反俗日記

多方面のジャンルについて探求する。

最終回。安部普三著「美しい国へ」ー第4章日米同盟の構図・第5章 日本とアジアそして中国→政経分離の互恵発展ー

 今回を最終回とする。5章以下は政策論に近いものが続き、それまでの内容とは違って、オヤッと意外に思うほど、極めて安定した「政策論」が続く。
具体的にいえば、
・第5章 日本とアジアそして中国→政経分離の互恵発展。
W。現状の対中政策と余りにも違うので最後に付け加えた。
・第6章 少子国家の未来→少子高齢化対策は、家族の大切さの強調など抽象論に終始し、全く具体策なし。
ほぼ容認(放置)とも受け取れ、財界などの移民導入まで踏み込み込めるはずはなく、対抗策としての企業海外進出による財政寄与に留まっている(資本収支増)。この辺は日本支配層の中長期的展望の本音が出ている。
 
 *中西輝政(この本の実際の執筆者の一人と目される)ウィキペデア引用
 小泉に代わり、より保守的な政治を推進する「保守革命」「保守新党」の必要を訴え、その中で石原慎太郎安倍晋三らを高く評価する安部ブレーン。
少子化を憂う必要はない、格差社会が広がりコンドームを買えない貧困層が増えれば子どもはすぐ増える』
 
>唯一、コレはと思ったのは、健康寿命と平均寿命は違う。大体6~7年の差があるという、指摘。
具体的な対応策として、脳出血発症直後の救急医療体制の整備を提案している。救急処置の状態によって、その後の状態は左右される。
国防と社会保障が政治家としてのに大テーマというだけあって、非常にリアルでよい視点だと思う。
・第6章 少子国家の未来にしても、実情を知るだけに、政治家として、自分の専門分野で、いい加減なことをいえなかった、とも受け取れる。
 
・第7章 教育の再生
ここで展開されているフリードマンによって提唱された公教育へのクーポン券制度導入は選択によって各学校を序列化して今唯一残っている、学校区による地域共同性を破壊する。
地域のコミュニュケーションの希薄化は家庭単位で、日本国民多数を地上数メートに漂う風船状態にする。
アングロサクソン的社会構造は山ばっかりの人口密集、地の果て列島日本に馴染まない。
 
   美しい国へ」の全体像を総括すると、
マスコミ宣伝、教育によって、日本国民を政治的に浮遊化させ、政府が上から愛国主義で「集約」していく。
>安部政権の眼目は憲法⇔軍事、教育などの政治的上部構造の改変につきる。
>具体的な諸政策面では今までの自民党保守政治(官僚に政策マル投げ)の枠内に留まる。
 従って、これはイデオロギーや軍事の改変に限定されたものであって、多数の国民の生活状態の改善に寄与するものでは無い。むしろその逆方向の政治である。
まだ政権は1年半程度であり、今後、結果は具体的にキチンと現れる。
 
 アベノミクスは日本の政策当局としては選択肢は極めて限られている中で、動くとすれば、他に方法が無い、所まで追い詰められていた結果の政策選択であった。(官僚関連の報告書を読めば、この辺の事情は実に良くわかる)
 
 アベノミクスのインフレ政策によって、今まで生活必需品を中心に諸物価の値上がりの既定事実の中で、4月からの庶民の実感として消費税の5%→8%は、実質的に9~10%程度になる。業態によっては便乗値上げもあった。4月値上げに向けたレジなどの機能チェンジ以前にアベノミクスで生活必需品は値上がりしている。
安部政権になってから時間給は軒並み値上げされているようだが、全部、価格に転嫁されて、結果的に物価上昇によって庶民生活締め付けている。
 インフレには各種あり、低経済成長への対応策として、当局が意図的にインフレを引き起こすなどというのは邪道もいいところである。
 結局、欧米の経済危機という外部環境はいずれ改善したわけだから、以前の日銀政策の修正程度でよかった。
政策当局が動いた分だけ庶民生活を締め上げた。コレがアベノミクスの結論である。
もっとも、資金流入アメリカは助かった。
 
 下請け中小零細の下方企業群では、淘汰、系列化がさらに進行する。
地元商店街などはいよいよホールアウト状態に近づいている。
 
 ちなみに、アメリ中南部のウォールマートの女性従業員の週休は2000ドルとか。州によって労働規制など労働環境が大きく違う。コレだったら、仕事を掛け持ちしなければ生活できない。
それで政治に希望を託すとすれば、政治はどうのような方向に動くか、解りきったことだ。
昔から繰り返されてきたことで、製品輸出資本輸出あるいは、海外からカネを引っ張ってくることしかない。
 
