反俗日記

多方面のジャンルについて探求する。

キャノングローバル戦略研究所。中国経済基礎情報。

W。中国経済の全体像知るために、要点を引用する。腑に落ちないところが多すぎるが、あくまでも情報源として利用するために、一々指摘しないことにした。キーポイントはマーカー部分。
 
(1)W。中国経済の基本骨格。 「2014年3月20日JBPress掲載
  景気減速する新興国とマクロ経済の安定を保つ中国のコントラスト
キャノングローバル戦略研究所研究主幹瀬口 清之
[研究分野]
中国経済・日米中関係
  新興国は軒並み成長率減速と物価上昇圧力に直面> 経常収支悪化の背景は「国際収支の天井」 ある程度まで所得水準が高まって内需が拡大すれば輸入が急速に増加する。そこで輸出を増やすことができなければ、経常赤字に陥り、通貨価値が下落し、輸入インフレに悩まされ、経済は長期にわたって停滞する。 もし的確な経済政策を実施せず、経常収支が悪化し続けると、通貨価値がさらに下落して輸入物価が上昇し、インフレが加速する。それのみならず、経常収支の悪化にも歯止めがかからなくなり、外貨準備が底をついて、輸入を続けることができなくなる。したがって、景気が拡大して経常収支が悪化すれば、内需を抑制するために金融引き締めを行わざるを得なくなる。その結果、景気減速を余儀なくされる。 >景気が良くなると経常収支が悪化するのは新興国に共通する悩みであり、日本も1960年代前半までこの問題に直面していた。  こうした「国際収支の天井」という構造問題を克服し、持続的な景気拡大の下でも安定的に貿易黒字、経常黒字を保つためには、強い輸出競争力が必要である。最近の新興国の経常収支状況から見て、この問題をほぼ克服できているのは中国とマレーシアだけであり、その他の国は輸出競争力不足に起因する「国際収支の天井」問題を克服できていないと見るべきであろう。 >中国も以前はこの問題に苦しんでいたが、1990年代以降の外資導入に力点を置いた輸出競争力強化策の成功により、2005年以降ようやくこの問題を克服した。
このため、中国経済は2005年以降、高度成長に伴い輸入が急速に伸び続けたにもかかわらず、高水準の貿易黒字を保ち続け、人民元高傾向の長期的な継続によって輸入インフレを防ぎ、国内物価の安定を保持している。これが中国が長期にわたって高度経済成長を実現できている最大の要因である。
中国のこのような安定したマクロ経済情勢の支えとなっているのは経常収支黒字の持続による通貨価値の安定であり、その土台は強い輸出競争力である。
日本が輸出競争力を強化した方法は主に日本企業自身の努力に依拠したが、中国では世界中の優良企業を積極的に中国に招き入れる外資導入策、すなわち対外開放政策に依拠した。
 
  <中国の対外開放政策に応じて先進各国の主要企業は対中直接投資を増加させてきた>
>昨年(W2013年)の各国の対中直接投資額を比較すると、日本の70億ドルに対して、韓国と米国がともに30億ドル程度、ドイツと台湾がともに20億ドル程度と、日本の投資額が群を抜いている。尖閣問題、靖国神社参拝問題など日中関係は強い逆風が吹いているが、それにもかかわらず、日本企業はしたたかに対中ビジネスに取り組んでいる。
中国政府も日本企業が中国の輸出競争力を支えている事実を十分理解しており、各地方政府は競い合うように日本企業を積極的に誘致している。最近の中国における所得水準の上昇とともに、中国各地で高付加価値製品・サービスに対するニーズが強まり、「安心・安全・ハイテク」の代名詞と見られている日本企業進出への期待がますます高まってきている。
 
新興国はどの国も輸出競争力の強化を強く望んでいる。日本企業が中国で成功した経験を基に他の新興国の輸出競争力強化に貢献していくことができれば、日本と新興国との間にも日中間と同様のウィン・ウィン関係が実現する。それが各国のミドルインカムトラップ克服への道へとつながっていくことを期待したい。

