反俗日記

多方面のジャンルについて探求する。

<増税は誰のためか>神野直彦 地方財政審議会会長インタビュー。90年以降の減税によって、法人税負担率は諸外国並み、所得税負担率は先進国で最も低いレベルへ。経済不振による歳入減が加わり、財政大赤字。

          増税は誰のためか> インタビュアー神保哲生 宮台真司
    TALK2  貧しい人がより貧しくなる全盛から『分かち合い』の税制へ
                                神野直彦 地方財政審議会会長
宮台  経済のグローバル化が進む中で、どの先進国も市場や政府、財政は不安定化して、将来不安、雇用不安を抱えています。そうした中で<不安をベースにしたポピュリズム外交しやすくなり、「必要だから増税する」といったことが難しくなっていますよね。
 
神保 神野さんの著書に米国の政治学者パッとナムの『国民の安心を保障するのは制度ではなく、制度を支える人間のキズナである』という言葉が紹介されていました。制度は大事だけれど、人間がキズナをとりう戻す制度でなければならないと。
ソレを読んで僕もどうすれば帳尻があうかという議論だけで、税制を考えていてはダメだと痛感したんです。
 まず、制度の話からいり最終的には神野さんが提唱される<分かち合いの経済>-どうすれば日本が分かち合いの経済を取り戻せるか考えたいと思います。
 
神野    <復興増税と復興国債
2011年11月復興増税関連法案が賛成多数で可決された。
所得税=2013年1月~25年間 納税額の2,1%上乗せ
個人住民税=2014年6月から10年間、年間1000円を増税
法人税=2013年4月から一端5%下げた上で、3年間に限り10%上乗せ
 
復興国債=2012年度中に11兆5500億円が発行される。
 
 
        90年代から相次ぐ減税につけ
神保  2009年度の全集は38,7兆円。ソレなのに歳出は一般会計で101兆円にも上りました、凄いギャップですよね。当然、そのギャップは借金で埋めなければならない。
何が原因でこんな事態に至ったのでしょうか。
 
神野  90年には60兆円あった税収が、バブル崩壊以降の大不況によって減り始めました。それに加えて、様々な理由で所得税法人税の減税を行ったのです。
景気回復のためといって、或いは国際競争力を増すためといって、1990年代の<失われた10年>と呼ばれる不況の時期に減税をし続けたのです。 


 W。注。1997年橋元内閣(増税法案を可決したのは自社さ政権村山内閣) 消費税増税3%→5%とアジア金融危機の関係。
アジア金融危機山一證券拓銀倒産)による急激な景気後退。数字グラフによって証明されている。
>が、2014年のアベ政権の増税後の景気後退は、97年よりも酷い。どうしてなのか?
歴史の証言/消費税3%から5%への道程・・・④不況突入の原因は消費増税ではない!衆議院議員みんなの党、現、維新の会江田けんじブログ。http://www.eda-k.net/column/week/2012/04/20120423a.html


 

 所得税は所得の高いほど税率が高い累進課税なので、豊かな人から貧しい人に再分配する機能があります。その所得税を減税し続けた。一方で、1997年には消費税を3%から5%に引き上げました。消費税は一縷津ですから所得の低いヒトほど負担が大きくなる。
 つまり90年代以降、税収が減った上に、再分配機能も失われる事態になったわけです
減税をし続けていれば、景気が回復する予定だったのが、<失われた10年>が20年になろうとする今もまだ回復していない。減税をし続けても景気は回復しないことに、そろそろ日本人も気づかなければならないですね
 
               90年代の減税ラッシュ
バブル崩壊後の減税ラッシュは、
94年→5兆円<特別減税>~所得税額、住民税額の20%控除の定率減税
95年、96年→同上各15%の定率減税
98年→4兆円の定額減税
99年→定率減税恒久化→2007年廃止。
 
所得税最高税率=89年50%→99年37%→07年以降40%
>その結果、家計の収入ダウンと相まって、90~99年の10年間で所得税の税収は10兆円以上も減った。
 
法人税=89年40%→90年37,5%→98年34,5%→99年以降30%に減税された。
 
神野 90年代までは公共工事が盛んでしたし、小渕内閣のときは<緊急経済対策>として公共事業に何十兆円もの税金を使いました。小泉内閣以降は公共工事は減って行きましたが、社会保障費が急速に増えていったんですね。
 
神野 そもそも税というのは政治的な問題ですよ。
 
神野 欧米では「公共サービスや秩序が維持されることの恩恵を受けている」という意識を豊かな人たちが持っています。だから富裕層が秩序維持のコストをわれわれが負担しよう』と考えるのです。
~~しかし、日本ではこういう動きはないですね。どうも国民全体の風潮として、経済成長しないと自分たちの生活も成り立たないのでは、という意識が強い。
企業や成功者の減税をすることで国際競争力が上がるのだ、といわれるとみんなが納得してしまう傾向があります。
ソレでは格差が拡大するのではという批判に対しては、『いや、トリクルダウン【露の滴り】だ』というわけです
 
神保 未だにトリクルダウンなんてことを云っているんですか。レーガン政権下のレガノミクス→アベノミクス(W。ネーミングもアメリカの猿真似ですか)の経験則から、富は滴り落ちないということで、この議論は決着がついているのだと想っていました。
 
神野  しかしこれについてはノーベル経済学賞スティグリッツも「理論的に間違っていて、幻想に過ぎないにも拘らず、未だに信じてられていることが信じられない」といっているくらいです。
そんな迷信がまかり通って、ココまで減税してきてしまったんですね。
 
        
          日本の所得税負担率の軽さは先進国トップ
神野  世界の先進国で、90年代以降に個人所得税の負担率を下げた国は、日本とスウェーデンぐらいです。
後の国は上がっています。スウェーデンは負担率を下げてもなお、世界で最も所得税負担が高い国です。
 
神野  日本は5%程度で、先進国では稀に見る所得税負担率の低い国になっているんですね。
 
        法人税負担率
神野 90年代、国際競争力を高めるために明確に減税した国は日本だけです。
他の国はグローバル競争だといいながらも、法人税減税はたいしてやっていません。
日本は95年に法人税負担率がガクッと下がっていますが、では、国際競争力がついて経済成長したかといえば、逆に95年から失われた10年が始まるんですね。結果としては、法人減税は余り効果がなかったということになります。
 
神保  そうすると、日本は、90年以降の減税によって、法人税負担率は諸外国並み、所得税負担率は先進国で最も低いレベルまで下がった。
さらにそこに経済不振による歳入減が加わった結果、これだけの財政大赤字が膨らんで、今税制改革が議論されている。--というにが歳入面から見た<大枠の理会>でよろしいですか?       
 
神野  そういうことです。コレだけ所得税法人税負担を下げたのに、今、<増税といえば消費税>という議論になっているのは、奇妙なことなのです
 
        このままでは貧しいヒトほど負担が重くなる
                                  <続く>