反俗日記

多方面のジャンルについて探求する。

現代<貨幣>理論は金融資本主義制が経済的政治的に行き詰った時代様相において支配層側が採用する国民多数を巻き込み欺瞞し国民生活を破壊する最終的な経済政策である。

 wacwac。前説。

 現代<貨幣>理論金融資本主義制が経済的政治的に行き詰った時代様相において支配層側が採用する国民多数を巻き込み欺瞞国民生活を破壊する最終的な経済政策である

モダン、マネタリー、セオリーを定義すれば以上に要約できる。

 

 日本の長期経済停滞(経済的地位の低下)は水が高いところから低いところに流れる歴史的必然過程の進行であるという大前提を受け入れ、対策を立てるべきであって、金融財政膨張政策に大胆に踏み込む場合、金融寡頭制の経済機構と強権的な国家機構を軸とした全体主義的な社会経済統制を併用しなければ沸き起こる高インフレの強固な要因とその進行は抑え込むことはできない。

*******************************

W、注釈

1933-38年におけるナチス期の経済構造   相  沢  幸  悦

https://m-repo.lib.meiji.ac.jp/dspace/bitstream/10291/7741/1/daigakuinkiyoseikei_19_531.pdf

W、1930年代のナチス統制経済は、軍需主導の厳しい資本と労働への統制政策(独裁強権による巨大金融、産業資本への資本集中集積、利潤保障。物価と賃金統制に要約できる、筆者はその資本と労働力の組織された資本主義が西ドイツ経済復興の基盤であったと解説している)によって1937年以降のアメリカ、ニューディール政策のような大不況の揺り戻しを回避できた、としている。もちろん、戦争政策を目的に組織された資本主義体制なので、軍需の大消費の結末が待っていた。

反俗日記の過去記事でガルブレイズの回想を取り上げたとき、ニューディールの物価統制を任されて、経営者たちから毛嫌いされた過去を語っている下りを読むと、1937年以降のニューディール下の大きな景気後退は、ナチス統制経済ほどの徹底した統制政策を選択できなかったこと、ニューディールアメリカ側からも、大戦争による経済苦境からの脱出を模索していたこと、を物語っている。

>強烈なデフレ圧力が内在している時代に

巨大な財政膨張路線をとれば、資本側は物価を維持し上げることで利益を得ようとする。

他方で財政膨張政策で大失業と不況を乗り切る目標を立てた政府は賃金下落を阻止しようとする。資本と労働、物価と賃金は、市場における供給と需要の均衡点で決定されず二律背反の関係が顕在化する双方に対する徹底した統制が必要になるが、ニューディールはそれが不徹底だったという結論が出ている

ナチス統制経済に相似する、あるいはもっと上を行く統制体制はソ連スターリン体制であり、1930年代の時代状況における資本主義の経済法則から離脱した経済体制だったというべきであろう。

 以上、この論文から導き出したWの観点を現代貨幣理論のリアルな政策的運用に当てはめた場合、その論者やたちが全く視野に入れていない政治的難題は、程度の如何はあるが、社会経済への政府統制が併用される必然性を内包しているという事実である。

現代貨幣理論論者の示す経済理論は所詮、原理論に留まり、歴史段階=時代認識、経済史の検証からフリーパスで通過しリアルな一国を超えた経済状況にたいしてその奇妙で、胡散臭い、お気楽原理論の抜け道を通じて現状を裁断する。

 *******************************

@日本のプラザ合意受諾→日本バブルとその崩壊以降の長期経済低成長は超歪な戦前の軍需主導、消費需要低迷経済の破綻(経済力はイタリアと同等、ソ連よりも劣るが、戦艦建造指数は英米10:日本7、<勘違い>軍部、世論による総力戦の敗北は必至)に対比し日本は冷戦体制下の高度経済成長を通じた世界第2位のGDP国への急展開を示した一方で、列強(先進国)は米国を筆頭にすべて世界経済に対する経済規模を大きく縮小させてきている。~大戦直後、米GDP世界の約50%→現状、25%。英米仏、独も同じ傾向。日本だけ1920年代後半、たった数%→現状8%(縮小は不可避)!

