反俗日記

多方面のジャンルについて探求する。

江戸末期の一揆の比較。東洲斎写楽について。2013年度貿易収支赤字11兆9千410億円など当局発表数値と2012年度通商白書に見る日本の産業資本の現状。

 WACWAC。
 最近はネットニュースにも接する機会もないままの、時事ニュースその他の情報超過疎状態において久しぶりに、NHKTVニュースに数分ほど遭遇した。
 
 ヤッパリなと、改めて納得した。
大きくいえば<趨勢>、小さくいえば<情勢の流れ>における大きな原動力、要因をできるだけリアルスティックに掴んで、抽象化しておれば、よほどのハプニング名が無い限り設定した枠からはみ出す事実は少ない。
 
 ただし、激動情勢において一般論として、政治軍事過程はファンダメンタルズから遊離して一人歩きする場合が多い。この点を気をつけて、取り込む必要がある。
 中でも、日本の場合、このファンダメンタルズから遊離した政治軍事過程の一人歩き度=過剰反応指数がかなりなものになっており、この点を勘案する必要がある。
 
  どうしてそうなのかという原因を調査しているというのが、この間の作業といっていい。
 
>>江戸時代の一揆を日本の民主政の系譜に指定する作業は、終生のテーマである政治と暴力の課題に沿った江戸時代版とでも云っていい。
今までの関心は、江戸時ではは、畏怖し、心の底から尊敬している大塩平八郎先生に集中するのみだった。
 
 イロイロ、論じなければ成らないが、江戸時代の一揆のパターンの過半は下記のウィキペディア
A)近江天保一揆通称、甲賀一揆)の記事と、
リンクしている事柄と
他の一揆、→
B)天保7年8月14日(1836年9月24日)に天領甲斐で起きた『天保騒動(郡内騒動・甲斐一国騒動・甲州騒動とも呼ばれる)、
 
C)天保11年11月23日(1840年12月16日)庄内藩など三藩の領地替え(三方領知替え)、
今回は調べなかったが、だいたいの事情は把握。
藩主様にそのまま居残って収奪してくださいという19世紀の半ばにもなるのに、佐々木潤之助理論によれば
武士在地不在の典型的な村方町方世界の狭さがもたらした百姓一揆
 
D)天保12年12月4日(1842年1月15日)に徳島藩で起きた『山城谷一揆
逃散型一揆である。一揆論の世界では、こういう形態の一揆は幕末にはなかったことになっている。
一揆論の最先端をいくのは知る限り、須田努さんという専門家。
この方によれば、百姓はその時々の条件に相応しい闘争戦術を選択しているという。
山村の境界線のムラで、地縁血縁、交流の強固な他藩の隣村に示し合わせて逃げ込んで、管轄外だから簡単に手出しができず、他藩の藩主に匿われて、交渉ごととなった。
なかなか政治的な事件である。
この藩主にノブレスオブリージュをみる。江戸時代の日本にも心構えのキチンとした支配者がいた。
 
民衆の窮状を省みない役人に反発し救民を訴えた大塩平八郎による反乱(大塩平八郎の乱)が起き、
 
E)6月1日(7月3日)越後柏崎では国学者生田万が貧民救済を掲げ蜂起(生田万の乱)し、
立ち入った解説はなかった。大塩平八郎に感化を受けた方である。
 
F)天保10年5月14日(1839年6月24日)には幕府の鎖国政策を批判した高野長英等の蘭学者を捕縛した蛮社の獄、で出尽くしているのではないだろうか?
この辺の人はよく知らない。何だか情けないことを言い出すから興味が無い。
 
 >>特に注目すべきは天保7年8月14日(1836年9月24日)に天領甲斐で起きた『天保騒動(郡内騒動・甲斐一国騒動・甲州騒動。
 
 この事態はよく読めば、この時代の一揆、騒動の特質が見事に凝縮されていると想う。
一揆勢が町方に入ると大衆行動のヘゲモニーが替わって、元の主導者は暴力闘争に恐れをなして撤収した。
1、幕府の貧窮者放置政策=餓死者続出無視、外圧幕藩体制危機で、それどころでない。
 自分たちさえ良ければ助かれば、いい。仁政ーお百姓関係は崩れた。
それまでの仁政的対応ルートが閉ざされたら、多くのの貧窮、餓死者はどうすればいいのか。
そのまま立ち尽くし、やがて黙って、野垂れ死にすることが人の道なのか、という生存を掛けた問題がリアルに浮上してきた。
 
