反俗日記

多方面のジャンルについて探求する。

サウジアラビアの内外情勢。原発12基建設計画。世界最大の武器輸入国なった>武器とカネの対ロ関係。[PDF]第7章 サウジアラビアの未来 -2030 年をみすえて - 日本国際

  特 集 論 文    2 文明・文化
内藤正典
(一橋大学大学院社会学研究科教授)
「砂漠的風土→一滴の水も大切→人びとは一滴の水をめぐって争う→そこに住んでいるアラブ人も好戦的→彼らの宗教のイスラムも荒々しい。 この論理展開は、 和辻哲郎の 『風土』 をはじめ、 いろいろな書物に登場する。
  
 
 だが、 実際はむしろ次のようになる。 砂漠的風土→一滴の水も大切→だからこそ人びとは大切な水を共有し分け与える→イスラムもホスピタリティ (もてなしの心) や富の分配を重視する。 私自身、 なんども経験したことだが、 イスラム社会では、 たとえ見ず知らずの人間であっても、 遠くからやってきた旅人を心から歓待してくれる。 暑いさなかに砂漠で遊牧民のテントを訪ねたときも、 コーヒーやお茶をふるまってくれる。 砂漠を旅している人びとは、 いつなんどき水を失って危機におちいるかもしれない。 そういうときに出会った人間どうしは助け合うのである。」

   <創られる 『文明の衝突』>

W。イスラム世界とキリスト世界の相互関係決定的逆転現象が派生したのは19世紀と分かる。

「十字軍のころには、 イスラム教徒がキリスト教の聖地エルサレムを支配していたことが、 イスラムに対する西欧世界の敵意の源になった。
16世紀から17世紀にかけて、 オスマン帝国がヨーロッパに支配を拡大すると、 イスラムの脅威はヨーロッパの人びとにとって現実的なものになった。
19世紀から20世紀のはじめのころ、 今度は、 ヨーロッパの列強諸国が中東・イスラム地域を植民地として支配するようになった。
そうなると今度は、 イスラム教徒は野蛮で遅れているから啓蒙してやらなくてはいけないという優越感が西欧世界で強くなった。
W。世俗の事は世俗の政策で解決するしかない。信心にとって変えようとするのは間違い。
しかし、副次的要因である。主因はグローバル資本制の進展。
 
「そして20世紀も終わろうとするころ、 ふたたびイスラム教徒が世界の各地で異議を申し立てるようになった。
今日、 イスラム教徒が多く住む国のほとんどは、 イギリスやフランスの植民地から独立した。 独立して以来、 西欧世界をモデルにして国づくりをしてきた。
>しかし、 相変わらず貧しい国が多いし、 国のなかでも貧富の差を解消できない。」
西欧世界をモデルにしたことがまちがいだったのではないか。 異議を唱える人たちは、 こうしてイスラムの復興によって世直しをすべきだと考えるようになったのである。
**********

>これをイスラム復興運動という。 <もともと、 イスラムという宗教には、 信仰心を個人の心のうちにとどめておくという発想がない>。
 
イスラム教徒の家族、 社会、 そして国家もイスラムを正しく実践することによって公正なものになると考えている>。
 
><その結果、 イスラムの理念を政治に反映させようとする勢力がうまれ、 イスラム政党をつくって政治参加をもとめる。>
> しかし、 多くの国の指導者たちは、 政治と宗教を分離する政教分離の考え方を西欧諸国から学んでいるので、 イスラムが政治に介入することを嫌う
>国民のあいだにも、 イランのようなイスラム国家になってしまうと自由が奪われると懸念する人もいる。
*その結果、 世界のあちこちでイスラムを掲げる反体制運動が起きるようになったのである。
*西欧世界では、 すでにキリスト教の教えに従って国家を運営する国はなくなっている
*近代化とともに、 宗教は国家に干渉しないという政教分離の考え方が定着しているのである
*そのため、 西欧諸国からみると、 20世紀も終わろうとするいまになって、
*宗教が政治の世界にまで台頭してくるイスラム復興の現象は、 ひどく時代に逆行した復古主義的な運動にみえる
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2014/12/12 ロシア旧ソ連. (注)本資料は、最近の世界の原子力開発動向の概略をまとめたものです。 ... サウジ原発16基建設計画発表~」
         
        最近の世界の原子力開発動向   
             2014年12月12日  (W付加体列島日本)の日本原子力産業協会国際部 
 (省略)
        新規導入国の開発状況
地域国       建設中        計画中            提案中
UAE          2             2                10
サウジアラビア  0              0                16
 
