反俗日記

多方面のジャンルについて探求する。

第5回、レーニン「帝国主義論」~★  八 資本主義の寄生性と腐朽~

  八 資本主義の寄生性と腐朽
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帝国主義の最も奥深い経済的基礎は独占である。これは資本主義的独占であり、すなわち、資本主義から成長してきて、資本主義、商品生産、競争という一般的環境のうちにある、そしてこの一般的環境とのたえまない、活路のない矛盾のうちにある、独占である。しかしそれにもかかわらず、それは、あらゆる独占とおなじように、不可避的に停滞と腐朽の傾向を生みだす。たとえ一時的にでも独占価格が設定されると、技術的進歩にたいする、したがってまたあらゆる他の進歩、前進運動にたいする刺激的要因がある程度消滅し、さらには技術的進歩を人為的に阻止する経済的可能性が現われる。

たとえば、アメリカでオーウェンスという人が、ビンの製造に革命をもたらすようなビン製造機を発明した。ドイツのビン製造業者のカルテルオーウェンスの特許を買いとり、それをしまいこんで、それの応用を妨げるのである。、技術的改善をとりいれることによって生産費を引き下げ利潤を高める可能性があることは、変化をうながす作用をする。しかし停滞と腐朽とへの傾向は独占に固有であって、それはそれで作用をつづけ、個々の産業部門で、個々の国で、一定期間優位を占める。さらに、帝国主義とは少数の国に貨幣資本が大量に蓄積されることであって、その額は、すでに見たように、有価証券で一〇〇〇億一五〇〇億フランに達している。
その結果、金利生活者の、すなわち「利札切り」で生活する人々の、どんな企業にも全然参加していない人々の、遊惰をもって職業とする人々の階級、あるいはより正確にいえば階層が、異常に成長してくる。
帝国主義の最も本質的な経済的基礎の一つである資本輸出は、金利生活者層の生産からのこの完全な断絶をさらにいっそう強め、いくつかの海外諸国と植民地の労働を搾取することによって生活する国全体に、寄生性という刻印をおす。

世界の最も「商業的な」国で、金利生活者の所得が外国貿易からの所得の五倍にものぼっている! ここに帝国主義帝国主義的寄生性との本質がある。
 だから、「金利生活者国家」(Rentnerstaat)とか高利貸国家とかいう概念が、帝国主義にかんする経済学文献のなかで一般にもちいられるようになっている。世界はひとにぎりの高利貸国家と圧倒的に多数の債務者国家とに分裂した。イギリスはエジプト、日本、中国、南アメリカに借款をあたえている。そしてその艦隊は、必要とあれば執達吏の役割を演じる。その政治的威力はイギリスを債務者の反逆から保護するのである」。

シルダーは、イギリス、フランス、ドイツ、ベルギー、スイスの五つの工業国は「明白な債権者国家」だと考えている。彼がオランダをこのなかに入れないのは、この国が「あまり工業的でない(***)」からにすぎない。合衆国はアメリカ大陸にたいしてだけ債権者である。シュルツェゲーヴァニッツはこう書いている。「イギリスは工業国からしだいに債権者国家に転化しつつある。工業生産と工業品輸出が絶対的に増加しているにもかかわらず、国民経済全体にとっての、利子と配当金からの所得、証券発行、手数料、投機からの所得のもつ意義が相対的に増大している。
「ドイツでは、人々はフランスで見られる金利生活者への転化傾向を嘲笑したがるが、そのさい彼らは、ブルジョアジーにかんするかぎり、ドイツの状態はフランスの状態にますます似てきつつあることをわすれている」。
 
 ホブソンは。「この明確に寄生的な政策を指導するのは資本家であるが、これとおなじ動機は労働者の特殊の部類にも作用している。
多くの都市で、最も重要な産業諸部門が政府の注文に依存している。冶金業や造船業の中心地の帝国主義は、少なからずこの事実に起因している」。この著者の見解によれば、つぎの二通りの事情が古い帝国の力を弱めた。すなわち、
(一)「経済的寄生」と←今日のアメリカにも適用できる。
(二)従属民族から成る軍隊の編成である。←同上。
「第一は経済的寄生の習慣であって、これによって、支配する国家は、自国の支配階級を富ませ、自国の下層階級を買収しておとなしくさせておくために、その領土、植民地、属領を利用した」。
 
 われわれはこれにつけくわえて言おう、――どんな形でおこなわれようと、このような買収が経済的に可能になるためには、独占的高利潤が必要である。
すなわち、そこには、極東からの配当や年金を受けとる富裕な貴族の一小群のほかに、それよりいくらか大きなおかかえ自由職業者と商人の一群と、召使および、運輸業や消耗品の最終の生産工程に従事する労働者の大群がいる。
そして重要な産業部門はみな消滅して、主食品と工業製品は貢物としてアジアとアフリカから流れこむようなことになるかもしれない」。
「われわれのまえには西欧諸国のもっと大きな同盟、大国のヨーロッパ連邦の可能性がひらかれているが、それは世界文明の大義を促進するどころか、西欧の寄生状態という絶大な危険をまねきかねないものであり、またそれは、その上層諸階級がアジアとアフリカから膨大な貢物を受けとってそれでもって非常に多数の手なずけられた従者たち――彼らはもはや農工業製品の生産には従事しないで、新しい金融貴族の統制下に個人的なサーヴィスあるいは第二義的な産業労働をさせられるだけである――を扶養している先進的工業諸国民の一集団であろう。このような理論」(見通しというべきであろう)「を、考慮に値しないものとしてはねつけようとするものがいるなら、そういう人は、すでにこのような状態に陥っている今日のイングランド南部の諸地方の経済的および社会的事情をしらべてみるがよい。
 
そして、金融業者、『投資家』、政界や実業界の役員たちの同様のグループが、中国を自分たちの経済的支配に従属させ、世界がかつて知らなかったこの最大の潜在的な利潤貯水池から利潤を汲みだして、それをヨーロッパで消費するとき、このような制度がどんなに広く拡大されうるかを、考えてみるがよい。
もちろん、事態はあまりにも複雑であり、世界の諸勢力の動きはあまりにも測りがたいものがあるから、将来についての解釈は、この解釈だろうが他のどんな解釈だろうが、それだけしかありえないということはない。
 しかし、今日西ヨーロッパの帝国主義を左右している力はこの方向にうごいており、なにものかがこれに抵抗するかその方向を変えさせないかぎり、大体においてこのような結末にむかってすすんでゆくのである」。
 
 著者はまったく正しい。もし帝国主義の勢力が抵抗に出あわないなら、それはまさにこのような状態にみちびくだろう
現代の、帝国主義的な環境のもとでの「ヨーロッパ合衆国」の意義が、ここでは正しく評価されている。
ただ、労働運動の内部でも、大多数の国でいまさしあたって勝利を占めている日和見主義者たちが、ほかならぬこの方向に系統的にたゆみなく「働いている」ことを、つけくわえておくべきであろう。
 
 帝国主義、世界の分割を意味し、ひとり中国にかぎらない他の国々の搾取を意味し、ひとにぎりの最も富裕な国々のための独占的高利潤を意味するのであって、それはプロレタリアートの上層部を買収する経済的可能性をつくりだし、そのことによって日和見主義をつちかい、形どらせ、強固にする。ただ、一般に帝国主義にたいして、とくに日和見主義にたいして抵抗している勢力のことを、わすれてはならない。