反俗日記

多方面のジャンルについて探求する。

第1回。エマニュエル・トッド入門講座。作成者: satokotatsui。~トッド歴史人類学で読み解く日本史、世界史⇒本邦初の大作、首尾一貫している、面白い!~

20世紀終盤より急速に不均等発展してきた現代帝国主義の矛盾はEU、あめりか(ウクサ協定国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド)、日本と(ある意味欧米民主制資本主義経済搾取構造と次元の違う体制的空白地域)ロシア、中国、アフリカの市場の再分割を眼目とする戦争として爆発し続ける

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反俗日記、前回の問題意識を引き継ぐ形で、探求を深めていくために、次の3冊を読み込んでいる。

①「マルクスから見たロシア、ロシアから見たマルクス」五月書房、的場昭弘編集。

白井聡「転倒的継承ーレーニンによるロシアマルクス主義の創造 」

ロシア、ナロードニキの一方の後継者であり(他方はプレハーノフ等、土地分割派~後にレーニンと共にロシア社会民主労働党を立ち上げ、レーニンの組織原則に<「何をなすべきか」>に反対した)、ロシア社会経済の特殊性に拘って突き進んだ<人民の意思党>を反俗日記では取り上げている。⇒「ロシアの夜」~一婦人革命家の回想~ヴェーラ・フィグネル - Wikipedia

白井聡30歳の傑作である。客体の主体化、主体の客体化。革命の現実性。とまとめられる。政治過程論の一種だ。

>キーワード不均等発展。

今風に言えば世界は民主主義を普遍化した制度に収斂するのではなく、各々の国、地域は特殊ある「発展」過程?を辿る。不均等発展するもの同士が衝突を繰り返すのが金融寡頭支配の普遍的世界体制である。

 引用

ロシアとウクライナのこと – エマニュエル・トッド入門講座

エマニュエル・トッド入門講座独自研究 satokotatsui 2022年6月22日

引用 反俗日記の世界金融寡頭帝国主義の衝動的破壊力に起点を置き、体制の異なる地域との世界的衝突とみる上記の記事とは情勢認識と方法は違っているが視座は共有できる。古代ギリシアの昔から戦争と享楽は同時進行していた。

「神よ 変えることのできるものについて、 それを変えるだけの勇気をわれらに与えたまえ。 変えることのできないものについては、 それを受けいれるだけの冷静さを与えたまえ。 そして、変えることのできるものと、変えることのできないものとを、識別する知恵を与えたまえ。」 ラインホールド・ニーバーの祈りの言葉(大木英夫 訳)学校法人 聖学院 ウェブサイト

トッドの理論は、社会について、「変えることのできないものについては、それを受けいれるだけの冷静さ」そして「変えることのできるものと、変えることのできないものとを、識別する知恵」を私たちに与える。

さらに進んで「変えることのできるものをどう変えるかを考える知恵」そして「変えるだけの勇気」を持ちうるかどうかは、受け手次第と思う。それを持ちたいと願う者として、それを持ちたいと願う人に向けて書きたい。

家族システムの理論は、自由主義共産主義イスラム(慣習的権威主義)その他のイデオロギーは、人間の自由意思の所産というより、社会の基礎にある家族システムが担う価値観の表出であること、したがって、事実上「変えることのできないもの」に属することを教える。

ここでいう「イデオロギー」は思想信条というより、個人と集団の関係、集団の機能の仕方、リーダーシップのあり方など、社会の基本的な秩序の作り方を規定する無意識的な価値観の総体である。

直系家族システムを持つ私たち自由主義」の理念を掲げることはできるがイギリスやアメリカと同じような社会(例えば、訴訟が活発で、選挙のたびに政権交代が起こり、天文学的な所得の格差を許すような社会)を営むことはできないそういうことである。

平和な世界に向けて、私たちにできることは何か。社会の根底に横たわる家族システム=イデオロギー体系は変えられない。したがって「自由と民主主義」を掲げて徒党を組み、「専制主義」に圧力をかけても、平和に近づくことはできない。⇒W直系家族システムを持つ私たちは自由主義」の理念を掲げることはできるがイギリスやアメリカと同じような社会を営むことはできない偽物がこの戦いに載る事は不利益につながる、と考える方がまっとうだ!