イタリア経済が日本と同じような傾向を示しているが、日本の世界大戦後の経済急成長は異常な様相を呈している。

ここから得られる結論は先進よりも遅れているがゆえに(戦前社会の半封建的側面を指摘する状況認識は的を射ていた。講座派の専売特許の認識ではなく、GHQも封建的側面の改革という認識で一致していた。ただし天皇制の存続を頂点に戦前の日本的なものを温存した。しかし、それらの改革は自力で行うものである。)その部分が開発されると成長要因になるということ。戦後の日本経済は遅れた部分が開発され、列強の中では急速に世界第2位に躍り出たが(戦後の経済成長に対して日本国憲法のはたした役割は大きい!~ある程度国民的に内在化し社会経済行為をやるうえで風通しを良くした。しかし、本当に国民的に内在化できない矛盾をはらんでいる。内外の成長要因が欠けてくると行き詰まってしまった。

以上のよな歴史的な社会経済基礎要素の構造要因は現代貨幣理論を当てはめた政策とは別次元のことであり、仮にその政策が採用されると長期停滞の維持さえ困難にする。

ソ連戦間期、戦後の急速な台頭と冷戦体制崩壊による後退も戦前戦後を通底させ俯瞰すると、その軍事政治、経済の不均衡が修正されたとみなすことができる。

 

第二次世界大戦後の世界体制や半封建的政治社会構造の残存から一新された戦後日本の内外環境は高度経済発展の絶好の条件だった。

イ)1920年代後半に、重化学工業化を達成した日本の生産資本と統治機構は戦争によって壊滅したわけでなく、戦後に引き継がれ、同時に列強の中での工業化の遅れ、内需不足のもたらす大きな過剰労働人口圧力(農村の貧困の蓄積)を抱えていた

ロ)東西冷戦の東アジアにおける兵站基地化という絶好の歴史的条件の下朝鮮戦争半ばにおいて戦前最盛期の生産力(1930年代半ば高橋是清の中国侵略と連動した財政金融膨張政策)を取り戻した。

ハ)イ)ロ)の条件の下、農村から都市への安価な労働力人口移動と米国先進技術の移転、超安価な石油資源の調達による大量生産、大量消費の一国的な経済循環が資本の高蓄積と労働力市場の価格上昇を可能にした(高度経済成長)。

)戦後世界体制の東アジアにおける残存状況は地域における日本経済の競争相手を長期にわたって登場させない条件(分裂最前線国家韓国、台湾、実験国家中国を提供し続け日本はアメリカの軍事的庇護の下、対米輸出と東アジア、東南アジア地域を過剰生産、過剰資本の消費地とすることができた。(高度経済成長末期~二度のオイルショック

@ところが、プラザ合意受諾、日本バブル崩壊、東西冷戦体制崩壊、グローバル資本制の定着によって、日本経済を異常、特殊に発展させてきたイ)~ニ)の日本経済の推進力である絶好条件が取り払われた。

@以上の戦前戦後を通底する歴史的要因によって形成された現状の日本の経済社会基礎を踏まえると、

@現代貨幣理論の日本への当てはめは、財政金融政策でなすすべがなくなった日本政府当局に、国民生活を破壊する財政膨張政策という最終手段を要請するような政治的な役割、立ち位置しか果たさない。

*アベ等の大量国債購入、超低金利政策が始まる前の論争過程において、日本銀行の従来の政策が槍玉に挙がっていた。いわゆるリフレ派の日銀叩きの結果、黒田日銀総裁が実現した国債大量購入の結果もたらされる各金融機関の超低金利下、日本経済の現状を供給過剰、需要不足と単純化する論者にとって、民間投資と消費需要を喚起するものと受け止められた。

 ところが、市中の大量余剰金→国債購入→赤字国債発行のサイクルの渦中で株式有価証券市場にへの資金流入、あるいは資金海外流出しても、経済成長をもたらす国内の民間設備投資や民間消費の増進には至らず、日本の付加価値の総和GDPは停滞したままであった。日銀の市中国債大量購入の行き詰まりの次は、政府国債日銀、直接引き受けによる大量の円散布という悪い意味で筋道の通った理屈で政府の政策選択肢は究極の所に立ち至った。なお、対外的な円の価値は、そういった一国主義的政策を選択した場合、下落傾向をたどると考えるのが自然だ

世界の主要国が金融財政規模を拡大する路線を選択し、日本政府が同調すると想定すると、金融政策が行き詰っているのだから、円の大量散布しか選択肢はない。このいみで現代貨幣理論は片肺ケインズ政策の補強の意味で通用するのではないかそのものずばりは社会経済への統制がついて回るので戦争を始める覚悟がなければ、リアル経済には適用不可能だ。

>以前の日銀悪玉論に代わって登場したのが、財務省の緊縮財政なるものを標的に政府予算膨張とリンクさせた赤字国債大量発行、日銀大量直接引き受けの財政金融膨張政策である。

