反俗日記

多方面のジャンルについて探求する。

第9回 認知症サポーター養成講座標準教材~認知症を学び地域で支えよう~*教材作成協力者、斎藤正彦*「認知症」(関わり)を訊く*W資料 安岡章太郎「海辺の光景」


    認知症サポーター養成講座標準教材認知症を学び地域で支えよう~
*教材作成協力者、斎藤正彦 第1章(①~⑤、⑦,⑧)

■ 斎藤正彦 略歴
1952年生まれ、1980年東京大学医学部医学科卒業。東京大学医学部付属病院精神神経科にて研修の後、東京都立松沢病院精神科医員、ロンドン大学精神医学研究所研究員等を経て、1991年から98年まで、東京大学医学部精神医学教室講師。1998年6月 慶成会老年学研究所代表を設立、同研究所代表、青梅慶友病院副院長、2000年7月 新宿1丁目クリニック・ユリの木クラブ開設、2005年4月 よみうりランド慶友病院副院長、2006年8月 翠会和光病院顧問、2006年10月より翠会和光病院院長 2012年4月都立松沢病院参与、7月より同病院院長

              認知症キャラバンの展開
    我が国の重要課題です
W。本文の死生観はWとは違う。
当該官庁、医療福祉業界においてことあるごとに連発される (≪自立≫とは、当事者の個別事情と個性無視、弱者切り捨て、放置の実態を隠ぺいする結果になっている。
 引用
「我が国の重要課題です
 尊厳を持って最後まで自分らしくありたい。コレは誰もが望むことですが、←W。誰もがそこまで望んでいるだろうか?リアルな人性の実態を無視したバーチャルリアリティー下のミィーイズムにどっぷりつかった増長した考え方である。それが可能な(可能と勘違いしている)一部の人々を除いて、大多数の人々がこのような思考回路を実行に移したければ、論理的結論として自死の道を選択するしかない、のではないか。

この願いを阻み、深刻な問題になっているのが「認知症」です。←W。課題の設定が見当違いである。→尊厳を持って最後まで自分らしくありたい。コレは誰もが望むことです。
>このような言説は、いわゆる「認知症」への恐怖煽り、という結果になる。

   他人事ではありません
認知症誰にでも起こりうる脳の病気によるものである。
以下省略


W。参考資料①

W。参考資料②
安岡章太郎 - Wikipedia 「海辺の光景 - Wikipedia」(代表作といわれている。本文によれば安岡の母は若年性認知症である<50代後半に症状露呈<。文中から推察するとレビー小体型認知症 - Wikipedia~~「アルツハイマー型認知症脳血管性認知症と並び三大認知症と呼ばれている。進行性の認知機能障害に加えて、幻視症状とパーキンソン症候群を示す変性性認知症である。~~、である。)より引用。
    ↓                    ↓
「そのまま出ていこうとする医者ともう少し話したい気持ちで、母の掛かった老人性痴ほう症とは、どんな病気かを聞いてみた。この男ならざっくばらんな話を聞かせてくれるかもしれない。
『さあ、我々にもよくわからんですな。』~
『とにかく戦後増えましたな、こういう病気がーー』
身体の各部は健全なのに、脳細胞だけが老衰する。←W。この認識は主としてアルツハイマー型認知症に当てはまり、レビー小体型認知症 - Wikipediaの場合は事情が異なる。
医学が発達して人間の寿命が延びるにしたがって、この種の患者が多くなった。現在ではアメリカで最も多くみられる症例である』
廊下を並んで歩きながら、病気や病院について当たり障りのなさそうな話を聞かせてくれた。
『何しろ長い病気のことですから、ここにも自費で入院料を賄っている患者じゃ、めったにありません。
ほとんどが医療保護を受けています。保護の枠内でやっていくことになると、食と住とでいっぱいいっぱいでいの方はご覧の通りのありさまでーー」と彼は患者たちの服装の貧しいことを弁解するように言った。なるほど彼らの多くが身に着けているものは単的に言えば、ぼろ布であって、ほとんど衣服というに値しないものだった。』
「伯母はまた、父と母がY村の遺影に厄介になっている間、父がどんなに母のためによく面倒を見たかを話し始めた。何しろtyっと目を離していると母はすぐどこかに出かけてしまい、出かけると1里も2里も遠くの見知らむぬいえに上がり込んでいたりするので探しようがない、家事の手伝いはもちろんできないので、洗濯や掃除は全部父がしなければならず、ふろにも一人で入れないので父が一緒に行って身体を流してやっていた、という。
それらは信太郎がY村に訪ねたときにも、このおばから聞かされたことだ。
~『信太郎さんはエライぞね。まことにエラカッタぞね。それほど苦労しても愚痴一つこぼさんもの。
立った一遍だけ言ったのは、冬のさなかの夜中に、便所へ行くオチカに何度も起こされて、付き添うて用が済むまで外で待ちよらんにゃいかんのがつらい、と。それをいっぺんにうただけぞね。』
「その夜、母静かに寝た。
夕食の時、明日は東京へ帰ろう、といいきかていたかもしれない。夜中に一度、母たちの寝室から。ふすまに何かのぶつかる物音が聞こえ、股ふぉっさを起こしたのかと思ったが、父のまだ半分眠っているような声がしてふすまが開いた。
--足音が暗い廊下を自分のヘア屋につかずいてくる気配に、信太郎は一周地の逆流するような恐怖を思えた。目の前にほの白く浮かんだ障子に影が差した
 その時『違う、違う。便所はこっちだ、反対側だよ』という父の声が読呼んだ。すると
『おや、そうか、間違ったかな。』意外になほど素直な声が答えて、今度は足音は正確に便所の方へ遠ざかり、古い杉戸がきしみながら開く音はした。
『息子さんぞね息子さん』
母の呼吸はいくらか落ち着き始めた。彼女は眼を閉じた。部屋の外に押し音が聞こえて父親が表れ枕元に座った。
その時だった。『イアタイ。イタイ』次第に間遠に、眠りに誘い込まれるようにつぶやいていた母が、かすれかかる声で低くいった。
『お父さん』~父はいつもの薄ら笑いをほほに浮かべたまま、安らかな寝息を立て始める妻の顔に目を落とした。

