反俗日記

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最終回 海馬体-嗅内皮質における空間認知システム : ライフサイエンス 領域融合レビュー

海馬体-嗅内皮質における空間認知システム : ライフサイエンス 領域融合レビュー

1.場所細胞の発見 海馬の場所細胞は認知地図の神経基盤。場所細胞は哺乳類に共通の普遍的な空間認知システムを構成する!

 

W。“いま自分がどこにいるのか?”という空間認知は,われわれが生きていくために重要かつ基本的な感覚である.」

空間のなかでの自分の居場所を認識する場所細胞は海馬(タツノオトシゴ)に存在する。

@「空間認知能力の低下は認知症の中核症状でもある.空間を正しく認知するために,脳はどのようなしくみを備えているのだろうか 1971年,O'Keefeらは,空間のなかでの動物の位置に反応して活動するニューロンが存在することを発見した1).この研究が行われた当時,すでに海馬という脳部位が記憶において重要であると考えられていた2)

多数の場所細胞を集めると,場所受容野が動物の歩きまわる環境全体をおおいつくす.そのため,場所細胞の活動を読み取る」

また,場所細胞のきわだった特徴として,特定の感覚情報に依存しないことがあげられる.」

.たとえば,暗闇にして視覚情報をうばっても場所細胞の活動はもとどおり維持される.嗅覚,触覚,聴覚の情報も不要である4).さらに,動物をカートに乗せて動かしても場所選択的な活動は生じることから,歩くという運動指令の情報も必須ではない5)したがって,場所細胞の活動は特定の感覚情報により一義に決まるのではなく,さまざまな情報を統合した結果として脳が内的に生成する空間認知を反映するものと考えられる.このような特徴から,

>場所細胞は認知地図の神経基盤であると提唱された6

2.場所細胞の解剖学

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図2 海馬の構造
(a)ラットの頭部の模式図.
(b)ラットの脳を側方からみた図海馬および嗅内皮質は,それぞれ左右の大脳半球に1対ずつ存在し,背側-腹側軸の方向に細長い形状をとる.
(c)海馬の水平断面.海馬のCA1野およびCA3野の錐体細胞と歯状回の顆粒細胞興奮性の投射細胞であり,ほかに,それぞれの領域に多様な介在細胞が存在する.

投射経路としては,

嗅内皮質→歯状回→CA3野→CA1野とめぐるトリシナプス経路や,

嗅内皮質からCA1野に直接入力する皮質-アンモン核経路などがある.

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>場所細胞の活動パターンは外部の環境に応じて動的かつ瞬時に再配置する。

海馬における領域や領域の内部での位置により,少しずつ異なる情報を表現する場所細胞が分布している.

3.場所細胞と記憶

場所細胞は海馬に依存する空間記憶やエピソード記憶に深く関与する。

動物が新奇な環境を探索すると,

安定な場所細胞の活動が数分から数十分のうちに形成され18)

数日ないし数カ月後19,20) に同じ環境にきても同じ活動パターンが再現されうる.

こうした場所細胞の活動パターンは,環境そのものについての空間記憶の形成および維持を反映するようにみえる。

 

環境自体の学習にくわえ,空間情報とほかの情報とを連合する学習においても場所細胞の活動は変化

,特定の場所に隠されたえさを集める課題では,えさのある場所へと場所受容野が再配置する22)