*・KA-CARE発表:サウジの原発初号機は2016年着工、2022年発電開始目標。
W。16年着工サウジ原発ネット上で確かな情報見つからず。今の中東激動情勢から決定すると大きな波紋を巻き起こすので、構想だけ発表し、政治戦術に利用しているが、所詮、独自のプレイヤーにあらず!大きな勘違いである。
 
サウジアラビア原子力開発への各国の関心
    ・原子力協力協定:
(締結) フランス、アルゼンチン、韓国、中国
(交渉中) ロシア、チェコ、英国、米国、日本
 
W。分かり易い解説はコレ。後に挙げる資料の該当箇所もこの線に沿って書かれている。
      ↓
 
*********
 
2015年06月19日(Fri) 
  
                                 ↓
                  ロシア連邦国家安全保障戦略
        連邦国家安全保障戦略(第1章・第2章・第3章) 2016年1月5日
   
 
  「武器とカネで急接近する~」引用開始 W。読了。視点は事実を踏まえ、しっかりしているが、サウジ国内事情への踏み込みが、足りない。専門分野外で仕方がない。後でサウジ国内事情の詳しい記事を引用する。
 
「     <サウジ王家はこの11年間でどれだけ若返ったか>
1月23日夜、サウジアラビアのアブドラ・イブン・アブドル・アジズ・アス・サウード国王が91歳で崩御W?した。OPEC最大の石油産出国であるこの王国の新たな長となったのは、79歳のサルマン・イブン・アブドル・アジズ・アス・サウード氏W!である。
 
      <世界最大の武器輸入国になったサウジアラビア
イメージ 1HISジェーンズが行った調査によると、サウジアラビアは2014年にインドを抜いて世界最大の武器輸入国になった。
W。図表提示の必要あり。
 
W。ネットで流布している図表では、インド一位となっているが、武器輸入の定義の違いによるものと思われる。サウジは武器関連の一切をワンセットで輸入しなければならないので、額が高くなる。
   ↓その事情が察せられる記事。
2015/03/10 - 3月 8日、 サウジアラビア:インドを抜いて世界最大の武器輸入国に. 3 月 8 日、軍事情報専門社の「IHS ジェーンズ」は、同社がとりまとめた報告書によると、. 2014 年のサウジアラビア武器輸入額は 65 億ドルであり、インド(54 億ドル)を抜いて世界.~」
 
 

 
「ロシアとサウジアラビアのビジネス・フォーラムでは、安全保障、インフラ建設、電力、銀行間協力、観光、石油化学、石油業務に関する問題が話し合われる。また、サウジアラビア代表団の訪問においては、核の平和利用、宇宙開発、ロシアのGLONASS衛星航法システムの利用に関する政府間協定への調印が予定。
タス通信サウジアラビア代表団関係者の談話として伝えたところによると、軍人達はロシアの作戦・戦術ミサイル・コンプレクス「イスカンデル-E」の購入について話し合う意向。
 
以上のように、サウジアラビアは西側から経済制裁を受け、投資先としての信頼度が低下しているロシアに経済協力を梃子として急接近しようとしている。さらにサウジアラビアがもう一つの梃子としようとしているのがロシア製武器の輸入だ。
サウジアラビアがロシア製兵器を購入するという話はこれが最初ではない。たとえば2008年には、サウジアラビアは、T-90戦車、BMP-3歩兵戦闘車、ブーク-M2防空システム、ヘリコプターなどをロシアから大量に輸入する意向を見せていた。これは当時、イランの核開発問題を巡ってロシアにイラン支援を手控えさせる「餌」であったと考えられる。
②さらに2013年には、サウジアラビア情報庁長官のバンダル王子がモスクワを訪問し、100億ドルもの武器購入を持ちかけたとの情報が報じられている。これは当時のロシアの年間武器輸出総額にも相当する莫大な金額だ。当時、間近に迫っていたと見られるシリア空爆を巡り、ここでもロシアがシリア支援から手を引かせる意図があったと言われる。
 
 
 ③*ただ、これらの武器輸出話は結果的にどれも実現しなかった。
>ロシアにしてみれば、イランやシリアは中東におけるロシアの影響力を確保するための重要前哨拠点であり、武器輸出の利益程度で見捨てられる相手ではなかったためである。
>一方、サウジアラビアにしてみても、ロシアの武器やロシアとの協力関係そのものを欲しているわけではなく、あくまでも同国の対中東戦略としてロシアの立場を自国に都合の良いように変化させることが主眼であった。
 