私たちにできる最善は、世界に多様な価値体系が存在していることを認め、尊重し、共存の道を探ることである。⇒W.グローバル資本主義は究極のところ、マネーの多寡を世界共通の価値基準とする。その他は<様々な意匠>に過ぎない。この点では欧米、ロシア、中国は同類。

以上を前提として、ロシアとウクライナの戦争について、どのように向き合えばよいかを考えたい。

ロシアの家族システムとプーチン大統領

W。長いが全文引用する。後半部分は反俗日記とプーチンに関する意見の隔たりが大きすぎたので省略した。コレは現中国にも該当する真理であるというのが反俗日記の持論だった。それは何もエマニュエルトッドに寄らずとも普通に中国史の関心がるものが抱く感想である。反中国の浅はかな言論はココを見ていない。

日本の制度、政治状況は本質的に欧米とは次元が異なる要素が大きすぎる。

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「西側」の人々は、現在のロシアの「専制主義」を作っているのはプーチン個人の権威主義的な人柄であると信じているように見える(英米個人主義から見ればそうなることは理解できる)。しかし、現実はそうではない。⇒W.そこまで単純ではない。先に挙げた<様々な意匠>が価値基準となっている。

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⇒W.ソ連崩壊の態様からプーチンが出現した。言い換えるとゴルバチョフソ連共産党プーチンを生んだ。ロシア中国のスターリン主義社会民主主義では改革できないという真理。そして社会民主主義はグローバル金融寡頭制を制御できない。その力が無い。

W.トッドの家族形態とイデオロギー、制度の理論的基礎付けは3段階に渡って変化してきた。反俗日記が「人類はどこから来て今どこにいるのか。」文藝春秋刊行、上、下で読解できないのは<下、15章、場所の記憶>この引用文では<土地の記憶>とされている。今の尚、釈然としない。ただし、第3段階の展開はナルホドな、と感心する。トッド流の言い回しが説得力を増している(マルクス的である)。キーワードは<弱い価値観諸国民の持続

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    解り易い箇所を「人類はどこから~」より引用する。

「今日私は「弱い価値観の力」との自分の最初の出会いが、時期的に~~移民問題関連ではなかったことに気づく。1992年<欧州単一通貨発行を図るマーストリヒト条約が調印された年~W。ベルリンの壁崩壊⇒ドイツ統一からいくらも年月が経ていない!勢いに乗じて、後先考えずに欧州経済の帝国的膨張の起点が始まった

から1995年まで、

>私的な討論の場で個人を相手にする限り欧州単一通貨がバカげたプロジェクトであることを明らかにすることは容易だった

>集団レベルでは、ユーロ導入は不可避だと云う信念が既に定着していて揺るがしえなかった

>弱い信念十分に広がりを有する集団に担われていて個人は、一時意見を一変させられていても、

>会話を終えて自分が属する社会領域へ戻ると同時に元の信念に立ち返ってしまうのだ。

@これに似たことを孫崎さんがウクライナ、ロシア戦争当初云っていた。

沢、何とかさんという護憲派の女性とこの戦争を話し合ったとき

その場では話が通じたと想っていたが、

>ある日、彼女はロシアの侵略反対のデモでシュプレヒコールを挙げていた。

@去年、大きな書店でウクライナ関係の本を探して書棚の前に立った時、なぜか背後の毒々しいタイトルの小冊子が気になった。ロシアとプーチンを小学生レベルで悪者にしたもので手に取って出版社をみたら、岩波書店だった。今の世界構造にはまるで描かれていなかった。EUアメリカの動向分析もましてや批判らしきものは皆無だった。

岩波本でもそこまで片方に肩入れしたものはなかった。コレは弱い信念にたいする妙な配慮があったと記憶している。今はガンガン云える。大昔のベトナム戦争のとき、一方的に北ベトナムと解放戦線に肩入れしていたかつての「仲間」が思い切ってウクライナに肩入れしているのでその記事をコピーした。やっていることは大昔も今も同じだ。キーワードは民主主義の徹底=急進民主主義、これが基本視座になる。だったら、丸山真男の政治ジャーナル記事が上級コースで、マルクスレーニン毛沢東カストロゲバラは行動主義者の軽チャー「様々な意匠に過ぎなかった」。なのに彼らは間違っていた、と批判するのは筋違い。

