反俗日記

多方面のジャンルについて探求する。

中東特集記事の簡単な総括。「信仰は衰え、国家は破壊された」エマニュエル・トッド、インタビュー~を引用し、今の事態を予言する82年シオニスト誌『1980年代のためのイスラエルの政略計画』を付記する。

W。前回の末尾に載せた【関連記事】、トッドさんの見解を是非知りたいと、<信仰は衰え、国家は破壊された エマニュエル・トッド氏> http://www.asahi.com/articles/ASJ293K7PJ29USPT00D.html?ref=yahoo
論説主幹・大野博人2016年2月11日16時53分にアクセスしたが、
1/3程度しか閲覧できない。
そこで、横着を承知で、山口透析テツ日記に全文が載っているようなので利用させていただくことにした。
 
 長く続いた中東特集記事も、まとめの段階になった。
しかし、演繹法ではなく、徹底した帰納法的思考パターンを自覚する者は、事態を抽象化する必要に迫られた時、悪しき<素地>が出てしまう。長年の思考習慣が身に浸みている。ソレが通用するほど、世界は甘くない、ことも重々承知している。
また、事態を政治思想に昇華する知識と教養の不足も自覚する。
そこで、トッドさんなのだが、
 
  特集記事を掲載する中で「発見した」こと、とりあえず列記する。
 
シオニズム移民の波が当初、パレスチナの地に押し寄せてきた19世紀の半ば以降、アラブ部族長たちは警戒感に乏しかった。シオニズム移民を「了承」する条約に署名している。
>無理もない。彼らの伝統社会はアットホーム、フレンドリーなのである。イスラム教は実に人間的宗教である
世界中に多くの信者さんたちがいるのは、特集記事の終わりごろによってようやく納得した。
徹底した無宗教が骨の髄まで沁み渡っている人間は寛容の精神に欠ける。
 
イスラム原理主義は、ムハンマドの教えの一部を都合よく、己の政治的必要に即応して再解釈したもので、政治理論としてまともな構成を持たない、低レベルのものである。近代的自我の悩みさえ通過していない、あるいは切り捨てて、ムハンマドに乗り移って良しとしている。
 
 ヨーロッパでは国民国家形成の時期、シオニズムはその影響を受けてシオニズムの「発明者」は英国支配層のキリスト教徒政治幹部である。基本的にユダヤ教徒が政治化した場合、社会主義的傾向になる~ユダヤ選民排外主義+労働社会主義共同体を基に<当初から>パレスチナの地に<特殊>国家形成を画策した
 
 他方、オスマントルコ支配下にあったアラブ側は、近代国家を目的意識的に形成していく、政治思想は欠如していた。正確には、その種の政治思想を形成する条件が社会構造として成立していなかかった
 
 さらに、オスマントルコ支配への抵抗闘争と、シオニズム移民の予め、移民国家建設、拡大を目的意識的に追及する政治軍事方向二つの戦線における戦いを余儀なくされている実情を政治思想として意識することができなかった。
 したがって、英国~シオニズムの計略通り、政治軍事事態は進展した。
 
当初のイスラエル移民の土地獲得方法に注目する。
オスマントルコの近代的土地所有制度導入によって、パレスチナの土地所有関係は、大土地所有に急激に傾斜していき、シオニズム移民たちは、国際ユダヤ資金をバックに、それらの土地を買いあさったのである
だが、この時期、アラブ人には自然的経済過程に映ったので、大きな抵抗感はなかった
他方、英国政府と現地当局は、シオニズム移民の土地所有を有利に進める条件を揃えていく
 
③前々回の記事で、パレスチナ伝統的氏族社会~氏族社会の集合は部族社会。
言い換えると地縁血縁の宗教習慣的絆で運営される広い領域意識~の宗教習慣によって、それなりに淘汰、洗練されてきた合理的アットホーム的システム化を知ると、そうした住民の下からの伝統社会の組織化は、機能的に有効であるがゆえに、遅れた近代国家形成は上から暴力的にしか進まないのだから、<両者の政治的経済的「利害」は、衝突を本質的にはらみ>、結果、初期移民シオニズムに対抗できる近代国家政治意識の形成は、先延ばしになっていった
 
④ 第三次中東戦争までの敗勢の歴史の本質的原因国民国家形成時の対外的な政治暴力に依拠できなかったことにある。市民革命云々は日本を見てもわかるように、直接の関係ない。
 
サンクス、ピコ条約によって形成された人工国家(部族の集合国家)は住民レベルでの国家形成に逆行するような便利な伝統社会システムによって、宙づりになったままなので、国軍の質はぜい弱なままだった(個別の戦闘性は全軍のものとならない)。
 