 <では今回、サウジアラビアが武器輸出を含む大掛かりな経済協力でロシアに接近した背景は何だろうか>
第一に考えられるのは、
A)イランの核開発に関する枠組み合意が今年3月に成立したことであろう。
これによって「悪の枢軸」であったイランが、西側との関係正常化を果たす可能性が出て来てしまった。
第二に、シリア情勢が挙げられる。
B)サウジアラビアはシリア攻撃がロシアの仲介で空振りに終わった後の2013年11月、
>内定していた国連安全保障理事会非常任理事国入りを辞退するという前代未聞の行動によって、攻撃を見送った米国に強烈な不満を表明した。
C)さらに近年では、「イスラム国(IS)」の台頭によってアサド政権の退陣論が下火になってしまったこともサウジアラビアの不満の種だ。
 
      <サウジアラビアの対露接近は成功するか?>
サウジアラビアの対露接近の基本的な構図は変化していない。
*イランとシリアという宿敵*W?!
に対するロシアの支援と煮え切らない西側(特に米国)への不満がその根底にあるということになる。
 
こうした中でサウジアラビアが*米国のロシア包囲網を抜けるかのようなそぶり*を見せるとともに、ロシアの歓心を買うことでシリア・イラン情勢を有利に導きたいというのが思惑であろう。
 
ロシアとしても、「西側の包囲網などは幻想だ」という従来の立場を強化するとともに、関係強化によって<原油価格の下落>という状況を打破することを狙っていると見られる。
 
 ただし、前述のようにロシアはイランやシリアに戦略的利害を有しており、サウジアラビアとは根本的な隔たりを抱えている。
>ただし、一時期は劣勢と見られたISが再び勢力を盛り返し、シリアのアサド政権にロシアが見切りをつけるならば話は別である。

参考資料(1)
★阿修羅♪ > 国際12 >  投稿者 赤かぶ 日時 2015 年 12 月 11 日 15:51:40:
ドイツ諜報機関にダメ出しされたサウジアラビア 原油安で内政も不安定化、今やサウジは中東の火薬庫に(JBpress)
http://www.asyura2.com/15/kokusai12/msg/105.html
■ドイツ諜報機関がサウジ体制の今後に不安を表明
W。王族内の権力構図は、後で挙げる資料に詳しく解説されている。一族で国家権力機構を独占している、他の中東君主国にも見られない異常性があり、密接な相互意思疎通から、以下のよう確執は波乱要因にならない。
王族国家機構がトータルで、エゴイステックな政治方向に走っている。
「、「2015年1月に国防大臣に就任したムハンマド副皇太子(30歳、サルマン新国王の息子)が、自分たちをアラブ世界の指導者であるかのように見せつけるために、イエメンなどで衝動的な介入政策を進めている。そのため、副皇太子の独断専行に対する王族内の不満が急拡大し、サウジアラビアの体制にかつてないほど危機が迫っている」というものだ。」
■サウジに輸出されたドイツの「レオパルド2型」戦車
イメージ 2シリア難民大量受け入れを決定している現状から当然ことである。サウジはシリア内戦を主導しても、難民は受け入れない。
豊かなアラブを自称しているが、海外直接投資をできる企業は国内にほとんど存在せず、エジプト直接投資額はEU米と桁数があまりにも違う。
サウジアラビアは異常な国家の印象を持つが日本で批判がないのは、エネルギー供給をサウジを筆頭とした湾岸産油国に依存している事情が大きく影響している。
メルケル首相率いるキリスト教民主同盟(CDU)が2013年12月から社会民主党(SDU)と大連立政権を組むと、SDUの党首であるガブリエル氏が武器輸出を管轄する経済相に就任したため、ドイツの武器輸出のブレーキがかかるようになる。今年1月26日、ドイツ政府はサウジアラビアに対しても戦車などの武器輸出を中止する方針を決定した。サウジアラビアの人権抑圧政策やあまりに不安定な中東情勢を考慮した結果であると言われている。」
■イエメンもISの温床に

イラク戦争で米国に軍事情報を提供するなど中東地域の情勢分析を得意とするBNDはサルマン新体制がイエメン侵攻を行うとの情報を事前に入手していたのだろうか。

 BNDがサウジアラビアに対する警告を発した2日後の12月4日、ドイツ連邦議会はシリアなどで過激派組織「イスラム国」(IS)掃討作戦を展開するフランス軍などの後方支援を目的に、偵察機や最大1200人規模の兵士派遣を可能とする政府提出議案を可決した。
サウジアラビアの内政も心配の種が尽きない。
W。後で、この背景が分かる資料を引用する
>10月上旬から政府部局に対して倹約令が出されたが、サウジアラビアでは異例中の異例のことである。国民の反感を恐れて実施が困難とされていた国内のエネルギー価格の引き上げも検討されている。サウジアラビアの来年の賃上げ率は5.5%と予測されているが、深刻化する財政事情がこれを許すのだろうか。
 
