<最も豊かで最も力のある者にさらに多くの金と権力を!米国のシステムへの全面統合を指向する勢力は米国軍事経済の役割が低下しているまさにその時に、<不平等革命、寡頭制への転換>の全世界的旗頭を米国支配層に見出した>。
エマニュエルトッドさんから。
アメリカ社会は
非常にうまく行った植民地体験から最近生まれたモノである。
とはいえ、<その経験はまだテストが終わっていない>。
アメリカ社会は300年間の間、膨大な鉱物資源を要する土地、
処女地であるが故に極めて農業生産力に富んだ土地の上に、
識字化された住民を輸入する事によって、発展してきた。
>アメリカは己の成功が、己の作り出した訳でない富を、
代償も支払わずに搾取し消費する過程の結果である事を、どうも理解していないのである。
>アメリカ合衆国では
過去から解放された住民集団が、みた処無尽蔵な自然を発見した。
>そこでは<経済学は、希少な資源の最適の配分法の研究ではなくなって>、
<均衡の観念など歯牙にもかけないバイタリティーへの崇拝>に代わってしまった。
アメリカ流経済学はハリウッド映画と共にエンターテイメントの、得意の輸出品である。
>アメリカ経済の「国内」統計への疑問。この部分は米国バブル真っ盛りの頃、その破たんを予言したさわりのフレーズ。
トッド引用。
「5年前から私はアメリカ経済の、おめでたいとは云わないが楽観的なビジョンと国民総生産の成長率の意味するところは、現実には疑わしいと想っていた。
すなわち、米合衆国の国内のすべての企業から派生するGDPの数字を信じるか、貿易収支が描き出す現実を信じるか、いずれか一つなのである。
貿易収支は国と国の交換の多寡を明らかにし、米国工業力の不足を暴きだす。
エンロンの破産は米国GDPの1%の取引高が雲散霧消する事態を引き起こしたが、アンダーセン会計事務所による帳簿誤魔化しによって、この金額のうちどの部分が付加価値(GDPは付加価値の総計)に該当し、GDPに組み込まれるべきであったのかを、明確にすることができない。(バブル崩壊後、明らかになっているのは金融特化経済システムとしての虚構は、企業と会計事務所のグルだけでない。それをオバマは修正できなかった)
最近の事件の増加をみると、会計操作のプロの助けを得て帳簿を改ざんしている企業が多数派であると考える。
1994年から2000年の間に金融、保険、不動産は工業の2倍の速度で成長し、工業の123%に相当する<価値の生産>をしたと云われるが、<この様な経済は云ったいな何なのだろう>。
価値という語に< >を付けたのはこれらのサービスの価値と工業製品の価値の違いは、前者は大部分が国際市場で交換することができない。
(金融保険不動産は国際市場で交換できないからこそ、米国はTPPによって、米国システムを日本に移植し、市場参入を目指す。細かな個別分野の損得勘定もいいが、この肝心な点を指摘が大切。そのためには毅然としたアメリカ論が必要)
己のための供給を外部世界に依存する<消費に特化に空間に変貌した>理由も説明できない。
>オーソドックスな経済理論はアメリカの工業生産活動の収縮も説明できなければ、
逆にローマ型の帝国のイメージを援用するなら、
この過程を政治的軍事的編成の経済的結果として把握できるようになるのである。
(ここから先のトッドさんの記述は米国の過剰消費を世界経済の中軸の構造とする当時の世界的なモノカネの循環を指摘し、この構造を帝国と見なす者もいる、としている)。
そしてこう結論ずける。
アメリカはもはや生産によって、世界に必要不可欠な存在ではなくなってしまった。
この世界的需要不足の情勢に置いて、消費によって不可欠な存在なのである。
そしてこの需要不足は、自由貿易によって作り出された構造的現象である」
*佐々木融氏は、JPモルガン・チェース銀行の債券為替調査部長で、マネジング・ディレクター。1992年上智大学卒業後、日本銀行入行。調査統計局、国際局為替課、ニューヨーク事務所などを経て、2003年4月にJPモルガン・チェース銀行に入行。著書に、「弱い日本の強い円」など。
今や世の中では、「デフレは諸悪の根源で、インフレになれば明るい未来が訪れる」という説が正しいと信じ込まれているようである。若者が定職を見つけるのが困難なのも正規雇用が増えないのもすべからくデフレのせいであり、インフレにさえなればこの苦しい状態から抜け出すことができると吹聴されている。
(こんな能天気はどの程度いるのか)
しかし、待ってほしい。現在日本で行われているデフレ対策は、端的に言えば、日本銀行の積極的な金融緩和によって市場に資金を大量供給し貨幣価値を低下させることでインフレを引き起こすというものだ。しかし、そのような方法では、狙い通りインフレになったところで、資産家ばかりが喜ぶだけの結果にならないだろうか。そして、経済的に困窮している人々の状態は改善するどころか、さらに悪化するのではないかと危惧している。
<需要増なき悪性インフレの恐ろしさ>
順を追って説明しよう。
まず、インフレには大きく分けると、実物要因によるインフレと、貨幣要因によるインフレの二つの種類がある。一つめの実物要因によるインフレは、さらに需要サイドによる要因と供給サイドによる要因に分けられる。
簡単に言えば、前者は需要の増加が牽引するインフレ後者は原油価格が上昇することなどで発生するインフレである。日本経済に本来必要なタイプのインフレは、前者の需要サイドの要因によるインフレであり、これならば、雇用環境も改善し、現在に比べたら明るい未来となるだろう。また、このタイプのインフレの場合、物価が上昇したら需要が弱まり、それ以上物価は上昇しないため、ハイパー・インフレにはならない。
