岩上安見さんが単独インタビューで質問した順番に沿って、小沢さんの意見をメモにまとめているが、これらは一括して小沢さんの日本国家論(国のかたち、あり方)としてまとめることができる。消費税増税問題も小沢さんの視点からは日本の将来ビジョンと固く結びついたもので、純国家論(国家戦略)の様なモノと理会できる。
岩上さんの質問は各質問事項をばらばらに聴いており、小沢流の日本国家論的認識の佳境を展開している時に、質問者である岩上さんが国家論としてもっと認識して、突っ込めば良かった。日本核武装まで小沢さんに質問しているのだから。
コレらの各項目は煎じつめれば一体の関係にある。だから、小沢さんの話の中から、ここぞと云う糸口を見つけ、突っ込めば良かった。そうすれば、小沢流日本国家論が聴けただろう。
いいかえると、日本国家の戦術領域に留まるモノであって、長期戦略の視点に乏しい。だから政局論の深化したレベルだと云える。
この視点から、問題発言を列記してみると、以下の様になる。
6、対米関係
A,「米国は欧州から5、6万兵を引き上げており、沖縄駐留海兵隊削減も米国の政策」
B,「日本自身が責任を果たさなければ、日本の自立は厳しい。日本はもっとやれることがある。」
C,「日本自身が国土防衛をやらなければならない」
C,は自立の原則でる。
問題はA,。
米国の東アジア戦略はあくまでも米国をハブとした相互分断の中国、韓国、北朝鮮の関係を維持したまま、国家資本制的発展の中から勢力を増す中国、同時に米国との経済的政治的関係を深化させている中国をけん制し、勢力を抑制する意味で、沖縄南西諸島の軍事力強化を日本に肩代わりさせることで偽の対中対北冷戦体制を実現しようとしている。
同時に、こうした対中偽冷戦体制の構築は世界の先進諸国の中で、大きな利得を引き出せる日本市場への介入を容易にする。
なぜならば、スターリン主義体制が崩壊した欧州と比べて、東アジアには中国と云う巨大なスターリン主義体制と、それを生存背景とする軍事冒険主義の北朝鮮スターリン主義が残存しており、そこから、分断分裂民族国家、休戦状態が残存し、厳密には東アジアでは冷戦構造は終焉していない。
この意味で、ソ連東欧スターリン主義が崩壊した様に、東アジアの残存するスターリン主義体制の政治的軍事的上部構造は経済下部構造の発展に伴う資本制の矛盾の深化によって、崩壊あるいは再編されてい行く趨勢にある。
(この点は、小沢さんの中国論の根幹をなしており、正確な認識である。)
(が、小沢さんはここまでしか説明していないが、問題はもっと先にあるが)
以上の中国北朝鮮体制の動揺の激化通じた、崩壊もしくは再編は、アジアで唯一敗戦帝国主義である日本の<統治機構の戦後的脆弱性を揺さぶる>ことで、国内の動揺を誘い、<経済的に米国離れ、アジア近隣諸国との関係を深める日本>に<米国への一層の軍事的政治的従属に誘導>し、コレを起点として日本市場から不当な収奪をしていく米国の明確な対日戦略が可能となる。
小沢さんのA,の認識は米国の東アジア偽冷戦体制構築=日本市場収奪の面を甘く見過ぎている。
ソ連東欧体制の崩壊によって、兵士を撤退させている欧州と体制的危機を孕む残存スターリン主義の深化する矛盾に付け入る軍事的緊張体制を構築することで、同時に日本市場搾取を画策する東アジア情勢は、次元が違うと云わねばならない。
そういう小沢さんの認識で、「日本は責任を果たさねば」とか「もっとやれる事がある」とは、結局のところ、多面的な要因を絡ませたハブ的な立場に維持したままでの米国の東アジア戦略に載せられている。
それは次の北朝鮮問題に言及した究極的な発言に象徴されている。
「中国の不安定要因拡大にって、その出先機関の様な北への抑止力がなくなれば、中国の前に北が暴発する可能性もある。韓国ソウルは北のロケットの射程圏内。本格的な戦闘になれば、ソウルは火の海。第二次朝鮮戦争の様な事態も起こりうる。
その時は国連がカギを握るが、<自分のこれまでの論理によれば、国連の旗の下ならば、積極的に参戦する>」
小沢さんは自衛隊国連待機軍構想を民主代表になってから、岩波「世界」に発表した。読んだがハッキリ言って、つぎはぎだらけの論理であり、戦術主義(旧社民党グループを取り込むための主張との邪推も生まれた)で、コレに対する桜井よしこの批判に分があると感じた。日本の様な大国の軍隊を国連待機軍するのは国家論的に間違っている。
<国連軍の旗下ならば、積極的に参加する>がどうして先走り過ぎかと云えば、上記した法的な意味合いを超えた処に真の問題が横たわっているからだ。
北朝鮮暴発はあくまでも可能性の問題であって、戦術政治軍事レベルの領域である。
そういう戦術レベルの問題や中国共産党崩壊後の中国国家と中国国民の継続を考えると、
>>日本の自衛隊は例え国連軍の旗モノとと云う条件付きでも積極的に参戦すべきでない。
必ず、後に禍根を残す。この21世紀に例え海を隔てているとはいえ、先進国日本が燐国に戦闘部隊を派兵すべきでない。積極的と云う事は軍団を派兵し戦争の一方の当事者になる事だ。
そういう事をやっている先進国が果たしてあるのかどうか?
過去の日本と東アジア諸国民との歴史的事実の持つ意味も拡大視されかねない。
コレによるリアクションは日本国民とその海外活動に降り注いでくる。
そもそもが、本気で戦闘態勢を構築する国が休戦ラインから、わずか、60キロしか離れていない処に国家の中枢機関と全人口の半数を集結させる国土計画を立てる訳がない。
一方、北が攻めてくる、暴発するとの想定。
戦争的政治を必要以上に怖がるのが戦後日本人意識の脆弱点である。
そういう事態を防止するためにも軍隊は存在する。任せておけばいいのだ。政治家がこうした方面で危機意識を煽っても内外にいい結果は生まれない。
小沢さんの主張の根幹部分には疑問符、不明点が付きまとう。