注釈)日本銀行の金融政策の変質

    ◆日銀金融政策の何が問題か、金子文夫

 なお、財務省の財布のひもが固くなったのは、バブル崩壊以降、1990年代の景気減退に対して自民党長期政権の意向を受けて赤字国債大量発行で見せかけの景況感を維持した反動という側面もある。また、総付加価値の増加を生み出す仕組みをデザインするのは財務省の仕事ではないが、財務省は散財したものが、懐具合が悪くなって急に神経質になっっている構図とみなすこともできる。

だったら、その職責として日本経済の余力のある時に財布のひもを引き締めるべきだったが、竹下政権の末端の市町村に1億円の現金を配るような破廉恥な行為を許している。

そういう財務省の過去と現在があるから日本の現代貨幣論者の財務省批判が一部において信憑性をもち挙句の果てに大量の赤字国債日銀直接引き受けをすることで経済活況状態を創出できるようなデマが一部に大手を振ってまかり通る、所にまで立ち至っている。

>しかし、リフレ派や同調者によって日銀がやり玉に挙げられたが、量的金融緩和によるインフレ目標値が達成できず、長期経済低成長の不変結果、アベノミクスの挫折が突き付けられると、

>今度は財務省の政策が一括して緊縮とやり玉に上がっている。

@あまりにも単細胞過ぎる。誰にもどこにも良い顔ができる政策である。円大量散布なら当面、だれの腹も傷まない。

なお、インフレ目標値が達成されると経済停滞から抜け出せるという論法は、インフレ効果の一人歩きである。経済成長の原動力はその程度の金融策術の次元にはない。イギリスの経済学者が提唱したものと思われるが、典型的な本末転倒の理屈である。日本を閉塞状態に据え置く法制を改革し、風通しのよくなる社会にする方が先決だが、その選択ができない付加体列島原住民の保守性が邪魔をしている。とりあえず右翼に政権を任せるとロクなことがなかった、という歴史的事実だけは押さえておきたい。

 

*日本においてだけ特別に、アレもダメ、コレもダメの政府当局のアブノーマルな政策の選択の順序が絵に描いたように決まっているアベノミクスのアブノーマルな金融緩和の次は政府日銀一体化のアブノーマルな財政出動が信憑性を帯びてきた。

そして、政府、当局の政策選択肢の幅は極限にまで狭められた。コレが現実なのだが、

絶対的価値基準を欲する人たちはいつの時代にもいるし、盲信のパワーを発揮できる。

>この現象は偶然ではなく、グローバル資本制下の内外矛盾に立ち往生する先進資本制国の上部構造の先進国共通の経済政策の流れとしてとして受け止める、必要があるが、バブル崩壊以降の日本内外環境による構造的な長期低成長経済が続いている時代状況において、財政金融政策の選択肢はほとんどなくなり、我武者羅な財政膨張政策を取り入れることによって経済政策体系の底が抜ける可能性がでてきている。

 

*端的に言えば、アベのリフレが国民過半の反発を受け、コロナ渦、東京五輪中止を経た日本経済の停滞と国民の政権離れが進行すれば、

>長期政権側の最期の選択は財政膨張政策で対応するしか方途がなくなる。リアルな政治状況によって、中央銀行と政府を事実上一体化する。

*その場合、国と支配層は従来の権益を守り過半の国民は政府と中央銀行の一体化した財政膨張政策がもたらすインフレと低成長の同時進行過程で労苦、生活苦に落とし込められる。

歴史は螺旋的に発展する。

現代貨幣理論によってナチス経済、やムッソリーニの経済、高橋是清の経済が螺旋的にいま、蘇っている

大戦争の出口がないのだから、赤字国債中央銀行直接引き受けの金融財政膨張政策を取れば、日本の歴史的に形成されたファンダメンタルズからすれば高インフレ、低経済成長が同時進行する。社会経済への統制も併用せざる得ない。戦争圧力もリアル内外情勢の中で高まる。特に後者の問題点を日本の現代貨幣論者は素通りする。

 

 総括的にまとめると、日本の長期経済低成長の要因は

その1。日本内外の戦前戦後を通じた日本固有の基礎的社会経済要素の今日的な発露である。

その2。したがって、こういった二つの世界戦争を挟んだ日本内外の長い歴史の中で形成された成長と停滞をもたらした要素は構造的な趨勢なので、アブノーマルな金融財政政策の刺激によっても、取り除くことはできない。