最近読んだ論説の最後は「中国は必ず台湾に侵攻する」と締めくくられていた。台湾の有事は日本の有事のメンタルである。ある時期にタガが外れてしまった、というか自らタガを外した。こうなれば世界構造など無視して情緒的になれる。

「弱い価値観の力」、弱い信念

は集団の中で培養し世論を形成する。「弱い価値観」を装った印象報道が積み重なると、個人の意思はその中に埋没する。

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 ロシアの家族システムは外婚制共同体家族である。共同体家族は親子の縦の権威関係兄弟の平等が結びついたもので、遊牧民の影響を受けて成立したと考えられている。ロシアの場合、モンゴル宗主権下にあった約2世紀半(13世紀-15世紀)の間に同システムが確立したというのがトッドの仮説である(『家族システムの起源 I 下』498頁)。

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⇒W。トッドの初期の見解だろう。共同体家族は核家族よりも農耕、牧畜に適した新しい家族形態であった。広大な土地と遊牧、農耕牧畜に共同体家族は労働集約という意味で最適ユーラシア大陸中央部に「後進的な=先進的な」家族形態が「農業」牧畜、遊牧の生産性に適応するという意味で生まれ、その縁辺に緩やかな親族関係に包摂された原初的家族形態である核家族が残った。この事実は普通にどの地域の歴史を遡ると確認できることだ。人間の群れがあって夫婦子供がいる。群れを左右する行動の際には合議をして意思決定するから民主制があったといえばあった。しかしこの民主制が自由な民主政であるとは言い切れない。緩やかな拘束力は伴った。英米の現民主政の原型は「原初的民主制と資本主義の運動法則、国家機構が重なったもので各々が応能分担しコストパフォーマンスに優れている。

百姓の家族形態が直系家族になったの<支配層の封建軍事貴族の年貢強収奪体制形成、と家制度の浸透、つまり支配層の強制」支配と統治によるもの>江戸時代初期、幕藩軍事貴族が(パックストクガワーナ)を時代背景にそれまでの生産性の低い拡大家族形態の農具、肥料の投入とともに検地を徹底し農民から武力を奪い(刀狩の徹底)土地分割し拡大家族の従者を独立させ、土地の生産性上昇、年貢収奪増加を目指した結果である。また細分化した土地の子供たちに対する遺産相続はむりなので家制度と長子相続が確立し余剰労働力は間引き、奉公に出され単身で死んだ。その場所の記憶=土地の記憶が日本近現代の労働階層の勤勉労働、忍耐労働慣習に繋がった。

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すべての子供たちが婚姻後も親の世帯に残り兄弟とその妻子が作る大きな共同体

トップに父親が君臨する。外婚制共同体家族の父親の権威は全システムの中で最大である

一方で、外婚制共同体家族(W,内婚共同体はイスラム圏)の秩序には、継続性を欠くという特徴がある。統率力の源泉は生身の人間の人格であり、後継者となるべき子供たちには序列がない。そのため、父親の死によって家族は分裂し、次の秩序が確立するまでの間、必然的に混乱に陥るのである。

トッドは、農村の外婚制共同体家族が(近代化の過程で)爆発的に崩壊した後

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⇒W.ナロードニキ運動は農村共同体(ミール~農村共同体の共同所有地は皇帝改革によって私有地になった。カネの無い農民は小作になり土地は大所有者に集約された。ナロードニキ革命理論と戦略は農村共同体の残滓に依拠した。~~江戸時代の年貢ムラ請負体制の密な支配収奪体制=同調社会<本質的な意味ではみ出し咎め棄民を生み出す上から下まで統治機能が発揮される自由欠乏社会>とロシア、中国の農村の上から統治機能が下まで貫徹しない過疎支配の対比<基本的社会構造は統治するものとされる側の二重社会>~中間に貴族的大土地所有者や統治機構に繋がる現地名門がいる~。共同体家族形態と直系家族<分割相続不可能な~もっとも私有地概念が無い~狭隘な土地面積、支配層の家族形態の浸透、強制力によって直系家族になった百姓の違いの対比。)17年までのロシア革命の帰趨は土地分割要求を掲げたエスエル社会革命党が~この要求だけでも革命的な共通の政治シンボル~~皇帝に反対する側に立つことによって決まったといってよい中国国民党の土地分割の要求は農民の頭の上を素通りしていったが、魯迅阿Q正伝)も毛沢東の農村が都市を包囲する戦略の解放区の大土地所有者は打倒された。日本の農村にそのような要求は不適合だった。コレは不均等発展の結果だけでは説明できない。直系家族<家制度>の視座が必要。