 当然、これまで駆け込み需要による景気浮揚も想定されたわけで、その分のマイナス、予算関連のマイナス、消費需要の低迷などを勘案すると、またまた外需頼みの経済状態になるが、交易条件の悪化、内外にわたる産業構造の変化(サプライチェーン化)は円安によってさらに深化するはずだから、これからが安部政権の本性が国民の前に晒される。
 
 今までのマスコミ発の騒ぎはなんだったのだろう、ということになる。
極端に言えば、株価上昇で外国投機筋が大儲けしただに終わり、巷で排外主義勢力が台頭し、国会の政権反対勢力が微弱になった、だけだ。
要するに政治過程に対するの反国民的な荒らし行為だけにおわった。
 こうした状況だからこそ、橋下大阪市長の又してもの任期途中の辞任、再出馬というあり得ない事態がある
 
 そうすると、次に飛び出してくる、常套手段として、対中関係の揉め事に放火し、衆目をそらそうという衝動が生まれる。
様々な場面を想定できる。
中台揉め事激化=恒常化、尖閣北朝鮮ミサイル発射、砲撃などの軍事突出。
 
 対韓は台中包囲網結成ということで、アメリカに釘を刺されているようなので動かさない。
安部首相のイジマシイ靖国参拝を見てもそれは良くわかる。
沖縄県知事海兵隊辺野古移転承認を靖国の英霊たちに報告したかった、という『真っ直ぐな』心境だったのしょう。ーおそらく。
日本政府の巨大出費で米軍に新たな基地を造って差し上げるということで、特攻隊の死は無駄でなかった(W。一体なんだったのだろうか?)。
>この辺の自分には解りにくい『真っ直ぐな心境』を「美しい国へ」ー第4章日米同盟の構図ーの検討で点検してみたい。
 先回りして言えば、次のような日米関係の見方があるようだ
 
 なぜ日米同盟が必要か
1960年安保以来、【駐留軍を同盟軍に変える】→【日本が独立を勝ち取る】というイジマシイ努力してきた。要は日米安保において双務性を果たすことによって米側から一人前として信頼を「勝ち取る」という論理構造があるようだ。
このいじましい努力の一貫としての米海兵隊への辺野古建設と読み込める。
それで沖縄県知事OK直後の、米側から禁止されているにも拘らず、止むに止まれじ、靖国英霊参拝いうことだろうか。
こういう『真っ直ぐな』心根は利用される余地はないだろうか?
日米の今後の基礎体力の推移も「アメリカが世界唯一の超大国だった時代は終わりを告げた」ー中西輝政ーのは事実であるにしても、見逃せない。
アメリカの凋落よりも日本の凋落のほうは急カーブであるとすれば、こういった一人前戦略=言うところの自立は背伸び過剰にならないか。何時までも子供のままが本当の姿としたらー。
愚直は『美しい国』では通用しても、外交ではただの愚か者ではないのか?
もっとも、戦略的な選択肢の巾は極端に狭まっているリアルな国際関係がある。
 
 ただ株価の推移は先進国がカネをばら撒いているわけだから、こうした実体経済の動向=庶民生活とはほとんど関係がない。
そもそも、日経平均7000円→14000円は民主野田政権投げ出し→安部政権誕生時期さえ予想できれば、インフレ政策採用不可避の予想から、想定された。
 
 最近アメリカがウクライナ、台湾など世界中で激しく動き回っているようだが、要はバブル崩壊後の景気浮揚は企業収益の史上最大の増加⇔高失業率による更なる格差拡大(1%VS99%は更に深化)という国内状況を前提条件に、再びバブル崩壊前の世界中からモノカネを自国に集中させる必要に迫られいる結果と見る。
あそこまで金融主導の経済構造ではバブル経済は体質化しており、結果、その前提条件となる世界覇権の再構築の衝動は増大する一方であり、只今実行中。
そうしなければオバマ民主党政権は立ち行かなくなっている。
 
 このようなアメリカの基本動向と安部政権の今後が重複すると~。
 
 
             第4章日米同盟の構図
 9,11はアメリカを変えたか                
強調主義は影を潜め時刻乗り江井追及のためには手段を選ばない単独行動主義
が、ブッシュ政権アメリカの歴史の中で際立った得意な政権であるとは想えない
 
 アメリカ外交の伝統には3つのパーンがある
2)現実主義(国益追求)理想よりも
3)理想主義的福音主義的使命感からアメリカ健保の理想を世界に広めよう、とする。
 アメリカ人の信じる普遍の価値→独立宣言・ピューリタン的使命感
彼等は既に孤立主義を捨てている。
 
