反俗日記

多方面のジャンルについて探求する。

前通産官僚、京都大学準教授中野剛志さんの「韓米FTAとTPPの共通点がムゴ過ぎる」の動画書き起こし、に学ぶ。

 中野剛志さんは経産省の官僚で、京都大学に出向の身分だったが、先頃、経産省を退官した。
先頃のTPP反対の集会では街頭演説もしている。この先、発言する学者としての道を歩んでいくだろう。
経産省官僚在任中、話題の本を出版し、マスコミに評論家として登場している古賀茂明に対しても、市場原理主義者との認定から、在任中から強い批判的観点があった、と述べている。
 
 昨日の記事で中野さんの「韓米FTAとTPPは共通点がムゴすぎる」という動画の丁寧な書き起こしを時間不足から最後の方で羅列したが、TPPに関する基本視点が自分とは驚くほど似ているな、と想った。
 
 勿論、自分の場合は稚拙、粗暴この上ないが、大事に関しては、できるだけ自分のこれまでの経験と理屈から、間違っていてもまず、独自の意見を絞りだすという大方針を掲げている以上、自分の能力の限界露呈は仕方がない。
 今日は、個別案件に踏み込んだ中野さんの意見に沿って、自分の考えを、キッチリまとめる単純作業をすることにした。
 
 
1、政府の云う、TPPによってアジアの成長を取り込む論は大ウソで、輸出倍増画策の米国の対日市場狙い撃ち
 
>TPPによるアジアの成長の取り込みを云うのならば、どうして、経済的プレゼンス上昇を確実な中国、台湾、韓国、それから、ASEANの大国インドネシアはTPPに参加していないの?
 
 米国をハブとするアジア分断支配の政治的意図も十分考慮した上で、対日市場狙い撃ちを位置づける必要がある。参加国の構成、除外国の関係から、政治色の濃厚な経済協定にならざる得ない。
これはのちに中野さんも指摘している。
 
>中野さんや識者がよくいう、TPP=GDP9割日米論。
中野さんの説明では米国7割、日本2割。
 
 米国GDP7割の中身が大問題だ。
エマニュエル、トッド理論によれば、米国GDPの中身に占める金融部門の大きさから、GDPの実体がアヤフヤ。
 
 金融、保険商品のなどの販売は国内向けが主力で、それを海外に売りつけようとすれば、当該国の制度、精神風土を米国ルールに変えていくしかない。もっと言えば、米国並みの格差社会になれば、そういう商品はよく売れる。
 東日本大震災に乗じて米国保険会社は地震保険を大量販売したはずである。
 
 日本、韓国など世界中の国の金融、保険の国家サービスは邪魔になる。政府の小さな政府と称する、金融寡頭支配が適正。
 
 2、70年代から始まった米国経済の力の弱まりによって、80年代を経て90年代に入って、米国支配層の国家戦略は「相手国の制度やルール、法律を米国企業にとって有利な様に変えさせる」方向、確立。
 
>>ここでの指摘は非常に重要。
 
 戦後史的観点から見た米国の経済力の後退とそれを優位な政治力、軍事力でカバーする米国国家戦略の基本動向を押さえている。
 
 >この観点がなければ、TPP推進の米国の姿を丸裸にできない。
民主党TPP慎重派の勉強会を聴いていると、このような米国国家戦略の歴史的変転を掴む手前で躊躇している様子が解る。この観点は反米論云々の領域も問題ではなく、事実、真実の問題である。
真剣対峙の相手の状態を把握しないで、危険思想だからと目を閉じて、どうして打ち勝つ事が出来るか?
 
 戦前の対米過小評価の裏返しであり、戦争に負けて精神風土がアメリカ流に統一された影響が出ている。
その場合、マスコミの果たす役割は大きい。
 
>>悪い例としてあるブログ記事を挙げる。
 
 このブログの意図はTPP反対であり、反対理由の説明も私なんかの様な稚拙、粗暴さはなく、高度で丁寧。
 
しかし、米国の経済力の後退の弱さとそれを政治力、軍事力野優位性でカバーし「相手国の制度やルール、法律を米国企業の有利なように変えさせていく」と云う80年代以降に始まり、90年代の冷戦体制崩壊後に確立した国家戦略が浮き彫りになっていない。
 
 >キーポイントは弱体化する米国は己の優位である、政治力、軍事力を最大限利用した唯一の国家戦略としている事。TPPはその典型。
 
 この方のTPPの説明は次の次元で終わっている。
 
 「参加国の間で関税を廃止し、知的財産権、労働規制、金融、医療サービスに至るまですべての分野において関税障壁を撤廃し、自由化するという協定です」と。
 
 >これでは、当初、小国同士で検討されたTPPに米国がバブル崩壊受けて、参加利用するようになった、国家的意図は隠ぺいされているも同じである。 
 
 >だから、たったこれだけのTPP説明の後、いきなり、労働規制を撤廃すれば、年収5000円のベトナム労働者が、日本国内になだれ込んできて、失業者が巷にあふれる話に直結させる。
 
以下、連綿と金融保険の国家関与がなくなれば、「350兆円もの郵貯簡保は預金者の同意なしに米国マネーゲームに回される」など日本国民の受ける不利益が具体的に挙げられていく。
 
 こういう観点は云わば、損得勘定論。
解りや易い説明だし、国民的規模での説得力もそれなりにある。
 
が、この意見に対応するTPP繁栄論も推進派にはある。
 
 立場の違いによって、損得は違ってくる。
推進派の繁栄論は少数の得を全体の得であるかのように、見せかけている事。
 
 グローバル金融資本制の時代。
一部企業の繁栄のお零れが庶民の処に回ってくるほど、甘い経済構造はない。
カネがある処にますますカネが集まり、ない処はますます貧困が再生産される。
さらに酷い事は究極の処、日本支配層は国民全体の経済、政治を行う立場を完全放棄している事である。
口先では何と言おうと、実態がこれである。
 
 そういう事実を踏まえての損得勘定論ならば、納得するが、それでもまだ十分でない。
 
 また、TPPは中野さんが云う様な、もう、90%足元は掘り崩されていてダメという性質の問題ではない。
日本国民がグローバル資本制下で生きていかざる得ない限り、続く生命、生活、権利、を巡る不可避の戦いの一環でしかない。
 その意味で今現在のTPP反対に思想政治的核の獲得を目指すモノが多ければ、多いほど、多数の国民にとってよい、事になる。
 
 中野さんTPP議論のキチンとしている処は、米国論を前提にして、各論を展開しようとしている事だ
方法論がある。確固たる政治思想がある、とも云える。
 
 >>が、中野にあきらめ論がでてくるのは、リアルな立ち位置の表れである。
 
 マスコミのTPP賛成論についても云える。
 TPPが実施されたとして、被害を受けない立場のエリート?はTPPによってパワーエリートに変わる。
 
 >アメリカの1%の残りの99%支配とは、単純な金持ち階層支配ではない。
知識と職能が莫大なカネに返還されるというシステムを内に取り込んでいる。