2、村方は宿場と山村養蚕商品経済で米価高騰で食えない。
町方は金持ち商業{資本」による買占め売り惜しみ、資本増大、質札蓄積土地所有権拡大→階層分解促進によって底辺、無所有者の増大。
 
3、飢えと餓死の村方の決起の政治目的は売り惜しみの米のとりあえずの借財だったが、
(藩に施作はないから自分たちで、米のあるところに行って掛け合うしかない。当たり前の行動である)
一揆衆が町方に向かったときに、ウィキ解説によれば無宿人や無頼の徒の多数参加で主導権が移り、行動が激烈になり、当初一揆を始めた村方主導者は引き返したとある。
 
4、結論的に云えば、日本の通常の一揆評価の大き過ぎる限界が、ウィキペディア天保騒動保騒動騒動の解説にある。
歴史学の次元では町方村方の階層分解はキチンと解説されている。
定説、歴史的事実、だから誰も否定しない。
しかしそれは、あくまでも抽象化した歴史論である。
実際の階層分解の現場で騒動の火が付けば、リアルな事態は、明らかであり、それへの評価も当時の事情に即応してやるというのが、本当の歴史学ではないのか。
 
 自分は天保騒動に一番興味を持つ。
問題点が行動の中に重層している。またそこに現代に通じるものがあると考える。
残念ながら、天保騒動の正面から解説はネットになかった。日本の民衆運動史の限界である。
東京都知事選挙にもそれは現れているのではないか?
 
 
 大塩平八郎先生も尊敬するが、
井原西鶴も素晴らしいと感嘆する。誓願寺という街中の寺にちっぽけで素朴な墓がある。
200年以上前の江戸元禄時代が生み出した独自の境地は現代にストレートに通じるから不思議だ。
 
 それから約100年後の文化文政の時代で興味を聞くのは、たった1年の出現に終わったが、普遍的独創的浮世絵師、東洲斎写楽だった。
ウィキ引用。
寛政6年(1794年)5月から翌年の寛政7年3月にかけての約10か月の期間内に約145点余の錦絵作品を出版したのち、忽然と浮世絵の世界から姿を消した謎の浮世絵師として知られる。本名、生没年、出生地などは長きにわたり不明であり、その正体については様々な研究がなされてきたが、現在では阿波徳島藩蜂須賀家お抱えの能役者斎藤十郎兵衛(さいとう じゅうろべえ、宝暦13年〈1763年〉? - 文政3年〈1820年〉?)だとする説が有力となっている。」
 
 この人の28枚の大首浮世絵版画の究極のリアリズム=デフォルメの圧倒的迫力は、薄暗い美術館の仄かなナイトに照らし出された実物を見なければ、解らない仕掛けになっている。
ここに芸術の持つ魔力を感じる。
残念ながら、こうした真の独創的<芸>の<術>を福沢諭吉1万円札の文明開花急進欧米化、日本廃棄、廃仏毀釈は否定した。
版元の蔦谷重三郎によって大量出版された写楽大首絵版画は江戸みあげの包み紙にされたそうである。
明治以降、その独創性、普遍性を発見し、芸術論として定着させたのはドイツ人が最初だった。
しかし、もうこの時点で過半の浮世絵版画は海外コレクターに二束三文で買い占められていた。
私が美術館で接した写楽版画の代表作もオランダの美術館所蔵の出張浮世絵展覧会だった。
写楽の他に、広重、歌麿などなど、全部あった。
 
 なお、写楽を語る場合、写楽とは誰か?という疑問が付きまとうが、その探索において、写楽作の春画があるのかないのか、入り口の確認がなされていない、ことを不思議に想う。
 
 歌麿を言うに及ばず、広重、そして葛飾北斎も、当時の職業絵師は春画を描くことで生計を立てていた
(現在、春画集は出版されているが、一般書店には配本されていないと想う。大規模古書セール←コレが確実。ネット販売→?なら手にはいる)
狭い範囲の知識(本物を見て圧倒されて以来、熱烈写楽ファンを自称)では東洲斎写楽の後期も含めた筆致で描かれた春画は存在しない。
従って、春画を探索の範囲から、除外している写楽は誰か?は地どり捜査として大きな欠陥がある。
 
 阿波徳島藩に関しては、東京小平市照葉樹林の森公園に対する環境破壊(府中街道拡張<新設>工事、反対運動における吉野川河口堰反対運動を戦った元議員の報告に触発されて、(道路工事と公園の図面まで示して記事にした)特産品の藍を巡る一揆騒動の時代まで遡って、吉野川河口堰反対運動の勝利してしまう地方事情を論じた時に、かなり調べた。(興味のある一揆論の分野であったが、公表する必要なしとそのままで、今後もその必要は無い)
 