⑤以上の様な歴史文脈の中で、1967年の第三次中東戦争の大敗北が、決定づけられたのである。
エジプト、シリア、ヨルダンの軍事配置は防御体制に主眼が置かれていたのに、攻勢的な政治措置をとっていくなかで、イスラエルの奇襲暴発を誘引した。
 
⑥大敗北の結果、イスラム原理主義勢力の支配者側の利用による台頭、OPEC原油価格攻勢、第4次中東戦争=対イスラエル和平に至る政治軍事過程は、根本的問題を何も解決する志しのない自然発生的過程と見る。
 
イスラエル国内政治は政党拘束名簿比例代表制の選挙制(安定多数党~連立でもOK~が成立しない、多党連立工作不可避~柱状社会状況などの要因によって、絶えず流動性をはらみ、極端な政治軍事行動に打って出ることで人心を掌握する習慣が政治生命の長い有力政治家の身についている
小型ヒットラーの様な扇動的政治手法がまかり通っている。
 
コレによって、イスラエルの対外行動は自己肥大の異常な状態から、周辺事態の流動要因に絶えずなってきた。
異常構造がかき消されてきたのは、米国の支援(異常なダブルスタンダードぶりである)の賜物でしかない
 
 したがって、イスラエルパレスチナ占領政策は、安定的なものではなく常に政局化してい
また、アラブ諸国との立ち位置についても不思議な状にある。
しかし、特に警戒が必要なパレスチナ側にその認識が足りない面がある。
 
*第二次インティファーダ以降の政治過程で、鍵を握るのは、パレスチナでいえば長年の占領状態とそれによる社会的経済的従属という限定条件を重視して、自治政府の形成を主眼に事態の推移をみていくことである
 両占領地は、イスラエル製品の独占市場になっている。
パレスチナ資本は経済従属や物流、人的交流の寸断によって小規模零細資本の状態に落とし込めれて、イスラエル資本の下請け状態になることでしか生き延びる術が与えられていなかった。
多くのパレスチナ労働者は無権利無保障、低賃金状態を余儀なくされ、結果的に低い労働力商品の価値と相対的に高いイスラエル独占市場製品と交換すること経済構造が成立している。
換言すると、パレスチナからイスラエルへの価値が移転していることになり、この収奪構造は植民地と本国の関係そのものであり、パレスチナ側に貧困が蓄積していくのである。
今の世界中どこを探しても、本国のすぐ隣に植民地をもって、収奪している国は何処にもない。
 
 前々回の伝統社会とNGO、自治政府の実態構造を分析した論文に、PLO自治政府のNGOを取り込んだ実体構成と、伝統社会の矛盾を読み込むことができる。
 
ハッキリとした意見は、その記事の中で述べたつもりであるが、
 
ソレを別な角度から云えば、
長年の活動で培われたハマスのような、ある意味で、伝統社会に適応してきた巧妙な政治手法と政治体質は、必ず<合成の誤謬>に行き着くしかないということである。
 
政治の幅が狭すぎるし、情勢の全局を見ていない。先々のこともあまり教慮しているようには見受けられない。
 
結局、宗教政治の視野を重視して周りを見る。政治判断と行動もそれによって拘束される。大きな政治の力に利用され易い。
>経済主義の一種である。
>政治判断の源泉は仕事や生活レベルの内にあるが、政治判断は、そこから一端、身を引いた外側からもたらされる。
ハマス政治の身を引いた外側は宗教的価値観の優先する世界である。
>ところがイスラエル米国他の世界は宗教的価値観を大きく超えたところで動いている。
 
>また、伝統的住民社会も宗教では動いていない。
前々回の論文に対する率直な感想は、
>伝統社会の相互扶助は物的には大したものではないということだった。過大視できない。
>植民地状態におかれた人々の屈辱は、社会経済的な従属のシステムに行き着く訳で、ソレを宗教レベルの怒りの転化すると、間違いが起こり易くなる
 
また、近代史上、そうした植民地的環境にあって、宗教要素に集約された戦いが、成功したためしがない。
そのような宗教政治が台頭していく時期は、政治軍事の後退局面であるのは、普遍的な政治の鉄則である。

 
 山口透析テツ日記のトッドさんのインタビュー記事を読むと、「反俗日記」で、中東特集記事を書いているときに、漠然とイメージしていた内容が、短く、力強い言葉で表現されていると納得した。
 
