論 説
グローバル資本主義と国民国家の新しい役割 内 山 昭
〈目次〉
1.グローバル資本主義と一国資本主義論の終焉
2.新段階としてのグローバル資本主義
3.国民国家の新しい役割と「日本・軍事大国」論
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引用
「
河村氏の所説は2つの理由から説得的でない。第1に,グローバル資本主義が
新段階との評価ができない根拠として「新段階を支える制度,組織,システムが未成熟」な点を強調するが,大企業・大銀行(=グローバル資本)などのグローバル化,グローバルな資本蓄積が進展するにつれてそれらは遅かれ,早かれ整備されてくる。制度や組織などは国際会計基準やWTO の結成に見るようにすでに一定の整備があり,タイムラグがあるとはいえ,経済的土台ないし下部構造の成熟につれて改善され,確立するというべきであろう。アメリカ・ドルの信用や影響力は相対的に高く,これは今後も相当期間にわたって続くものとみられるが,代替通貨がほかにないときにドルが基軸通貨の地位にとどまることもあるし,他方ではユーロや円が国際通貨の性格を持ちつつあることも事実である。第2に,河村氏が特に1990年代以降のグローバリゼーションの展開を歴史的変容,転換と呼んでいること,大資本の蓄積が出自の一国中心でなくグロ
ーバル化した現実の摘出,活写はグローバル資本主義を新しい段階と規定するにふさわしい。それにもかかわらず,何が氏を逡巡させるのであろうか。
*****************************
馬場宏二氏はグローバル資本主義の展開にそれ以前とは異なる質的変容を見出し,
これを資本主義の新しい段階と規定する。
同氏は第1次大戦後について新3段階論を提起し,
そこではグローバル資本主義は古典的帝国主義,大衆資本主義に続く新段階と位置づけられる
基軸産業はそれぞれ鉄鋼業,大衆的耐久消費財産業,IT 産業であり,
生産関係を代表する支配的資本は金融資本,経営者資本主義,株価資本主義が各段階に照応する。
宇野弘蔵氏の3段階論は
重商主義(支配的資本は商人資本),自由主義(同,産業資本),帝国主義(同,金融資本)の各段階であり,
支配的資本の蓄積様式に対応する経済政策の類型が区分の基準であった。
>馬場氏は宇野3段階論を第1次大戦までを視野に入れたいわば歴史理論とみなし,
●それ以降を単純に現状分析の対象とすべきではないとした。
第1次大戦以降からすでに100年を経過し,戦間期,第2次大戦後,1990年代以降の各時期に,段階を画するような質的内容の変化があると強調する。
筆者はこの認識に全面的に同意する。
同氏の3段階論は<アメリカ中心史観ないしアメリカの覇権国化過程から構成>され,
①各段階は「生産力的基軸国への台頭(ロシア革命を指標,戦間期,筆者注),
②資本主義圏内での覇権国化(第2次大戦後,同),
③単独覇権国化(ソ連・東欧社会主義圏の崩壊が指標,同)となる
そしてグローバル資本主義段階は「資本主義の最高かつ最後の段階」と規定され,
そこでは規制緩和や公企業の民営化等修正資本主義の除去とアメリカ的商慣習の国際的普及(グローバル・スタンダードとし
て,)が世界を主導する経済政策となる。
*****
>しかしながら,馬場氏の新段階論にはいくつかの難点があり,なお未成熟である
支配的資本を「株価資本主義」とし,株式所有の目的が高配当よりも株価高騰によるキャピタルゲインとなった現在ではその規定が一層適合的であるとする。
その根拠は「代表的なアメリカ企業の目標を株価高騰,言い換えれば企業総価値の最大化」に見い出す。
今日の大資本,投資家の行動の重要な一面をついていることは確かであるが,
産業資本や金融資本,寡占(独占)資本という概念との整合性を欠くように思われる。
むしろ経営者支配の寡占資本,無国籍化ないし世界企業の形をとるグローバル資本という表現が適切ではないだろうか。
また「最高かつ最後の段階」という規定についても,長期的視野や期間をどれほどと考えるかにもよるが,
修正,調整を行いながら資本主義が半世紀単位で生き延びる可能性もあることから,むしろ「より高次の段階」とするのが適切であろう。
2.2 飯田和夫氏のグローバル資本主義論