■①中国経済の急減速で世界の原油需要がますます減少
W。と云うこともあるが、②原油輸出国の生産調整が各国の政治的思惑過剰や財政事情で機能せず、増産体制を続けるしかないのが最大の原因。
■米国でジャンク債市場に異変
W。原油価格がここまで下がれば、サウジ油田などに比べて、③コスト高の米国シェール企業は採算割れし、リストラだけでは間に合わず、手持ちの金融資産を売却していると聞く。
 
W。①、②,③と云う事で、アラブ情勢、ウクライナ情勢の政治軍事要因の連動は、世界経済の不安定化=結局は資本と生産過剰、マネー循環の滞り、につながっている。
ショックドクトリン、低強度戦争、テロとの戦いもやり過ぎると、自分たちの利益を損ねる、と云う訳で、今度は抑えにかかる局面になっているが、根絶やしにしては基本戦略の駒が消滅する。

公益財団法人  日本国際問題研究所
       ↓
 
 引用
「1.既存のシナリオ
アラブの春後でいうと、とりわけ、大きな注目を集めたのが、チャタムハウス(英王立国際問題研究所)によって2011 年12 月に出された以下の報告である。
 この報告は、
サウジアラビアが、このまま何の対策もほどこさずにエネルギー消費を拡大し続けていくと、2038 年には石油輸入国になってしまうと主張しており、その大胆な分析に多くのメディアも飛びつくことになった。
②もうひとつのシナリオは内容的にはチャタムハウスの報告と類似するもので、やはり石油輸出と財政の問題をあつかっている。
>分析を行ったのはサウジアラビアのジャドワー投資会社
こちらの報告でもやはり2030 年には石油の国内消費が輸出を上回るとしている。
チャタムハウスやジャドワーの報告で大きな役割を果たしていたエネルギーの国内消費の問題に特化した調査もある。
 たとえば、次の2 点である。
また、日本語では2012 年にアジア経済研究所より発表された機動研究成果報告『アラブの春アラビア半島の将来』がある。このなかでは2025年のアラビア半島を展望しており、そこでサウジアラビアの未来にも触れている。
また、サウジアラビアそのものの未来に関するシナリオではないが、サウジアラビアで石油の生産や輸出が途絶した場合のシナリオ研究というのもある。
**************
      
 
         2.シナリオにおける変数(1)人口
サウジアラビア中央統計情報局によれば、サウジアラビアの人口は約3000万人
そのうちの70%弱にあたる約2000 万人がサウジ人で、30%強1000 万人弱が非サウジ人、つまり外国人である。一方、人口増加率は外国人を含むと2.7%、サウジ人だけに限定すると、2.15%(2013年)となる。
          
 
            サウジ人       非サウジ人           
人口(2013年)   (67.6%)  
人口増加率(2013年) 2.15%        N/A 2.7%           
失業率(2012年)  12.1%          <0.1%>
出典:サウジアラビア中央統計情報局
サウジアラビアの高い人口増加率は若年層の人口を膨らませており、彼らがこのまま、年齢を重ねていけば、財政を圧迫
 
           <サウジアラビアと日本の人口ピラミッド
>CIA によれば、サウジ人の年齢中位数は26 歳で、たとえば日本の約46 歳と比較すると、この国がいかに若いかわかるであろう。IMF の推計でも人口の約30%が15 歳以下となっている。
1950 年代のサウジアラビアの年齢別人口構成は、きわめて整然とした末広がりのピラミッドを描いていたのが、
>中間層の膨らんだいびつな形になってしまったのは外国人労働者の大量流入によるものと考えられる
また人口増加率は現在、約2%で、これは1980 年代以前には6%あったことを考えるとだいぶ落ち着いてきている

国連の推計では、今後さらに増加率は下がり、2030 年から2035年のスパンでは0.71%と予想されている。
サウジアラビアにおける現状の年齢別人口構成や人口増加率を考えると、
>2030 年までに人口は3500 万人から4000 万人程度にまで増加、その後2040年から2050 年ごろには減少に転じるという推測が出ている。
    
 
 