 山口透析テツ日記を引用する

「信仰は衰え、国家は破壊された」(エマニュエル・トッド
… 2月11日付の朝日新聞より。
 
悪い方へ悪い方へと回り続ける歯車をだれも止められない。そんな気分が世界に広がる。
過激派といわれる勢力の暴力、難民や移民への排他的な反応、分断される社会。新著「シャルリとは誰か?」(邦訳、文春新書)で、その閉塞(へいそく)状況の読み解きに挑んだフランスの知識人、エマニュエル・トッド氏に聞いた。

――15年前、米同時多発テロが起きたとき、あなたは中東は近代への歴史的な移行期にある、と話してくれました。
イスラム過激派と呼ばれる運動は、その流れへの激しい反動だと。今、起きていることもその表れでしょうか
 
「奇妙なことに、中東について新たな宗教戦争という見方がよく語られます。シーア派スンニ派の戦争だという。だが、これは宗教戦争ではない。
イスラム圏でも宗教的信仰は薄れつつあります。
人々がその代わりになるものを探している中で起きているのです。

イスラム国』(IS)もイスラムではありません。
彼らはニヒリスト。あらゆる価値の否定、死の美化、破壊の意思 …。宗教的な信仰が解体する中で起きているニヒリズムの現象です」
 
――欧米の対応はそこを見誤っているのでしょうか。
 
「アラブ世界は国家を建設する力が強くない。
>人類学者としていうと、サウジアラビアイラクなどの典型的な家族制度では、国家より縁戚関係の方が重みを持っています」
W。「帝国以後」の該当部分引用 時間の都合で省略。過去の記事で詳しく引用した。
 
W。以下、トッドらしい弁証法パラドックスの真骨頂。
W。しかし、「反俗日記」で長く続けてきた中東特集の具体的事態を国家権力論的に総括すると、このトッドのパラドックスがぴったりと符合する。

W。「偽イスラエル政治神話」ロジェ、ガロディ。木村愛二訳。れんが書房新社 1998発行、当該個所引用
「P47。かつてイギリスの外務大臣バルファア卿は、自分のものではない国をシオニストに引く渡す表示をした。
彼の時代から『どんな方法でも、中東の石油を確保できさえすれば構わない。肝心ななことは石油をてみ入れること。』
アメリ国務長官コーデル、ハルは
サウジアラビアの石油が世界を動かす最も強力な梃子の役割を果たしていることを深く理解する必要がある』と語った。
~つねに同じ政策の下で、同じ任務が、イスラエルシオニスト指導部に割り当てられてきた。
NATOの元事務局長ジェセフルイス<元オランダ外相>はその軽快について次のように明快に語っている。
イスラエルは我々にとって最も安上がりな傭兵だった』
 
外部資金による<偉大なイスラエル>への野望 P273引用
「その野望の正確な証言となる論文が、エルサレムで発行されている世界シオニスト機構の機関誌『キヴェーム(指針)』に掲載されていた。
 
>論文の題名は『1980年代のためのイスラエルの政略計画』 「キヴェーム」14号1982年発行
「~~
レバノンが5つの地方に分割されている状況は、アラブ世界全体が経験する将来の予告である。
シリアとイラクの民族的または宗教的な基準で決定され各地方への分裂は、長期的にみると、イスラエルによって最も有利な到達目標であり、
>その最初の段階は、両国の軍事力の破壊である。
 
シリアは、民族的構成が複雑なために、分裂の危機にさらされている。
>やがて、長い海岸線に沿って、シーア派の国、アレイブ地方と、もう一つはダマスカスにスンニ派の国、
ドゥルーズ派がまとまれば、彼らは我々が支配するゴラン高原に~~~いずれはフーラン地方とヨルダン北部を含む地域に、自分たちの住む国を希望する権利がある。
>~~このような国家成立は、長期的にみてこの地域の平和と安全を保障するものである。
>これらは我々の射程距離内の目標である。
 
>石油資源は豊富だが内部抗争に苦しむイラクは、イスラエルの照準内になる。
イラクの分裂は我々にとって、シリアのそれよりも重要である。
>なぜならイラクこそが短期的にみるとイスラエルに対する最も危険な脅威を代表しているからである。
    引用終了

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>「イラクフセイン政権はひどい独裁でしたが、同時に、そんな地域での国家建設の始まりでもあった
                                  ↓
それをブッシュ政権は、国家秩序に敵対的な新自由主義的思想を掲げ、国家の解体は素晴らしいとばかりに戦争を始めて、破壊したのです。←W。シリアとイラク長期的にみると、イスラエルによって最も有利な到達目標であり、
>その最初の段階は、両国の軍事力の破壊である
                                             ↓         ↓
中東でこれほどまずいやり方はありません。今、われわれがISを通して目撃している問題は、国家の登場ではなく、国家の解体なのです。
 