2014.05.22
習近平政権の構造改革遅延リスクと日本企業の役割
構造改革実施に伴う痛みへの対応
 現在、中国政府は、構造改革の重要施策の一つとして、鉄鋼、造船、ガラス、太陽光パネルなど過剰設備を抱えている企業の設備投資の削減を推進している。また、石炭価格が下落した影響から、炭鉱関連産業も構造不況に陥っている。
 経済状況の変化により、こうした産業別の整理・淘汰は不可避である。これらの非効率な不採算企業を延命させる救済策は中長期的には国民全体に大きな財政負担をもたらすことから、短期的な痛みを覚悟の上で整理・淘汰は早期に断行すべきである。
 そうした産業のウェイトが高い地域では、不動産価格も下落し、金融機関経営も厳しい状況に置かれている。新築マンションの空室が埋まらず、ゴーストタウン化するケースも少なくない。これをバブル崩壊と混同している報道が多いが、これは日本や欧米諸国が経験したバブル経済の崩壊とは本質的に異なる問題である。
 非効率企業の淘汰は構造改革の重要施策であり、中長期的な産業競争力強化、生産性向上のためには必要な措置である。習近平政権はそうした産業のウェイトが高い地域の経済が危機的な状況にならないよう財政・金融両面から補助的政策を実施しながら構造改革を推進している。」
 
重要施策のうち、<上海自由貿易試験区関連のプロジェクト>は早期実施が期待されている数少ない施策の一つだ。
ところが、その上海自由貿易試験区に関して、改革実施のスタートラインとなる実施細則の発表が遅れている。
 
  2013.11.13
三中全会を前にして中国経済は引き続き良好で安定した状態を維持―上海自由貿易試験区~。
◇ 上海自由貿易試験区のプロジェクトに着手した目的は以下の3点であると見られている。
第1に、将来のTPPへの参入を意識してそのために必要な準備を整えること。
第2に、習近平政権の重要課題である構造改革推進の目玉プロジェクトとすること。
第3に、実施が遅れている金融改革を加速するための足掛かりとすること
これらに加えて、上海市としては外資企業の誘致を促進することも重要な目的である。
◇ 上海自由貿易試験区は事業や政策を試験的に実践し、それが成功した場合には全国展開することが重要な目的とされている。この目的遂行のため、上海自由貿易試験区管理委員会は国務院直属ではなく上海市所属の方が望ましいと判断された。
 (1)試験区の意義と目的
上海在住の金融関係者は、このプロジェクトの狙いは、貿易の利便性向上、投資の自由化、金融自由化、行政の簡素化にあると指摘する。中でも特に金融自由化に力点が置かれると見る。
上海では国家級プロジェクトとして浦東新区開発が進められてきたが、その改革項目は、経済・貿易・金融・航運の4つだった。
>このうち金融の改革が最も遅れている。今回はこの遅れを取り戻すことを目指している。しかし、上海自由貿易試験区の中から外への資金移動の自由については中国経済全体に及ぼすインパクトが非常に大きいことから、中国人民銀行は慎重である。このため現時点では金融自由化がどこまで実施されるかは未知数と見られている。
 
構造改革実現までの時間
構造改革は非効率・不採算企業の淘汰のような痛みを必ず伴う。
短期的には失業保険や預金保険といったセイフティーネットで救済し、中長期的には競争力のある産業の発展、設備投資・雇用の拡大により、淘汰された企業のヒト・モノ・カネを吸収する。成長率が高ければ高いほど、その吸収は容易である。構造改革の推進にとって、少しでも長く高度経済成長を続けることが望ましいのは明らかである。
>この間、中国経済は高度成長期の終焉の時期が徐々に近づきつつあり早ければ2020年前後には安定成長期に移行する。改革の痛みを短期間で容易に吸収できる高度成長の時代が続く期間はそう長くない。高度成長時代が終焉する前に構造改革を断行する。これが習近平政権の重要な使命である
そのためには産業競争力の強化により経常収支の黒字を安定的に確保し、内需主導型成長モデルを維持することが必要である。ここから構造改革の推進と日本企業との関係が見えてくる
 日本企業はこれまで中国での直接投資の拡大を通じ、中国の産業競争力の向上に貢献してきた。最近は日本企業の直接投資額が諸外国の中でも群を抜いており、その貢献度はさらに高まっている。
 今後も日本企業が投資の持続的拡大により中国の産業競争力の強化に貢献すれば、中国経済の高度成長期が長続きする可能性が高まる。それが習近平政権による構造改革実現のために必要な時間の確保につながり、日本企業にとってのビジネスチャンスの拡大にもなる。
 政治面では日中関係改善が遅れているが、経済面では日本企業の中国ビジネスは順調な拡大が続いており、政経分離の様相を呈している。困難な政治情勢の下でも経済関係を維持・発展させることは、日中両国にとって極めて重要な共通課題である。

