反俗日記

多方面のジャンルについて探求する。

連載13回 参考資料① 地域別・国別にみて専業主婦の割合はどれくらいでしょうか? 参考資料② なぜ日本では「共働き社会」へのシフトがこんなにも進まないのか?(筒井 ...

  上野千鶴子「資本制と家父長制」
W。これまでの記事で問題にした日英の家事労働論争の差異は~~イギリス家事労働論争と運動の70年代80年代の継続性と労働市場の急速再編の新段階の自然消滅。日本のラジカルリブの一過性と遅い主婦層の成立、70年代以降は主婦研究~~~究極のところ、資本主義の到達段階~~日本の産業構造の周回遅れは明白~~及びソレとは別の視点(例えばエマニュエルトッド世界の家族型分類)で分析べき家族形態の差異~~家族の領域は唯物史観だけでは解き明かせない~~によって生じたものであるが、研究者たちの側に世界的視野(普遍性への希求)が足りなかったものと云える。上野の理論的著作の起動力は欧米理論の自己流取りまとめであって、
日本的状況に踏み込んだ議論の態をなしていない。マルクス主義の女性分析の分野に拘ったのは、成り行き上その方が自己流取りまとめがしやすかったからで上野がマルクス主義者であれば、日本の主婦層の成立に対してもっと厳しい見方ができた!
 
日本において家事専従者である主婦層が成立したのは安価な資源エネルギーに基づく内発的高度経済成長末期の60年代後半であり、主婦層成立の物的基礎の一部は農村からの過剰労働力排出による二重労働力市場化した低賃金労働力に対する資本による強搾取おこぼれである。
主婦層の都市サラリーマン夫は学歴主義、年功序列、企業一家主義、企業内組合などの日本独特のシステムに守られた期間限定的存在であった。~都市の若いサラリーマン夫の給料の多寡ではなく、おこぼれを生み出す日本的システムと家族「制度」文化伝統が若い妻に主婦を選択させた。
 
その後、日本的システム~~ソレを物的基盤とする都市サラリーマン夫~~は、二度のオイルショックを乗り切り1980年代中期のプラザ合意受諾による低金利財政膨張政策の一方で日本的資本強蓄積システムを維持し続け、その見せかけの膨張は日本バブルにおいて頂点を迎えた。
 
実際の女性運動は一過性に終わったが、日本システムと主婦研究の研究材料、主婦層は、何はともあれこの期間まで存在し続けたが、バブル崩壊に引き継ぐ、冷戦体制崩壊グローバル資本主義の荒波、IT金融ビッグバン、資本関係の欧米化再編によって、「フルタイムの家事労働者」は減少した。~~イギリスの場合、上野引用 「70年代から80年代にかけてフルタイムの家事労働者が<激滅>し『賃労働者にして家事労働者』であるという女性の二重労働が歴史的現実になった。」
 
 「フルタイムの家事労働者」は減少 <激滅>には大きな違いがある。

 参考資料 ①
     共働き世帯とほぼ同じ割合に
厚生労働省の平成22年の調査、妻の数。3290万2000人
専業主婦世帯の数、1495万2000組と、割合で言えば45%程度。
最近はとくに専業主婦の世帯の割合が減少傾向にあるようです。
 
昭和55年には、ほとんどの世帯において女性が家庭に入っていましたが、その後共働きの世帯がどんどん増えていき、平成に入る頃にはほぼ同じ割合となりました。←Wの上記の推定が当たっている。
     地域ごとに見ると地方は共働きが多い? W。少し驚いた。
結局は、地方の夫の収入では、妻の労働力を動員しなければ、労働力の再生産費を賄えない。都会と地方の経済格差が広がっており、地方の状態が徐々に都会夫婦に拡大し、都会の頂点には少数派の高収入共稼ぎ夫婦が位置するようになる。
地方では子供の面倒を見る人が周りにいる、も事実。
 
 引用
「専業主婦の割合は、神奈川県が最も多いというデータがあります(2010年国勢調査)。
逆に、共働きの世帯数一位は山形県となりました。
 これらの地域別の特徴を見ていくと、どうやら東京や兵庫、千葉といった大都市とその周辺において専業主婦率が高いようです。」
 