           3.シナリオにおける変数(2)失業
>人口と密接にかかわる問題として、失業の問題が挙げられる。多くの研究で失業がサウジアラビアの抱える深刻な問題であることを指摘している。
サウジアラビア中央統計情報局の失業率は15 歳以上を対象にしている。
>そこではサウジ人の失業率は約12%となっているが、男女別だと女性は35%程度、男性は6%程度というぐあいに男女で大きな差が出ている。
また失業率の推移をみると、男性の場合、失業率は漸減傾向にあるのに対し、女性は大きく増加しているのがわかる。
*また、年齢層別にみると、10 代から20 代の層の失業率が突出して高く、しかもこの層については減少傾向がみられない点は要注意であろう。
>失業対策として現在、サウジアラビア政府は、外国人によって占められていた職業をサウジ人と入れ替える、いわゆる「サウジ人化政策(サウダイゼーション)」を進めているが、
>外国人のついている仕事とサウジ人がつきたがる仕事の間に給与面などで大きなミスマッチがあり、かならずしも順調に進んでいない(それでも1990年代と比較すれば、かなりましになってきているが)。
>現在の若い世代の失業は、政府の手厚い福祉政策と豊かな親の世代からの保護がバッファーとなっているので、深刻な社会問題として顕在化していないが
*前述のように、政治財政況が悪化したり、豊かな親の世代がなくなったりすると、失業が常態化し、貧困が再生産されていくことにもなりかねない。
>一方、政府主導で、強力なサウジ人化政策が推進されると、経済効率を重視する民間部門や外資にとっては逆に負担が増えることになり、まさに痛し痒しということになる。
         
 
        4.シナリオにおける変数(3)石油
サウジアラビアの財政収入の8 割が石油からのものであり、その財政は圧倒的に石油に依存している。
>したがって、石油価格や生産の増減はサウジ社会に直接的な影響を与えることになる
 
>こでは比較的確実とされるアジア諸国の石油需要の拡大だけを指摘しておこう。
*ここで興味深いのはサウジアラビアの石油消費量である。
*単純に量だけでみると、2012年のサウジアラビアの消費量はアメリカ・中国・日本・インド・ロシアについで世界第6位である
*人口わずか3000万人足らずで、石油関連以外に大きな産業のない国としては、この数字はあまりに大きいと言えるだろう
>生産量と消費量の推移は以下に示したとおりである。過去数年のスパンでみると、生産量のおよそ4分の1を国内で消費していることになる。

         5.シナリオにおける変数(4)エネルギー消費
石油に関する統計から、国内外の政治・社会情勢に左右されやすい生産量と輸出量が年ごとに乱高下しているのに対し、消費量は、それとはあまり連関せず、堅調に拡大していっているのがわかる。
*エネルギー消費の拡大は、人口増加に対応していると考えられている。
>したがって、2030年をみすえた場合、人口増に伴い、エネルギー消費は今後も増え続けると予想される。
>エネルギー消費量と同様、1 人当たりの電力消費も、やはり大きく伸びている。
以下に比較対象として日本とアラブ諸国を含めてみたが、*サウジアラビアの増加率が突出して大きいのは一目瞭然であろう*。
ただし、サウジアラビアよりも消費量が多い国はたくさんある。米国や他のGCC諸国。
>一部のヨーロッパ諸国のなかにも、サウジアラビアより大量の電力を消費している国は存在する。
問題なのはそうした大量の電力を消費している国の多くが(GCC を別にして)先進工業国であり
>電力消費のかなりの部分を産業部門が占めていることである。
 
>それに対しサウジアラビアを含むGCC 諸国は他の電力大量消費国ときわだって異なる消費構成をもっている。
*すなわち、家庭での消費の割合がきわめて大きいのである。全電力消費に占める家庭での消費の割合は世界平均では25%程度だが、サウジアラビアではそが約50%に上っている。
しかも、人口増に伴って、電力消費はこのまま2035 年まで年率2.5%で増加していくと予測されている。
 
サウジアラビアの1次エネルギー消費は2010年において6.7toe(石油換算トン)で、これは世界平均(1.9toe)の3.6 倍に相当する
>2013 年に関しては、経済成長が2%と見積もられているのに対し、人口は2.5%増加しており、
>さらにエネルギー消費にいたっては、年率で8%以上上昇したとされる。
こうした問題が中長期的にみた場合、体制にとって深刻な脅威であることは多くのサウジ人が自覚しているところであろう。メディアでもしばしばこの問題が取り上げられ、国民の危機感を煽っている
           