2015.03.09
「昨年11月の日中首脳会談の実現を機に、日中関係は徐々に改善の方向に向かっている。ただし、中国側の姿勢は依然慎重で、改善テンポは遅い。一方、日韓関係は昨年、オバマ大統領が仲介役となって関係改善に向けて働きかけたが、こちらも動きは鈍い。
 今年は戦後70年にあたるため、日本、中国、韓国等で様々な記念行事が予定されており、それが摩擦の火種になることが懸念されている。
 
>そうした外交関係を無視するかのように、日本を訪問する中国人観光客の激増が続いている。昨年の中国人訪日客数は241万人、前年比83%増だったが、今年の1月も23万人、同45%増とその勢いは止まらない。この間、韓国人訪日客は注目されていないが、訪日客数は中国人を上回っており、昨年が276万人、前年比12%増、今年の1月は36万人、同40%増だ。
 もちろん円安の恩恵で、日本の旅行代金や買い物が割安になっている効果は大きい。それでも本当に日本が嫌いであればこういう現象は起きないはずである。
このように政治・行政主体の外交関係の回復の鈍さと民間主体の経済・文化・観光の活発な交流関係は対照的である。
 日中・日韓関係は歴史認識問題と領土問題の悪影響を受けている。このうち領土問題は棚上げする以外に対策は見当たらない。
*しかし、歴史認識問題は努力を重ねれば改善も可能である。
>その際、相手国の歴史認識を否定・批判することは相手国の反発を招くだけで、何の国益も生まない。相手国の歴史認識に干渉するのは摩擦を悪化させるだけである。歴史認識の修正は各国が自発的に自国の歴史認識を見直すしかない。
>そうした観点に立てば、日本として取り組むべき課題は明らかである。中国、韓国がどのような歴史認識を持っていようとも、日本として客観的な事実と考える歴史を学び、認識するしかない。
>そもそも一般の日本人が中国への侵略戦争韓国併合、太平洋戦争等に関してきちんと理解できているかと問えば、はなはだ心もとないと言わざるを得ない。
>それは小学校から高等学校までの歴史教育において、明治維新から昭和に至る近代史を学ぶ機会が殆どないからである。このような状態で戦後70年を迎え、戦後を総括すると意気込んでも、大多数の日本人がその意義を理解しない可能性が高い。
 戦後70年を総括し、今年を新たな時代に向かう節目の年としたいのであれば、歴史教育もそれにふさわしい中身に改めるべきである。日本人が明治維新後の日本と中国、韓国等アジア諸国との関係史を理解し、その上で日本を訪問する中国人、韓国人等と心を開いて交流すれば、日本を訪問した中国人、韓国人等が日本人の歴史認識を評価するようになるはずである。

