反俗日記

多方面のジャンルについて探求する。

第3回。ネグリ叛逆~マルチチュードの民主主義宣言、グローバリズムによって代表性が失効する←グローバル資本制への世界民衆の政治原論。雨宮処凛11、19UP「沈みゆく大国アメリカ』を読んで」全文。総選挙。

               第1回、第2回で注目する論点のまとめ。
    第1回 その(1)、借金を背負わされた者
 ハ負債に基づく搾取 
以下の項目に注目する理由 
4つの主体形象→(1、借金背負わされ~ 2、メディアに繋ぎとめられ~ 3、セキュリティーの縛り~ 4代表された~)を導き出す、世界状況認識が明確に示されている、とはいえない。純粋な世界状況の認識は以下に示す(A)<ここのレント~ローン連鎖への取り込み装置?~の概念は曖昧過ぎる。コレ経済理論なの?大前研一「さらばアメリカ」の方がズット具体的で実証主義に基づく指摘をしている。>次に示す(B)<コレはグローバル資本制の時代の普遍的な指摘)だけである。であれば、主体形象そのものが恣意的に設定されているということになりかねない。<市場原理主義の見えない服従の檻>などと記事でムード的に連発してきた次元と余り替わらない。
(A)「かつて大量の賃金労働者がいた。今では不安定労働者の大群がいる。~最早(現状は)平等ではなく、<債権者と債務者という階層関係として設定される>
>ただし、<負債に基づく搾取>は特殊である。
だが資本と労働との関係は大きく変化した。資本主義的生産の重心はもはや工場の中にあるのではなく、工場の壁の外に流れ出た。社会が一つの工場になったのだ。
>というよりもむしろ、資本主義的生産が社会全体を管理下におくほどに拡大したのである
資本はますますわたしたちの生産能力、わたしたちの身体、精神、コミュニケーション能力、知性、創造力、等々を全面的に搾取するようになっている。つまりわたしたちに生そのものが働かされるようになっているのだ。」
「資本と労働者のあいだの主要な関わり方も変化している。W要約→今日の資本家は、資本の直接的生産関係における利潤ではなく、主として(?)レントを通じて富を蓄積する、としている。
     ネグリの<レント>の簡単な説明
「ここでいう<レント>は、多くの場合、金融の形をとり、金融機関を解して保証される。~今日の搾取は、主として交換ではなく、負債に基づいている。言い換えるなら、今日の搾取は、99%の人々が1%の富裕層に~仕事、カネ、服従を負うという形で~従属しているという事実に基づいているのだ。
     *翻訳者の<レント>説明
(W。決定的なキーワードに、長々と書いても冒頭、以上の説明ができないとは呆れる。)
<レント>とは元々地代や不労所得を意味する語である。しかしネグリとハートはコレを、生政治的生(Wこの意味も不明)に基づく新たな資本主義の中で働く、<共~コモン~>の捕獲装置として捉えなおそうと試みている。」
 
(B)グローバル資本制の時代の普遍的な指摘
          代表された者
  代表性が失効する
「だが、今日、仮に私たちが代表制という近代の神話を信じ、ソレを民主主義の媒介手段として受けいれるとしても、代表制を可能にする政治的文脈は根本的に縮小してしまった
 代表制のシステムはそもそもナショナルなレベルで構築されたものなので、グローバルな権力構造の出現代表制を劇的に掘り崩しているのだ。
 新しいグローバルな制度は、人々の意思を代表する振りをすることすらほとんどない
政策協定や事業契約は、グローバル、ガバナンスの構造の内側でつまり国民国家に属するあらゆる代表制の能力の外側で調印され、署名され、保証される。
 
 「国家なき憲法が現に存在しているか否かと問わず、かつては代表制は社会契約や一般意思という)ごまかしの手法で)人民を権力につかせるという振りをしていたがこうしたグローバルな領域においてその機能が最早何の効力も有していないことは確実である。
 
 ではもう一方の代表されたものはどうか?
こうしたグローバルな文脈において、市民としてその資格や特性のうち、一体何がまだ残されているのか?
 
 代表された者は、最早積極的に政治的生活に参加することなく、気がつけば、社会生活という現在のジャングルの中で一人戦う、貧者となっている
 
 もし生き生きとした感覚が呼び起こされなければ
そして民主主義への衝動に目覚めなければ
代表された者は、最早市民ー労働者に言及することもない権力の純粋な生産物、ガバナンスのメカニズムの空虚な殻となってしまうだろう。
従って、代表された物は、他の主体形象と同じようにごまかしや神秘化の所である。」
                      
                                次回に続く

雨宮処凛がゆく!
2014年11月19日 UP
「なんだかいろんな事が同時進行で起きていて目が回りそうだ。
 沖縄知事選での翁長氏の勝利。そして突然の解散・総選挙。
 だが、選挙ということは、この2年間の安倍政権へ審判を下せるということである。
 反対世論をまったく無視しての特定秘密保護法の成立や集団的自衛権行使容認の閣議決定。武器輸出や川内原発再稼働。そして生活保護基準の引き下げ。このうちひとつでも「信」を問われたことなどあっただろうか。ある意味、チャンスである。
 さて、そんなバタバタしている中、ある本を読んでとても恐ろしくなった。それは『貧困大国アメリカ』でおなじみ、堤未果さんの『沈みゆく大国アメリカ』 (集英社新書)。
 