その3。政府の赤字国債大量発行⇔日銀の残された最後の手段、公開市場操作による市中の国債大量買い付け、の国内的循環構造は経済成長の原動力である民間設備投資や消費需要を増進させることができなかった。日本経済の成長と停滞をもいたらした歴史的な内外要因に政府日銀の超金融緩和策は関与することができなかったからだ。

その4。大量の赤字国債日銀直接引き受け(法的な規制があるが仮定として)に踏み込めば様相が違ってくる。日本経済長期低成長と取り巻く内外構造を改変できないままの政府投資の増加となるので、一時的な名目の経済成長とインフレの進行がもたらされるそのうちに低成長と高インフレが同時進行する。税収の裏付けのない巨大財政出動をしなければ訪れないであろう厄介な事態が出現する。

********************************

注釈

  日本銀行の金融政策の変質  金子文夫

引用

日本銀行中央銀行としての本来の業務を逸脱し、@財政支援機関、さらには民間企業支援機関へと変質していった歴史は、1990年代までさかのぼる

それ以前の日銀は、中央銀行の「伝統的金融政策」を、節度を保って実行し、通貨量を調節して景気変動を調整してきた。

金融政策の手段としては、次の三つが使われていた。公定歩合操作金利政策市中銀行に貸し出す際の金利を上下させることで、市中に出回る通貨量を調節し、景気変動を調整する)、公開市場操作国債・公社債など、主に短期の有価証券を市中銀行との間で売買することにより、市中の通貨量、景気変動を調整する)、③支払(預金)準備率操作市中銀行の預金の一定割合を支払準備として中央銀行に預金させ、その割合(準備率)を上下させることにより、通貨量を調節する)。

1970~80年代の日銀は、公定歩合を2.5%から9.0%までの間で上下させ、景気調整の役割を果たしていた。
@1985年のプラザ合意によって急激な円高が進むと、日銀は円高不況を警戒して金利を5.0%から2.5%まで低下させ、市中に大量の資金を供給したが、それは土地や株式の投機に向かい、バブル景気になった。そこで日銀はあわてて金利を6.0%まで引き上げると、
@今度はバブルが崩壊して不況に陥ったため、1995年には0.5%まで引き下げた
@それにもかかわらず景気は回復せず、日銀は「ゼロ金利政策」の時代に入り、その後若干の変動を含みながら超低金利状態は現在も続いている。
@金融政策の三つの手段のうち、支払準備率操作は事実上廃止され、また超低金利状態が続いたため公定歩合操作も機能しなくなり、
公開市場操作のみが「量的緩和政策」という言い方で使われるようになっている。

 低金利下の金融緩和政策は、それまでの経済学の教科書に書かれていない「非伝統的金融政策」とされ、2000年前後に小規模に実行されはじめた

当初は日銀当座預金残高が5兆円程度になるように市中銀行に資金を供給していくが、市中銀行は民間企業への貸出を増加させることができず、国債購入に向かったため、資金が日銀から市中銀行を経由して政府に流れる回路が形成され量的緩和の資金量は次第に増加していった。

 2008年のリーマンショックの後、FRBやECB(欧州中央銀行)は金融危機からの脱出をはかる目的で猛烈な勢いで量的緩和政策を実施し、通貨供給量を拡大した。一方日銀は、やや控えめな姿勢でそれに追随したが、緩和の程度が小さかったために円高を押し付けられ、円相場は1ドル=79円まで跳ね上がった。←W.現代貨幣理論の一国主義性の大きな限界を示している。特に財政は金融政策のような機動性がなく政治課題の分野が大きい。

その後、2013年にアベノミクスの柱として異次元緩和政策が開始され、日銀は国債の年間80兆円購入を打ち出した

 日銀のねらいは、通貨供給量を一気に増やしてインフレを引き起こし、経済成長率を上げることだったが(2年で通貨量を2倍にして2%の物価上昇)、国債購入によって市中銀行に渡った資金は市中に出回るのでなく、日銀にある当座預金口座に積み上げられたままになり、2%の物価目標は達成できなかった(W。物価を意図的に2%上昇させると、実質GDPも上昇するのか?そんなはずはない!現代貨幣理論と同じく理論そのものが間違っている。少なくとも日本においては。)。そのため2016年になると日銀は、当座預金の一部にマイナス金利をつけて無理矢理資金を押し出そうとしたが、これも成果をあげたとはいえない。(W.ヨーロッパ中銀も実行している)