 アメリカ保守の自身は何処から来るのか
一国で世界の軍事費の40%の比類なきパワー
ジャングルのような世界のリヴァイヤサン=アメリ
 
レーガン スタウォーズ計画ミサイル計画
ソ連はコレに耐え切れなくなり財政破綻崩壊の道を歩んだ。
ソ連邦崩壊→自分たちは正しいと確信した。
 
「リベラルが穏健というわけではない。」
 
アメリカ民主主義の論拠とは」
何人も生まれながらに平等。理想を信じる個々人の結集の基に成立した国。
民主主義は個々人が行動して決めた権力制度
 
アメリカという国は日本のように125代にわたって天皇を【戴いてきた】という歴史があるのではない」
また「ヨーロッパのようにに長い間、王権に支配されてきたという歴史も無い。
日本、ヨーロッパと国の成り立ちが違う。その意味ではアメリカは【人工的な国家】しかも建国から200年少しの成功した【実験国家】
 
 憲法前文に示されたアメリカの意思 →平和主義を日本無力の企画と読み込んでいるようだ。  
当時のアメリカの姿勢は憲法9条の【戦争放棄】の各項目に示されている。
アメリカは自らの連合国側の国益を守るために代表して日本が二度と欧米中心の秩序に挑戦しないように強い意思を示した。
 
 戦力なき軍隊の矛盾
警察予備隊(国内治安)→有事対処は米軍という出発点の構図から、あくまでも自衛隊は国内治安担当。
 
 日本とドイツの其々の道
ドイツは36回も基本法を改正。徴兵制、非常事態対処法 
言うまでもなく米ソ冷静の最前線にあって、ソ連の脅威に晒されていたからだった
 
W。「美しい国へ」の完全版で、ドイツの徴兵制の削除を確認していない。多分そのままだと思う。
   国立国会図書館ネット情報より
「ドイツ徴兵制(軍事役務)が、内外の状況の変化とともに見直され、2011 年 7 月 1 日に停止さ. れた。
徴兵制は廃止とせず、緊迫及び防衛事態に際して復活できるように、 憲法上の規定は残. される。代わって、志願兵制が導入された」
 
。ドイツ徴兵制廃止の思わぬ副作用。ニューズウィーク日本語版2010年10月7日(木)クリスタ・カプラロス
    廃止以前
「期間が当初の12カ月から6カ月に短縮されている。6カ月では専門的な訓練が十分にできず、一人前の兵士になれないという問題がある。外国でNATO北大西洋条約機構)の任務に就くドイツ兵は全員が志願兵
徴兵対象はドイツ全土で45万人程度。健康上の問題で不適格と判定された人や、神学などが専門の大学生には兵役の義務はない。兵役より民間役務を選択する者も多く入隊者は徴兵対象者の約16%だった
 民間役務を選んだ若者たちは「病院内で患者の移動に手を貸したり、手術直後の回復室で患者の意識が戻るのを待ったり」といった仕事に就くと、民間役務局のハルトマンは言う。
 民間役務はドイツ経済の一部として定着している。政府の補助があり、利用する側はわずかな報酬を払えばよかった。民間役務がなくなれば、これに頼ってきた非営利機関などにとっては大きな打撃になるとハルトマンは指摘する。
 
 
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W.日本とドイツの相違の項目にはナチズムと共産主義への対抗措置を含むドイツ基本法の独特の構成があるのだが、一切無視して、都合の良い、ドイツは36回も基本法を改正。徴兵制、非常事態対処法だけを取り上げている。
 
 また、そもそもドイツ帝国憲法→ワイマール憲法憲法史政治史と、日本の帝国憲法日本国憲法憲法史政治史の違い、にも一切触れていない。
従って、敗戦直後のドイツの憲法制定過程において日本のような、人民主権国民主権にリベラル知識人さえも腰を抜かし、社会党憲法草案(西ドイツいえば社民党)でさえ国家主権の憲法草案などということはありえなかった。
 
 2012年の自民党憲法草案のような議論以前の極端なものが提出される根本的な背景は、日本の戦前史→敗戦→占領下の憲法制定状況にある。
2012年草案とともに教育環境に訳のわからない愛国教育を闖入させると、国内状況としては、ほぼ帝国憲法状況の今日的状況が完成すると思う。後は外的要因が大きな鍵を握る。
ただその状況ははファシズムではない。
 