同氏はグローバル資本を基軸概念に,<グローバル資本主義の理論体系>を提示し,これを資本主義の新段階と規定する。
●1990年代以降の移行期を経て,21世紀初頭にグローバル資本主義が成立したとする。
基軸概念であるグローバル資本とは,資源の調達,生産,販売をグローバルなスケールで統合し,一体的に運用するグローバル経営を展開する大資本群を指し,
同氏は次の定義を与える。
*********
「世界の中で最も有利なところ,最大の利益をあげられるところに,その活動(調達,生産,販売)拠点をおき,いわばグローバルな規模と体制で経営を展開する資本」である。
*********
ここから導かれるグローバル資本主義はグローバル資本群が支配的影響力を持つ資本,すなわち支配的資本となる資本主義である。
氏によっては次のように規定される。
「(グローバル資本主義とは)各国の国民経済が調達,生産,販売という3つの領域の国際化を特質とするグローバル資本によって駆動される資本主義である。
さらに1980年代以降, 新興経済, または新興国と呼ばれる
>>BRICs や ASEAN 諸国,中南米諸国がその内容に差異や事情の違いを内包しつつ,工業化に成
功し著しい経済発展を遂げたことに大きな重要性を認める。
●●それらは世界経済の2大構成部分の1つであり,
●●グローバル資本主義には先進国型のモデルと新興国型の発展モデルが併存するとして,次のように評価する。
●●「(グローバル資本主義は)従来の先進資本主義諸国とは異なった発展モデルをもった,新興資本主義諸国の勃興を伴いつつ進展する
●●こうして資本主義の段階規定は,
先進諸国の経済構造の態様や動きだけでは決定されなくなったのである。
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IT 革命や交通通信手段の高度化を背景に1980年代以降グローバリゼーションが急速に進展し,
1990年代の移行期を経て21世紀初頭にはグローバル資本主義が成立した。
グローバル資本主義の理論的特質は,次の4点に総括される
⑴ 調達,生産,販売の3領域における国際化(グローバル化,筆者注)
⑵ 国民国家の変容と新しい国際秩序の形成
⑶ 国際分業関係の変化と先進国における経済構造の変化
⑷ 労働力の国際移動と資本 ― 賃労働関係の維持・再生産
それまでの資本主義の段階を「福祉国家体制の資本主義」と規定し,そこでは大量生産方式によって飛躍的に増大し
た生産力のもとで,資本の再生産・蓄積運動が国内労働者の大量消費に条件づけられていたとする。
この<[大量生産―大量消費]システムを土台とする福祉国家体制が解体>といえるほどの変容を遂げ,新システムに移行,転換する。
●●その必然性を,各国の大資本群,寡占資本群が調達,生産,販売のグローバル化によってグローバル資本化したこと,
●●その結果それまでの<<福祉国家体制の資本主義における大量生産―大量消費の国内的基盤が掘り崩された>>ことに求めて,
次のように述べる。
<●「グローバル資本にとっては自らの再生産,蓄積運動がその本国における労働者
の消費に条件付けられることがなくなる。……生産過程を担う労働者がそうして供給される商品
の消費者でなくとも,この販路が国外に確保されているなら,何の問題もない●>
飯田氏は前述のように,
***
●●「国民国家の変容と新しい世界秩序の形成」を,グローバル資本主義のもう一つの特質とする。
●●<グローバル資本と国民国家の関係が核心的問題>であり,
同氏の認識は次の3点に集約されている。
①「世界の市場と制度に対する統治権をグローバル資本が掌握している」,
②「グローバル資本はそれぞれ本拠をおく国民国家からの規制を受ける存在である
③と同時に,そこからまたさまざまな恩典をも受け取っている」,
●<<「国民国家はグローバリゼーション下の国家間競争に対処するために,自らの国民経済をグローバルスタンダードへと調整していく」>>。
このように同氏が●●グローバル資本と国民国家の関係を対立と相互依存の関係●●として捉えていることは積極的意義を持つ。
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2.3 筆者のグローバル資本主義論といくつかの論点