2015.03.25
安倍首相訪米時の講演に対する期待、日米中関係、AIIB等について<米国出張報告(2015年3月2日~13日)
「◇ 米国のシンクタンクや大学の著名な東アジア外交の専門家は、米国政府・議会関係者に対し、安倍首相の上下両院合同会議における議会演説(日本の首相としては初めて)の実現を求めている。
◇ 両院合同議会演説が実現するには、TPPが安倍首相訪米前に日米間で妥結すること、および在米韓国コミュニティーによる演説反対の鎮静化という2つの条件をクリアすることが必要~>
◇ 今年予定されている安倍首相のいくつかの重要演説において、日米の多くの有識者が期待する内容は、日本が世界に対してどのようなビジョンを示し、どのような貢献を果たそうとするのかという未来志向の中味である歴史認識問題に関するキーワードが入った、入らなかったといった議論は不毛であると考えられている。
◇ しかし、歴史認識に関する表現が不十分であると見られれば、批判に晒され、一般的な人々の関心はその話題に集中してしまう。そこでキーワードとして注目されている言葉を全て型どおりに演説の中に盛り込むことなどにより、不毛な議論を回避し、未来志向の中味が正当に評価されるようにすることが望ましいとの見方が多い。
◇ 最近、米国内の日本総領事館の総領事や幹部職員が、米国人の歴史認識への対応を強化している。具体的には、米国の有識者や学者の日本に関する歴史認識が日本政府の公式見解と異なる場合、これを改めるよう求めている。しかし、日本政府の活動や対応は米国民の心情的反発を招くため、副作用としての外交面でのマイナス効果が大きく、日本政府が意図している方向と逆の効果を持っていると指摘されている。
◇ 米国政府では昨秋以降、AIIB(アジアインフラ投資銀行)に対する慎重な姿勢を崩していないが、本年入り後、若干その姿勢に変化が窺われている。

2015.03.23
アジアインフラ投資銀行に日本が参加するメリットについて 瀬口 清之
1.アジアインフラ投資銀行(AIIB)が設立された背景
国経済は「新常態」の基本方針の下、内需主導型の中高速成長を保っています。内需拡大や都市化の進展に伴い労働需給が逼迫し、賃金水準が上昇し、労働集約型産業の輸出競争力が低下する一方、輸入の増大が続きます。
こうした状況の下で、中国が今後中長期的にマクロ経済の良好な状態を維持するには、輸出を伸ばし、経常収支が慢性的な赤字状態に陥ることを防ぎ、通貨価値を安定させることが必要です。
>世界の中で米国と中国以外の国々は経済規模がそれほど大きくないため、既存の輸出を伸ばすことによって経常収支の安定を保つことが可能です。
*しかし、中国は米国同様、経済規模が非常に大きく、既存の輸出を伸ばすだけでは十分な輸出先の確保が難しいことが懸念されます。
*そこで中国は、周辺地域のアジアにおけるインフラ建設促進によって新たな需要を掘り起こし、中長期的に安定的な輸出の伸びを保ち、経常収支が慢性赤字に陥らないようにすることが必要です。そのためには海と陸のシルクロード構想とAIIBを一体として活用することが中国にとって非常に重要な政策です。
 
2.なぜイギリスなど多くの国が参加しようとしているのでしょうか?
 AIIBに多くの国が参加しようとしているのは、次のような理由です。
 発展途上国はインフラ建設によって自国経済の発展を促進したいと考えています。主に先進国ではこれによって掘り起こされる巨大なインフラ建設関連ビジネスを自国企業の業績拡大に活かしたいと大きな期待をかけています。

 中国市場の構造変化と日本企業のチャンス拡大 瀬口 清之
中国に精通している日本企業の間では、中国の大都市において一人あたりのGDPが1万ドルに達すると、その地域で日本企業の様々な製品・サービスに対する需要が急速に拡大することが経験的に知られている。代表的な例を挙げれば、紙おむつ、粉ミルク、哺乳瓶、エアコン、空気清浄機、テレビ、文房具、衣類、コンビニ、日本食レストランなど、広範な製品・サービス分野で見られる現象である。
イメージ 11万ドルを約100万円とすれば、両親に子供一人の3人家族で、その都市の平均年収が300万円程度に達することを意味する。中国は貧富の格差が大きいため、平均年収が300万円に達した地域では年収が500万円以上に達する世帯もかなりの割合に達する。その程度の年収であれば、日本の製品・サービスを無理なく購入できるのは十分理解できる。
 
沿海部の先行発展都市と内陸部の後発都市との間で大きな所得格差があっても、先行発展都市の一人当たりGDPが1万ドルに達した後、数年以内に後発都市がその水準に到達することは珍しくない。
つまり、日本企業の潜在的な顧客層は、地域的にも日本の常識では想像もつかない速さで、急速に広がり続けている。
 
 
 