 
           6.ブレークイーブン W?
サウジアラビアが省エネを目指すのは単に環境問題に配慮してのことだけではない。
サウジアラビアの1 次エネルギーはほぼ石油と天然ガスで賄われており、だいたい石油が6割、天然ガスが4割というところである。
一方、発電に関しては石油火力が54%、天然ガス火力が46%となっている。
天然ガスは、サウジアラビアではまったく国内消費用であるのに対し、石油は国内消費・輸出双方に用いられる。現在のところ事実上化石燃料による火力発電しかないので、電力需要が高まれば、
当然国内での化石燃料の消費が拡大することになる。
W。重要。
*しかし、サウジアラビアではガスの生産が限定的なので、燃料を国内で賄おうとすると、石油を投入するのが一番手っ取り早いことになる
だが、石油を国内で使ってしまうと、輸出に回す分が減って、石油収入が減少してしまう
ならば、石油を増産すればいいではないかということになるが、
W?現状ガンガン増産→石油にはOPEC の生産枠があり、そう簡単に生産を増やすわけにはいかない。
イメージ 3>また、たとえできたとしても、サウジアラビアが現状の生産能力をすぐに拡張することができるとも思えない
したがって、石油の生産が頭打ちであれば、国内消費が増えた分、輸出による石油収入は減少することになる。石油収入が減少すると、石油収入に依存する財政も縮小し、公的部門で新たな雇用を創出することができなくなり、
>これまでのような、痒いところに手が届く、あるいはときに過剰とも思えるような国民サービス・福祉政策は望めなくなる
2008 年にサウジアラビアアブダッラー国王は1 バレル75 ドルが合理的な価格だと発言したことがあるが、これは財政収支均衡ポイント(ブレークイーブン)を念頭に置いたものである。
しかし、サウジアラビアの2014 年度予算ではブレークイーブンは1 バレル85 ドルと見積もられている
2014 年初頭の実際のWTI 石油価格が90 ドルから95 ドル程度であるので、ちょうどいい塩梅であるが、人口増が続くなか、何も対策を講じなければ、
歳出はどんどん拡大していき、いずれ赤字に転落するのは明らかである。
 
        7.ジャドワーやチャタムハウスのシナリオ
さて、ここで前述のジャドワー投資会社による報告をみてみよう。
報告によれば、サウジアラビアは、今後10年ほどの間は堅調な財政状況を維持していくとみている。
W→掲載グラフ参照。 サウジアラビアの2014 年度予算ではブレークイーブンは1 バレル85 ドルと見積をお幅に下回っている。シリア情勢にたいするサウジのはみ出しは、この意味からも規制を受ける。
前述のとおり今の段階では石油の国際価格は、サウジアラビアのブレークイーブン価格を上回っており
 
>さらにサウジアラビア通貨庁の外資産も4810 億ドルと、GDP の111%、政府予算の3 倍ときわめて潤沢である。
 
>たとえ、突発的な事態で石油価格が暴落して、財政赤字になったとしても、しばらくの間はここから赤字を補填することができる。
 
>また、政府債務はGDP の10%で、そのすべてが国内からの借り入れであり、たとえ在外資産が減少したとしても、国内からの借り入れは可能である。
*しかし、同報告は、現行の歳出と石油のトレンドがこのままであれば、政府はきわめて困難な状況に陥るとしている。
W→650万の数値から計算。  石油の国内消費は2030年には650万b/d に達し、輸出を上回る2012 年から予算は赤字となり、2020 年までには赤字は実質的なものになる。
2030 年までには在外資産は最低レベルにまで縮小し、債務は急速に拡大する、というのがおおまかなシナリオである。
このまま石油の国内消費が増大していけば、サウジアラビアが輸出に回せる石油の量が10 年以内に減少するようになる、というものだ。そして、何ら有効な対策を講じないと、2038年には石油輸入国になってしまうという。
>W重要
W。現状、12基原発建設を餌に政治戦術に使っており、16年着工は見送られている。
早急に再生可能エネルギー原子力の開発を進めるべきだと主張する。ただし、これだけでは状況の悪化を数年遅らせることができるだけで、石油依存体質からの脱却や省エネなどを並行して実施する必要があるという。
石油が枯渇する前に崩壊するのは必然であり、したがって、かりに石油の可採年数が70年であるとするなら、そのかなり前の段階で、新しい経済システムを構築して軟着陸を図らないかぎり、単に経済のみならず、政治体制そのものが崩壊の危機にさらされる可能性が高い。
          
 
 
                              8.政治体制を揺るがす要素
サウード家体制の強さは単にイスラームの守護者としてのレジテマシー(正統性)だけでなく、石油経済に由来する豊かさにも帰されるわけで、上述のように石油依存型経済システムが揺らぐようなことがあれば、当然れは政治体制の危機へとつながる可能性が出てくる。
一方、国内の反体制派運動はどうだろうか。
世俗的な社会主義運動は1970 年代にほとんど駆逐され、力を失ってしまった。
その後、国内のマイノリティーであるシーア派が革命後のイランから支援を受け、反体制運動を展開したが、これは1990年代にいったん収束していた。
現在、テロそのものはある程度封じ込められているが、依然として潜在的な脅威であることは否定できない。