 独占的に生産出来る特産品があるために、藩の25万石高の約1,8倍の財政収入を確保していた。
こうした特殊な藩内事情から、野望を持った家老の藩主毒殺→よそ者、若殿招来、財政緊縮藩政改革→藩幹部の包囲による挫折、隠居の支離滅裂のお家騒動が発生したり(未読だが童門冬二の小説。ディテールだけでも、陰謀、権力欲、我欲、物欲でうごめく人間像は滑稽、面白い。急進節税改革という時代背景もある)など、阿波踊りも江戸時代に端を発するらしいから、お抱え能役者、斎藤十郎兵衛が歌舞伎、浮世絵など江戸町民文化趣味が高じて、蔦谷重三郎に才覚をおだて挙げられて、大量の浮世絵版画を江戸中にばら撒いても、何ら不思議でなく、むしろ筋道の通った話しである。
 
 ところが当の歌舞伎役者や通から不評を買って、一気に玄人の浮世絵絵師の真似事をしてみたが、上手くいかなかず、本人も自分の作品をつくづく眺めると、それは納得せざる得ず、デビューからあっという間に筆を折った
 
 それがまさか、2000年の美術館展覧会の最大の目玉に成るとは
 
 東洲斎写楽の浮世絵版画は本物を見なければ、その芸がわからない。
芸は本質的に比較するものではないが、広重や歌麿写楽の足元程度、と展覧会で感じた。抜けている。
江戸時代の日本人にしかできなかった芸であった。素晴らしい!
 
 
 
 NHKTVニュースによれば、今年の2013年度の貿易収支は3年連続の赤字を記録し、
過去最大の11兆9千4百10億円という。
輸出は1,5%の減少
日経平均株価は14974,91円
アナウンサーによれば、生産拠点の海外移転などが原因しているという。
円高進行の事態にあると説明していた。
イメージ 1
 
 グラフの下線の年代を遡って推移見ると、アベ等が大騒ぎしている程の円安はなかった、ということになる。
今、真っ白なライオンヘアーで街頭でアジっている小泉純一郎元首相在任中の円安継続とは、同じ円安でも質が違うとわかる。しかも、それ以前に比べても、決して円安事態ではない。
 
 詳しいことは解らないが、要はアメリカと日本国内の金持ちにカネをばら撒いているのだろ。
米国バブル崩壊→欧州金融危機円高という投機マネーの流れがあった。
欧米経済は回復している。ただし、儲かるところは儲かって、失業者山積みで。
 
 結局、アベ等がイロイロやっても日本経済の長期停滞以降の世界経済における立ち位置に一切変更なし
だったら、何をやってきたのかが問われる
自分で自分の墓穴をちょっとづつ掘っている。
勿論、墓穴とは日本経済の世界経済に対する相対的後退のことだ。国が潰れることではサラサラ無い。
ただ、日本を取り巻く内外環境が悪過ぎるし、自分からそうしている面が強い。
 
結果、原発輸出に狂奔するしかなくなる。
 
 小泉元首相の都知事選の演説を聞いた限り、危機感の根底にはジャパンクォリティーの目に見える低下にあると感じる。
もっとも、下記に記載した2012年度通商白書をよく読めば、ジャパンクォリティーは基本的に存在しなかった、経済産業省が丁寧に説明してくれている。
 
 それで、岩盤規制とやらを取っ払って、外人租界を作ろう、というのが、枡添候補、細川候補なのだから、なかなか、日本の将来はだいたいどうなるかイメージできる
何とか言う女性のオモテ、無し。サイコロ振って丁の目ばかりが出ていたから、今度は表無し、の藩の目ばかりが続くのか?
 
枡添候補が当選すると、第二の石原慎太郎誕生となるだろう。
国会で使い物にならないくても、都知事になれば、お山の大将。
愛国排外主義で観念肥大が石原なら、枡添候補は外人租界誘致に踊る新自由主義市場原理主義のPRマン誕生と成る。
 
  以下、通商白書の一部をメモッたものを参考資料として掲載する。
何かと今後の参考にしたい。日本産業資本の到達段階が描き出されている。 
    
          
                     
              2012年度通商白書
  
  4節我が国の通商環境等に大きな影響を与えた国内の出来事~貿易収支赤字、震災、円高~                
 昨年、2011年3 月の東日本大震災の発生に始まり、10 月以降には前節でその影響を詳説したタイでの洪水被害が本格化した。また、年間を通じた円高基調!とエネルギー価格の高止まり等(W、趨勢)
我が国企業にとっては幾重にも厳しい外部環境が重なる年となった。
それらの結果として、昨年は暦年ベースで31 年ぶりの貿易収支赤字となった。
 