さらに問題は、野口悠紀雄さんによれば、
「諸外国でインフレターゲットと云っているのは、インフレ率が高くなり過ぎない様に、例えば3%以内に押さえよう、と云う政策。コレは正しい。
でも日本で云っているのはインフレを起こそうと云う逆の政策で、コレは効果がありません。」
>信憑性のある話。
FRBが、ヘリコプターからマネーをバブル崩壊後、都合、三弾も投下している米国ではインフレ目標値の設定は一応、コレ以上、インフレ率が高く過ぎないようにしよう、あるいは、この程度だったら、もっとヘリコプターマネーを供給できる、と云う目標値になる。向こうは基軸通過の強みもある。
>従って、こういうインフレ政策で得をするのはカネが基本的に投機にしか回らないから、市場関係者アメリカ、赤字抱える日本政府。多数派国民は損をする。
>トッドさんも最後の方で云っている。
「世界をあるがままにみるすべを身につけ、イデオロギーの、その時々の幻想の影響、
メディアによって養われる<<恒常的な偽の警報>>(ニーチェの言葉)の支配を脱すること、
それだけでも大したものだ。
いずれにしよ、意に反する行動をしない可能性を確保する事。」
インフレを大別した場合の、もう一つのタイプ、貨幣要因によるインフレは、貨幣価値が下がることによって起こるインフレである。実は日本の現行政策は、この種のインフレを発生させようとしているから問題なのである。この要因によるインフレは同じインフレでも好ましいものとはいえない。
貨幣価値低下によってインフレを発生させることを求めているとしか思えない。金融緩和で貨幣価値を微妙に1―2%だけ下げること(つまり1―2%のインフレ)は、かなりの至難の業だ。大量の貨幣供給を目の当たりにして、人々の貨幣に対する価値観が群集心理で変わり始めたら、その変化は一度に大幅に発生してしまう可能性が高い。そうなれば、日本の個人金融資産の過半を占める現預金は実質的に大きく目減べりすることになる。
また、インフレになれば給与が上昇し国民は幸せになれると説く人がいるが、名目の給与額がいくら増加しても、物価がそれ以上に上昇すれば、実質所得は低下し、労働者の購買力は低下、生活は今より貧しくなる。今どき、インフレ率以上に社員の給与を上げてくれる会社などそうそうないだろう。加えて、賃金上昇率はおそらく非正規雇用者の方が低く抑えられてしまうだろう。
<インフレの方が貧富の格差は拡大>
「貧富の格差」拡大の主因をデフレに求める主張は、間違っていると思われる。過去20年以上資産価格が上昇せず低水準の状態が続いていることに対して、本当に頭を悩ましているのは資産家なのだ。デフレ環境下では、資産のほとんどが銀行預金である人と資産家の格差はむしろ縮小している。
インフレ下の方が、持てる者の富は増え、持たざる者の購買力は低下する。つまり、インフレ下の方が、貧富の格差は拡大するのである。保有金融資産に占める銀行預金の割合が多い人は、インフレになったら本当は自分が困るということは認識しておいた方が良いだろう。
>>結論はやはり、冒頭の「最も~」に尽きる。
その根拠はトッドさんの次の言葉にヒントがある様だ。
「米国がその調節なき資本主義と云う特殊モデルを輸出してくる脅威に日本が持ちこたえられたのは
その極めて強力な経済が最近まで労働者と民衆を保護してきたのである」
が、
「世界的不景気の局面では最も強力な工業力の方が常に、時代遅れの経済や、生産性の低い経済より打撃を受ける。
1929年の危機は米国経済を直撃したがそれは当時の米国の経済力が強大だったからだ。」
「社会的団結性の強いこの両国で、米国流の規制廃止をすすめるなら、極右の台頭を引き起こす事は確実と想われる。<トッド予言の部分>
まさにここで、イデオロギー的戦略的均衡がひっくり返る。
米国モデルに自己同一化する資本主義の型は、コレまで最も抵抗してきた社会(モノ作り資本制と米国的金融主導の資本制の本質的差異を云っている)にとって脅威となる。
この主要工業大国は暫く自由貿易の恩恵にあずかったが、今や総需要の不足に喘いでいる。
労働者階級はもはやグローバリゼーション圧力から守られることができない。
ウルトラ自由主義はイデオロギー的に支配的になったため、コレらの社会の中から異議申し立ての言説が浮上する様になっており(確かに。橋下等は、90年代から2000年代の上からの下からのナショナリズムの台頭の後にそれらの言説をミックスして登場した)
>それは心性的政治的均衡への破壊要因に成り得るのである。」
<追記>
米国が調節なき資本主義と云う特殊モデルを輸出してくる脅威に欧州各国社会は分裂しかかっている。この現象は極右が着実に勢力を伸ばしている事にみることができる。
>従ってドイツと日本が持ちこたえている分ファシズム勢力の議会進出がない。ー2000年初頭ーのは
>社会に柔軟性があるとか、社会的安全性の欠如とかに適性がるからではない。
その極めて強力な経済が労働者と民衆を保護してきたからである。
社会的団結力の強い日独で米国流の規制廃止を推し進めるならば、極右の台頭を引き起こすのは着実。
~それは心理的政治的均衡への破壊要因になる。
1)日本右翼の主流は米国の犬。ここが欧州右翼と違う。戦前右翼の転向によるGHQ仕込みの戦後右翼の形成過程の問題。
2)その傾向に米国仕込みの市場原理主義が沁み渡っている。
3)本質的に戦前の民間日本ファシストは既成の権力機構に合流してきた。民間右翼活動は個人的な出世や、欲を満たす手段に終わった。
4)日本的戦後民主主義の申し子である。
>橋下維新は1~4の合成である。