 言い換えると敗戦事態にも拘らず、日本支配層=秩序派の様々な支配力によって、かなりの日本人の外形は変わっても心根に大きな変化はなかったということである。
大きな変化がなければ、心根に戦前は継承される。
それに加えて、地政学的位置、天皇制など様々な要因がある。
よく言われる市民革命がなかった云々はできる内外条件がなかったのだから余り関係が無い。 
何はともあれ民主化は、米軍が大きな手助けをしてくれたのは紛れもない事実で、こういうことは戦争と平和の歴史で良くあること。理屈の問題である。
 
   なぜ日米同盟が必要か
1960年安保以来、【駐留軍を同盟軍に変える】→【日本が独立を勝ち取る】というイジマシイ努力してきた
日本にはアメリカは必要
       ↓
日本は独力で安全を確保することができない。それは今でも変わらない。
1)核抑止力  2)極東の安定~米軍との同盟
我々の守るべきものは、国の独立、主権、平和、生命財産、自由人権
 
    行使できない集団自衛権
双務性を高めることは信頼の絆を強めより対等なキズナを作り上げる。
しかしながら
現在の日本は財産はあるが自分の自由にはならない、禁治産者。権利あっても行使できない状態なのだ。
日本も自然権としての集団自衛権を考えるのは当然であろう。
権利があれば行使できると考える国際社会の通念の中で、権利はあるが行使できないとする論理が、果たして何時までも通用するだろうか。
それが日本をより安全にして~延いては集団自衛権を行使しなくてすむ状態にする。
 
    交戦権が無いことの意味
大儀と国益ーお金の援助だけでは世界から評価されない。
海外派兵ができない上に武器使用を禁止されており、自衛隊が日本人を守れない事態が生じている。
 
    
          第5章日本とアジアそして中国
『日中は政権分離の原則でできるだけ早く力の間に政経分離の原則を確立する必要がある』
 
W。政権分離は従来の安定的な自民党路線であって、今の安部路線とは違っているようだ
アーミテージ戦略の方向に引っ張られる原因は安部の原理論である国家主義の視点にある。
米軍事戦略主導によって、東アジアに設定された危機対処の方向で軍事バランスのみに追い求めると、必然的に米世界戦略の術中にすっぽりとはまっていく。
 
 自らの理想の政治家像をチャーチルに求めていることとから、対独融和戦略のチェンバレン首相を引き継いだチャーチルの対独強硬路線に対して台頭する中国戦略を二重写しにしている可能性もある。
 
 表向きは「美しい国へ」の方針だが
W。旧版の「美しい国へ」の刊行2006年から余りにも年月が経過した。
完全版でも改訂はしていないが、現状の本音は次のようなものであろう。
アメリカの戦略が変われば、【もはや日本の選択肢はないだろう】から、中国をいかに封じ込めるかに転換せざるえない。
 
     *中西輝政
   「迫りくる日中冷戦の時代 ー日本は大義の旗を掲げよー」  PHP2012年刊
「いま、アジアを舞台に新たな冷戦が始まろうとしている。冷戦の次の主役は中国だ。
アメリカが世界唯一の超大国だった時代は終わりを告げたのである。
急速な経済成長を遂げ、アジア太平洋への露骨な膨張政策をとる中国をいかに封じ込めるか? 
 2012年年7月に露首相が国後島へ再上陸し、八月に韓国大統領が竹島に不法上陸、同月香港の活動家は尖閣諸島に強行上陸した――これら一連の出来事の背後にある大きな構図に目を向けよ。
 
 アメリカはすでに新国防戦略で対中封じ込め政策へと軸足を移している
米軍の対中国海空戦闘配置ー連動する自衛隊のダイナミック戦略
  W。    IWJブログより第3次アーミテージレポート全文翻訳の該当箇所の引用。
>これらの各種の接近阻止・領域拒否(A2AD)という挑戦に対し、
米国は空海戦闘や統合作戦アクセス構想(JOAC)などの新たな作戦構想への取組みを開始している。
W。日米、中の挑発的軍事行動の恒常化。
>「日本は「ダイナミック防衛」の様な類似構想への取組みを開始している。
米国海軍と海上自衛隊が歴史的に2国間の相互運用性を牽引してきた一方で、
新たな環境はより強大な連帯と両国における部局横断的な相互運用性及び両国間の相互運用性を明確に必要としている。」
 
 日本が対中戦略でもつ最も有効な武器は何か? 
「人権・民主化」という大義の旗を明確に掲げることである。
日米同盟の再活性化に全力で取り組む以外に、もはや日本の選択肢はないだろう。大中華圏なるものは、たとえ二十二世紀になっても現出しないのだ――。」