     世界的に見ると日本は共働きが少ない?
 引用  W。家族制度だけではなく、社会制度の事情もある。
「15歳の女子生徒に「専業主婦になりたいか?」というアンケートを行ったところ、アメリカが0.38%だったのに対し、なんと日本は4.02%の女性がYESと答えています。
 
第二位となる国は韓国でしたが、日本に比べるとかなり低い2.45%となっています。
 
日本は他国とくらべて専業主婦の文化が大きく根付いた国であることがわかります。」
引用終了

参考資料 ② Wがくどくどと述べてきた日本欧米の違いが整理されているが、思考行動を進化させる材料を提供しているにすぎない。
 
長くなるが妥当な指摘満載 引用。
「         日本の社会システムをめぐる一つのパズル
しばしば、「日本社会には『男は仕事、女は家庭』という考え方が染み付いている」と言われる。同レベルの経済発展を成し遂げている西欧諸国と比較すればたしかにその傾向は見られる。
、「男性の役割はお金を稼ぐことで、女性の役割は家庭の世話をすることだ」という意見に賛同(「強くそう思う」「そう思う」)と回答した人の割合は、日本で24.4%←(W。意外に少ないのではないか!もっともこの分野で大切な潜在意識はあぶりだされていない、とみる)だが、フランスでは12.5%、スウェーデンでは5.8%
 
ただ、では日本は「専業主婦社会」をさぞかし長く経験したのかと思いきや、実はそんなことはない。むしろ専業主婦モデルは、欧米社会において顕著に存在した制度であった。←W。産業構造の問題である
 
現在では比較的充実した両立支援制度が存在しているフランスでも、世界的に経済が成長期にあった1960年では現在の日本と同じく女性の「M字型就労」M字カーブ(エムジカーブ)とは - コトバンクが見られた。欧米主要国の1960年代における女性労働力参加率は3割前後であった。←W。主婦層の本格的成立
 
これに対して日本では、女性労働力参加率が最も低下したのは1970年代のなかばで1970年代のなかばで、数値もせいぜい5割ほどまでしか下がらなかった。
 
これは、一方で女性も有償労働をすることが多い農業・自営業が衰退して、雇用労働が男性稼ぎ手中心に組織化されていくという変化があり、←W。カラーマークに注目。男の閉鎖的高賃金労働力市場の成立。
他方でサービス産業化のなかで女性が雇用労働に進出←W。低賃金労働層 していく動きがあって、これらが重なっていたために生じた現象だ。
 
つまり、欧米のように女性がすっかり専業主婦になってしまう前に、職場で雇用されて働く女性が増えてきたのである。
要するに欧米諸国ほど日本は本格的主婦社会を経験していないのだ。←W。高度成長経済末期の日本では主婦層は成立したが、60年代に繰り返しTV放映された米国テレビ映画シリーズの「理想」の家庭像は成立しなかった。
 
日本女性はその多くが、常に何らかの有償労働をしてきた、といえる。←W。戦前戦後を通じた日本的産業構造の問題である。
W。読み解くカギは農村に潜在する過剰労働人口であり、高度経済成長期におけるその動員期間は長く続き、コストプッシュインフレとオイルショックで一時的にインストロールされたが、日本資本主義と日本的システムの進行ベクトルは温存された!
 
ここでひとつの謎が出てくる。
 
>なぜ本格的な専業主婦時代を経験してこなかったのに、日本はそこからなかなか抜け出せないでいるのか? ←W。もっともな疑問である!
 