筆者のグローバル資本主義論
第1に,グローバル資本主義は
メガ・コンペティションを繰り広げるグローバル資本群が駆動し,主導する資本主義であり,グローバル資本が<各国経済及び世界経済において支配的影響力を持つ資本>,すなわち<支配的資本>である。
>>第2に,先進国型の発展モデルとともに,いわゆる BRICs など新興諸国の発展モデルが地位を高め,前者との間に軽視できない一定の違いがあるものの,両者が併存する。
●第3に,グローバル資本主義への移行,転換は,●資本主義の新しい段階と位置づける。
●最大の根拠は次の点に見出される。
出自の国に主たる事業所を展開する大資本群,寡占(独占)資本群が支配的力を持つ資本主義の先行段階とは基本的に異なり,
>複数の国,ないし世界的に事業を展開し資本蓄積を行うグローバル資本が,支配的になること,これである。
出自の国を必ずしも活動の主要舞台としない点は後に敷衍する。
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グローバリゼーションの進展が近時の経済の顕著な現象であることに異論の余地はないが,すでにみたようにこれを資本主義の新しい段階と評価できるか,否かで意見は分かれる。
河村氏は
>>新段階とまでは評価できないとし,●●「パックス・アメリカーナ段階●●における<変質局面(phase)>(前出)と規定したのに対し,」飯田,馬場,加藤各氏らは先行段階とは基本的性格を異にする新段階と規定した。筆者の立場は明確に後者である
Ⅳ グローバル資本主義が支配的で,世界経済を駆動する資本主義〈若干の総括〉
@20世紀末までの独占資本主義(大企業支配体制)は第1~3ステージがあるが,
@その最大の特徴は<一国単位>だということであり,<特定の国民国家と利害を共有し,太く多様な関係性を有していた。
>その利害とは
<大企業から見て>
より質の高い十分な労働力の確保と消費需要であり,
<政府から見れば>,
経済成長の牽引力, 大量雇用の吸収先であり, 重要な納税主体の1つ(様々な優遇措置があったとはいえ)であった。
・他方で,独占資本主義の歴史は第2ステージ(第1次,第2次世界大戦をはさむ時期)をのぞいて,同時並行的に貿易,資本取引の自由化が進展した。
●●特に第3ステージの後半ではモノ,カネ,ヒトの国際間移動の自由化が
●新興国を含んで深く全面的に進行し,グローバル資本主義への転換,移行の原動力,牽引力になった
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誤解を避けるために言うと,国境で区切られ国民国家が統治する各国の経済は存在し,研究の意義も決して小さくないが,
●●一国資本主義論,具体的には日本資本主義論やアメリカ資本主義論という立論はその歴史的使命を終えたのである。
****
<対外直接投資や海外生産の拡大は国内労働者の仕事を奪い雇用を縮小し,「国内産業の空洞化」として現象>
政府や大企業に要求すべき基本的な課題は
●「付加価値生産性の高い高度技術に裏付けられた先端産業の創造」であり,これによる雇用の創出・拡大である。
●●日本における対応の欠陥は,この課題の解決に十分成功していないことであり,
>その結果,労働者から仕事を奪うことだけが残る。
他面で,むしろ重要なのは明らかな<比較劣位産業をきっぱり諦めて>,
一旦失業した労働者には次の新産業(比較優位を獲得する産業)で通用するよう,労働力の質を改善,向上させる再教育のシステムを確立することである。
成長と福祉の好循環を作り出すことこそ,日本経済に求められる。
当然のことながら,この循環は労働時間の短縮,労働条件の改善や賃金引上げ,雇用の拡大や消費拡大効果を持つ。
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W⇒ アベノミクスは日本資本主義に<「寄生性と腐朽性」>を刻印!
●●<グローバル資本の,特に投機的な経済活動>に対して<「寄生性と腐朽性」>という概念で総括し,その強まりや飛躍的拡大の実態や仕組みを解
明すること
アベノミクス=異次元金融緩和と膨大な内部留保は証券金融投資へ!