複数の情報を連合した神経活動が,学習による場所細胞の再配置の基盤

4.格子細胞内側嗅内皮質に格子細胞が存在 海馬への入出力を担う嗅内皮質

格子細胞は普遍的な距離の指標である

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5.そのほかの空間選択的なニューロン


前海馬支脚において,動物の頭の向きに反応して発火する頭部方向細胞

海馬支脚には,動物から一定の方向かつ一定の距離に壁が存在するときに活動する境界ベクトル細胞

内側嗅内皮質には,格子細胞と頭部方向細胞の両方の性質をあわせもつコンジャンクティブ細胞

壁際などの環境の端にいるときに活動するボーダー細胞

部屋のなかに置かれたオブジェクトの場所に反応する

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6.空間選択的な神経活動の回路機構および細胞機構

空間選択的なニューロンは海馬体-嗅内皮質に密集しており,これらの活動にはなんらかの相互作用があると想定される。

~~~

嗅内皮質と海馬は,上流と下流という一方向性の階層関係ではなく,相互作用により安定な空間表現をつくる相補的なシステム

 そもそも,場所細胞や格子細胞のもつ空間情報はどの脳領域からもたらされるのだろうか? 

上流からの入力パターン自体にくわえて,

その入力がシナプスを介してニューロンに伝達される効率空間選択的な活動の確立においては重要

  シナプス可塑性

新しい経験や体験などによって脳が活性化され、シナプスの通りが良くなれば伝達物質の放出量が増え、数が増えれば接点が増える分、情報をたくさん伝えられる・受け取れるという効果がみられます。 こうした人の経験や体験によって変化する柔軟性の実態が、『シナプス可塑性』だと考えられています。」

W。以下の記述はアリセプト(ドネジベル)という認知症治療薬の原理。

シナプス可塑性による伝達強度の変化は,

記憶の基盤となる細胞機構であるとともに,場所細胞の形成および維持にも関与することが示唆

シナプス可塑性を抑制するNMDA受容体阻害薬を腹腔内に投与すると,慣れた環境における場所細胞の活動は影響をうけないものの,新奇の環境において形成された場所細胞の活動の長期安定性が失われる46).また,領域選択的にNMDA受容体をノックアウトした場合には,空間記憶の障害とともに場所細胞の発火パターンがくずれる4

7.ガンマ波に着目した回路機構の解明

ガンマ波は海馬体-嗅内皮質を含むさまざまな脳領域で観察される周波数30~90 Hzの脳波である.ニューロンの活動パターンはガンマ波の影響をうけ,しばしば,ガンマ波の特定の位相で発火するようタイミングが固定される.この現象を位相固定という.ニューロンが集団で特定のガンマ波に位相固定すると,ミリ秒の精度で同期した発火となりシナプス後細胞に活動が伝達されやすい.そのため,ガンマ波への位相固定は領域間の効率的な情報伝達に貢献すると考えられている. 

海馬体-嗅内皮質では,遅いガンマ波と速いガンマ波の2種類の周波数帯のガンマ波が観察される

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CA1野の錐体細胞シナプス可塑性を阻害すると,遅いガンマ波への位相固定が減弱し,場所細胞の形成も遅れることが明らかになった.こうした結果と,ガンマ波の領域間の同期を考慮すると,空間学習の際の海馬回路の挙動が推定された(図4b).シナプス可塑性は,細胞レベルにおいては,個々のニューロンの時間的あるいは空間的な発火パターンの形成に寄与するとともに,回路レベルにおいては,記憶形成の際にCA3野→CA1野→嗅内皮質という経路の情報伝達を選択的に増強する役割をもつと考えられる.

                         引用終了

W。この回の学習で54打席無安打の日本記録を達成中の阪神タイガースゴールデンルーキー佐藤輝明選手のコンタクト率が悪すぎる要因は打撃技術や経験、精神の在り方の問題を超えた脳内の打撃関連神経がプロ野球仕様になっていなかった、とわかった。

それは関西学生野球時代の突如の不振(大学3年秋打率1割9分台)において明らかだった。レベルの低い関西学生野球リーグで相手チームにマークされ打撃不振に陥った。ましてやプロではということである。(もっともスタミナ不足や精神状態悪化もある)

 であれば、イロイロな提言、批判は打撃関連脳内部位がプロ仕様に至っている選手に対して発せられるべきで、その域に達していない佐藤選手にはお門違いということになる。黙って見守ってあげるべきだ。あれこれ言ううのは人格破壊につながる。