~話題を変えるために、『母のような病気にかかっているものが全国でどのくらいいるものか』聞いてみた。
~『それがさっぱりわからんのですよ。
外国の場合だと、老人だろうと何だろうと、すぐに入院させるのですが、こちらは家族主義というか、個人主義思想の徹底がたらんというか、たいていは家において外に出さんようにしますからね。
ことに病気の性質から言って、年寄りが多いものですから。あなたのように』
~なるほど、夫の信吉が内地にいるときでも留守がちであり、生活を保障されて(W。獣医師陸軍少将)、息子と二人で暮らすことの多かった母親は、家庭の主婦としては気楽なものだったはずだ。
>原因はむしろ、そうした気楽な暮らしと戦後のひっ迫したそれとのクイチガイ、それにたまたまその時期に生理的変調をきたす更年期がぶつかったことによるのではないかと思われた。」 引用終了

W。資料③
引用
認知症を引き起こす最大のリスクファクターは、長生きなのです

>>高齢であれば、「認知症になるくらい長生きしたのだ」と喜ばなければなりません。
>そこがスッポリと抜け落ちた状態で治療へと走るから、事態が悪化します 
Q それだけ、認知症が恐がられているということですね。
東田「長生きをしたい」という願いと「認知症にはなりたくない」という願いは、本来矛盾しているのです

それなのに多くの日本人は、「認知症にならずに長生きしたい」と考えます
極端になると、「認知症になるくらいなら、長生きしなくてもいい」と言う人もいるほどです
海外の先進国では、認知症を怖がらせないキャンペーンをどの政府も率先して行っているのに、日本の政府は「早期発見、早期絶望」へと向かわせています。 

W。資料④
引用

W。資料⑤~~資料③の見解の詳しい説明~~ 反俗日記 2017/9/21(木) 午後 0:30 
 引用
「薬は、とりあえずアリセプト(ドネペジル塩酸塩)が使われます。すると、ある専門医の経験では約2割のお年寄りが病的に怒りっぽくなるのです。
そこで、鎮静させるために向精神薬抗精神病薬抗うつ薬抗不安薬、睡眠導入薬など)を併用します。そうすると、取り返しがつかないほど悪化させられるお年寄りが少なくないのです。

一方、認知症の講習会というのは1時間半程度の安易なもので、「認知症=脳の病気」という観念を刷りこんでいるに過ぎません

世の中には、認知症という病気があると思いこんでいる人が多いのではないでしょうか?