グローバル資本の性格を強めた日本の大企業には膨大な内部留保が存在するが,
実物投資先が不足すると,
また独自の技術や商品の開発が十分でないと
膨大な内部留保は証券投資や,投機的な金融投資に向かわざるを得ない。
W。<タックスヘイブン><トランプ2言説⇒株価操作>
タックスヘイブンである英領ケイマン諸島への日本の証券投資は,74.4兆円(2015年末,2005年の2倍超)に達する。
最近暴露されたパナマ文書も税逃れや,税務当局が把握できていない膨大な資金が存在することを示している。
実物投資ではなく,投機性の強い財テクの横行,拡大は何を意味するか。
これは眼前に見えるものとしては機関投資家や富裕層の行動であるが,
●●主たる収益源泉であるグローバル資本●●の「寄生性の増大,深刻化」に他ならない。
このような不健全な収益獲得は,グローバル資本主義自体にとってもきわめて望ましくない事態である。
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3.国民国家の新しい役割と「日本・軍事大国」論
3.1 国民国家の新しい役割
●●自立的な景気循環の機能を失う独占資本主義はその全段階を通じて財政,金融などを中心に国家の経済政策を支柱として維持され発展してきたといえる。
>>国権の発動たる戦争,第1次,第2次の世界大戦をはじめ帝国主義戦争の時期に国家が主導的役割を果たしたことは言うまでもない。
<基本的な関係>は次の3つの関係,
①国家と支配的資本,
②国家と国民的統合,
③支配的資本と国民的統合,という相互関係であり,
●●国家政策のありようは3者の対抗・調整によって決定されるといってよい
●●しかし大資本,寡占資本はグローバル化するにつれて[図―1]の関係から離脱をはじめる。
グローバル資本は複数の国で,ないし世界的に事業活動を展開するから,
>複数の国家との関係を持つようになり,
>特定の国との関係は相対化される。
●●グローバル資本は出自の国民国家との一体的関係を不要とするのであり,
いわばドライな関係,政府の諸政策や労働力確保などの面で他国より有利であるか否かの基準によって,出自の国での事業活動を増減するということである。
経営危機の企業が他国を出自とするグローバル資本に買収される,あるいは傘下に入る場合,そこから派遣された経営陣の行動を通じて,この点はきわめて鮮明に表れる。
例えば日産自動車はフランスに出自を持つルノー資本の傘下に入り,最高経営責任者カルロス・ゴーン氏はブラジル人である。実際にルノーというグローバル資本にとって日産自動車という企業や,その工場は最大限利潤の実現,資本の強蓄積の手段以外の何ものでもない。ルノーの経営戦略に従って将来的にも採算性の低いとされた工場は閉鎖され,大量の解雇が発生したのである。
経営危機に陥っていた(株)シャープという大企業(大資本)は,台湾出自のグローバル資本・鴻海(ホンハイ)精密工業に買収(2016年3月)され,経営者が乗り込む。シャープは官民共同ファンドの産業革新機構の支援案による再建を選択せず,身売りを選んだのである。
このことは,シャープが生き残るには日本との関係に基礎を置くよりも,グローバル資本への傘下に入る方がより望ましいと判断されたことを意味する。
企業買収一般がそうであるように,これによってシャープの経営,日本の事業所(工場)の存廃や雇用の増減にはビジネスの論理が冷厳に一層徹底されていくことになる。今後はシャープと日本の政府や国民(従業員)との関係は利害得失のみとならざるを得ない。
*****************************W。グローバル資本の国家に求める身勝手な要求!!一番簡単な方法は国家を抱き込むこと。
次に都合の良い国民統合を推し進める。歴史の教訓。1930年代ドイツ。ドイツ金融資本はナチステロ独裁を選んだ。
グローバル資本は先行段階と比較して出自の国との関係は希薄になるが,
途上国を含めて世界各国の政府や国際連合などの国際機関に,
その経済活動を阻害しないよう各国および国際社会の政治的社会的安定を求めるようになる。⇒W.一概には言えない。例、金融資本、軍需産業は世界動乱が金儲けの絶好の機会を提供する
