平成23年度財政経済白書における、日本の介護福祉「産業」の現状に対する官僚作文の誤魔化しを批判する。
介護医療産業を民間にマル投げしておれば、当然金儲け、最優先の事態が生じる。コレが今の日本のこの分野全般のありのままの姿だ。
解り易くするため、卑近な実態を挙げておく。
まず、今、町でよく見かける有料老人ホーム。
実態は呈のいい、変わった不動産業の一種の化している。高齢化社会に巣くう成長産業であり、儲けも大きい。
まだまだ市場として飽和していない。
箱モノを作れば、よほどのことがない限り、順調に儲かる仕組みになっている。賃貸マンション入居の保証金と家賃のシステムを思い浮かべると解り易い。
ただし、大いに違う処がある。
まず第一。
入居者は医療介護の国や地方の資金も投入されているシステムの利用者であるという事。
ということは、そこで、これらの公的資金が有効、効率的に利用されているか問題になる。
金儲け第一主義の経営が野放しにされ、公的視野に立った管理責任がないがしろにされるから、公的資金の無駄遣いが発生する。
第二。
こういう処での労働の主役はホームヘルパーである。
その労働に対して、正当な給料が支払われいない。
従って、ここが有料老人ホームを不動産業化している経営者の儲けの源泉である。
若い有能な成年男子でこの業界に置いて、将来の生活設計を想定することが難しい現状がある。
労働時間不規則、仕事内容ハード。
その労働は生身の不自由な人間相手のリアルな作業だから、一般的なサービス業の範疇を大きくはみ出る部分が多過ぎる特殊労働だが、その割に職場の労働条件は整っていない。
必然的に低賃金女性労働に頼りがちとなっている。
しかし、重度の介護レベルの入居者への対応は女性にはハードすぎる場合がある。
第三。
有料老人ホームを離れて、一般病院においても、問題点はある。
重度の病気になって、入院生活を送らなければ、ならない時、患者の一番身近で身の回りの世話をしてくれるのは、看護婦ではない。病院のホームヘルパーである。
処がここでも、身分保障、労働条件が十分ではない。
病院の儲けの源泉はここにもある。
具体的問題点を挙げていけば、キリがないから止めておくが、一番大切なことは、官僚どもの上から目線では、こういう実態は、絶えず、覆い隠されてしまう傾向にある、という事である。
後で指摘するようにワザと事実に自分たちの都合のいい解釈を施して、誤魔化す事が奴らの常とう手段であると云い切って良い。
尤もこの生態は、官僚ばかりでなく、学者、評論家、マスコミ等々、日本中を覆い尽くしていると云って過言でない。
社会経済の事象は、厳密な意味で科学的絶対判定は不可能。
必ず、立場の相違によるイデオロギーによる裁断が混入している。
都合のいい事実をつなぎ合わせて、全体の意見として前に押し出すのが奴らの常套手段。
また、目先の元気、健康と云う、狭い視野から、単純、粗雑、効率一点張りで中身に踏み込まない議論が世間に横行し、それを真に受けている国民が多数存在して、結局、一部の金持ちだけが、万々歳の世の中を作り上げていくことに多大な貢献をしている。
>>さて、冒頭に挙げた、経済財政白書から、官僚どもの自分たちに都合のいい誤魔化しの具体例をみていく。
官僚が作文中で取り上げている、日本の介護医療産業の付加価値率がヨーロッパ諸国の3倍にも達するという事は、それだけ、ぼろ儲けしているということの証である。
ところが、
その事実は官僚作文に翻訳されると、日本福祉医療産業は欧米に比較して生産性が低く、要員の多数動員で回しているから問題だ、となる。人件費に公的資金が食われていると云いたいらしい。
確かにこれも、事実。
しかし、別の角度から厳密に検討すると、資材原材料、生産設備は商品に価値移転するだけで、労働力商品の使用価値こそが、新たな価値=剰余価値を生み出す。
この剰余価値率とは、官僚作文中の付加価値率の別名であり、明け透けな呼び方を使えば、搾取率と云う事になる。ヨーロッパの3倍の付加価値率ということは、何はともあれ、資本投下に対する儲け率が3倍程度という事。
安い人件費で多数をこき使っているから、大儲けしている現システムの渦中にある経営に、官僚が云う生産性を説いても、今まで以上に儲け上げる事を保証するだけだ。
民間にマル投げにしているから、結果的にそういう資金ロスが生じる。
日本医療福祉産業に従事する方たちは確かに生産性は劣るかもしれないが、経営者に絞りとられて、労働に見合う、正当な給料を受け取っていない。
劣悪労働環境だから、生産性は上がらない、世間的に見てパッとしない労働環境だから、人材が定着しないのに、生産性を上げよ、とは虫が良すぎる。
が、官僚の云っている事はそういう事だ。
そしてこういう話の行き着く先は、低賃金の外国人労働力の導入と云う事になるが、今の処、コレには強い抵抗がある。
で、結局、国内産業は国際競争から安価な労働力を求めて、<海外に出していき>、<空洞化させた>日本国内では給料のデフレが発生し、労働力の再生産も覚束なくなるから、TPPによって海外から安い食料品をどんどん輸入して、低賃金に見合った労働力再生産構造を創出する。
しかし、そのカネが、介護医療産業に再投資される保証がどこにある?
儲かったカネを金融投機に使おうが、どう使おうと、勝手だ。
以上は一見乱暴な議論をしている様だが、実際に経産省や外務省の以前、ネット上に公開された意見の本音を要約すればそういう事になる。売族主義そのものである。奴らが日本や日本民族どうこうと云うのは、国民に政治幻想を与え、騙すテクニックに過ぎない。グローバル資本制の論理の到達点はそこまで醜い処に至っている。
しかし、事は命と健康に密接に関与する公共性を強く保たなければならない分野。
金儲け論理が野放しにされていいはずがない。
また、そうすることでの公的資金のロスも過大になっている事は付加価値率3倍で余りにも明らかだ。
ではどうすればいいか?この分野に公務員を振り向け、公正、公平を確保する、規制を強化するしかない。
公務員の人材配置の問題は確かにある。
必要な処に公的人材の配置薄く、どう見ても公務員でなくても、純粋に民間でできる処に公務員がいる。
今の公務員問題の議論はこういう目配せ、文脈から論じられていれば、私としても同じところに立って議論してもいいが、とにかく、単純、粗雑な経済効率優先論理が跋扈している。
真面目に専門的に考えなければならない問題を軽薄な議論にしているのはアメリカと日本ぐらいだ。
だから止むに止まれず、民間保険を利用する公的保険制度?を導入せざる得なくなった。
日本の様な国情でアメリカの猿まねをしていけば、やがてどうなるか?
アメリカより、もっと酷い社会ができるという事だ。
その方向に着実に向かっている。