 本節では~特に我が国企業の海外調達の増加についての考察及び、今般の円高局面を交易条件・輸出物価など、
我が国の輸出企業の収益力の側面からみた際の特徴韓国、ドイツとの比較分析等を行った。
 
  品目別の輸入動向については、鉱物性燃料の主な品目の輸入動向を確認
>年8 月に前年同月比+40.0%と前年同月比の伸びでは昨年以降のピークとなったが、各月の伸びのほとんどは<輸入価格の伸び>(8月で同+38.4%)に起因
>一方、LNG は他の主要な鉱物性燃料と違う動きを示している。
LNG の輸入金額は、昨年11 月に前年同月比+76.0%で昨年以降の同値の最大値となったが、<輸入価格の伸び>(同+45.2%)に加えて、<輸入数量(同21.3%)の伸び>も大きくなっており、この傾向は各月とも変わっていない
 我が国をはじめとしたアジア地域のLNG 価格については、基本的に原粗油価格とリンクしており、昨年は原粗油価格の高止まりと連動してLNG 価格も上昇。
米国や欧州のLNG 価格は2008 年半ば以降我が国よりも低くなっているものの、LNG の価格決定メカニズムは、パイプライン網の整備状況や産地からの距離に伴う物流コストの多寡、シェールガスの生産度合いなど、それぞれの市場環境や需給状況により異なっている。

 こうした中で、米国から原粗油価格にリンクしない価格でLNG が輸出されようとしており、こうした動きがアジア地域のLNG の価格決定メカニズムにどのような影響を与えるかが注目される。
W。小泉純一郎原発行動、関連情報
 
 結局はこれまでのエネルギー価格上昇時と同様に輸入価格の上昇分(約5.3 兆円)が貿易収支の悪化を招いた最大の要因になった。
つまり、今後我が国の供給制約が完全に解消されても、輸入価格の上昇が収束しない限りにおいては、貿易収支の改善に大きな制約があることに変わりはない
W。原発停止は関係ないと経産省は予測している。資源エネルギーは投機対象でもある。
 
現在のようなエネルギー価格の高騰を背景とする輸入価格の上昇に対してこれを緩和するとともに???
原発再稼動+シェールガス輸入
 
<輸出面については数量の増加>のみならず、
輸出価格についても一定の水準が確保できるよう、<更なる国際競争力の強化、特に価格決定力の維持・向上を図っていくという視点>が、今後の我が国の経済産業構造を考える上で必要となってきている。
                   
               
                第2章我が国の貿易・投資の構造と変容    
       近年における我が国の交易条件と実質実効為替レートの推移
 我が国は今般の円高局面だけでなく、2000年代に入ってからの円安局面においてもほぼ継続的に交易条件を悪化させていることがわかる。
大幅な円安局面であった2004 年から2007 年頃にかけても、輸出財の国際的な競争の激化から輸出物価の伸びが穏やかなものにとどまったのに対して、資源・原材料価格の継続的な上昇によって輸入物価全体が上昇したことから、交易条件は急激に悪化し、円安のメリットも十分に享受しきれなかったことになる
 為替レートの動向から独立して我が国の交易条件の悪化が慢性的になっていることは、長年にわたって我が国製造業が国際競争力を主に輸出製品の物価を低く抑え込むことによって維持・回復しようとし、そのためにコスト削減努力を続けてきたことの証左。
W。日本のデフレの原因はここにあり、日銀の政策の問題でも、需給ギャップの拡大でもない
          
  各国・地域の最近の交易条件の比較 (過去の円高時(1995 年4 月)を100 とした場合の2012の値) 
交易条件   日本  米国   英国  ドイツ  韓国  台湾   タイ  豪州  ニュージーランド  ブラジル
指数     51.5    90.2    101.1   87.8   41.5   64.1   78.5   190.2    130.4        121.1
 
>我が国の最近の交易条件は実に50%程度当時よりも悪化していることがわかる。
我が国よりも交易条件が悪化しているのは、韓国(60%程度の悪化)のみであり、我が国を取り巻く国際的な競争環境は1995 年時点からより厳しいものとなっている

 特に米国、英国、ドイツといった我が国以外の主要先進国は、1990 年以降の約20 年間にわたり交易条件をほぼ一定に保っており、
資源・原材料価格の高騰に対しても、輸出製品への価格転嫁を進めることなどにより、対処してきたことを示している
 