 本書を開いたところには、こんな文章がある。
 「鳴り物入りで始まった医療保険制度改革オバマケア』は、恐るべき悲劇をアメリカ社会にもたらした。『がん治療薬は自己負担、安楽死薬なら保険適用』『高齢者は高額手術より痛み止めでOK』『一粒10万円の薬』『自殺率1位は医師』『手厚く治療すると罰金、やらずに死ねば遺族から訴訟』」――。
 アメリカではべらぼうに医療費が高く、貧しい人はマトモな医療を受けられないばかりか、「医療破産」する人も多いということを知っている人は多いはずだ。だからこそ、オバマ大統領が目指した皆保険制度。
 「もう誰も、無保険や低保険によって死亡することがあってはならない」と宣言し、オバマ大統領は2010年3月に「医療保険制度改革法」に署名。マイケル・ムーア監督も「もう2度と、病気になっただけで医療破産するようなことは起こらなくなる」と称賛した法律である。
 しかし、そんな「オバマケア」の実態はどうなのか。
 
 本書には、29歳でHIVと診断されたオスカーが登場する。彼は無保険。勤務先の提供する民間保険に入ろうとするも、HIV陽性なので却下されてしまう。無保険では、HIVウィルス増殖を抑える薬代は年間200万円もかかってしまう。
 最後の手段として思いついたのは、会社をやめて最貧困層になること。そうすれば国が貧困層に提供する「メディケイド」という公的な医療制度にひっかかることができる。しかし、前年の収入がメディケイド受給要件を上回っていたため、申請は却下。エイズ治療救済プログラムに「死ねというのか?」と問うと、「エイズを発病してからもう一度来て下さい。それなら働けない証明が出せるので、メディケイドの障害者枠に入れますから」との答え。
 
 しかし、そんなオスカーに希望の光を与えたのが、オバマが成立させた医療保険改革だった。それが実現すればHIV患者でも保険に入れると聞き、オスカーはオバマケアを支援するボランティアを始める。
 「HIVだけじゃない。喘息や肝炎、リウマチや筋肉硬化症、そしてがんなど、あらゆる重病や慢性疾患を持つ人々が、オバマケアのおかげで、拒絶や破産の憂き目にあうことを恐れず生きられる社会が、やっとくる」と信じて。
 そうして2013年10月、オバマケア保険の申請手続きが開始され、オスカーは無事に診療費の7割をカバーしてくれる保険に加入。月々の保険料は3万2500円で、自己負担合計額の上限は年間6350ドル(63万500円)。しかし、翌月、恐ろしい事実に気づく。以下、本文からの引用だ。
 「オバマケアは既往歴や病気を理由にした加入拒否を違法にしたが、多くの保険会社は代わりに、薬を値段ごとに七つのグループに分け、患者の自己負担率を定額制から一定率負担制に切りかえていた。
 このやり方だと、HIVやがんのような高額な薬ほど、患者の自己負担率は重くなる。
 HIVの抗ウィルス薬はもっとも高額なレベル5で、自己負担率は50パーセントだ。オスカーの場合は、まず保険金が支払われる前の自己負担額5000ドル(50万円)を支払ったうえで、今度は毎月の薬代2400ドル(24万円)の50パーセントを負担しなければならない。さらに20種類以上ある抗HIVウィルス薬のうち、保険が適用される処方薬リストに入っていたのは6種類のみだった。HIV患者は数種類の薬を飲む必要があり、オスカーの服用する薬のうち、リストにない薬の代金840ドル(8万4000円)は毎月100パーセント自己負担になる。そしてこのリスト外の薬については、6350ドルという最大自己負担上限の適用外なのだ」
 
 やっと保険に入れたHIV患者の多くが、同じような目に遭っていた。しかし、彼らへの救済制度はなきに等しい状態だった。それまで約半数の州にあったという「慢性疾患患者用救済共同基金」が、オバマケアの導入により、廃止されていたからだ。
 オスカーの友人でC型肝炎患者のケビンも、オバマケアによって保険に加入できた1人だ。しかし、彼が医師から勧められた新薬の値段は1クール12週分で自己負担額840万円。
 オスカーは、自己破産することを考えているという。最貧困層になれば、メディケイドに加入して薬を飲めるからだ。
 
 本書を読み進めていくと、オバマケアはアメリカの雇用も不安定化させていることが浮かび上がる。労働者に保険を提供する経費を削減するために、フルタイムからパートタイムへの降格やリストラが起きているというのだ。
 そんなオバマケアで莫大な利益を上げているのが、保険会社や製薬会社だ。なんだか既視感を覚える構図である。
 「でも、アメリカの話でしょ? 日本は関係ないし」と思う人もいるかもしれない。しかし、本書の最終章のタイトルは「次のターゲットは日本」。
 
 選挙の前に、ぜひ読んでおいた方がいい一冊だ。」