東田 >認知症とは、認知機能が衰えて社会生活に支障をきたした「状態」を指す言葉です。

認知症を引き起こす原因疾患は、70あるとも100あるとも言われています。
Q 認知症という呼び方は、10年前から始まったのですね。「呼び名の変更が病気への偏見を解消するのに役立った」という意見を新聞で読んだことがあります。政府のキャンペーンというのは、認知症に関する講習会を受講するとオレンジのリストバンドがもらえて、認知症サポーターになれるというものですね。すでに数百万人の認知症サポーターが誕生したと本書に書いてありました。認知症のお年寄りの尊厳を守るうえで、マイルドな呼び名に変わったりサポーターが増えるのは結構なことだと思うのですが、誤解ですか?

東田 誤解です認知症という造語は、薬害を発生させる温床になりました。
原因疾患を特定しないまま認知症という病名をつけるだけで薬物療法を開始できるようになったからです
>2004年12月には、痴呆を認知症と呼び換えるという決定が厚生労働省から発表されました。
>2005年からは、認知症を知ろうという政府の大キャンペーンが始まり、今も続いています

認知症は脳の病気であるという考えは、「早期受診、早期診断、早期治療」を呼びかける厚生労働省の執拗なキャンペーンのおかげで、多くの国民に浸透しました。
Q 本書では、認知症を引き起こす最大の原因は薬であることを強調していらっしゃいますね。
東田 結果として、そうなるのです。65歳未満で発病する若年認知症は脳の病気と考えてもいいでしょうが、
かなり高齢になっている人の認知機能が衰えたからといって、「病気だから治さなければいけない」と薬を使えば、良い結果を生みません

>>認知症を引き起こす最大のリスクファクターは、長生きなのです

>>高齢であれば、「認知症になるくらい長生きしたのだ」と喜ばなければなりません。
>そこがスッポリと抜け落ちた状態で治療へと走るから、事態が悪化します

Q それだけ、認知症が恐がられているということですね。
東田「長生きをしたい」という願いと「認知症にはなりたくない」という願いは、本来矛盾しているのです

それなのに多くの日本人は、「認知症にならずに長生きしたい」と考えます
極端になると、「認知症になるくらいなら、長生きしなくてもいい」と言う人もいるほどです
海外の先進国では、認知症を怖がらせないキャンペーンをどの政府も率先して行っているのに、日本の政府は「早期発見、早期絶望」へと向かわせています。


  認知症サポーター養成講座標準教材認知症を学び地域で支えよう~
*教材作成協力者、斎藤正彦 第1章(①~⑤、⑦,⑧)
  <脳の働き>
大脳皮質連合野の機能
イメージ 1アルツハイマー病などの変性疾患
大脳皮質連合野や海馬領域を中心にβアミロイドというたんぱく質のごみ、
>続いてタウタンパクが神経細胞内に蓄積し神経細胞のネットワークが壊れると発症する。
比較的早い段階から記憶障害、見当識障害、の比較的不安、うつ、妄想が出やすくなります。







   中核症状と周辺症状(行動心理症状BPSD
イメージ 2

行動心理症状とは
中核症状に対して、本人の性格、環境、人間関係などの要因が絡み合って、精神症状や、日常生活における行動上の問題が起きていることがあり、行動心理症状と呼ばれます。












     <中核症状>
 症状1  記憶障害
脳は、目や耳などからいるたくさんの情報のうち、必要な者や関心のある物は一時的に蓄え、大事な情報は忘れないように長期保存するようにできています。
>しかし脳の一部の細胞が壊れ働きを失うと、覚えられない、すぐ忘れるといった記憶障害が起こります。
       <認知症の記憶障害>
●経験したことを全体を忘れている
●目の前の人が誰なのかわからない。
 置き忘れ紛失が頻繁になる。
 食べたこと自体を忘れている。
●約束したこと自体を忘れている。
 数分前の記憶が残らない。
 月や季節を間違える。
 
 症状2   見当識障害 
見当識障害は記憶障害と並んで早くから現れます。
  ① 時間
見当識障害は、時間や季節の感覚が薄れることから現れます。
長時間待ったり、予定に合わせて住日したりすることができなくなります。
  ②場所
道に迷ったり、遠くに歩いていこうとします。
   ③人物
人間関係の見当識はかなり進行して現れます。
周囲の人との関係がわからなくなります。
80歳の人が50歳の娘に対しておばさん。
>なくなっているはずの母親が心配しているからと党く離れた郷里の実家に歩いて帰ろうとします。
×過去に獲得した記憶を失う段階まで進行することによって起きる症状です。
      見当識
現在の年月や時刻、自分がどこにいるかなど、基本的な状況を把握することです。