 資源国・食料輸出国である豪州、ニュージーランド、ブラジルがそれらの価格の急騰により近年交易条件を大幅に改善させているが、それ以外の各国・地域は軒並み悪化していることがわかる。
 
 特に、2000 年代に入ってからの我が国と韓国、台湾の交易条件の動きは、水準こそ違えどもほぼ同じ推移を辿っていることがみてとれる。
W.東アジアの緊張状態の経済的基礎と見る
 
      
       業種別の交易条件の比較(特定産業の交易条件の悪化)
 同じ製造業中心の経済構造となっていながらも、交易条件を維持できている国・地域と継続的に悪化させている国・地域に差が出てくる背景としては、
企業が自社製品のコモディティ化新興国製品との価格競争を避ける輸出戦略を採用できているか否かにかかっているとされる
 日本の電気機械、情報・通信機器、電子部品において交易条件の悪化が著しい
加工系業種の交易条件の動きは、素材系業種に比べると穏やかに推移しているものの、1990 年代後半以降、限られた時期を除いて円安局面でも継続的に悪化を続けていることがわかる
投入側の価格動向に左右されている面もあるが、輸出製品におけるアジア各国・地域との熾烈な価格競争により、恒常的に価格を抑えざるを得ないという主に産出側の価格構造が、近年の交易条件の動向に影響を与えている
      
        
             日独韓の輸出産業の収益力の比較
 我が国の輸出産業の収益力は2000年代初頭から実質実効為替レートが円安方向へ推移していた間も、交易条件が徐々に悪化を続けていたため、収益力は改善していなかったことも読み取れる。
前項でみたとおり、エネルギー価格高騰等により輸入物価が急上昇する中、輸出物価は緩慢な上昇ないしは、世界経済危機後はむしろ下落してきている
 同様に、韓国も1997 年のアジア通貨危機後や2008 年の世界経済危機後の急激なウォン安傾向により、
一時的に収益力が大幅に改善する時期があったものの、中期的にみると我が国以上にウォン安による輸入物価の急上昇により交易条件が悪化し、同様に厳しい競争状況下に置かれていることが読み取れる
 
 一方、ドイツの輸出産業の収益力をみると、
非常に安定的に推移していることがわかる。実質実効為替レート、交易条件ともに安定的であり、結果としてして輸出産業の収益力の維持に貢献している
輸出入の物価の動向をみても、輸入物価の上昇局面では、輸出物価も連動して上昇していることが日韓に比べて特徴的である。
 その理由は価格競争による規模の経済を過度に追求せず、技術やブランドに裏打ちされた価格決定力の保持を最重視しながら迅速に成長する海外マーケットに進出し、
自国通貨や輸入物価の変動に合わせて輸出価格を変更可能とする経営スタイルを採用している輸出企業が多いことにも起因していると考えられる
 
 >また交易条件のみならず、実質的な為替水準の面でも、ドイツは特にユーロ導入の恩恵を受けていると指摘されることが多い。
 
 ユーロを初期から導入しているEU 各国について、実質実効為替レートの導入時から現在(今年1 月時点)までの変動率を比較してみた。
ユーロ圏全体の平均としては、導入時から約8.3%下落しているが、ドイツが最も下落(▲ 12.6%)しており、平均より大きな下落率となっているのは、他にフィンランドとフランスしかない
 この結果から、ドイツの輸出企業にとっては、為替面でのユーロ導入も輸出収益力に対して有利に働いたと考えることができる。
>また、ユーロ圏内でもドイツのように物価上昇率が低位に安定している域内国では、不況期でも政策金利の実質金利が相対的に高く、物価の安定が持続することになる
そのため、ユーロ圏内で為替相場が固定化されていることから実質実効為替レートは低下し、域内での輸出競争力が強化されるという良好な流れが生まれやすくなっている
このような、交易条件と為替両面での事業環境の良好さが、ドイツの輸出産業の収益力の源泉となっていると考えられる。
         
           
           最近の日本株と為替レートの相関係数
>以上のように、我が国と韓国の輸出産業が収益力を互いに削りながらも激しい国際競争を繰り広げてきている状況をマーケットも注視している
>近年の我が国の株式相場(特にTOPIX)は、円ウォンレートとほぼ同じ動きを示しており、その相関はもはやドル円レートよりも高く、非常に強い。
>マーケットが日韓の足元の競争環境に注目しており、円ウォンレートの動きが我が国企業の業績に以前にも増して重要になってきている
W.泥沼につばぜり合い。キツイ。それで経済特区という奥の手が。TPPもある。
 価格決定力の維持・向上を中心にしたドイツ企業の輸出戦略と、安定的な為替環境が輸出価格の国内物価との関係での相対的な上昇という形としても確認できる。

