尖閣で逮捕した中国人船長を釈放したのに中国政府が日本政府に謝罪と賠償を要求している事に対して、政府内で困惑が広がっているという。新聞テレビは全く見ないので、世論や野党の反応を知る由もないが、おそらく、釈放しただけでも譲歩したのだから、その上、謝罪や賠償を要求することは土下座せよと、主張することに等しいと、映ると思う。
それでも、尖閣諸島の日本領有権を押し切るまでには至らないと、率直に思った。
その理由をいか列記しておく。
この事実をもって領有を主張している。極端にいえばこれが全ての根拠である。
2)中国、台湾側の主張は明治以来の日本帝国主義の対外膨張による島上の利用実績を重視せず、この海域には事実上、国境確定はなく、現地漁民が共同利用していたモノと解釈する。
3)さらには、彼らの主張の根底には明治から戦前にかけての日本帝国主義の対外膨張に対する、大きな被害者意識があり、その膨張の一環として獲得された領土、領海を完全否定する指向がある。
4)1952年、連合国48カ国との間で締結された、サンフランシスコ講和条約によって、連合国占領下の日本の独立と一切の海外領土の放棄、アメリカ占領軍の存続は決定されたが、この条約は片面条約であり、韓国、中国、ソ連などは署名しなかったしできなかった。
韓国、中国の日本帝国主義による支配と被害の賠償責任追及の場は設定されないままだった。
日本の交渉相手の48カ国は冷戦突入、朝鮮戦争に日本基地、工業力を動員する方向もあって、日本に賠償を請求する立場にない。
後に日韓条約締結時、韓国との間で事実上の賠償が確認され日本は援助で実行したが、中国との間で結ばれた1978年の友好条約締結時、そのような裏交渉はなかったとみる。
ただし、ODAを長らく継続してきた事がこれに当たるのかどうか。
尤も以上の理解は事実確認していないので自信がない。
6)第二。サ条約によって、日本独立と引き換えに占領米軍の存続、千島列島、南樺太の領有権が放棄された。(現在の北方4島返還問題の端はここに発している)
この地上施設と海上保安庁の制海行動を持って、領海、領土権の主張は、日中関係を1978年の平和条約におき、締結当時の中国共産党実力者、鄧小平の改革開放路線によって今日の中国がある、との当局の歴史認識を事実上、逆なでするモノである。
彼らは日中関係破壊を職業的活動にするような団体の建設した施設を政府施設として、領有権を主張する政治方向に不快感を持っている。
10)政府の諮問機関、新安保懇の答申の中で「先島諸島への自衛隊本体の配備が盛り込まれているが、中国当局はこれをアメリカと共同した反中覇権行動とみなしており、尖閣問題もこの一環として対処していこうとしている。
力の立場に立っているモノに事実をしめすだけでは限界がある。
彼らの基本方針は将来的な共産党政権の存続、その下での中国国家の戦略的方向性をかけた戦いと位置付けている。
11)乱雑な列記になっていまったが、中国船長逮捕事件は中国当局の基本方向を見誤った、稚拙な行為である。元々逮捕すべきでなかった。
さらに言えば、日本当局に冷徹な中国分析が足りない。経済ボケしている。
12)アメリカの力を利用して覇権を打ち立てようとする日本当局の動きは、これからの東アジア情勢で厳しい試練に立たされよう。そのような方向は相手の覇権の発動にまともに対峙しなければならない結果を生む。
アメリカは自国の利益を優先して日本を操っているだけだ。
中国船船長逮捕で中国という虎になろうとしているモノの尻尾を踏んだ。
虎の尻尾を踏んだことは悪い事ではない。国民にとって最大の実物教育の場が提供された。こういう生の強烈な事態の中からしか、国民意識は発達しないが、日本人は忘れっぽすぎるし、集団発狂して、暴走する危険性を持っている。基本的に政治不向きな民族との自覚が必要。
これを日本国民の将来のためいい教訓にし負ければならない。ここから悪い教訓を引き出してはならない。
これでアジッテいる奴は、戦前の日本を破滅に追いやった者と同類とみなしてよい。自分も知らないし相手も知らない。
>>>自分の国の国民に希望や幸福をもたらすことができないから、政府は外に向かって覇権を求める。中国しかり、アメリカしかり。日本も特殊な覇権国。その自覚は国民にない。都合のいい時だけ、平和憲法や被爆体験を持ち出すが、軍事力は世界屈指であり、経済力は大きい。中国も対外膨張急だが、日本にその傾向がない
とは言えない。敗戦国としての歴史的限定性があるだけだ。
この事態は覇権と覇権のぶつかり合い。それ以外の何物でもない。
極端にいえば、飢えた狼同士が獲物を巡って食い合いをしている状況に似たり。国民が其れに熱中したり、最悪、参加したりするほど、馬鹿なことはない。
しかしこれが紛れもない時代基調なのだ。巻き込まれないようにしなければならないし、戦わなければならない。
このままいくと日本は身動きとれない様な泥沼にはまるしかなかろう。