反俗日記

多方面のジャンルについて探求する。

TTP問題で財界、官僚、アメリカ、マスコミと国民の利害対立が大きくなっていく。

 「ニッポンの食」というサイトによれば、アメリカとの自由貿易協定(FTA)を受け入れた韓国ではソウル市内で17万人のデモが行われ、抗議の焼身自殺者も出たという。
農産物の完全自由化品目に牛、豚、鳥肉、乳製品などが含まれている。現代人の重要な血となり肉となる蛋白源が基本的に外国輸入製品に委ねられる。(尤も私は普段の食事でそういうモノを摂取しない、純和風食。無理に避けているのではなく自然にそういう趣向になっている)
 
 さて、ここで注目するところは、コメの自由化は韓国政府は回避したことである。
日本のTTP案件の解説を聞いていくと、とかくコメ問題に焦点が当てられているように思う。
 コメを守る、水田は国土のドタラコウタラの文言の中で一つの巧妙な世論誘導方法として、コメ問題に国民の耳目を集中させておいて、実際の交渉でコメの自由化だけは避けられたのだから、良しとしなければならないというトリックが仕組まれている様に思えてならない。
 
  韓国はアメリカとの間にFTAを結んでおり、EUなど他国とも日本よる遥かに2国間の自由貿易協定を結んでいるから、TTP問題を日本の外務省や経産省が取り上げる様な早急な問題として取り上げないで済む。
日本当局には自由貿易協定ネットワークの形成が遅れから、従来、日本が得意としてきた工業製品部門で韓国の追い上げにあって市場で苦戦続きだから、一種の焦りの様なものが出てきている。
 
 抹消された外務省サイトの見解はその典型で急進的な意見の様相が濃く出ていて、バランス感覚と将来展望に欠けて、国民の将来を日本の多国籍企業の業績向上に賭けさせようとする方向性が余りにも露骨に出過ぎている。
 
 輸出独占体や関連企業軍の儲けはこれまで国民に還元する社会構造に日本はなっていない。その儲けはせいぜいそこで働く正規社員にお裾分けがいく程度であった。今後を、正規社員までリストラ対象になっているのだから、それすらも怪しく、ただひたすら、大企業が設けるだけに終わる可能性が高い。
 
 ただ、ここで常識論では解決できない真理がある。
 
 この前のブログで取り上げた、労働力商品の価値は基本的にその国における、当該商品の生産費によって決定されるという真理である。
 
 つまり、関税自由化で安い農産物が自由に輸入されると、労働階層全体の労働力商品の再生産費は低下し、結果的に賃金水準は下がってしまうのである。
 この真理を別の角度からいえば、労働階層全体の賃上げ要求には限界があるということだ。連合労組の賃上げが通れば、下方の低賃金労働力で経営者はその穴埋めをする。今は国内から低賃金を求めて海外に資本逃避する。
 
 で、仕事がなくなるから、下方からより一層の低賃金労働層が生まれるが、安い農産物輸入で生活費が安上がりにあれば、この層の労働力の再生産も可能となる。そしてこの層の低賃金はより上層の賃金層へ沈め石になる。だから、安い食料品の輸入は、結果的に労働階層全体の賃金を下げるのだ。
 
 これが経済的真実。経営者はもちろんこれを知っている。知らないのは多数の国民だ。
 
高度に発展した資本主義国では必ず、農業農民問題が重要な政治課題にあがってくる。
だから、成功した過去の革命家は農業、農民問題を徹底的に重視した。レーニンにも農業論の単独の著作がある。毛沢東は言うまでもない。カストロゲバラもシャエラマエストラに籠ってゲリラを始めた。
農業、農民問題は国を揺るがし、大問題であり、もちろん国民の生活に最大に密着した問題である。
 
 戦後長く続いた自民党長期政権はある意味で尤も大切にしなければならない問題を打ち捨て、今現在から将来に渡って日本を窮地に落としこめているのである。
 
 馬鹿をやったつけは必ず、決済しなければならない様になる。国民のレベルでも高度成長から今日までの総括が求められている。これなくして腰の据わった意見は国民規模で形成できない。