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W。グローバル資本はその多国籍性において一国的大量生産と大量消費を前提とした出自国の福祉国家の物質的土台を掘り崩しておいて、(また国内実物投資から償還したまた膨大な内部留保の投機性も含めて)<国内に残存せざる得ない企業や生活者労働者の福祉を依頼>する<絶対矛盾>⇒金融寡頭制支配を容認する国民統合無しに無理。
第2点は,国民国家に対して,母国に根を張る多くの中小企業やベンチャー企業との関係,労働者・勤労者を中心とする国民との関係が一義的な重要性を持つことである。
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他方で国民との関係では,教育及び社会保障の基本的枠組みは依然として一国単位であり,中央,地方両政府の役割,責任はむしろ強まっている。
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メガ・コンペティションに伴う各国間,地域間の格差の拡大や貧困の増大に対しては教育や社会保障が解決に責任を持ち,温暖化をはじめ地球環境の破壊への対処の中心は,国民国家に求めざるを得ないからである。
W、以下リアルな政治状況
3.2 国家の相対的自立性と「日本・軍事大国」論
残るのは国家の相対的自立性であり,この下で日本の覇権国化を目指す集団が国家機
構を掌握し,これを軍部(自衛隊)が支えて強大な軍事力を備えるという構図
軍事大国に対して諸政党,労働組合などの社会的団体,国民各階層の強い批判,抵抗運動が存在する。
集団的自衛権を容認した「新安保法制」(2015)に反対する国民的運動はこれを象徴的に表す。
しかし他方で
<主語>新自由主義に基づく規制緩和やグローバリゼーションの進展によって
<述語>①貧困が増大し,②所得格差や③地域間格差が拡大し,
④さらに中間層の没落が深刻化してくると,
●排外的ナショナリズムが中間層や低所得層,貧困層の心を捉える。
●これらの事情は軍事大国・日本を支持する温床となる。
********
軍事大国の指標,内容としてここでは4点あげる。
●①近隣諸国に対して突出した軍事力,世界トップレベルの兵器・哨戒能力をもつ。
●②広い作戦領域が可能な高能力の哨戒機,ヘリコプター空母,潜水艦,輸送艦,補給艦を保有する。
●③強力な軍事力整備を支える大規模な防衛費(5兆円)が可能である。
●④世界トップレベルの工業的技術的基礎があり,通信・交通インフラが整備されている。
>>>筆者はこれらの内実を持つ「軍事大国・日本」が,<新世紀の2010年前後に成立>したと評価する。
●●その目的は東アジア・西太平洋におけるアメリカとの共同覇権を成し遂げることにある。
軍事力強化や軍事大国は膨大な軍事費によって支えられている。
日本の実質的な軍事費(防衛関係費)は2014年度に8兆円(8兆1100億円,予算5兆円,兵器調達の契約である後年度負担3.1兆円)を超え,
2016年には9.70兆円(予算5.05兆円,同後年度負担4.65兆円)という規模であり,東アジアでは突出する。
確かに兵器面で核兵器,長距離ミサイル,爆撃機,空母(ただしヘリ空母はこれに近似)などは非保有(イギリス,フランスなどとの違い)であるが,
●●アジア太平洋地域において,量質ともにトップレベルの軍事作戦能力を有する。
●従来,集団的自衛権を法制上欠く(憲法第9条第2項交戦権の否認)のは軍事大国として大きな制約であったが,
●2015年の新安保法制によってこの制約は除去されたとみなされる。
国連 PKO として南スーダンへの陸上自衛隊派遣(2016年12月)では「駆けつけ警護」という武力行使が可能になる。
●またこれによって,アメリカ軍との共同作戦に踏み切る障害はなくなったといってよい。
その国際政治上の背景は次のようである。
特に<「日米安全保障宣言」>は事実上,日本の軍事大国への志向を内外に宣言した文書である。
同宣言が「両国政府はアジア太平洋地域の安全保障情勢をより平和的で,安定的なものとするため共同かつ個別に努力する」と述べているように,
その核心は経済力や技術力に見合うよう,日本の軍事的プレゼンスを飛躍的に向上させることにある。
この点は,アメリカの研究者によって次のように指摘されている。
「自衛隊の役割は日本自体の防衛だけでなく,東アジアにおける地域的軍事バランスの構成要素の一つとなった」。