――信仰が薄れるにつれ、社会秩序を支えるにはますます国家が必要になるのに、逆に破壊するちぐはぐな対応というわけですね」
 
「つまるところ、中東で起きているのは、
①アラブ圏で国家を築いていく難しさと、
②米国などの新自由主義経済に起因する国家への敵対的な考え方の相互作用の結果ではないかと思います。
 
◆ フランスは別の国になった
――あなたは新しい著書で、テロのあとの仏社会の側の動揺と迷走を分析しました
 
「フランスは夜に入ってしまったようです。私が愛した多様で寛容なフランスは別の国になったように感じています」
「パリでテロを起こし、聖戦参加のために中東に旅立つ若者は、イスラム系だが生まれも育ちもフランスなど欧州。
アルジェリア人の友人はいみじくもこう言いました。『なんでまた、欧米はこんな困った連中をわれわれのところに送り込んでくるのか』。あの若者たちは欧米人なのです」
 
――そこを直視すべきだと主張したあなたの著書は、激しい反発を呼びましたね
 
「本が出て多くのテレビ番組に呼ばれたが、侮辱されるばかり。『君は本当のフランス人ではない』とさえ言われました。そこにあったのは反知性主義です
 
「今、テレビやラジオでは『イスラムが問題なのは自明』などという連中が幅をきかせています。
彼らはイスラム嫌いを政教分離原則などと言い換える。右翼の価値観がフランスの価値観になってしまったみたいです」
 
 ――昨年1月のテロ直後に数百万のフランス人がデモに繰り出し、抵抗の決意表明として内外で称賛されました。しかし、あなたはそこにイスラム系市民への排他的な空気を感じ取り、仏社会の病理を読み解きました
 
 
デモに繰り出した人の割合が高かったのは、
パリ周辺よりもむしろかつてカトリックの影響が強く、今はその信仰が衰退している地方
 
②また階層でいえばもっぱら中間層
 
③それは第2次大戦中のビシー対独協力政権を支持した地域、階層でもある。
そう指摘して非難の的になりました
「リベラルな価値の表明といいますが、実際はイスラム預言者ムハンマドを『コケにすべし』と呼びかけるデモでもありました」
 
        ◆ 経済的合理性という「信仰」
――欧州でも中東と同じように信仰の衰退と、それにともなう社会の分断という流れが背景にあるのでしょうか
 
「そうです。
今後30年で地球に何が起きるか予測したければ、近代を切り開いてきた欧米や日本について考えなければ。
本物の危機はそこにこそあります
歴史家、人類学者として、まず頭に浮かぶのは信仰システムの崩壊です」
 
宗教的信仰だけではない。もっと広い意味で、イデオロギー、あるいは未来への夢も含みます。人々がみんなで信じていて、各人の存在にも意味を与える。そんな展望が社会になくなったのです
そのあげく先進国で支配的になったのは経済的合理性。利益率でものを考えるような世界です
 
――それが信仰の代わりに?
 
信仰としては最後のものでしょう
それ自体すでに反共同体的な信仰ですが。
経済は手段の合理性をもたらしても、何がよい生き方かを定義しません
 
――そうやって、分断される社会で何が起きるのでしょうか。
 
「たとえば中間層。
フランスでは、経済的失敗に責任がある中間層の能力のなさの代償として、
労働者階級が破壊され、移民系の若者を包摂する力をなくしてしまった
 
世界各地で中間層が苦しみ、解体されていますがフランスは違う
>中間層の代わりに社会の底辺がじわじわと崩れています」
 
「そこを見ないで、悪魔は外にいることにする。
『テロを起こした連中はフランス生まれだけれども、本当のフランス人ではない』『砂漠に野蛮人がいる。脅威だ。だから空爆する』。おそるべき発想。ただそうすれば、仏社会内の危機を考えなくてすみます」
 
――仏政府は、二つの国籍を持つ者がテロに関与したら仏国籍を剝奪(はくだつ)するという提案をしました。確かにこれはフランスが掲げる価値観とぶつかるように見えます。←W。一定の条件さえクリアーできれば、出身国の国籍を保持したまま、フランス国籍を取得できる。
 
二重国籍はフランスを寛容な国にしている制度。仏国民とは民族的な概念ではありません。←W、アラブ側にもIDの多様性が実質的に存在する。~W。難民はヨーロッパを目指す、出ていく側にも多重IDの根拠がある。
W。多重ID許さない日本には来ない。
 