一方、超低成長が続き、税収が伸びないなかで社会保障費が増大する日本の国家財政は、国債発行によって税収不足をカバーする道をとらざるをえなかったが、日銀の低金利国債購入政策のおかげでたいした抵抗もなく、毎年国債発行を続けることができた。(W。巨大な民間資金の存在~庶民の貯蓄よりも資本の剰余金の比率が大きいと思う~が前提。いずれにしても一国内で循環していることは間違いがないが、少子高齢化、長期経済停滞のトレンドにおいてその構造がどこまで続くか楽観視できないが、現代貨幣理論では財政膨張=経済成長=税収増のイメージと貨幣増刷によるファイナンスの理屈でこの問題を軽視できる。)

 その結果、日本政府の国債発行残高(国庫短期証券を含む)は2000年末に500兆円あまりであったのが、2010年度末に884兆円、2019年末に1132兆円と、GDPの2倍以上に積み上がった。
 ここで注意を要するのは、そうして増加した国債の大半を日銀が抱え込んだ点だ。

2010年度末の時点で、国債発行残高に占める日銀の保有割合は8.9%だったが、2019年末には43.7%まで上昇した朝日新聞2020年4月28日)。

この間の国債残高増加は248兆円、日銀保有額の増加は416兆円と計算されるので、市中銀行等が保有する国債を日銀が買い上げ、政府の低金利国債発行を支援したことになる。

 戦後制定された日本の財政法は、戦時期に日銀が国債を際限なく購入し、軍事費を捻出するとともに激しいインフレを引き起こしたことを反省し、日銀による国債の直接引き受け(財政ファイナンス)を禁止した。

現在もこの法律は生きているが、政府発行の国債市中銀行を経由して日銀に流れており、国債増発に歯止めがかからず、もはや財政法は空文化したというしかない。
  ◆日銀金融政策の何が問題か

日銀の資産規模は10年前には100兆円程度だったところ、現在はその5倍以上に膨らんでいる。

@資産の大半は国債だが、

@政府と日銀を一体とみる「統合政府論」の立場からは、大きな政府内部での資金の循環であって特に問題はないとする

 はたしてそうだろうか。

W。以下の日銀が長期国債の独占的な保有者となったため、長期金利もそのコントロール下に入った下りには大きな疑問がある。

W。超低金利国債のコントロールの基礎は日本の世界経済に対する経済力であり、Wの持論ではその地位は徐々に後退していく趨勢にあるもちろん財政膨張政策に踏み込めば後退の速度は一気に早まる)。したがって、長期スパンでみると日本一国内の国債購入の裏付けとなる資金循環の機能が先細り、日本の株式市場と同じく外国機関投資の割合が高まり、国債金利は上昇傾向に転じる。

 なお、米国発の現代貨幣理論はグリーンニューディールなど大ビジョンを掲げているが、日本の現代貨幣論者に戦略的なデザインはあるのか?大ビジョンはあるのか?

何か局面打開的な夢のない政策目標しか掲げられていない。

   ↓

**************************

現在の日銀の超緩和政策の問題点を整理すると、次のような点を指摘できる。
第一は、金融市場の価格形成の歪みだ。かつて日銀は短期資金市場の動きはコントロールできても長期資金市場は制御できないとみられていた。

しかし、日銀が長期国債の独占的な保有者となったため、長期金利もそのコントロール下に入った2016年以降の長短金利操作政策はそれなりに機能している。
@しかし、その結果、長期金利が、実体経済の動向の指標となるべき役割を果たせなくなっている。W。いつまでも超低金利を続けられるわけがない。政府の借金増は民間の貯蓄増。この関係を長期に継続していくためには今の日本経済の状態が、諸外国の経済成長との関係から切り離されて永遠に続けられるという大前提が必要となる。日本経済の世界経済に対する地位の後退は歴史的な趨勢であり、いかなる経済政策を採用しても止めようがない。ただし、日本の政治文化法制、家族性、慣習といった上部構造に革命的な変化を起こし、風通しの良い機動的な社会に変えることによる経済面への波及効果を期待するという唯一の方途がある。
 さらに問題なのは、日銀がETF(上場投資信託)の大量購入を続けていることだ。日銀のETF購入はリーマンショック後の2010年12月が最初で、年間4500億円という控えめな上限が設定された。

>ところがアベノミクスが始まった2013年4月に1兆円、14年10月に3兆円、16年7月に6兆円に増額され、2020年3月についに12兆円に達した。日銀は株価下落傾向が生じるとETF買いに出動し、アベノミクスの看板である株価を維持する役割を果たしている官製相場、GPIF=年金積立金管理運用独立行政法人の株式購入も同様)。