イメージ 22014年初以降、中国政府は対日外交に関して政経分離の方針を明確に打ち出し、日本企業に対する誘致を積極化させたため、日本企業の間でも徐々に安心感が広がりつつある。加えて、今後の中国市場における1万ドルクラブの都市人口、すなわち日本企業にとっての潜在的顧客数が2020年には7~8億人に達すると考えられ、世界中の主要企業が市場開拓を競っている。これほど重要な市場を主要な日本企業が軽視するとは思えないことから、直接投資の回復は時間の問題であると考えられる。
 大半の日本企業が中国に対する投資姿勢を慎重化させたこの2年間に内陸部の後発都市でも、高速道路や高速鉄道等のインフラ建設により投資環境が好転し、産業集積の急速な拡大が生じた。その結果、内陸部でも1万ドルクラブ入りする都市が増加している。日本企業の多くは中国からアセアン諸国に関心を移していたため、チャンスが内陸部に拡大していることに気づいていない。
第1に、「80後(中国語の発音はバーリンホウ)」と呼ばれる、1980年以降に生まれた新世代の影響力の増大である。彼らは生まれた時から高度成長時代だったため豊かな経済しか知らない。しかも、半数近くが都市で育ち、相対的に学歴が高く、外国との接点も多く、情報量も豊富である。このためグローバルスタンダードの考え方をほぼ共有しており、旧世代に比べて、知財保護、資金決済の期日の遵守、マナーの重視などの面において、先進国の常識が自然に身についている。
 現在彼らは35歳以下であるが、今後10年の間に急速に中国経済の重要な担い手となっていく
中国人が日本で消費する金額は他の外国人に比べて格段に大きい。その恩恵で、2014年の日本の旅行収支は5月、7月、および11月に黒字となった。これは大阪万博が開催された1972年4月以来の出来事である。2015年は通年でも旅行収支が黒字になる可能性がある。これが日本各地の観光地を活性化させ、地方創生を後押しするのは言うまでもない。
 もしこの円安が今後数年続くと、その間に中国の賃金上昇等を背景に中国での生産コストは2013年対比2倍近くまで上昇する。そうなれば日本と中国の生産コストの格差は劇的に縮小し、多くの日本企業が中長期の生産拠点立地計画の考え方を抜本的に改め、日本で生産し中国に輸出する経営方式が構造的に定着する可能性も小さくない。
 ただし、その場合でも、中国市場における販路を確保できていなければ何のメリットも生じない。中国での販路拡大の成否が決定的に重要である。
 中国市場における販路拡大は日本人の力だけでは難しい。優秀な中国人リーダー、あるいは中国市場に精通した台湾人・香港人との提携が不可欠である。この提携を成功させるには内向きの傾向が強い多くの日本企業の経営戦略・組織改革が必要になる。

2013.07.26
中国のシャドーバンキングの行方
シャドーバンキングとは銀行の預金・貸出、社債・株式以外の手段で資金を融通する方法である。一部には地下金融と呼ばれる不透明な仕組みも含まれるが、ウェイトは小さい。その主要部分の仕組みを簡単に説明すると、信託と呼ばれる組織を経由して金融商品である「理財商品」を販売し、個人や企業から資金を集め、その資金を企業や政府関係機関等に融通する方式である。「理財商品」は、金融当局が定める規制金利の上限より高い金利を設定できるため、金融自由化商品の先駆けとも言える。
 このシャドーバンキングが不良債権の温床となり、それによって形成されたバブルが近い将来崩壊し、中国経済がハードランディングに向かうという見方が広く共有されている。しかし、私はいくつかの理由から当面そのリスクは小さいと見ている。