フランス人であると同時にアルジェリア人や英国人であることはすてきだと考える
 
「提案は、教養のある人には、ユダヤ系市民から国籍を奪って迫害したビシー政権を連想させますが、85%の人は支持している。その意味するところがよくわからないのでしょう」
 
「テロへの対策としてもばかげています。想像してください。自爆テロを考える若者が、国籍剝奪を恐れてテロをやめようと思うでしょうか。
逆に、国籍剝奪の法律などをつくれば、反発からテロを促すでしょう」
 
「私は『新共和国』という言葉を本で使った。中間層が支配する国という意味です。
そこでは、イスラム系に限らず若者をその経済や社会に包摂できなくなりつつあります
 
         ◆ 取り組むべきは虚偽からの脱却
――だとすれば日本も共通するところがあります。
>移民は少ないが、非正規労働者として他国での移民労働者のような扱いを受ける人はたくさんいます。
>いわば一部の国民が戻る祖国のない移民になりつつあるのかもしれません。←W。「反俗日記」で、事あるごとに使用している、<国家ーグローバル資本複合体の国体化にインクルードされる階層は、何処までなのか、と云う問題意識と視点を基本視座に状況を把握する手法。パレスチナの人々と状況を他人ごとと思って記事にした事は一度もない。
>ただし、リンクさせると、難しい課題にぶつかるからやらなかっただけだ。
そうした課題を背負ってイスラム研究をする学者さんはいる。その手の記事を掲載しようと思って吟味すると、
方法論的に上手くいっていない、とみた。
また、その方法論がグローバリズムの時代には古すぎるかもしれないという疑いを抱いた。
二項対比は個々人の主体状況を重視することで、止揚すべき時代である。
 
「興味深い指摘です。先進国の社会で広がっているのは、不平等、分断という力学。
>移民がいなくても、教育などの不平等が同じような状況を生み出しうる」
 
「それに日本の文化には平等について両義的な部分があります。
戦後、民主的な時代を経験し、だれもが中流と感じてきた一方、
人類学者として見ると、
もともと日本の家族制度には不平等と階層化を受け入れる面がある。
 
W。日本を直系家族の政治要素に分類している。ドイツとの一致は、偶々のものであるとしているが、政治経済の傾向は、家族制度に規定されるとしている。←製造業の付加価値の占める割合が大きい。トッドはこの視点からEUを利用したドイツの経済的拡張を批判的な目で見ているのだと思う。
 
民主的に働く要素もあれば、大きな不平等を受け入れる可能性もあります」
 
――簡単に解けない多くの難題が立ちはだかっているようです。何が今できるのでしょうか。
 
「この段階で取り組まなければならないのは、虚偽からの脱却です。
お互いにうそをつく人々、自分が何をしようとしているかについてうそをつく社会
自分を依然として自由、平等、友愛の国という社会。知的な危機です」
それは本当に起きていることを直視するのを妨げます
 
〈Emmanuel Todd〉 1951年生まれ。家族制度や識字率出生率に基づき現代の政治や社会を人類学的に分析、ソ連崩壊などを予言してきた。日本でも有名な『アデン・アラビア』の小説家、ポール・ニザンの孫にあたる。
 
         ◆ 取材を終えて
1968年5月、フランスで起きた大規模な反体制運動では街頭に出て石を投げていた1人。その体験から、「自分の国の国旗を引き裂くことだってできる、すばらしい国」と誇りに思ってきた。そんな「寛容なフランスを私が再び見ることはないでしょう」と失望感も吐露していた。
 
しかし、歴史家、人類学者としての意欲は旺盛だ。
グローバル化で人類は、産業革命よりも重要で新石器時代に匹敵するくらいの転換点を迎えているのかもしれないと話し、本も執筆中だという。どんなに強い反発を浴びても、その社会に容赦のない緻密な肖像画を突きつけ続ける――。
会うたびに知識人の強さを感じさせてくれる。(論説主幹・大野博人)
 
……「フランスでは、経済的失敗に責任がある中間層の能力のなさの代償として、労働者階級が破壊され、移民系の若者を包摂する力をなくしてしまった」とは、まったく日本社会の分析にもそのまま当てはまる。フランスでは、こうした問題がより先鋭で暴力的な形で噴出したということだ。
 
信仰は衰え、国家は破壊された エマニュエル・トッド
 【特別対談】 ドイツの傲慢と日本の孤立――池上彰×エマニュエル・トッド