         円高と交易条件悪化の併存状態を脱却するための方策の必要性
 既に長期にわたって賃金コストや原材料等の調達コストの削減等リストラ策を行っており、こうした企業努力もそろそろ限界に来ている
 我が国だけが先進国の中で唯一ULC のみならず、総労働コスト自体を減少させてきており、高付加価値製品を次々と生み出しつつも、
>主にコスト削減努力を通じて企業収益力を高めてきたといえる。
同じく交易条件を悪化させているアジア各国・地域との競争環境はますます激化してきており、急激な円高は我が国の企業がこれまで行ってきたコスト削減の努力をも無駄にしかねない。
W.やはり、安易に円高の所為に知るしかない。

 また、企業内外のヘッジ手段を駆使した為替リスク管理の手法にも、企業の想定を超えた急激な円高の前には自ずと限界がある。
 現状の円高と交易条件悪化が併存する状態のままでは、さらに内需が低迷し、デフレが継続し、さらなる円高に拍車がかかるという、
 現在の我が国経済構造の悪循環から抜け出すことは容易なことではない
円高と交易条件悪化の併存状態を脱却し、悪循環を断ち切るためには、包括的かつ持続的な対策が必要となる。
>例えば、交易条件の改善の一つをとっても、価格競争から脱却して製品差別化による競争優位を強化する企業行動・産業構造への転換を促す中長期的な通商・産業政策が求められる。
W。20年ぐらい、同じことを言っている
 
>>また、経済連携の推進やインフラ輸出の支援、中小企業の海外展開支援等の施策についても、
W.平成版日本企業総倭寇化戦略。
 
>>企業の更なるコスト削減への一助となるのみならず、現地のニーズにより合った製品の輸出や、サービスを含むパッケージ化された製品の輸出を拡大し
W。原発輸出が典型
ブランド価値を向上させること等により、新興国企業に対する価格面以外での競争優位性を強化し、結果として我が国の交易条件の改善につながっていくことが望まれる。
        
 
        輸出物価と国内物価の割合等の比較からも検証可能な輸出収益力
 契約通貨ベースの輸出物価と国内物価の割合
この値が1 よりも大きくなれば、1995 年時点よりも国内物価に比べて、海外での仕入価格が上昇していることになる。
我が国企業サイドからみれば、海外において輸出製品をどのように価格設定しているかを表す指標(以下、「海外価格設定指標」という。)と考えることができる。
工業製品の総平均では、1995年以降一貫して基準を下回っており、当時よりも国内物価に比して海外では割安に価格設定していることになる。
   
 
        ドイツの機械類の品目別の輸出収益力指標等について
 ドイツの品目別の輸出収益力指標の動向の特徴は、非常に安定的に推移している品目が多いことがあげられる。
特に、品目別のウェイトが大きい輸送用機器(輸出物価に占めるウェイトは20.7%、国内物価に占めるウェイトでも13.7%とどちらも機械類の品目中で最大
 
 また、日韓と比較してドイツのもう一つの大きな特徴は、3 か国とも輸出物価・国内物価ともに絶対的な価格水準が大きく低下している電子機器の品目でも、国内物価との関係でみた輸出収益力指標においては、1995 年の基準と比較して大きく低下した品目は存在せず、むしろ通信機器や民生用電子など水準を継続して引き上げている品目が多いことにある。
 これは、本文中でも記述したとおり、大規模生産化等によって価格競争力を追求する傾向の強い電子機器の品目にあっても、
多くのドイツ企業が己の得意分野のイノベーションやブランド価値の向上に注力して徒に規模を追わずに収益力の確保を目指した輸出戦略を採用していることに主に起因しているようにみえる。
     
 
                     結論
 結論としては、日韓両国では輸出収益力に占める為替要因の変動幅が大きく、かつ両国において一定程度の輸出ウェイトを占めている電気・電子機器を中心に輸出先での価格決定力の面でも苦戦している品目が多かった。
 一方、ドイツは日韓の構造と大きく異なり、国内物価との関係でも自国通貨ベースの輸出物価が輸送機器や一般機器といった主要品目を中心に非常に安定しており、
かつ各国共通して絶対的な価格水準の落ち込みが激しい電気・電子機器の品目でもそれなりの輸出収益力を確保しつづけている。
>安定的な為替環境の下で、ブランド価値の向上や、ニッチ分野ながらも自社にしかできないイノベーションを重視する姿勢、価格決定力の維持・向上等を中心としたドイツ企業の輸出戦略と、
未だ輸出価格の競争力である程度勝負せざるを得ない日韓両国企業との差が示唆される結果となった。
 