 症状3 理解判断力の障害
① 考えるスピードが遅くなります←急がせない
②二つ以上のことが重なるとうまく処理できない←シンプルに伝える
③いつもと違う出来事で混乱しやすくなる。←補い守る
お葬式での不自然な行動や夫の入院で混乱してしまったことから認知症が発覚する場合があります。
予想外のことが起こったとき、補い守ってくれる人がいれば日常生活は継続できます。
④ 目に見えない仕組みが理解できなくなります。
目に見えないメカニズムが理解できなくなります。
自動販売機、交通機関の自動改札、銀行のATMなどの前でまごまご。
全自動の洗濯機、火が見えないIHクッカーなどもうまく使えなくなります。
認知症になってからの買い替えは混乱を招くことになります

症状4 実行機能障害
計画を立て段取りをすることができなくなります。
>同じ食材が冷蔵庫にたまりだしたら注意して見守りましょう

保たれている能力を活用する支援を
ちょっとした支えで、認知症の人にはできることがたくさんあります。

症状5 その他 認知症になるとその場の状況が読めなくなります。

  <行動心理障害とその支援>
記憶障害などの中核症状がもとになり、本人の性格や素質、周囲の環境や人間関係などが影響して出現する症状。
 
 症状 元気なく引っ込み思案になることがあります。
>周囲が気づく前から、本人が何かおかしいときがついています。
*毎日の食事も出来合いのお惣菜で済ますようになったりします。
*将来の望みを失ってうつ状態になる場合もあります。
能力の低下を強く自覚し、ひそかに認知症の本を調べたりしている人もいます。水から認知症を疑って将来に望みをなくし、うつ状態になることもあります。
>本人に恥をかかせないよう、自信をなくすような言葉は避け、本人の尊厳を傷つけるようなことが名ようにすることが重要なサポートです。
>できることはやってもらうことは必要ですが、できたはずのことができなくなったりという体験は、本人が自信を無くす結果になって逆効果です。
>自分の能力が低下してしまったことを再認識させてしまってはますます自信を失わせます。

     認知症の診断、治療
行動心理症状には原因や状況に応じた療法を
行動心理症状とは
①脳の細胞が壊れたこと (器質因子)
②持って生まれた素質   (素質因子)
心理的環境的要因   (社会心理的因子)
が複合的に関与して起こります
>正しい見立てで、起きている症状の原因を推定し、支援治療を決め現実的な対応をすることが重要です。

   今後の見通しを立てて備えることが必要です。
認知症の経過>
認知症の経過は個人差が大きく、進行が遅い人や進行が止まってしまう人もいます。
<継承のうちから専門家との信頼関係を築く>
終末医療や介護の方針については、家族や跡見人などに任せなけらばなりません。
  
  認知症の予防
①会刺激で笑顔に 
心地よい刺激や笑うことにより意欲をもたらす脳内物質(ダパミン)がたくさん放出されます。
②コミュニケーションで安心 
社会との接触が失われると、認知機能の低下を促進させます。友人や家族と楽しく過ごすことが大切です
③役割日課をもとう
人の役に立てることを日課に取り入れることが生活を充実させ、認知機能を高めます。
④ほめる、褒められる

  認知症の人への支援とは
関わる人の心構え=さりげなく自然にが一番
私たちがすべきことは、認知症の障害を補いながら、さりげなく、自然に、それが一番の支援です。

  認知症の人への対応 ガイドライン
認知症の人への対応の心得 3つの「ない」
①驚かせない
②急がせない
③自尊心を傷つけない

    具体的な対応 7つのポイント
まずは見守る

余裕をもって対応する
>こちらが困惑したり焦りを感じていると、相手にも伝わって動揺させしまいます。
自然な笑顔で応じましょう。

後ろから声をかけない

穏やかにはっきりした話し方で
>早口、大声、甲高い声でまくしたてないこと

相手の言葉に耳を傾けてゆっくりと
認知症の人は急がせるのが苦手です。
>同時に複数のというに子とえることも苦手です。
>相手の反応をうかがいながら会話をしましょう。
>相手の言葉をゆっくり聞き、何をしたいのか相手の言葉を使って推測、確認していきます。
   