@そのため海外のファンドは安心して日本株を売買し、利益をかすめ取っている。

@そして株式市場もまた実体経済から遊離してしまい、バブル化する危険性を増している。
なお付け加えれば、日銀が株式を大量保有したため、日銀が筆頭株主になる企業も増えてきており、それに今回の社債・CP大量購入も合わせると、日銀が民間企業との関係を異常に深めることになったと考えられる。

 第二の問題点は、以上にみたような有価証券大量購入が、日銀の財務構造を悪化させ、債務超過を引き起こしかねないことだ。黒田総裁は国会で、株価(日経平均)が1万9500円を割ると、日銀の保有株式に含み損が発生すると発言した。今回の金融政策では社債の大量購入を打ち出していて、そのなかには「堕天使債」(投資不適格債)という格付けの低い社債も含まれるもようだ。このようなリスク資産の購入は、緊急事態として正当化されるのだろうが、日銀の信用に不安を抱かせる。これに財政危機、金利上昇、国債価格下落の重圧が加わった場合、日銀の信認が低下し、円が暴落する危険性をはらんでいる。

 第三に、2016年以来の日銀のマイナス金利政策は、民間金融機関、特に地方銀行の経営を圧迫してきた。W。地銀にとって利ザヤ獲得は収益の大きな柱、大手銀行と業態が違う。
地域経済を支えるべき地方銀行の経営悪化は、地方の衰退を加速させる。コロナショックはその趨勢に追い打ちをかけており、今後地方銀行の合併・統合、それに伴う地方金融サービスの低下は避けられなくなるだろう。マイナス金利政策は評判が悪いが、それを改めるタイミングを見出せないままにコロナショックに突入してしまい、事態はますます悪化せざるをえない。

 第四に、財政規律の喪失、財政の国債依存度の上昇を招いている
財政健全化、歳入歳出バランスの回復のためには、経済成長が見込めない以上増税策を採用せざるをえないが、これは選挙で票を失う結果になるため、政府・与党は安易な国債発行に向かう傾向がある。日銀の低金利政策は国債金利負担を非常に低くしているため、国債発行に歯止めがかからないこの状態が長く続いた結果、日本の国債発行残高はGDPの2倍以上という、主要国のなかで最悪の状況をもたらした。

 第五に、過剰な通貨供給がインフレを引き起こすリスクを高めている緩やかなインフレをねらって通貨供給を増やしてきたものの、一向にインフレは起こらず、大量の通貨は日銀の当座預金に眠ったままである。←W.なぜなのだろうか?貸出先=投資先が見当たらない。どうしてみあたらないのか?政府当局の政策如何にあまり関係のない日本経済長期停滞の内外をまたぐ構造要因があるからでそれを前提にした適切な政策体系があるはずだがすでに国内ヒエラルキーが厳然として確立しているのその政策実況を妨げている、とみるべきだ。

しかし、何かのきっかけで眠りから覚めた時には、制御の困難なインフレに突入する可能性がある。傾向的にモノの値段が上がる、カネの価値が下がるという判断が成立すれば、日銀当座預金は市中に堰を切って流出していくだろう。

 

 MMT(現代貨幣理論)では、インフレが起こるまでは通貨供給を増やし、インフレになれば増税で通貨を吸収すればよいというが、リアリティーがない。W。本気でこんなことを想定しているのか。翻弄される庶民の労働生活はこの程度の安易な理屈の実行で破壊される。


通貨供給は日銀の裁量でできるのでやりやすい。
通貨量の縮小は日銀が保有国債を売却しておこなうことが本筋だが、
インフレで金利が上昇すると国債価格は下落するため、日銀の国債売却には困難がともなう。

MMTのいう増税は政治的行為であって、日銀のオペレーションとは次元が違う。W。的を射ている!
まして現在の税収60兆円を仮に10兆円増税したところで、数百兆円に膨らんでいる通貨の吸収はたかが知れている。
おそらく経済成長率は今後も上がらないだろうから

ハイパーインフレにはならないとしても、低成長下のインフレ、つまりスタグフレーションの時代になることが想定される。

W。現代貨幣論者のインフレの定義は需要が供給を上回ったケースという素朴なもの。

***************************************

●ローレンス・サマーズ(元米財務長官) 2019年3月4日 ワシントンポストへの寄稿

@第3に、MMT論者は閉鎖経済を元に論じることが典型的だが、MMTは為替レートの崩壊を招くだろう。W.「基軸通貨」ドルのアメリカ政府が現代貨幣論的財政膨張政策を採用すれば為替レートの崩壊を招くということ。日本が採用しても勝手に経済後退を早めるだけに終わる!
これは、インフレ率の上昇、長期金利の上昇、リスクプレミアム、資本逃避、実質賃金の低下を招くだろう。
…保守にとってもリベラル
にとっても、そんなフリーランチは存在しない。」