                      第3節急務となる立地競争力強化
 企業が国を選ぶ時代にあって、我が国が空洞化を防ぎ持続的な経済成長を達成するために、立地競争力の強化は不可欠になる。本節では、迅速な実施が求められる施策を明らかにする。
1.企業の競争力強化のための法人税引下げ
            
           新成長戦略~「元気な日本」復活のシナリオ~
>法人実効税率引下げとアジア拠点化の推進等日本に立地する企業の競争力強化と外資系企業の立地促進のため、法人実効税率を主要国並みに引下げる。
>その際、租税特別措置などあらゆる税制措置を抜本的に見直し、課税ベースの拡大を含め財源確保に留意し、雇用の確保及び企業の立地環境の改善が緊急の課題であることも踏まえ、税率を段階的に引下げる
            
           社会保障・税一体改革大綱(2012 年2 月17 日)
3.法人課税
 法人課税については、国際的な協調等にも留意しつつ、企業の競争力の維持・向上、国内への立地の確保・促進、雇用と国内投資の拡大を図る必要がある。
>こうした観点から、平成23 年度税制改正において、課税ベースの拡大とともに、法人税率を4.5%引下げ(平成24 年度から適用開始)、
中小法人に対する軽減税率についても、中小企業関連の租税特別措置の見直しと併せ、引下げることとしている。
 
2.積極的な取組が求められるグローバル企業の誘致
(1)アジア拠点化の推進に向けて
アジア新興国によるグローバル企業の誘致に向けた支援措置の強化や、アジア新興国の経済成長に伴う我が国市場の相対的な縮小等により、我が国からグローバル企業の撤退が相次いでおり、我が国はアジア地域における国際的な事業活動拠点としての地位を喪失しつつある。
しかしながら、グローバル企業の我が国への進出は、我が国に新たな技術や経営手法等をもたらすものであり、今後の我が国の経済成長に必要不可欠である。
このような状況を踏まえ、政府は、平成22 年6 月18 日に閣議決定された「新成長戦略~「元気な日本」復活のシナリオ~」に基づき、
グローバル企業の研究開発拠点やアジア本社といった高付加価値拠点の誘致を進めてきた。
 
    (2)アジア拠点化を推進するための具体的取組
2020 年までに達成すべき目標として、「高付加価値拠点の増加(年間30 件の誘致)」「外資系企業による雇用者倍増(75 万人→ 200万人)」「対日直接投資倍増」という3 つの目標。
具体的には、
1.グローバル企業に対する補助金や税制などのインセンティブ措置を強化することにより、我が国の立地競争力を高めること、
補助金や税制などのインセンティブ措置を強化することにより、我が国の立地競争力を高め、世界水準の投資環境を整備する。
アジア拠点化立地補助金、アジア拠点化推進法案、法人実効税率の5%引き下げ 等
 
2.総合特区制度等を活用することにより投資を呼び込み、地域における雇用創出につなげること、
 自治体と連携し、総合特区制度・復興特区制度等を活用することにより、国内外からの投資を呼び込む。
  国際戦略総合特区、復興特区 等
 
3.社会資本の整備や規制等の見直し、行政手続の透明性向上、行政の英語化等、事業環境の整備を進めること、
ヒト・モノ・カネの流れを増加するために、社会資本の整備や規制等の見直しと行うとともに、行政手続の透明性向上、行政の英語化を進める。
 ポイント制による出入国管理上の優遇措置行政手続のワンストップサービス強化、 医療機器・医薬品の審査手続の見直し、行政の英語化の推進 
 
4.外国人向けの教育・医療等、生活環境の整備を進めること、
外国人向けの教育・医療等、生活環境の整備を進める。
医療機関における外国人受入環境の整備、インターナショナルスクールの整備 等
         
       特定多国籍企業による研究開発事業等の促進に関する特別措置法案の概要
ターゲット
(1) 研究開発拠点
イノベーションに不可欠な高度な研究者等が集結
(2) アジア本社
グローバル経済社会に不可欠な高度な経営人材等が集結⎧インセンティブ
認定企業につき5 年間、20%所得控除
認定企業の取締役等に外国親会社が付与した新株予約権をストック・オプション税制の対象とし、譲渡時まで課税繰延
中小企業投資育成株式会社による株式引受け(中小企業者のうち、資本金の額が3 億円を超える株式会社も対象)
 