     「男性稼ぎ手モデル」から脱却できない背景
1970〜80年代くらいの日本社会は、いろんな要因から男性稼ぎ手モデルに「うまくはまっていた」のだ。欧米社会に比べてその「はまっていた」期間は短いが、そのはまりぐあいが強固であったために、なかなかそこから抜け出せないわけである。←Wの強調黒下線部分の認識と同じであり、このようなフォーカスでしか、この時期の日本経済史は語れない。
 
家計における「男性稼ぎ手+専業主婦」モデルと最も緊密な相互依存関係にあったのが、企業における日本型雇用モデルである。1970年代から80年代にかけて成熟した日本社会のシステムでは、以下のような相互依存関係があった。
 
まず企業は、長時間労働や頻繁な職務転換、そして即座の転勤に対応できる男性に安定した雇用と賃金上昇を保証する。このせいで内部労働市場が発達し、かわりに外部労働(転職)市場が不活性化する。
他方で家庭(女性)は男性(夫)から家事やケア労働(育児・介護・看護)を免除し、また女性がフルタイムの職を持たないことで夫の長時間労働や転勤に対応できるようにする。
 
 
そして政府は、公共事業を通じて雇用を創出し、各種規制や補助制度を通じて企業を守ることを通じて、男性稼ぎ手の安定した雇用を維持しようとする
 
1980年代は、同時期の大量失業に頭を悩ませていた欧米社会を尻目に日本の経済・企業の「強さ」が目立った時期だったので、この日本的な働き方がその強さを支える要因として持ち上げられることになった。
 
イメージ 1W。ラッキーが重なった成功体験はインプット。
 
経済面以外でも、人口学的に1970〜80年代は「良き時代」であった。
 
W、読み解くカギは戦前戦後を通じて農村に潜在する過剰労働人口であり、高度経済成長期におけるその動員期間は長く続き、コストプッシュインフレとオイルショックで一時的にインストロールされたが、日本資本主義と日本的システムの進行ベクトルは温存された!
 
なにしろ、その前の世代の人々に比べて子ども数が少ないために、育児にかかる負担が小さかった。
 
また、1970年代なかばというのは団塊世代の子育て期だったが、団塊世代はきょうだい数が多いために、多くの人びとが親の面倒を見る負担から免除されていたのだ。
 
もちろん出身地から遠く離れた都会の団地で孤立した子育てをすることになった団塊世代の主婦たちにはそれ相応の苦労もあっただろうが、圧倒的に有利な人口学的条件のために専業主婦生活が基本的に「悪くない」経験としてイメージされた、ということはあるだろう。
 
そして政府としても、こういった(好調な雇用と有利な人口構成という)状況において積極的に家族支出を増やすという方針を持つ必要がなかった。←W。データは既にこの時期に出ていたが、保守長期政権は目先にとらわれた。
 
 欧米社会にとって1980年代は、まさに変化の時代であった
男性の雇用の不安定化、女性の雇用労働への進出が両立支援制度の整備を促し、社会の姿が革命的に作り変えられていく時期だった
しかし日本は女性の労働や家族をめぐる政策方針が大きく転換されることがなかった。
以上のような、偶然の要素も含む好条件があったために、家庭でも企業でも、そして政府としても、男性稼ぎ手モデルから脱却する動機を強く持つことがなかったのだ。
 
     「共働き社会」へのシフトに伴う困難
事、家庭、そして政府の日本的な役割のパターンはしかし、1990年代以降急速に崩れていく。
80年代まではなんとか維持されていた男性の安定雇用は、経済のグローバル化を背景に90年代以降不安定化する。他方で女性の高学歴化と産業構造の転換は、女性の雇用労働化をさらに推し進める圧力となる。
こうして、徐々に「共働き」というライフスタイルが日本でも見られるようになっていく。
 
こうなると、80年代まではうまく噛み合っていたシステムが機能しなくなっていく。
不足する男性所得は、女性のパート労働では補えないレベルに達し、結婚が成立する基盤が掘り崩されていく。>長時間労働、転勤ありの働き方をする男性と女性は、お互いが一緒になったときのライフプランを立てることが難しくなる。症状として、未婚化の加速があらわれる。
 
諸外国が80〜90年代になんとか共働き社会へのシフトをすることができた理由は、いくつかある
 
根本的に異なっていたのが、働き方・雇用制度である。内部労働市場と職能給≒年功賃金をベースとした日本では、労働力調整として外部労働市場を活用しないために、長時間労働、配置転換、転勤がついてまわる。
現在でも正社員は私生活の事情にかかわらず無慈悲な転勤を命じられることがよくある。
 