2013年末「新防衛計画の大綱(25大綱)」と中期防衛力整備計画(第7次中期防,2014―18)が策定された。
新大綱は「積極的平和主義」の観点から,
日本自身の外交力,防衛力を強化し,日米同盟を基軸として,我が国の安全及びアジア太平洋地域の平和と安定を追求する。
このために作戦戦闘能力を拡大する●「統合機動防衛力」●を構築し,
島しょ部に対する攻撃,弾道ミサイル攻撃への即応態勢を強化する(W。挑発と最前線基地化!)
大綱の方針を具体化する新中期防は総額24.67兆円を見込み,向こう5年間で以下の兵器の調達を実行に移す。
最新鋭ステルス戦闘機28機,垂直離着陸輸送機オスプレイ17機,離島防衛強化の無人偵察機3機,P―1固定翼哨戒機23機,8200トン級大型イージス艦2隻,
水陸両用車52両,「機動戦闘車」
99両,戦闘機への空中給油輸送機3機,対空型無人機3機。
●軍事大国・日本の成立は東アジア・西太平洋において<アメリカとの共同覇権を事実上確立>したことを意味する。
●共同覇権といってもなお対米従属的ではあるが,日本は近年その相対的地位を次第に高めつつある。
●●東アジア・西太平洋における日本のアメリカとの共同覇権がこの地域の安定につながる限りでは,グローバル資本とって基本的利害が一致する。
●●とくに日本出自グローバル資本とっては,東アジアは資本蓄積の主要舞台の1つであり,この地域の安定は必須の条件である。
まとめに代えて
グローバル資本はそれまでの出自の国民国家との一体的関係から離脱して,活動拠点を持つ複数の国や国際機関との関係を強めるようになった。
しかし国民国家は黄昏を迎えるわけでは決してない。
世界政府が存在しないこと,
●●●他方でグローバリゼーションやグローバル資本の活動が生み出す弊害,
貧困の増大,中間層の没落,所得格差,地域間・諸国間格差の拡大が深刻化する中で,
●国民国家は新しい役割を付与される。
>>それは母国に根を張る多くの中小企業との関係,教育や社会保障を通じた労働者・勤労者との関係が第一義的重要性を持つことにほかならない。
<<<支配的資本であるグローバル資本が出自の国を相対化する中で,軍事大国・日本が成立し,東アジア・西太平洋における日米共同覇権の一翼を担うに至った。>>>
@「国家の相対的自立性であり,この下で日本の覇権国化を目指す集団が国家機
構を掌握し,これを軍部(自衛隊)が支えて強大な軍事力を備えるという構図@
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東アジアを始め国際社会の安定につながる限りでは,
>それはグローバル資本の利害に合致するとはいえ,
●●<これは国家・政府の相対的自立性の発現であり自立的な行動>として理解される。
<<<日本の覇権国化を目指す集団が国家機構を掌握し,これを軍部(自衛隊)が支えて強大な軍事力を備えるという構図である。>>>
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将来不安におびえる多くの国民,中間層の不満が排外的ナショナリズムにつながり,これらの人々が軍事大国を支持し,支える恐れはきわめて強い。これは決して望ましいことではない。
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注釈
①20)グローバリゼーションと対の用語にグローバリズムがある。
ここではこれに関して「グローバル化を生産性の向上,経済成長に寄与するものとして肯定的に評価し,これを推進する政策体系とする」にとどめる。
>標準的な政策体系は存在しないから,
●●実際の政策体系●●はアメリカ政府やアメリカ出自のグローバル資本の強い影響力のために,
●●アメリカン・スタンダードがグローバルスタンダードとして強制,普及してきたといえる。
●●このためグローバリズムは無国籍化ではなくアメリカナイゼーション(アメリカ化)であると批判される。
②飯田和人氏は続けてグローバル資本主義と各国経済との関係について,次の点を指摘していることが注目される。
>「国境を越えたグローバルな運動そのものが,活動拠点をおく国の景気循環の基盤を変容させ,その経済構造そのものを変えていく。
●●●……結果的にその活動拠点をおく国の国民経済の発展をもたらすこともあるが,
<<<その国の国民経済を衰退に導くこともありうる」>>>(同書p. 12)