************************

引用 MMT批判

「1――財政破綻の意味
「@結局のところ日本銀行が述べている、中央銀行の通貨増発が悪性のインフレーションを引き起こす」という説明が正しいのかどうかがMMTの主張の妥当性を考える上で核心となる論点であると考える。

  2――マネーストックとインフレの関係
日本銀行による国債の直接引き受けが禁止されている理由の説明の背景には~長期的にはマネーストックと名目GDPとの間には比例的な関係があるという考え方がある。
実質GDPの拡大には経済の生産力の限界という制約があるので、
マネーストックの拡大が続けば、物価水準が上昇することになる。
財政赤字を通貨発行でまかなうことはマネタリーベース(ハイパワードマネー)の増加からマネーストック(通貨残高)の増加を引き起こすので、インフレに繋がることになる。

>しかし、MMTはこのようにマネーストックの量が物価に影響するという考えを否定していて、
総需要と経済の供給力の差が物価上昇率を決める主因だと考えている。←W?単純原理論に尽きる!

MMTは~二つの要素からできていると考えられる。

W。行き成りこの理屈が出てくるから妙に納得させられる面がある

      ↓しかし、こんな理屈はリアル政策と関係がない。
MTでは、通常の教科書の説明のように金融機関が余剰資金を貸し出しに回しているのではなく、金融機関が貸出先を見つけてから必要な資金を市場で調達していると説明をしている。リーマンショックでは、欧米の金融機関が貸出しや投資に回す資金を短期の金融市場で調達していたことが、流動性危機が起きた際に金融危機を悪化させる要因の一つとなったとされる。このように通常の教科書の説明よりもMMTの説明の方が現実の金融市場に即したものになっているのではないだろう。
 MMTは、マネーストック(マネーサプライ)が企業などの資金需要と金融機関の貸出意欲によって決まる点を強調して、中央銀行マネーストックの量をコントロールすることはできないという内生的貨幣供給論を唱えており、マネタリーベースとマネーストックの関係は不安定だと主張する
@筆者は~貨幣乗数は可変的だが中央銀行マネーストック量(マネーサプライ量)を全くコントロールできないということでもないと考える。

 

第二の論点
>日本の名目GDPマネーストック、マネタリーベースの関係を長期に見てみると、1990年頃までは、マネーストックと名目GDPは、ほぼ平行して動いていた。

しかし、1990年頃以降はマネーストックが大幅に増加しているにも関わらず、名目GDPはわずかしか増加していない。
マネーストックのかなりの部分は取引に利用されず他の金融資産同様に価値を保蔵するための手段として利用されていることを示唆している。
マネーストックの変化がインフレを引き起こすわけではないと考えているMMTでは、政府が発行する国債中央銀行が直接引き受けても、マネーストックが増加すること自体はインフレの原因にはならないと考える

ミッチェルは、政府の財政赤字を通貨発行で資金調達する(明示的財政ファイナンスことは、国債発行で資金調達することよりインフレ的だということはないと述べている。
@インフレへの効果は支出の規模のみに依存しており
@総需要の成長速度が生産力の伸びを超えない限りハイパーインフレーションの危険はないと主張している。

W。ハイパーインフレという最悪事態を持ち出すことによって、インフレと低成長の併存の想定から逃れている。
  3――MMTに関する二つの懸念
MMT財政赤字拡大の制約条件と考えているのは、経済の需要が供給力を上回ってしまい、需給のひっ迫から物価上昇率が高まっていくことである。W。単細胞的一国的原理論。

日本はハイパーインフレーションどころか、2%の消費者物価上昇すら視野に入ってこない状況にあるので、当面は大幅な財政赤字を継続しても高インフレが起こる心配をする必要はないように見えるが、