4.我が国経済を支える新規産業の創出に向けて
① 新産業創出と産業構造の転換(「一本足」から多様
な稼ぎ頭の「八ヶ岳」構造へ)
 自動車産業に依存した「一本足打法」の産業構造から、多様な稼ぎ頭による「八ヶ岳」の産業構造への転換は、リーマンショック以降求められてきた課題である。
目下の円高による空洞化懸念を払拭するためにも、新たな産業の創出がより一層強く求められている。
② 3 つの成長産業分野
〈課題解決型産業〉【ヘルスケア産業)【新たなエネルギー産業】
〈クリエイティブ産業〉
〈先端産業〉
 
第一に、日本社会が直面している課題を解決する産業(課題解決型産業)
少子高齢化が進展しており、医療周辺のヘルスケアサービスや子育てサービスの拡充
医療機器
蓄電池などの機器開発、スマートコミュニティの本格導入に向けた新たなビジネス創出
 スマートコミュニティイメージ
 
【クリエイティブ産業の海外展開】
1.クール・ジャパンの海外売込み
官民連携

①売り込み
(ビジネスモデル構築)
海外での
 環境整備
                   
 
                       むすび
      (我が国の貿易・投資構造と変容)
 我が国の貿易構造は、2000 年代になって大きく変化した。我が国企業の海外展開により、東アジアを中心とする国際的な生産分業への統合を深め、中間財貿易が輸出入とも大きく増加している
 そのため、おおむね10%前後で推移していた輸出額の対GDP 比も、約15%にまで拡大した。
かつて「フルセット型」といわれた産業構造は変容を遂げ、国内生産にとって輸入による中間財の供給と外需による生産誘発の双方の重要性が増している
ただし、これをドイツと比較すると、こうした国際分業への統合度合いは依然として低い水準にある。
     
     (31 年ぶりの貿易赤字と歴史的円高から見えてくる構造的課題)
 2011 年の我が国を巡る通商環境の厳しさは、31 年ぶりの貿易赤字に象徴されている。
その要因の半分程度輸入価格の上昇によるものであり、残る半分輸出量の減少と輸入量の増加によるものである。
即ち、
 2010 年末からの中東の政治情勢の不安定化を受けて、原油価格が高騰したこと、それにもかかわらず代替燃料としてLNG の輸入数量が増加したことが、貿易赤字化の主たる要因となり、
これらに大震災による供給制約、歴史的円高、世界経済の減速等による輸出数量の減少が加わる形となった。
 
  2011 年の歴史的円高は、我が国の空洞化懸念の一つの材料となった。
>今回の円高局面は、資源高騰による輸入物価の上昇が厳しく、交易条件の改善を伴っていない。
こうした円高の進行と交易条件の悪化の併存が、我が国輸出企業の収益力に大きな悪影響を与えていると見られる。
>交易条件の悪化は韓国においてさらに強く見られ、韓国からの輸出価格も大きく低下してきていることから、韓国を始めとする東アジア諸国の台頭により競合関係が激化し、我が国の輸出企業が厳しい価格競争を強いられてきていることが示唆される。

>他方、ドイツを見ると、輸出物価、輸入物価とも安定的な動きを示しており、輸出企業の収益力に大き低下は見られない。
価格競争に巻き込まれることなく、技術やブランドによる差別化で一定水準の輸出価格を確保するドイツ企業の戦略も一因と考えられる。
これは、個々の企業の収益性を強化するとともに、資源価格の高騰や為替変動に翻弄されない強い経済構造を作るための一要素となっている可能性がある。
 
      (我が国企業の海外事業展開の広がりと成長機会の取り込み) 
 我が国企業の海外事業展開は、大規模製造企業によるグローバル・サプライチェーンの展開というイメージでは捉えきれない広がりが見られ始めている。
輸出や対外直接投資は中小・中堅企業にも広がってきており、またこれまで「内需型」と言われてきたような非製造業等の業種の中でも海外事業活動への積極的な取組が見られる。
 
>地理的には北米・欧州への投資はシェアとしては低下傾向にあり、中国等のアジアへの投資が急増し、
またこれら地域の市場としての重要性の増大を反映して卸売業・サービス業や、製造業でも卸売機能の海外事業展開が目立ってきている。
 今後、我が国の経済の成長力が減退し、新たな雇用機会へのシフトが進んでいかない場合には、国内の事業活動を海外へ代替する空洞化現象への懸念が現実のものとなる可能性にも留意する必要がある。
 他方、海外事業展開は、企業内の資源配分の効率化、技術・ノウハウの波及効果、研究開発インセンティブの高まり等、国内事業の生産性の向上やイノベーションの促進につながる機会となるものである。
海外事業展開の裾野を今後さらに広げていくことが、新たな成長機会となっていく可能性がある。