W。日常的に接するリアルな実例から、傾聴すべき見解が述べられている。ネット書籍に氾濫する理論や解説よりもWが目の前の現実に即している。
Wの立場は、認知症の英語表現、 Symptoms of Dementia(直訳 痴呆症)。
2004年以降の官製表現、認知症は介護医療の現場に即してない表現、日本人独特の現実を直視し、普遍性に迫るルートを拒む表現だと思う。
右脳 感性の脳(動作性知能)。 言葉や数字で表せない情報を認知する機能。
左脳 理性の脳(言語性知能)。 言葉や数字で表せる情報を認知する機能。
>老人性認知症における知的障害
「認知症という病気」という現場の表現は、
①前頭葉機能の病的低下から「認知期の障害へ」
>正常老化 前頭葉機能低下の一定レベルの機能低下
*介護や医療の現場で用いられているMCI(早期認知障害)という言葉は
「左脳が担う認知障害」を意味する言葉であり、
「右脳が担う認知機能(非言語的認知機能)を含む「知能全体の障害」を意味する言葉ではない
↓ ↓W。左脳の機能を重点的に測る質問内容である。
ある年の初頭、(入院日数4日、夏の入院日数7日) 要支援1に認定された。
>3年目に、要支援2に認定され、その3年目に、なぜか要支援1に認定され、
次の年に再び元の要支援2の認定を受けた。
>そして次年度には要介護1の認定を受けた。
>Wの観察する限り、このヒトは過去に身体の病歴はあるが、体幹機能は年齢平均よりも非常に高く、
短期記憶が飛ぶ、見当識障害もある(ほぼ特定人物重複のみでおさまっている)、理解力思考力の低下がみられるが、
となれば、このヒトの過去の生活実態を書類などで推察するしかないWは、
認知症は必ず進行性があるので、
>このヒトの介護認定の紆余曲折の経緯における問診認識力調査の確度に疑問がわいてくる。
>認知症に検査対象を絞れば、一旦要介護2に認定されたものが、要介護1に認定されることなどありえない、と考える。
>また、上記の検査スケール以外のテストを受けたWの点数は一種の知能検査のようなもので、Wの点数は低かった。
その中でWのリアルに感知している状況をもっともよく説明できるのは、この論文だった。
老化現象から老人性認知症へと進行する過程において
① まず、前頭葉機能低下
② 「左脳機能が低下する」
>>しかし実際的な認知機能には右脳が処理する非言語的情報も重要な役割(直観イメージ)果たしている。
知的機能の分類
知的機能の分類 担当領域 機能の特性
①空間的機能
②運動的機能 右脳 感性 動作性知能
③音楽的機能
認知機能
④論理的機能 左脳 理性 言語性知能
⑤言語的機能
⑦対人機能
情動機能 大脳辺縁系 本能(習性) 自己や種族を保存
④ 従って、「認知症が重度であると」と判断された高齢者であって
>一定の日常生活に支障をきたさない程度の認知能力が保たれている限り、
>表面的なあいさつや会話などに支障がみられないケースがしばしばみられて
「右脳が担う認知機能」が保持されやすい感性優位型 と呼ばれる認知症高齢者においては、
>「右脳が担う認知機能」が「左脳が担う認知機能」の障害を補うために実際的な認知機能が保持される傾向がみられるので、
>認知症の機能の障害が顕在化せず、
*一方、理性に偏重し感性の乏しいタイプの認知症高齢者においては、
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**大脳辺縁系
側坐核 「意欲や会館に関する情動機能」
B 自律神経や内分泌系の調整を担う視床下部 との密接なかかわりを通じて
内外からのストレスに反応して身体の恒常性を維持する役割
C 食事や睡眠などの「本能行動」や怒り、不安などに伴う「情動行動」に大きな影響
***********
シンプタム オブ ドメンティアの場合
*問題になるエピソード記憶「いつ どこで だれが どうした」などを覚えている(最近の出来事 短期記憶)=海馬で形成されるためには
↓
1)知的情動~前頭葉、左右の脳に記銘(入力) 必要不可欠
2)海馬で選別
3)左右の脳 に保存
一つの脳として 全システムが順調に機能し
4)再生(想起)される
*老人性痴ほう症における知的機能の障害は、
認識障害や認知障害という脳の部分的障害ではなく、
*知能の全般的障害であり、これらを統合していく前頭葉の障害である。
前頭葉 大脳皮質(人間は発達) 人間(霊長類)
左脳 ↑
右脳 高等哺乳類
↑
下等哺乳類
↑
鳥類
大脳辺縁系 ↑
爬虫類
↑
両生類 (大脳辺縁系のみ)
↑
魚類 (大脳辺縁系のみ)
<大脳>
前頭葉 老化現象
左脳 ↓
右脳 廃用変化
↓
大脳辺縁系 老人性痴ほう症
画像診断で見られる脳の萎縮がどんどん進行していく、症例はほとんど見られないというのが実感です。
記憶障害と海馬
しかし海馬だけの損傷や萎縮によって現出する記憶障害は
「側頭葉性健忘」や「海馬性健忘と呼ばれるもので、知的機能の全般的障害を伴う老人性認知症において発現するする記憶障害とは全く異質の障害であると理解しておく必要があります。
前頭葉の機能低下(原因)が
海馬の萎縮をもたらしていると(結果)考えるのが妥当です。
後期高齢期における知的機能の低下の進行(まとめ)
① 前頭葉の機能低下
② 身体機能の低下 生きがい 役割 仲間喪失 精神社会要因
③ 前頭葉機能低下と左脳が担う認識機能低下
⑤ 簡易知能検査は主に左脳が担う認知機能(言語性知能)を反映するもので、
右脳が担う認知機能(非言語的知能)にはほとんど反映されない。
⑥ 認知機能は右脳と左脳の機能の協調によって、維持されているので
>MSSなどの簡易知能検査によって障害があると判断される場合でも
>現実的には日常生活に支障をきたさない程度の認知機能が保たれている場合
がある(感性優位型、感性残存型)。
⑦ 老人性認知症の本質は
>左脳が担う認知機能の障害ではなく
>統合機能を担う前頭葉の機能の障害である。