なお、2010 年末からのアラブの春以降、サウジアラビアでも多くのデモが発生したが、
その多くは東部州のシーア派地域で発生したもので、宗派対立として説明されている。
1990年代のサウジアラビアとイランの和解、そして21 世紀になってからの国民対話などにより両派の対立はある程度、静まったようにみえたが、アラブの春に触発されたシーア派のデモは依然として対立が根深いものであることを示している。
 
>一方、スンナ派内部にも不満があることは否定できない。
アラブの春直後に現れた「政党」、すなわち「ウンマイスラーム党」(ウンマイスラーム共同体の意)はほとんどバーチャルな存在にすぎなかったが、サウード家体制に対し改革を要求したため、当局はそれを脅威とみなし、関係者のほとんどを逮捕、その政治活動を事実上封じ込めてしまった
>彼らの多くは、1990年代に発生した覚醒グループと同様、体制に近い知識人であり、体制の中枢に近接した階層でもさまざまな不満を抱いていることが推測される
 
>1980 年代からのいわゆる「アラブ・アフガン(アフガン帰り)」は、その後イラク帰りによって入れ替わりがなされ、現在は多くの若者がシリアで反アサドの武装闘争に加わっている。
彼らが今後もサウジ国内で不安定要素になることは否定できないであろう。
 
ただ、どの運動にしろ、サウード家を打倒し、代わって政権の受け皿になるほどの規模勢いをもっているわけではないのでアラブの春の影響でサウード家体制が揺らぐことがあったとしても、体制が崩壊の危機に直面する可能性は現時点では小さいと言えるだろう。
 
とはいっても、若い世代のなかには高い教育を受け、しばしば欧米に留学し、外の世界で見聞を広めてきた者も少なくない。
また、インターネットなど新しい情報通信技術によって、サウジアラビアの政治や社会を中立的な立場からみることも可能になってきている。
こうした新しい世代からの社会や政治を変えようというプレッシャーは無視できないはずである
 
>今後サウジアラビアの財政状況が悪化するようなことがあれば、アラブの春後にみられた大盤振る舞いの財政出動も困難となり、何らかの政治改革は必須となっていく。
 
 サウジアラビアの歴史上、政治制度で最も大きな変動があった時期のひとつは1990 年代初めであったが
W。重要。
このときの政治改革の実施は、石油価格の低迷と湾岸危機・湾岸戦争での出費の増大で、財政状況が逼迫していたため、
W。重要。
いわゆるバラマキで国民の怒りや不満を中和することが困難であった点からも説明できるだろう
    
 
      
         10.ポスト・サウード家体制 
W。国家権力機構の一族独占に特徴があるというトンデモ体制
 
もちろん、単なる可能性としてサウード家が倒されたあとの体制について考えることは可能である。
たとえば、もしサウード家を頂点とする現体制が存続するとするなら、現状のサウード家の絶対王制と立憲君主制という、2つの可能性が考えられ、
また後者の立憲君主制は、王家の政治権力を維持したままのクウェート型と日本や英国のような議院内閣制の立憲君主制が想定できる。 Wあり得ない!
 
>ただ、サウジアラビアや他の湾岸諸国の王制は、かつて崩壊した中東の諸王制とは若干、システムが異なっていることも事実である。
つまり、両方とも国王を頂点とする独裁的な体制であることは同じだが、
*前者の場合、国王のみならず、主要王族が主要なポストを独占しているのに対し、
*後者では、原則として国王が、民間人の首相を中心とする内閣の上に君臨するという形をとっている

*さらに前者の場合、王族の数が圧倒的に多いので、軍や諜報機関、警察や外交など安全保障上のさまざまなポジションに王族が配置されている
*前者では、後者と比較して、情報や命令系統の中枢を共通の利益集団がおさえているため、国内の異常事態をいち早く察知することができ、またその集団内部に不満が鬱積していたとしても体制に対する反対運動となりづらいという優位性がある。
また、仮にサウード家体制が崩壊した場合も、複数の可能性を考える必要があろう。
もちろん、サウード家以外の別の一族(たとえば、サウード家傍流やラシード家)がサウード家に代わって国王となることも否定はできないものの、可能性としてはきわめて低い。
その場合、むしろ、共和制となるほうが自然であろう。その場合、たとえば、世俗的な「アラビア半島共和国」となるか、あるいは「イスラーム共和国」的なものになるか、可能性としては両方ある。
 また、サウジアラビアは地理的には広大な範囲を支配しており、場合によっては、これらが地理的に分断されることも考えられる。文化・歴史的にみれば、現在のサウジアラビアの領域は中心部のナジュド、ペルシア/アラビア湾に面したハサー(東部州)、西部のヒジャーズ、そして南部のナジュラーンと大きく分けることができる(あるいは北部も)。
ナジュドはハンバリー派が圧倒的なのに対し、ハサーやナジュラーンはシーア派(前者は12イマーム派、後者はザイド派イスマーイール派)が多く居住する。
サウジアラビアの成立後、サウジ人としてのアイデンティティーは徐々に固まってきているが、それはサウード家の存在が前提となっておりサウード家がなくなれば、地理的・宗派的・文化的なアイデンティティーがあらためて表面化することもありうる。
 