<北京・西安・上海出張報告(2013年10月21日~11月1日)>
キヤノングローバル戦略研究所
(3)戸籍問題  ~W。大多数の農民が望むのは大都市の都市戸籍である。
三中全会で俎上に上ることが予想される戸籍問題について、地域経済の専門家によれば論点は以下の通り。
中国では農村戸籍都市戸籍の2種類がある。農村戸籍の農民が都市に出稼ぎに行く時、都市戸籍がないため、医療保険社会保障制度上の福利厚生を都市では受けられないほか、子供を都市の小中学校に通学させることもできない。ただし、最近は小都市の都市戸籍は農民にも開放されているため、小都市であれば都市戸籍の取得は可能である。しかし、雇用機会の豊富な、北京、上海、広州等沿海部の大都市の都市戸籍は農民に対して開放されていない。
一方、農村における農民にも広く医療保険や年金が適用されるようになるなど、都市に比べれば水準は低いながらも、社会保障制度上の福利厚生条件は徐々に改善されてきている。加えて、農民は従来から制度上、耕作地と居住地の権利が保障されているため、農村に留まる限り失業することはない
一方、都市戸籍には仕事の保証がない。2006年以降は農業税も廃止された。このため、魅力的な雇用機会が少ない小都市に戸籍を移してまで従来の農民の権利を放棄するインセンティブは乏しい。大多数の農民が望むのは大都市の都市戸籍である。
こうした状況下、安定的に都市化を進めていくために、戸籍制度の改革が必要となっている。
現在、検討されているのは、農民が都市戸籍を取得する場合、すぐに農村戸籍とそれに伴う権利を放棄するのではなく、一定期間に限り農村戸籍に戻る権利を留保できるようにする仕組みである。
そうした権利の留保を前提に都市戸籍を取得できる対象を小都市から4級都市、次いで3級都市へと徐々に範囲を拡大していくことが検討されている。このように戸籍制度改革の方向は明らかであるが、その具体的な進め方が今後の課題である。
 
(4)地方債務問題
地方債務問題は地方の財源不足の問題である。そもそも地方政府に認められている独自の税収源が不足している。これまでは各地方政府が不足する財源を補うために不動産開発に力を入れてきた。その関係で農村の土地収用に伴うトラブルや非効率なインフラ整備の不良債権化など様々な問題が生じている。

最近の日米中関係について
<2月21日~3月3日 米国出張報告>
(3)アジア回帰という表現
オバマ政権内部においてアジア重視政策をリードしてきたのはクリントン国務長官、キャンベル国務次官補(東アジア・太平洋担当)らを中心とする国務省
 
(4)アジア回帰とは逆方向に働く要素
第一に、米国経済が巨額の財政赤字に苦しんでいる状況下、今後長期的に経済停滞から脱却できない場合には、以上のようなアジア重視政策を実現するために必要な財源の確保が難しくなるとの見方がある。
第二に、議会を中心に米国が保護主義化に向かう傾向を止めることができなくなっており、アジア諸国との経済摩擦を生みやすくなることが懸念されている。
以上のような要素を考慮すると、表面的にはアジア重視を強調しているが、これは選挙向けのポーズに過ぎず、安全保障面では実質的にアジアからの後退に向かうとの見方も一部にある。
また、アジア回帰とは言っても、状況が変われば政策方針も変わるのがワシントンDCの常である。子供のサッカーのようにボールの行く先に全プレイヤーが群がり、他のスペースはお留守になる。これまでも、欧州、中東、アジアの間を行ったり来た。
 
(3)今後の懸念される問題
今後も米国のアジア重視の外交方針は継続されるが、巨額の財政赤字を背景に防衛予算の制約はさらに厳しくなる方向にあるのも事実である。米国の負担を軽減する中で西太平洋地域の防衛力を保持するためには、日本の役割の拡大を期待する見方もある。ただし、日本も財政赤字を抱えて厳しい予算制約に直面していること、日本の国民感情として軍備拡大が難しいこと等は米国側も良く理解しているため、限定的な期待に留まっている。
 
5.米国の日中関係に対する見方
米国では日中関係はますます悪化しているとの見方が支配的である。
2010年以降、日本の対中貿易黒字が大幅に増大すると共に、日本企業の対中直接投資が急増しており、それを背景に日中両国経済の相互依存関係が一段と強まっていることを知っている米国人は少ない。この事実を理解している米国の専門家は、日中の相互依存関係の強まりを背景に、新たな形で日米中関係の安定化を模索することも期待できると見る。米中関係に関する最近の米国内の論調では安全保障面、経済面の両面において対中強硬派が優勢であり、戦略対話での相互理解の深化にはあまり期待していないのが実情である。
ワシントンDCでは最近、対中強硬論が支配的となっており、日本も米国と同じ立場であるとの見方が大勢である。
米国がアジア太平洋政策を考えるとき、最重要課題は常に米中関係である。その問題への対処を考える中で、最大の同盟国が日本である。