この点はグローバル資本の誘致をめぐるか各国間の競争を激化させる要因となるが,
各国の経済を分析する際にきわめて重要である。
③飯田氏はまたグローバル資本主義の将来において「現在の新興諸国が資本主義の歴史の表舞台に立ち,その主役として振る舞うようになる可能性もまた大きい」と述べている。
新興経済がグローバル資本主義のもう1つの柱たる一を占めることは河村氏によっても強調されている。
④本稿では「日本の軍事大国化」という表現を使用しない。なお軍事大国に向かって進んでおり,まだ軍事大国ではないとの誤解や認識を招きかねないからである。
>日本はすでに「軍事大国」であり,さらにその強化の道をまい進しているのが現実である。
>同様の用例に「高齢社会」がある。65歳以上の人口の全人口比が7%から14%までの期間を高齢化社会と呼び,
14%を超えると高齢社会,
20%を超えると超高齢社会と呼ばれる。
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グローバル資本主義が生み出した「新帝国主義」
https://sekiguchizemi.hatenablog.com/entry/20150506/1430891704
冷戦終結以降、新自由主義もしくは市場中心主義・自由競争主義が世界を席巻し、経済のグローバル化が進展した。
●長期雇用や年功賃金体系を生み出した日本的経営も批判の的となり、グローバルな価格競争によって、労働力も含めた<生産要素も市場化>した。
その結果、雇用は不安定化し、非正規雇用も増加した。
資本の移動は過度に自由化され流動化され、
グローバルな資本移動が生じて
各国の金融政策は有効性を失い、金融はバブルと崩壊を繰り返すようになり、投機マネーが商品市場に流れ込み、食料や資源価格までが大きく変動するようになった。
これらのトレンドは、リーマン・ショックやEU危機などをもたらした。
このことについてグローバル資本主義の進展によって、「国家」が、貪欲に利益を狙う「市場」のしもべと成り下がっていっていると指摘する。
>もっと深刻なのは、「国」を奴隷化することによって、逆に自由市場そのものが危機へと突入しているということである。
例えば、グローバル資本主義では、市場中心主義が「社会的土台」を破壊していることを佐伯は指摘する。
カール・ポランニーは、「市場経済」がうまくいくためには、それを支える「社会」という土台が安定していなければならないと述べた。
実際、「生産要素」は社会的土台に関わる。
質のよい労働力を生み出す教育や医療、地域の生活や家庭、交通や住宅環境、食糧などがその例である。
しかし、過度の市場競争化が、その基盤である「社会」の安定性を崩している。
つまり、グローバルな価格競争の進展が、生産拠点の海外移転や労働力の市場化など、生産要素の市場化ももたらし、
●その結果として、生産活動の安定性を支えていた日本型の雇用も不安定化したというのである。
*******
「ただし、まったく無秩序で無政府的で自由な市場経済などというものはありえないともいう。
EUの問題にしても、グローバル市場は、最終的に政治的な「力」によって支えられなければならないという。」
***************************************************W。重要!逆説!
●●「実際、グローバル経済における、これまでのさしあたっての勝者は、アメリカ、中国、ロシア、インド、ブラジルなどである。
<これらの国の特徴は、国家が強力だということである>。つまり、政府の行政力が強力であったわけである。」
●●また、皮肉なことに、グローバル資本主義を支えているのは、中国という共産主義国であると佐伯は指摘する。
為替を管理し、金融市場を管理し、独裁的で協力な政府によって十分な税収が確保されるという変則的な経済のおかげで中国経済は未曾有の成長を遂げ、リーマンショック後の世界経済を支えたのである。
他のBRICs諸国のロシア、インド、ブラジルなども、決して模範的な市場経済の国ではない。
●●<<実際、冷戦が終わって自由経済が勝利したあとの世界で、グローバル資本主義の恩恵にもっともあずかったのは共産主義国なのだという>>。
*************<新帝国主義というべき状態><<変形された「帝国主義」>>
これらの状況から、佐伯は、いま世界が直面しているのは <<「新帝国主義」というべき状態>> だということを示唆する。
>それは、発展段階と文化や社会構造が異なった多様な国々が、
>>まったく同一のグローバル市場という画一化された世界に投げ込まれて競争にさらされている点にも関連している。
>>グローバル化にうまく乗った新興国は急成長するが、それは先進国には大きな脅威となり、国内で雇用不安などの不安定化をもたらす。
●●先進国も新興国も、資源戦略やグローバル・マネーに翻弄されると同時に、深刻な国家間の差異が生み出されている。
グローバル市場競争経済の進展は、一国だけの金融政策をほぼ不可能にしてしまったため、各国の自由裁量的な政策手段が制限され、景気回復のための有効な手段を持ち得ない。
>各国は、やむをえず、輸出振興のための為替切り下げ競争へと走り、
>あるいは海外市場確保のための自由貿易協定(FTA, TPPなど)へと乗り出すことになる。
>これは、いずれグローバル競争をいっそう激化する、 <<変形された「帝国主義」>> といわねばならないと佐伯はいう。
●この結果、経済が長期的な停滞に陥るか、●激しいグローバル競争の中で特定の分野へひずみを与えるか、
●労働配分率が低下するかであろう。
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●すると、今日の民主政治のもとでは「民意」は常に不満を政治にぶるけるので、
政治が著しく不安定化し、政権は絶えず世論の不満にさらされるので、
●●ますます経済運営が困難となる。
●場合によっては、大衆の不満の中から独裁が生まれ、民主主義が停止されるだろうともいうエマニュエル・ドットの視点も紹介している。
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グローバル化と現代資本主義と現代、(下)
グローバル化と人類 馬場
http://www.seikatsuken.or.jp/database/files/n200410-93-0_1.pdf
反俗日記⇒論説エッセイ風だが、論文形式よりも的を射ている!そのものズバリ!トランプの政治手法がよく解る。まさにアメリカ剥き出し!
①グローバル資本主義の本質
1過剰商品化~~経済の投機性~~
資産の投機的売買、以下~~最終部分
2,社会嫌い
3,同化か殲滅か
4、グローバル資本主義化の帰結
③日本御対米誤認
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反俗日記⇒問題意識のレベルが低い!俗流議論を真顔で正当化している。こういう未だに戦後世界体制に則った保守的旧革新派の議論の中からは啓蒙運動しか出てこない。しかし現下の参院選を見ても日本の議会圏の情勢の進展はこの程度の議論を超えている。前掲大学ゼミ論説の方が問題意識が鋭い。
********基本的な政治路線はレーニン「帝国主義論」の全面否定である。
帝国主義の問題は国家と政治権力の政策の在り方ではなく、金融寡頭制のもたらす必然的な経済問題である。植民地諸国が独立したからといって経済的にも政治的にも軍事的にも帝国主義はなくならない(ウロ戦争。パレスチナ、イスラエル戦争。東アジア情勢は当事者間の政策や行動から派生した問題というよりも、歴史的文化的に位相の違った帝国主義同士の必然的な衝突から発生している戦争あるいは激動事態である)
党の綱領というのは、経済学の文献ではなく、政党の政治文書であります。その綱領で、ある国を「帝国主義」と呼ぶときには、それは独占資本主義にたいする学問的な呼称だ ...