             
                    <おわりに>
ゲームチェンジャーサウジアラビアの将来の方向性を決定するうえで、
人口増、失業、石油価格、石油収入、ブレークイーブン、若い世代からの圧力、王族内の権力闘争、宗派問題、イデオロギーなどの要素が重要であることを指摘してきた。
 
 これらのほかにも、シナリオの方向を大きく変化させる、ゲームチェンジャーとでも言うべき問題を指摘しておかねばならない。
たとえば、石油に関して言うと、イラクの石油はまさにゲームチェンジャーになりうるものである
イラクの石油生産・石油輸出はまだゲームチェンジャーになるほど成長していないが、今後、生産・輸出とも一気に拡大するようなことがあれば、当然、石油価格やまたサウジアラビアの石油輸出にも重大な影響を与えるであろう。
W。イラン制裁解除の背景の一つはサウジけん制、コントロール下。
>また、イランの石油も同様である。とくに2013 年にイランと米国等の間で核開発に関する合意ができ、対イラン制裁が一部緩和されることになった。仮にイランと西側諸国の関係改善が進んで、市場にイランの石油やガスが潤沢に出るようになれば、短期・中期・長期いずれの場合でも、ゲームチェンジャーになりうるだろう
W。国民に危機感を煽っているが、本当に怖いのはココだという意見もある。
>また地球温暖化やシェール革命もサウジアラビアの石油にとって否定的なインパクトになる可能性があるし
>場合によってはどこかの段階でエネルギーに関するブレークスルーが起きる可能性もあり、そうすれば、石
油の利用が急速に減退し、サウジアラビアの財政悪化は大幅に早まることになる
 
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サウジアラビアが5年後には財政破綻する可能性あり―IMF報告 ...
netallica.yahoo.co.jp › 時事ネタ
2015/10/26 - 2016年には19.4%のマイナスになるとし、このままの状態が続けばサウジアラビアが5年後には財政破綻すると予測した。 ... サウジアラビアは国家収入の90.0%を石油に依存しているが、価格下落により損失は総額3600億ドルとなり、国内総生産の20.0%以上の負債を抱えているそうだ。 .... 異常にシンプルな靴見つけた。
今年はギリシャの財政危機により世界中が翻弄され、日本にも影響を及ぼすのではないかと不安が高まった。しかし今度はサウジアラビアが将来、同様の危機に陥る可能性のあることが報告された。
 
    2015年の財政収支はマイナス21.6% W。日本はこれよりもひどい。
この予想を行ったのは国際通貨基金IMF)。
彼らは毎年、10月に世界経済財政予想を発表しているが、その中で2015年のサウジアラビアの財政収支は、マイナス21.6%になる見込みだと報告。
2016年には19.4%のマイナスになるとし、このままの状態が続けばサウジアラビアが5年後には財政破綻すると予測した。原因は主に石油価格の下落とされている。
 
     石油下落による損失は総額3600億ドル
 サウジアラビアは国家収入の90.0%を石油に依存しているが、価格下落により損失は総額3600億ドルとなり、国内総生産の20.0%以上の負債を抱えているそうだ。
そのためサウジアラビアの通貨当局は海外の金融機関が運営するファンドから700億ドルを引き出したが、すでに石油の下落で730億ドルも失われたとされる。
また6545億ドルの海外準備金を保有しているとされるが、それも急速に消えつつあり、全ての金融資産も5年分しか残っていないという。
 
    国民へのバラまき、軍事費の増大
無論、財政の悪化は石油だけが原因ではないようだ。今年の初めには新国王就任祝いのために、合計320億ドルが何らかの形で国民に振る舞われたとされている。
しかも隣国イエメンにおいて、フーシ派に対し空爆を行うなど戦闘に参加。
その結果、防衛費は800億ドルにも及び、軍事支出もロシアを抜いて世界第3位に躍り出たという。しかもイエメンでの戦争は依然、衰えを見せていない。
世界経済へ影響を及ぼすのか、また中東地域のさらなる不安定化を招くのか、サウジアラビアの動向に注視していきたい。