路線を取り続けると、日本の方から勝手にアジア市場における経済力を後退させる可能性は大いにある。それを著者のように排除されているとらえることがある。現状、国家関係の軋轢にもかかわらず、東アジアの経済関係はつながりを強めている。広域経済圏を見てもわかるように国家ーグローバル資本複合体の利害は、国境を越えた世界市場において対立する側面と共通する二面性がある。コレが本質である。戦後世界体制の残存している東アジアの特殊性でも、この本質は適応される。)
 
>もし、そうだとすれば、日本の国益のため、その戦略を見ぬたうえで、慎重な対応(W?)しなけらばならない。」(W?日本国憲法の旗は立てたままで、中身をまるっきり替えることだってできる!現にアベがやっていることがコレである)
 
またこうも述べている。軽薄な議論である。
「いよいよアベ政権は、原発の再稼働、集団自衛権行使のための法整備に進む。
こうした中で、中国が日本を、侵略戦争を反省しないとんでもない国だとか、『対米従属』の日本は、アメリカの手先だとか云う国際世論を醸成することに成功すれば、日本は進みつつあるアジアの経済統合に参加することができなくなってしまう。それは日本の経済的な国益を著しく損なう。そうすると今のような生活水準を維持することが不可能になる~」
 
しかし、次のようにも云う。
「とくに、中国の経済成長を環境保全と調和のとれた形で進めるためには、日本の環境保全技術が不可欠である。現状のような中国の経済成長を放置すれば、日本の環境がさらに悪化してしまう。大量のPM2,5が日本中に飛来すれば、いづれ肺がんが続出する。」
W。以上のような近隣国に対する傲慢な了見を著書で公言する輩が「第5章 憲法第9条の遵守と日本経済」など、まともに論じられるわけがない。9条遵守は一切、事実論じていない。飾りなのである。
 
著書の中で
アジア市場の主導権を巡って、中国と争っていかなければならない日本は日本国憲法の旗だけはおろすな、と。そして、そのソフトな衣の下で、軍事政治経済システムをアベのように、国家ーグローバル資本複合体の利益最優先の政策制度の確立、日米安保の世界展開、すなわち、米軍事力の世界戦略の一翼を下請けとしてハードな展開を行う。コレが現状のアベ路線である。赤尾敏路線の能天気なアベ自身に下請けなどと云う自覚はないそいう云うアベ路線に実質的に追従している。
 
 日本とドイツの地政学的環境と戦後史の違い(結局は戦後史にとどまらず、歴史の違いに行き着く)を掘り下げて比較すると、一方のドイツ国会多数がNATO域外の攻撃的軍事行動を容認する根拠がはっきりする。
EUを衣とした自国の超過利潤のために軍事行動を選択しているのである。コレは今風の典型的な帝国主義の論理である。ホロコースト云々はつじつま合わせだ。
 
 他方、今、日本の国会で審議されている安保法制を成立させると、国民多数の利害に真っ向から反し、収奪し犠牲にする方向を選択することに他ならないことが、はっきりする。
コレは戦前と変わらぬ、国民を犠牲にする国体論理である。唯その国体の中身が国家ーグローバル資本複合体とそれにインクルードされた輩に代わっているだけだ
 
>EUとNATOの枠組みの中のドイツと現状に日本を考えるのであれば、当然にも、日本の選択し得る政治路線もある程度は積極的に論じなければならないが、日本経済と政治の歩みへの批判とアベ路線の批判に代替えされている。
エピローグで、国内市場の狭い日本の広域経済圏結成の必要性を押し出しているが、言葉の羅列で中身はない。そもそも、著者のアジア情勢認識、特に対中観は混乱している。残念ながら著者に一国の政治路線を云々する能力はなかった。
著者の指摘する内需拡大型の経済成長と国際収支黒字維持の方策、税収増などは絵に描いた餅である。
そもそも、今の日本経済のインフレ低成長ノーマルの体質からして、製造業の海外移転(国内研究開発海外企業の経営特化)と海外への証券投資、直接投資による資本収支確保は、典型的な国家ーグローバル資本複合体の利益のみ図る経済路線であり、内需拡大型経済成長とは矛盾している。所得収支増→税収増→賃金引き上げ、福祉の充実、長期休暇実現の筋道などは、庶民にとっては露の滴りを待つようなものである
しかし以上の戦略性の矛盾は本質的に著者の責任ではない。
これからのにほんでは国民経済はますます成立し難くなる。延命を図る日本国家ーグローバル資本複合体によって、日本国民多数は犠牲を強いられる厳しい局面に立たされている。この現実を直視したくなくて、顔をそむける人が増え続けていくだろう。