これに対して外部労働市場と職務給(ジョブベース賃金)を基本とした欧米社会では、豊富な転職市場のほか、柔軟な労働時間の調整や同一労働同一賃金を通じた男女の賃金格差の縮小が実現しやすい素地があった。
 
これに加え北欧社会では、女性が大量に公的雇用されたことが女性にとっての仕事と家庭の両立に有利に働いた。日本のように公的雇用の割合が小さく、女性の雇用が民間経済に大きく依存しているケースとは条件が全く異なっている。
他方、政府のサイズが比較的小さいアメリカでは、移民社会であるがゆえの経済格差を背景として、ケア労働力が市場で相対的に安価に提供されるため、それが子どもを持つ共働きのカップルにとって不可欠のサポート要因となっている。
これも現在の日本社会では欠けている条件である。
 
     力強い介入をすると……
このように考えると、欧米社会の多くの確かに本格的な専業主婦社会を比較的長い期間経験したが、働き方その他の条件からすれば必ずしも専業主婦社会に過度にはまり込んだわけではないことがわかる
したがって、そこから脱する手がかりもある程度社会に内在されていたのだ。
 
これに対して様々な条件を欠いているなかで共働き社会へのシフトを模索しているのが現在の日本である。
 
一方を強制的に変更すると他方に深刻な影響が出てしまう。
80年代までは(家庭、企業、政府という)各パーツがうまく「はまっていた」日本社会は、外的・内的な変化によって変更を迫られている。しかしある不具合を修正しようとして介入を行うと、別の不具合を生み出してしまう。
 
たとえば両立支援に向けた強力な労働規制を導入すると、おそらく一部の、労働力からの過度の収奪に依存する企業は市場から退出することになる。
 
日本政府は従来「企業を通じて雇用を守る」方針を持ってきたが、大陸ヨーロッパや北欧社会では雇用を得られない労働者の生活保障を直接政府が行ってきた。日本では考えられないほど労働規制が順調に遂行されてきたのは、こういった仕組みの違いが背景にあるからだろう。
 
また、比較的経営に余裕を持つ大企業にとってみても、共働き社会においては内部労働市場や無限定的な人材配置をぞんぶんに活用することは難しくなる。
 
          「共働き社会」の弊害
~(経済同類婚)~W。米国型への移行
共働き社会化は世帯間の所得格差の拡大をもたらす可能性がある。というのは、所得の高い男性と所得の高い女性がカップルになるからである。
 
男性稼ぎ手+専業主婦社会では、稼ぎのある男性と結婚した女性は仕事をしないが稼ぎの低い男性と結婚した女性は仕事を続けたため、女性の有償労働は家計の格差を縮めるように作用した。
 
しかし共働きが一般化すると、女性の稼ぎはむしろ格差を広げる力を持つ。
 
これは当初所得の格差が小さい北欧社会においてはあまり見られていないが、
日本がそれに近づいていると考えられるアメリカ社会では、1970年代以降の所得格差の拡大のうち、25〜30%ほどが「共働き社会化」によってもたらされたと言われている
 
W。以下の視点はWにはなかった。要は労働量市場で高価格の労働量商品の生産にカネと手間、時間がかかり、その負担は市場外の家庭が背負う、ということか?
      ↓
共働き社会化は「幸福格差」をもたらす可能性もある。
子どもを持つ夫婦と子どもを持たない夫婦の幸福度のギャップは「親ペナルティ」と呼ばれ、一般的には子どもを持つことによって幸福度は下がるとされている。
政府のサポートがないアメリカでは、先進22ヵ国のうち、この親による幸福度ペナルティが最大になるという。」
引用終了。
 
W。それにしても、参考資料 ①の指摘する事実と数値の「世界」と参考資料 ②の「世界」の相違はかなりのモノ!後者には日本システムが根付き、そのベクトルがなぜ続くのか?という日本的特殊性を明らかにする文化人類学的見地はない。
 
W。東京オリンピック開催万歳?
>日本はこの研究の対象には含まれていないが、日本の公的な家族支出はOECD諸国でも最低レベルであり、アメリカに近い状態にあるとしてもおかしくはない
 
 
W。次回はこのフォーカスから上野「資本制と家父長制」を取り上げる。家事労働は準市場化された!