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20世紀の変化
https://www.jcp.or.jp/jcp/22th-7chuso/key-word/b_2.html
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⇒反俗日記。使用しているキーワードに実証性が乏しい。ネグリ、ハート「帝国」への拒絶反応と同じだ。この著者は取り入れているイタリア系のこの手の論説は大昔から一般的に難解な文脈を駆使してイメージを先行させるものが多い。イタリア系の古典からの伝統なんだと思う。マルクスも難解な文脈を駆使するが概念規定はしっかりしているので日本語よりも論理的な英語で読めば解りやすい。
解りやすいところを抜粋した。
資本主義システムにおける「終わりなきグローバル内戦」――こうして私たちの社会生活が軍事化する
2025.03.31
https://gendai.media/articles/-/149968
トランプ政権がウクライナに天然資源の膨大な権益を強く要求したように、各国はいま地球規模で資源、土地、労働、データを奪い合っている。暴力をともなう「国家権力」はますます資本の権力の一部になろうとしているようだ。⇒W。サンダース等はトランプ政権批判を寡頭制と格差に絞っている。ただし未だにウロ戦争を帝国主義同士のぶつかり合い、と掌握していない。民主主義や国家主権擁護の立場からウクライナ支持をしている。安易な政治立場だが現実とは違う。
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トランプ大統領らの発言からでは見えてこない、国際社会で起きている真の戦争とはどういうものなのか、このほど刊行された『21世紀の国家論 終わりなき戦争とラディカルな希望』(隅田聡一郎・著)から読み解いてみよう(連載第4回)。
領域国家間の戦争から、国家主権を超えた戦争へ
反俗日記⇒何となくわかる!だが、論説内容にばらつきがある。
NATOの東方拡大がウクライナ侵攻のきっかけだったのか?
旧ソ連の崩壊過程が帰結したこと
戦争が「資本の」権力を構成する
かつての冷戦下においても、ヘゲモニー国家である米国がマーシャルプランをつうじて同盟国の再軍備化をはかり、軍需産業に大規模な公的支出を傾ける「軍事的ケインズ主義」が採用されていた。戦後の先進資本主義諸国の蓄積体制は、ソ連の大圏域秩序との地政学的対立のもとで全世界に配置された、恒久的な軍事基地に支えられたものだった。
反俗日記⇒以下の問題意識は的を射ている!日本と東アジア情勢にも適応できる
ところが、現代のポスト蓄積体制のもとでは、戦争や軍事はより直接的に「資本」の権力を構成することになる。
グローバル戦争レジームのもとで紛争が恒常化すると、国境をめぐる安全保障上の緊張が高まり、軍事同盟や外交関係が絶えずフレキシブルに編成されるからだ。
>だが、それは同時に、資本の流通(物流やサプライチェーンなど)が時空間的に再編されることを意味している。天然資源の採掘や土地(プラントを含む)の再配置は、
レントW注釈をつうじた収奪体制において決定的に重要である。戦争はかつてのように産業的な蓄積体制をただ補完するのではなく、むしろ戦争を介して積極的により収奪的な蓄積体制が追求されるのだ。
****W注釈
「経済学における「レント」とは、市場競争の結果として得られる通常の利益を超えた、不労所得や独占的な利益を指します。これは、土地の賃貸料や特許による利益、規制緩和によって得られる利益など、様々な形で現れます。また、「レントシーキング」とは、企業などが政府や官僚組織に働きかけ、法制度や政策の変更を通じて、自らに都合の良いように規制を設定したり、緩和させたりすることで、レントを得ようとする活動を指します。
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①ロシアと中国の台頭には、こんな背景がある――いま地球規模で起きている資源、土地、労働、データの奪い合い
https://gendai.media/articles/-/149966
②戦争とテロが続く世界、国家が人民に代わる「主権者」となり、民主主義は空洞化する
https://gendai.media/articles/-/149879
③私たちは自分たちを統治する能力を奪われてはいないか――資本主義が行き詰まり、国家主権が強化される
https://gendai.media/articles/-/149877