 注
引用、2015年6月30日 |
「~大阪都構想住民投票に言及してして~賛成者は
改革をやっていればそのうち何とかなるだろうぐらいにしか考えていない。これからの国家ーグローバル資本複合体の時代の制度改革とはそんな生易しい次元の問題ではない。ほどほど、なあ~なあ~にとどまることはない。立場によって良い悪いが極端に表れる。
同じ敗戦国でも2度負けたドイツの人たちはようやくわかってきたが、日本国民多数はまだ分かっていない。
政治軍事問題を目の前に突きつけられないと云う日本とドイツの地政学的環境の違いも大きい
ドイツ国民多数が事実上解釈改憲に同意している事実と、これまでの日本の内外状況と歴史にあまりにも違いすぎる。
戦後ヨーロッパは独仏経済協調に始まり(鉄鋼石炭共同体)、広域経済圏の枠組みが早くから実現し(EC)、冷戦体制崩壊後、ユーロ導入に至った。
NATOの集団安全保障の枠組みもあり、日本のように直接、米国との軍事同盟に依存しなくてよいNATOの枠組みの中であっても、米国と欧州と云う複数で向き合える。
>政治は基本的に1対1の関係の中からは生まれず、3以上の関係の中で機能する。
日米の軍事力経済力の差から、パートナー関係は成立しない。日本支配層は米国に従属し、その枠内で覇権を求めてきた(日本の従属覇権。~従属面だけを見るのは間違いである~日本の国家ーグローバル資本複合体が日本国民多数派を圧迫収奪しているのであって、米国のそれではない。
>従属関係が表に浮上してきた原因は、冷戦体制崩壊によって、東アジアの戦後世界体制が変容し米国にとって、従来の日本の戦略的価値が下がったこと。
①イ)中国の資本主義化、ロ)最前線の負担を強いられてきた韓国民主化と戦略的フリーハンドの拡大=ニ)その分、日本に緊張関係は移動した~日韓対立、核ミサイルの脅威~。
②世界経済における米国経済の相対化(世界GDPの23%程度、日本8%)は1985年プラザ合意までの、日米関係を持続させる余裕が米国にはなくなり、日米安保体制を基軸に日米両国につながる経済外的力にたよって、日本から利得を得ようとする。(イ)日米貿易摩擦→構造障壁協議→要望書→TPP 結局、社会経済構造そのものを米国流儀に染め上げろとの要求。でなければ米国が得意とする金融、保険、医療、農産品分野での日本市場への本格的な食い込みはできない。 
ロ)日米安保による日本軍事力の米軍世界戦略の下での下請け使用。
③急激な中国経済発展と巨大市場の出現による米中経済依存関係の成立。米国の東アジア戦略のかなめはは日中(北朝鮮)韓の横のつながりを分断し、適当に対立させ個別にハンドリング。
④そうすると、東アジア情勢(中東情勢)が激動すればするほど、(中国~北朝鮮~との摩擦が深まれば深まる程)日本支配層は米国依存を深め、ある段階から、それまでのハードルをエイヤーと飛び越えた。
日本固有の伝統的なの政治手法である。コレを相手の懐に思い切って飛び込む、とリベラル派の外務官僚は称している。通用しないのだが国家ーグローバル資本複合体は国民利害をインクルードせず、平気で犠牲にできるからそれができる。国民を犠牲にした国体護持は、戦前からの日本支配層の特性である。国体は語りを変えて生き残り、復活したのだ。グローバル資本複合体とそこにインクルードされた輩が復活した国体の実体である。いつまでたってもファシズムはやってこない。軍国主義もない。
>東アジア諸国の米国との関係では、米国はハブのような個別関係のプレゼンスを得ている。
ということは本質的に政治を有効機能させているのは、米国のみとすら言える。東アジア米中二極体制は存在しない。中国の歴史は専制体制が人民の負担を背負いすぎ、公共事業を最大限拡張したときに崩壊すると云う事実の繰り返しである。中国共産党は巨大な中国人民の海の中にメルトダウンするが、中国国家と人民は発展する。彼らは偉大であり、奥が深い。日本の尺度では測れない。
>以上のような日独のおかれたあまりにも大きな地政学的歴史的環境の違い、において、ドイツの解釈改憲による、作戦行動の域内(これも同質性の強い安全な枠組み内)から域外への拡大と日本の今、国会で議論されている安保法制の内容は別次元の問題である。日本がヨーロッパのドイツのような存在になるためには、もう一度大きな戦争をして、再び敗北しなけらばならない。それはできない?ならば、別次元であり続ける。
>更に昨日の記事で指摘したが、ドイツはEU圏の枠組みのなかで超過利潤を得られる構造を獲得しており、域外軍事行動は、云ってよければその見返りである。
日本はプラザ合意以降、日米軍事同盟によって、経済的果実を得てきたとは云い難く、むしろ経済面ではことごとく譲ってきた。にもかかわらず、米国経済の空洞化は止まないと云う必然性がから、米国は更なる深化した要求を打ち出していく。TPP、米軍世界戦略における日本軍事力の下請け使用=秘密保護法、安保法制で一応の到達点に達した。ドイツ軍のユーゴ爆撃までの経過を見ると今日本で議論している解釈改憲から、積極攻撃段階まで5年ぐらいかかっていることも参考になる。
>日本の今国会で議論している安保法制の要請も米国の要請が主導したものである。米国に対してEU圏やNATOの複数国の政治が打てない。
>またドイツに対するフランスのようなプラスマイナスの補い合える国が存在しない極東の日本では、安保法制は結局、米国の都合によって日本軍事力が世界展開することにしかならない
>おまけに、政治軍事面の以上の事態と経済面のTPP日本参加がぴったりと符合している。政治経済の肝心なところを抑えられたら身動きがますます取れなくなり、米国と日本のグローバル資本複合体は利害を一致するしかなく、それは同時に日本の国家ーグロ複合体が、ますます日本国民多数から収奪を深める道である。
>したがって、結論的にいえば、今の安保法制審議とTPPは日米にわたる国家ーグローバル資本複合体と、そこにインクルードされた者どもの利益のために、それ以外の国民を収奪するためにだけある。
>1930年代のナチスドイツではないが、一気に従来なかった種類の重要法案が立て込んできている事に注目する。圧縮された歴史の転換点を今目の当たりにしているのある。