 二つの懸念を指摘しておきたい。
第一は~スタグフレーションが起こる可能性があること。
第二は、財政赤字を長期間続けることによって民間部門はストックである純金融資産を蓄積していくことになるが、この累積したストックが短期間の間に放出されてフローの需給を大きく変化させる可能性があるのではないかという点である。
スタグフレーションでは、失業率が低下してGDPギャップがプラスになって、実際の需要が経済の供給力を超える前に物価上昇率が高まってしまう。
>歴史を見れば、状況認知の遅れ、判断の誤り、合意形成の遅れなどから、政府が最適な政策を最適なタイミングで実施できない可能性は高い。経済の動きは政府や中央銀行が自在に微調整できるというものではない。スタグフレーションへの対処法などわかっていないことも多いことを考えれば、政府がインフレをうまくコントロールできると考えるのは、楽観的すぎるだろう。←W。全体主義的な社会経済への締め付けが不可欠になる!
財政赤字が続くと、民間部門、特に家計の純金融資産が増加していくので、いずれ経済の状況が変わる可能性が高い。金融資産とは誰かの債務であり、MMTが強調する部門別のフローとストックの会計的な関係で分かるように、政府が財政赤字を続けると民間部門の純金融資産が増加していく。
1970年度から2018年度までの間に、日本の家計は純金融資産の名目GDP比を59.2%から281.2%にまで高めてきた。高齢化が進んで金融資産の取り崩しを行う65歳以上の年金生活者が増えているため、SNAの家計貯蓄率は大きく低下しており、速度は鈍化しているものの家計金融資産の名目GDPに対する比率は上昇傾向が続いている

>家計も企業も貯蓄投資バランスが黒字になるのであれば、政府か海外部門が大幅な赤字にならなくてはならない。
>対外収支が赤字を続けて対外債務が累積することは、いずれ通貨危機を引き起こす危険性が高まるために、どの国も望むことではないし、
>日本にとっては円高の圧力にもなる。
>結局のところ、日本は政府が貯蓄投資バランスを赤字化(財政収支を赤字化)させてバランスを維持せざるを得なかった。
家計が金融資産を増やそうとしている状態で、企業が債務を増やそうとしなければ家計は目的を達することができないので、さらに消費支出を切り詰めて金融資産を増やそうとするだろう。経済は需要不足となって低迷してしまうが、政府が減税するなり支出を増やすなりして債務を増やせば経済はGDPが高い水準に戻り均衡する。こうした政策でしばらくの間は経済にフローの均衡を実現することができるが、時間が経てば、フローであるGDPや家計所得に比べてストックの金融資産の規模が不釣り合いに大きくなる。家計純金融資産の名目GDP比はどこまでも上昇を続けるわけではなく、いずれは修正が起こって経済が混乱する恐れが大きいのではないか
特に日本の場合には人口構造の高齢化や総人口の減少が進むので、一人当たりの金融資産の増加はさらに加速して、家計が貯蓄を行う必要性を低下させるだろう。子孫のために残す必要のある資産も減少するので、家計貯蓄率は低下してマイナスとなる可能性もある。民間部門の貯蓄投資バランスが赤字化すれば、政府の財政赤字も加わって国際収支の経常収支が赤字化する可能性も出てくる円高のトレンドが弱まり円安に動き出せば、円建て資産から外貨建て資産へのシフトも今よりも活発になり、円安を加速する恐れもあるので、海外への資本逃避が起こる危険性も高まる。急速な円安がおこって輸入物価の上昇から消費者物価上昇率が高まっても、政府が増税や歳出削減を行うには国会の審議を経なくてはならず、対応が後手に回ってしまう恐れが大きいと考えられる

MMTが、マクロの需給ギャップGDPギャップ)が物価上昇率を決めていると考えているということは、単純化するとGDPギャップがプラスであれば物価が上昇し、マイナスであれば物価が下落するという関係を想定していることになる。インフレが行き過ぎないようにするには、物価上昇率が高まったら、政府支出を削減したり増税したりしてGDPギャップを縮小して物価上昇率を低下させればよい。
現在の日本のようにデフレ心理が定着している状況では、GDPギャップをかなり大きなプラスにしないと物価上昇率をプラスにできない。だが物価が上昇するようになり、さらに上昇率が高くなり過ぎた場合には、物価上昇率を適切な水準に引き戻すのには、厳しい財政引き締めが必要になるだろう。
、部門別の貯蓄・投資バランスの不均衡が拡大してしまう原因を放置して、失業者の発生や、企業の投資の減少といった経済活動の縮小均衡を避けるために、財政再建をせずに財政を拡張させるべきだ、という問題解決の方向性は間違っている。


政再建を成功させるためには、歳出削減や増税で財政部門の収支を改善させる努力をするだけでなく、民間部門の経済構造も変える必要があるというのが正しい理解であろう。

 ***********************************

1933-38年におけるナチス期の経済構造   相  沢  幸  悦

https://m-repo.lib.meiji.ac.jp/dspace/bitstream/10291/7741/1/daigakuinkiyoseikei_19_531.pdf