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その空白を埋める形で成立したのが共産主義であることを指摘している。

⇒後付けではナントでもいえる!歴史家は予言者でなければ~~。トッドに魅かれたのはそこだ。

マルクス共産主義は革命理論ではなく、西洋の近代合理主義、社会民主主義の一種である。世界経済の不均等発展下のロシア、中国はその実情に適した共産主義を生み出した。それがスターリン主義体制である。

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「爆発的解体→革新的新秩序」という推移が、家族システムの特性によるものであることを裏付けるように、ロシア政治史の下斗米伸夫は、ソ連崩壊後の新体制樹立の際にも、これと全く同じ力学が働いていたことを見出している。

崩壊する旧秩序、分極化する社会、ひ弱な穏健改革派指導部、地方の革命的自立、これに反発する保守派クーデターの切迫、新しい革命派、とくに指導者の人気……。

 1917年の政治過程は、91年ソ連崩壊の過程とそっくりではないか。すくなくとも政治力学に関する限りは。

下斗米伸夫『ソビエト連邦史 1917-1991』(講談社学術文庫、2017年)46頁
⇒W.テーゼである!一つの秩序の崩壊は、共同体家族システムの崩壊を意味しない秩序が爆発的に崩れ、つぎの新たな秩序が生まれるという力学そのものが、共同体家族システムが機能していることの表れである。

したがって、共産主義ソ連崩壊の後に再建されたロシアが、やはり一人のリーダーに権力が集中する政治体制を持つ国になったのは、プーチン大統領個人の強権的体質のためではないと考えるべきである。ロシアの「土地の記憶」

イワン雷帝 (映画) - Wikipedia

1944年から1946年にかけて制作されたソ連映画セルゲイ・エイゼンシュテイン監督。

“イワン雷帝”ことイヴァン4世の生涯を描いた作品。

、すなわち外婚性共同体家族という家族システムは、つねに専制的な指導者を必要とするのである。

>W。ソ連時代から少なくとも上記のような内婚制共同家族は極少派だった。

多くは<核家族>だったのはどう説明するのか?

@場所の記憶でトッドの解説があるが、本当に解り難い。

>基底還元、決定論という批判もある。

@独創的理論の核心が具体的な資料によって裏付けされていない。文章においてあ~ぁナルホドなという理解程度では納得できない。ココがトッド家族形態ー政治体制論最大の弱点である。

バッタバッタと切り込み仕分けしていく方法の中身がぼやけて見える。

>当該社会の識字能力を基準と見る方法、高等教育の水準で社会の在り方を図る方法からトランプ現象を導き出す方法が事実だとしても、野蛮,排外、差別の共同政治幻想を煽るやり方に対比して高等教育が階層支配を生み出すシステムとまで議論を延長するやり方であれば、21世紀の資本がいう階層格差の問題を提出する方がまっとうな方法に思える。ウォール街占拠、ブラック イズ マター、パレスチナ連帯する学生たちの対極にグローバル資本制下での保護貿易主義(結局、中国市場分離に結果し東アジア情勢の激動させ、日本を政経股裂きして社会を窒息させる)と野卑排外差別を煽るトランピストがいる。

政治は共同政治幻想の争いの場である。粗野、野蛮、排外主義を社会から掘り起こし煽るやり方が保護貿易主義と結合したとき、世界危機を自ら演出することになる。それほど世界的金融寡頭制は米国やEUの政治力では操れない巨大な複合的状況にある。