   認知症介護をしている家族の気持ちを理解する
第1ステップ  <戸惑い否定>
異常な言動に戸惑い、否定しようとする
他の家族にすら打ち明けられずに悩む。

第2ステップ <混乱、怒り、拒絶>
認知症の理解の不十分さからどう対応してよいかわからず混乱し、些細なことで腹を立てたり叱ったりする。
精神的身体的に疲労困憊、拒絶感、絶望感に陥りやすい最も困難な時期
>先進的身体的に疲労困憊し、異常な言動を増幅させる認知症の人に対して「もう顔も見たくない」と拒絶する態度をとってしまうことも珍しくありません。
毎日の苦労とこんな生活がいつまで続くのかという不安が重くのしかかっ、絶望的な気分下と追い詰められます。
 家族だけで問題を抱え込む段階ではありません。

第3ステップ <割り切り>
いかったりイライラしても何のメリットもないと思い始め、割り切るようになる時期
症状は同じでも介護者にとっても「問題」としては軽くなる。
ただし認知症が進行して新たな症状が現れるとこともあります。
>ここで再び混乱してしまうと第2ステップに逆戻りしかねませんので落ち着いた対応が必要で

第4ステップ 受容
認知症に対する理解が深まって、認知症の人の心理を介護者自身が考えなくてもわかるまでなる。
認知症である家族のあるがままを受け入れられるようになる時期。
>介護す亜自身が人間的に成長を遂げたあかしといえるかもしれません。

齋藤正彦先生に「認知症」(関わり)を訊く
周囲の人が認知症の患者さんをサポートする上でのポイントを教えてください。
「家族が介護する場合は、正しい介護を目指さないことです。何が正しいかなど誰にも分かりません。」
「家族全体の平均点が合格ラインを超えることが重要なのであって、介護される人だけ満点、その他の家族は30点といった生活は長続きしません。教科書のような正しい介護ではなく、楽な生活を目指すべきだとお話します。」
もう一つは、自信満々な医療や福祉の専門家の自慢話を信じるなということです


齋藤正彦先生に「認知症」(関わり)を訊く
①今までに出会った患者さんとの対話の中で、印象に残っているエピソードはありますか?
「私はこのAさんの診察をきっかけに、患者さんとご家族とは別である、ということを再認識しました。 Aさんは学校の成績といった意味ではなく、人生知において知的レベルの高い方でした。 「見当識障害」は患者さんが迷子になったことを契機に、ご家族が気付く場合が多いですが、Aさんは「時間の長さがわからなくなった」という発言をされました。」
~「Aさんのお話から、「見当識障害」は周囲の人が気づくより何年も前から起こっており、患者さんが症状に悩んでいることを知りました。」
「実際に次の週、物忘れをテーマにグループワークを行ったところ、「周囲から、物忘れを指摘されても、自分が忘れたのかどうかさえはっきり分からない」という不気味な感覚を皆さんが話され、沈んだ雰囲気にもなりました。会が終わりかけたころ、何も忘れられない人生もそれまた大変ですよね」という患者さん(Bさん)の言葉にみんながうなずき、静かに会が終わりそうになりました。ところが、その時、グループに入っていた若い臨床心理士の「皆さんのように達観できると、アルツハイマー病になっても、立派に生きていけますね」という何気なく発せられた一言で一座が再び静まり返りました。その場の空気を溶かしたのは、「達観ではなく、諦観です。だってしょうがないでしょう?治らないのだから。」というAさんの静かな一言でした。


②周囲の人が認知症の患者さんをサポートする上でのポイントを教えてください。
「家族が介護する場合は、正しい介護を目指さないことです。何が正しいかなど誰にも分かりません。」
「家族全体の平均点が合格ラインを超えることが重要なのであって、介護される人だけ満点、その他の家族は30点といった生活は長続きしません。教科書のような正しい介護ではなく、楽な生活を目指すべきだとお話します。」
もう一つは、自信満々な医療や福祉の専門家の自慢話を信じるなということです。医師が長く診察するのは、うまく行った事例だけです。アドバイスが無効だった患者さんは通院しなくなるからです。結果として、うまく行った患者ばかりが残り、反省の無い医師は自分の患者は皆うまく行っているという妄想に陥るのです。」